ザオリクよりもベホマが欲しい   作:マゲルヌ

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3章
1話 基本的に上司には敵わない


 四大魔王。

 大魔王デスタムーア様直属の部下であるムドー様、ジャミラス様、グラコス様、デュラン様を総称してそう呼ぶ。

 

 言わずと知れた魔王軍の大幹部であり、下っ端ではまず会話する機会もない雲の上の存在。

 戦闘力は並みの魔族を遥かに凌駕し、下剋上が常の魔物社会においてここ数百年、その顔ぶれは全く変わっていない。強大な力とカリスマでもって盤石の支配体制を確立している、まさしく超越者と言うべき方々なのだ。

 

 彼らは大魔王様の命を受けて人間界へ派遣され、各地の拠点にて侵攻作戦を推し進めている最中だ。その活躍ぶりは凄まじく、『都市を消し飛ばした』、『大陸を海に沈めた』、『逆らった部下を細切れにした』などなど、物騒な噂を挙げれば枚挙に暇がない。

 ついこの間も、どこぞの国を滅ぼしたと風の噂に聞いたばかり。

 

 まさに、魔王と言われてすぐに思い浮かぶような『ザ・魔王』

 すべての魔族が憧れるスーパーエリート。

 あまりに畏れ多すぎて、軽々しくお会いしようなどとは到底思えない方々なのである。

 

 そんな尊き御方から今回、私ごときにお声がかかった。

 一魔族としてこの上ない栄誉に与った。なんという青天の霹靂か。

 きっと向こうに着いてからでは周囲の目が気になり、素直な気持ちを吐き出すことなどできないだろう。だから……、だからこそ今この場で、私は声を大にして叫びたい。

 

 至高の魔王様よりの直々のお呼び出し……。

 なんという! ああ、なんという!

 

 

 

「なんて迷惑極まりない話なんだああああ!!――【ピシャアア!!】――うひい!?」

 

 不敬な発言を咎めるかのように、稲妻が空気を切り裂き大岩に着弾した。まるで雷撃魔法を受けたかのごとく粉々になった岩盤の群れ。それを見て背すじがブルリと震える。

 

「ど、どうかあれが私の未来ではありませんように!」

 

 全く仕事しない神に祈りを捧げつつ、私は再びヤケクソで櫂を振りかぶり、水面を掻き始めたのである。

 

 

 

 ――というところで皆さんこんにちは。神父見習いを一時休業、ただ今魔王軍から呼び出しを喰らっておりますサンタです。

 現在私は、荒れ狂う海上を小舟でどんぶらこ。ムドー様の居城を目指し、ひたすら西へと突き進んでいるところです。

 しかしご覧の通り、天気は生憎の大嵐。まるで今の私の気分を表すかのごとく大荒れです。

 

「ぬぐうううっ、波のせいで全く進まん! ああもうっ、なぜに魔王と名の付く者は僻地やら危険な場所やらに住みたがるのだ! 変な趣味でもあるのか! 家なら都心の一等地に建てればいいではないか!」

 

 誰もいないのを良いことに再び不敬な発言を繰り返す。絶対の上位者に対しあるまじき行為だが、今は自重する気も起きない。呼び出しておいて自分で来いとか言うもんだから、なけなしの金で小舟を買う破目になったのだ。なんと手痛い出費だろうか。

 

「だいたい侵攻で成果を上げていると言うが、それって全部部下の功績だろ! 本人は居城で踏ん反り返ってるだけだろ! いつも肘掛けに腕ついて陰気な笑い浮かべおって! カッコいいとでも思っているのかこの引き篭もりども――ってぬわああああ!?」

 

 何度目かの大波により、ついに舟が転覆し大海原へと投げ出される。黒々としたその海水は、見た目通りとても冷たかった。

 ……ああ、こんな大しけの海を手漕ぎ舟で旅するなんて初めて。とても貴重な体験だ。その上さらに海水浴までやらせてくれるとは……、なんて太っ腹なんだ魔王軍。ほんと死ねばいいのに魔王軍。

 

「げほっ、えほっ。なんというブラック企業っ。社員を人とも思わぬこの所業、決して許すまじ! 少しは教会と神父様を見習えええ!」

 

 散らばった荷物を必死で掻き集めながら、私は今朝方退職したホワイトな職場へと想いを馳せたのである。

 

 

 

 

 

――――

 

 

 

 

 

【本日未明、教会内食堂にて】

 

「神父様、少々暇をいただきたいのだが……」

「はい? どうしたんですか、突然」

 

 突如現れた『魔王の使い』に出頭命令を伝えられた翌朝、つまりは今朝、私は上司である神父様に退職を願い出ていた。

 当然ながらそれには怪訝な反応が返って来たわけだが、言い訳については問題ない。あれから人間界の資料を読み込み、徹夜でカバーストーリーを考えたのだ(不安で眠れなかったとも言う)。巧妙に真実を織り交ぜた逃亡物語をどうぞご覧あれ。

 

「実は私……、故郷では大企業勤めのエリート社員だったのだ」

「…………」

 

 ……あかん、早速躓いた。『何言ってんだコイツ』って顔されてる。

 

「ほ、本当なのだぞ? 本社の主力として、毎日バリバリ働いていたのだ」

「へえ、そうなんですか……」

「……ち、ちなみに職種は警備関係だ。重要施設の見回りや要人の護衛などを主にやっていた。社名はえっと……そう! ムーア商会!」

「…………」

 

 ……いかん、すごく疑わしそうだ。やはり『さらりーまん』は無理があったか?

 いやしかし、今更撤回するのは不自然、このまま一気に押し切る!

 

「だが職場環境が良くなかった。一匹狼だった私は、上司に疎まれ、同僚からハブられ、部下からは怖がられる、そんな悲しい人間(?)関係だったのだ」

「あ、それは本当っぽいですね」

 

 ちょっと、なんでそこはあっさり信じちゃうの? 私ってそんなに浮いてそうに見えるの? ……まさか今もそんな扱いじゃないよね?

 

「ゴ、ゴホン。で、ある日それに耐えられなくなった私は、就業時間にも拘わらず無断で帰宅。辞表も出さずに会社をバックれ、そのままの勢いで国まで飛び出した」

「ええぇ……」

「し、仕方ないではないか! 皆して私を蔑ろにするのだぞ? そりゃバックれたくもなろうというものだ!」

 

 だからその呆れた目やめてっ。最近神父様まで私の扱いが雑になっている気がするぞ。こんなに真面目に仕事しているのになぜなんだ。

 

「それでサンタ君。その件と暇乞いがどう関係するんです?」

「えっ、ああはい。……じ、実は昨日、派手に動いたせいで関係者に見つかってしまってな。えーと……、そう! こっちにいる支店長に私の居場所がバレたのだ。で、『そんなトコで何やってやがる、ちょっとツラ貸せや』と出頭命令が下されてしまい……」

「……なるほど。それでそちらに顔を出すため、職を辞したい……と」

「う、うむ、そういうことなのだ」

 

 なんとか辻褄を合わせ、事情説明は終了。

 冷や汗ダラダラな私の前で、神父様が顎に手を当て考え込む。やはり無理があっただろうか?

 

 だがしかし、馬鹿正直に全てを説明するわけにもいかん。むしろ今こうして話しているだけでもかなりのリスクがあるのだ。

 仮にこの場を同族に見られた場合、奴らが神父様に何をするか分からない。いや、神父様だけでない。下手をすると町の住民にも危害が及ぶ恐れがあった。

 ゆえに、多少怪しまれようが、さっさとこの町を出てしまうのが正解なのだ。

 

「……では神父様、今日までいろいろ世話になった! これにて御免!」

「あ、ちょっとサンタ君!」

「止めてくれるな神父様! これが互いにとって最善なのだ!」

 

 制止する神父様の声を泣く泣く振り切り、私はそのまま食堂を飛び出そうとした。しかし――

 

「「師匠!」」

「っ!?  お、お前たち……」

 

 扉を開け放った私の目の前にいたのは、こんな時間から教会に来ていた弟子たち――ハッサンとアマンダだった。どうやら今の話を聞いていたらしく、二人揃って悲痛な表情を浮かべている。

 

「そんな場所に戻ることないぜ、師匠! ここがあんたの居場所だろ!」

「そうよ、ずっとここにいればいいじゃない! お願い行かないで!」

「ハッサン、アマンダ……」

 

 両腕に縋りつき必死で私を引き止めてくれる二人。その姿に一瞬心を動かされそうになるが、ここはグッと堪えなければならない。

 

「っ……ありがとう、二人とも。……心配しなくても私は大丈夫だ。きっといつか、また会えるさ」

 

 精一杯の笑顔を浮かべて二人を見遣る。彼らの願いに応えられないのは残念だが、その気持ちだけはありがたく受け取っておこう。

 ふっ、やはり本来は優しい子どもたちだったのだな。師匠としてとても嬉し――

 

「いや、明日からの俺の修行どうすんだよ! せめて代わりを用意しろよ! その後ならどこ行ってもいいからさあ!」

「サンドバッグがいなくなったら困るじゃない! 失恋の痛み舐めないでよ! いなくなるならせめて今殴らせなさいよ!」

「ちくしょう! やっぱりロクでもないガキ共だった!!」

 

 ちょっと良い空気になったと思ったらすぐこれだ! 私の感動を返せ!

 精神的ダメージを振り払うように、私は二人をブンブン振り回した。

 が、あのときと同じで全く離れない。ばくれつけんでブン回しているのに、驚異的な握力で張り付いてきよる。おのれ、こんなところで成長を見せるんじゃない!

 

「サンタくーん! はぁ、はぁっ……。きゅ、急に走り出すから驚きましたよ」

「おお、神父様!」

 

 食堂の入口で三人ぎゃいぎゃい騒いでいると、これまたあのときと同じように神父様が追い付いて来た。不義理な私をそんなに必死で引き止めて下さるとは、なんと優しい人だろうか。

 

「やはり私の味方はあなただけだ。さあさあ、どうかこいつらにも言ってやってほし――」

「あ、サンタ君、これどうぞ」

「…………はい?」

 

 その優しさに感じ入っていると、彼は唐突に一枚の紙を差し出してきた。

 何やら小さな文字列が書かれたペラい紙切れ。一体何の餞別だろうかと引っくり返してみるとそこには、

 

 

――ご請求金額 10000ゴールド。

 

 

「………………なんぞこれ?」

「何って、忘れたんですか? 以前、カジノ用にお給料を前借りしたじゃないですか。『もう少しでドラゴンシールドが手に入るんだー』って。お金が入ったらちゃんと返してくださいね?」

「…………」

 

 ……餞別どころか、取り立てだった。

 

「うわー、師匠借金して賭け事やってたのか。引くわー」

「前の職場から声がかかってむしろ良かったんじゃないの? いい機会だし、死ぬ気で稼いできなさいよ」

 

 ますます辛辣な子ども二人の発言も、今は耳に入らない。

 

「…………あの、神父様? ……心配で引き止めて下さったのでは?」

「あっはっは、まさか。君ならどんな場所でも元気にやっていけるでしょう? 心配なんてしませんよ」

「だな。犯罪者の町でも大丈夫そうだ」

「そうね。むしろ親玉倒してトップに立ってそう」

 

 ……皆すごく良い笑顔。欠片も心配していない。嬉し過ぎて震えそう。

 そんな私を見ながら、最後に神父様はにこやかに言い放った。

 

「ではサンタ君、新天地でも頑張ってきてくださいね」

「「いってらっしゃ~い」」

 

 ……。

 …………。

 ………………。

 

「……だ、誰かまともに引き止めてくれよおおお!」

 

 

 こうして私は涙ながらに仲間と別れ、サンマリーノを旅立ったのだ――。

 

 

 

 

――――

 

 

 

 

「…………」

 

 あれえ、おかしいっ、あっちでも扱いが雑だった! 一人たりとも心配してくれてない!

 しかもまさか、あの優しい神父様が無慈悲に借金を取り立ててくるなんて!(当然)

 

「ちくしょう! 人間界でも魔界でも、結局外れ者は虐げられるのか! 私の安住の地なんて、この世のどこにもなかったと言うのか! 私は……私は一体どうすればいいのだあああばばば!? げっふ! ま、また高波がああぶぶぶ!」

 

 再び襲ってきた大波に飲み込まれ、私の体は海の底へ沈んでいった。

 

 ……だんだんと遠のいていく海面を見上げながら、ふと一瞬、『このまま行方不明になってもいいんじゃないか?』という思いが首をもたげてきた。

 どうせどこに行っても扱い悪いんだろうし、いっそ溺れ死んだことにして逃げてやろうか――と。

 

 ………………。

 

(――い、いいや駄目だ! そんなので誤魔化せるはずがない! そもそも高位魔族がこの程度で死ぬわけないしっ、逃げ出したことが丸分かりだ!)

 

 即座にその思考を打ち消し、海面へ飛び出る。

 何を馬鹿なことを考えているのか。そんなことになったが最後、本格的に魔王軍に指名手配され、平穏な生活など夢のまた夢になってしまう。

 弱気になっている場合ではなかった。とにかく今は一刻も早くムドー様にお目通りし、申し開きに全力を尽くすのみ。

 それしか今を生き残る道はないのだ! いやほんとマジで!

 

「くっそおおお、私は諦めんぞ! 平和で優しい世界に辿り着くまで、絶対に死んでたまるかあああ!!」

 

 我武者羅に吠える顔を流れ落ちるは雨か、海水か、それとも他の何かか。

 顔中を水分で濡らした私は、引っくり返った舟をびーと板代わりに、全力でバタ足を開始したのである。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「ぜぇ、ぜぇ。や、やっと着いた……。ぶえっくしょい!」

 

 大しけの中を往くこと10時間。ムドーの島(敬称略)まで根性で泳ぎ切った私は、疲労した身体を引きずりながらなんとか城門前まで辿り着いていた。

 野良モンスターを蹴散らしつつノンストップで泳ぎ続けたもんだから、体はもう完全にフラッフラである。……ああ、水を吸ったマントがとても重い。早いとこチェックインして休みたい。

 というわけで、さっきからこちらをチラチラ覗っている門番にさっさと声をかけよう。

 

「げっほ、げっほ……。ゴホンッ、あー、ムドー様から呼び出されているサタンジェネラル1182号という者だが、話は通っているか?」

「えっ! ……あ、その……か、確認してきますので少々お待ちを!」

 

 扉横に立っていた『ぬけがらへい』は一瞬驚いた後、焦った様子で駆け出していった。

 

 …………あれは多分、私が不審者かどうかで迷っていたな。『こんなところに人間や逸れモンスターが来るわけはない。しかしさすがにあれは怪し過ぎる、どうしよう……』と。

 ふっ、構わん構わん、気にするな。今更その程度の扱いで怒ったりせぬよ。なにせ私は上司や弟子に全く引き止めてもらえない、悲しく憐れなロンリーウルフ(無職、借金持ち)なのだからな。

 

「けっ、まったく冷たい奴らだ! ヘックション!」

 

 ――と、そんな風にやさぐれながら衣服の水気を絞ること数分、

 

「お、お待たせしました、このまま真っ直ぐお進みください。一番奥の部屋にムドー様がいらっしゃいますので……」

「うむ、了解した。では失礼」

 

 戻ってきた門番の言葉に従い、ついに私は城の中へ足を踏み入れた。後ろでガチャンと城門が閉じられる音が聞こえ、激しい雨音と雷鳴が遠くなる。

 コツコツと自分の足音だけが反響する静寂の中、ようやく目的地に着いたことを実感して肩の力が少し抜ける。

 ……実際は伏魔殿の中に入ってしまったわけで全く気など抜けないのだが、どの道ここまで来れば腹を括るしかないのだ。できるだけリラックスしておく方が良いだろう。

 

 深呼吸を一つ挟み、体の節々を解しながら大廊下を進んでいく。すると徐々に、周りへ目をやる余裕も出てきた。

 

 このムドー城、外から見るとオドロオドロしい雰囲気だったが、意外なことに内観はまともだった。壁はどこも綺麗に磨かれており、床には上等な絨毯が整然と敷き詰められている。内装デザインもシンプルに美しく、悪くない。普通に暮らす分にはむしろ好ましい部類だった。

 

 そして何より素晴らしいのは、魔物の領域なのに誰も襲い掛かって来ない点である。これが大魔王城ならばすでに三回は襲撃されているところだが、ここの連中は先ほどから廊下の端に寄って頭を下げるだけだ。

 

「あ、あれがムドー様に呼ばれたという……」

「おい、あまりジロジロ見過ぎるなっ。……し、失礼しました!」

 

 今擦れ違った二匹も、目が合うと慌てて一礼して去っていった。門番のときと同様、先ほどから皆似たような反応が続いてばかりだ。それらを見ていてふと思い出す。

 ……ああ、そういえばそうだった。最近の扱いで忘れていたが、私って選ばれしエリート魔族だった。子どもにはよく舐められるけど、一般の魔物からは崇拝されるような高位の存在だったのだ。

 

 その証拠に、ほら今も――

 

「……誰だ、あれ? 見慣れない顔だな」

「おい、不躾な視線を送るな。ありゃ相当な実力者だぞ」

「ムドー様が直接招いた凄腕の戦士らしいぞ。なんでも、ここより遥かに高レベルの激戦区から呼び寄せたとか……」

 

 尊敬の眼差し、手放しの賞賛、ものすごい高評価。久方ぶりにこんな丁重な扱いを受け、油断すると頬が緩んでしまいそう。

 

「すげえ威圧感だ。俺たちとは段違いの実力ってわけか」

「あの顔、デュラン様にそっくりだぜ。どういう立場の方なんだ?」

「血縁者なんじゃねえか? 魔王様の息子……とか?」

「ってことはやっぱり、実力も相当高いんだろうぜ。へへ、こりゃレイドック攻略も時間の問題だな」

 

「…………」

 

 ……フ、フフフフ。

 いかんどうしよう、なんだか良い気分になってきた。気を抜いてる場合じゃないのはわかっているが、いろいろと酷い目に遭った後だけにこの崇拝ぶりには喜びを禁じ得ない。

 合わせて思考もだんだんと楽観的になっていき、ついにはこんな考えまで浮かんできてしまった。

 すなわち、

 

「……果たして私が呼び出された理由は、本当に査問なのだろうか?」

 

 

 だってよくよく思い返してみれば、昨日の襲撃は手抜き気味だった気がするのだ。

 ムドー様が本気でサンマリーノを攻め滅ぼすつもりだったならば、町周辺の雑魚モンスターなど使わずにこの城の兵を送り込んでいたはず。なのにそれをせず、住民のレベルに合わせた魔物を使役していたということは……。

 

 つまりこれはあれだ、魔王様方がよくやる『お遊び』だったのだ。

 相手がギリギリ切り抜けられるかどうかの危機を吹っ掛け、人間が右往左往する様を見て楽しむという、迷惑極まりない暇潰しだったというオチ。

 ならば、それを少々邪魔されたぐらいで大した怒りなど感じまい。

 

 この呼び出しの意図も、『久々に狭間の世界の奴がいたからちょっと会ってみよう』、とかそういうことだったのではないか? それか『いい戦力になりそうだからとりあえず仲間に加えておこう』、とか。

 

 …………。

 

 ……うむ、ここの連中の反応的にも、なんとなくそんな気がしてきたぞ。なにせ私ときたら、激戦区の狭間の世界においてすら一目置かれる戦士だったからな。

 元々強いサタンジェネラル種であることに加え、魔物には珍しく真面目に修行してきたから、同族の中でも頭二つは抜けているのだ。

 数値にしてみるとだいたいこんな感じ。

 

 

 悪魔将軍サンタ

 HP 1500

 MP  800

 攻撃  700

 守備  400

 速さ  400

 

 

 ……どうだ、この強さ。長年の経験に基づいて強さを数値化してみたのだが、中々のものだろう?

 一般の魔物の場合、強いやつでもギリギリ三桁に届くかどうかなのだ。それを考えれば私がどれほどの高みにいるか分かるだろう。大魔王城で順位付けしたとしてもかなりの上位、ボス級といっても過言ではない腕前なのだ。

 

「ふっ、こうして自分の強さを再確認してみると、なんだか本当に落ち着いてきたな」

 

 今回の呼び出しがもし本当に処罰や粛清だったとしても、この戦力なら一方的に殺されるということはあるまい。……いや、ひょっとすると勝てる可能性すらあるかもしれんぞ。あの方たち普段から引き篭もっていて、いろいろナマってそうだしな。

 

「ふはは、そう考えれば焦る必要もなかったかもしれんな。――そうさ、私は本社勤務のエリートサタンジェネラル、支社長風情がなんぼのもんじゃい!」

 

 そんな根拠のない自信とともに、私は辿り着いた玉座の間を勢いよく開け放ったのである。

 

 ……そして、

 

 

 

 魔王ムドー

 HP 9000

 MP  無限

 攻撃 1150

 守備 1050

 速さ  470

 

 

『さて1182号よ、何か申し開きがあるなら聞こうか?』

「すみませんでしたああああ!!!!」

 

 

 その場で全力で土下座した。

 

 

 

 

 

 




 
 原作通りだと『中ボス<終盤の雑魚』現象が起きてしまうため、本作のムドー様にはかなり強くなってもらいました。ステータスは第1・第2形態の良いとこ取り×10倍、使用技は1~2段階強化、という清々しいまでの厨設定です。
 少々やり過ぎた感もありますが、仮にも『魔王』を名乗るのだからこれくらいはあっても良いかなと……。
 
 サンタの方は通常のサタンジェネラルの2~3倍くらい。全体で見れば十分強いけど、最強には一歩及ばないという立ち位置です。





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