大空を陰から支える蜃気楼   作:itigo_miruku121

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黒曜編
大空を陰から支える蜃気楼 黒曜編 ~1話~


幻覚能力で不良どもを対峙してから一週間が経過した。

その一週間は俺やツナの周囲の環境に大きな変化をもたらした

 

まずは俺、清水健人のことについて語ろう。

俺はその間にこの能力をいろんなところで実験し、この能力についての理解を深めることができた。そして、練度も上がったのか無機物を幻覚で作り上げたり、新たに三つのことができるようにもなっていた。

 

 

まず一つはその幻覚に実体や言語能力を持たせ、人間と違和感なく会話させること。

これは学校の教師を相手に、実体と言語能力を持たせた俺自身の幻覚を会話させる実験を何度も繰り返し行うことで習得した。

この実態を持った幻覚を俺は「有幻覚」と名付けた。

 

 

そして、もう一つは俺以外の人間に俺を俺以外の誰かだと誤認させること。これは体格や性別が違う人間に擬態しても誤認させることができた。中学生にもなって、公園で遊ぶ小学生の群れに混じるのは少し恥ずかしかったが、それに相応しい収穫は得ることができた。

 

 

そして三つめは、自分が作った幻覚と視覚や嗅覚、聴覚といった感覚を共有したり、幻覚に嵌った相手の感覚を奪い、別の何かにリンクさせたり共有すること。

これはホテルの一室に置いてきた幻覚と視覚を共有したり、空を飛ぶ鳥の視界を川を泳ぐ魚にリンクさせたりして実験をした。さすがに自分以外の人間の感覚を奪ったりする非道な実験は行っていないが、自分の視覚を空を飛ぶ鳥とリンクすることができたので、おそらくできるのだろう。

 

 

清水「あの胡散臭い男は確か・・『俺に名前を与える者を俺が支える限り、そのものは俺の唯一の味方になってくれるであろう』とか言ってたよな……。つまりこれはそのための力ってことか」

 

 

清水(俺に名前を与えた人物……すなわち俺に名前を教えてくれた人物。前世で繰り返したあの不毛な問いに明確な答えを返した人物)

 

 

清水「・・・ツナ・・か」

 

 

あの胡散臭い男の言う通りだとするなら、この力はツナを支える限り無くならないということなのだろう。それ以外に使用した場合どうなるかは考えないことにした。

 

 

清水「まぁ、俺は本来この世界に存在しない人物だからな。この世界で富を得ても意味がない。それなら、俺の恩人のために使った方が何倍もマシだろう」

 

 

俺はそう結論づけると、早速ツナの周囲で起きているある問題を調べるためにホテルの部屋を出た。

 

 

次に、ツナのことについて語ろう。ツナの周囲には個性的な人物が多々集まるようになり、あいつの周りは常に賑やかになっていた

 

 

ある日、あいつの家の近くを通り過ぎた時は、いかにも高級そうな外車が数台家の前に駐車されていて、玄関の前には黒いスーツを身にまとい、屈強な肉体と厳つい顔をした男たちが大勢立っていた。

 

 

俺はそんな男の中にいた、メガネをかけ口ひげがある一人の男と目が合ってしまった。

男は俺に話しかけてきたが、俺がリボーンを知っていることと、ツナのクラスメイトであることを知ると、厳格な表情をやわらげ、歯を白く輝かせて笑いながら、『ほう・・ボンゴレのクラスメイトか。こんな厳つい顔したおっさんどもが並んでて怖がらせちまったな。』と初対面の俺に対し頭を下げた。

 

 

この他にも時折、ツナの家がある方向から爆発音が聞こえたり、パンツ一丁のツナが牛柄のシャツの男を抱えながら屋根の上を全力疾走したり、ツナの家の敷地に落ちている落ち葉や木の枝だけ、まるでそこが無重力であるかのようにフワフワ浮いていたり……

 

 

なんとも不思議なことが頻発していた。このことをツナに尋ねると慌てた顔で「な、何でもないから!大丈夫!!心配しなくていいから!!」と返された。その後、疲れ切った表情で視線を斜め下に逸らすあたり、とても疲れることが起きているのだろう。

 

 

そんな最中だった。俺やツナ達並中の生徒全員を不安の渦に引きずり込む事件が発覚したのは。

 

 

清水「また並中生がやられたのか…。これで何人目だ?並中生徒連続襲撃事件の被害者」

 

 

数日前から並盛市内の病院に何者かの手によって重傷を負わされた並中の生徒が立て続けに搬送されるという事件が起きていた。その被害は次々と拡大していき、ついには並中生徒を守る最後の砦である風紀委員にまで及んだ。

 

 

ツナ「やばいよやばいよ!風紀委員までやられちゃったよ!!どうすんだよ!!」

 

 

清水「あの風紀委員が手も足も出なかったって聞いたぜ?よっぽど強いんだろうな、犯人は」

 

 

ツナ「俺は狙われないよな?…強くもないし、そもそも誰かに恨まれる理由もないし…」

 

 

清水「でも一般生徒から風紀委員まで並中の生徒が無差別に襲われてるんだろ?ないとは言い切れないんじゃないか?」

 

 

リボーン「人間、どこで恨みを買ってるか。わかんねぇからな」

 

 

ツナ「ヒィィィィ!怖いこと言うなって二人とも!!」

 

 

清水「でも、雲雀さんはもう犯人を突き止めたらしいぜ?」

 

 

ツナ「さすが雲雀さんだ!後は頼みます!!神様!仏様!雲雀様!!」

 

 

手を重ね合わせ必死に懇願するツナをよそに、俺とリボーンはお互いに何かを考えているのか黙っていた。リボーンが何を考えているか俺には読めなかったが、俺は天秤の男が言ったことを思い出し、行動に出た

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

俺は翌日、ホテルをチェックアウトすると一人で街に出た。

目的地はないが、目的はある。それは「襲撃犯に俺を襲わせること」だ。

襲撃犯の狙いが何なのか特定はできないが、並中の生徒ばかりが襲われていることから狙いが並中の生徒の誰かであることは間違いないだろう。

 

 

そして、並中の生徒に危害を加える場合最も大きな障害となるのが風紀委員の存在だ。

委員長である雲雀恭弥はもちろん、風紀委員が守ってくれるだけで並中の生徒は安心して学校生活を送ることができる。また、先日の不良の一件から考えて、風紀委員の存在は学校内以外にも影響を及ぼすほど有名なことが分かる。

 

 

清水「とりあえず風紀委員に擬態するか・・。で、日が暮れても出歩いていればいずれ向こうからくるだろう」

 

 

俺は自分の幻覚能力で自分を風紀委員に擬態し、まるで町内の見回りをしているように出歩いた。厳格な顔つきをするのは苦手だが、前にツナの家で見たあの眼鏡と口髭の男の顔を思い出しそれに近づけるよう努力した。

 

 

それから数時間が経過しただろう・・太陽は沈み町は月明りと電灯の光に包まれた。

俺は敢えて光源が多い繁華街から、光源と人通りの少ない道に外れ獲物を待った。

 

 

???「ねぇ、あんたって並中の風紀委員?」

 

 

光源が少ない道を歩いて十数分、ついに餌に獲物が掛かった。

 

 

清水「そうだが・・誰だ?お前は」

 

 

???「俺?俺はねぇ…隣町の喧嘩好きな中学生れーっす」

 

 

俺の前に現れた男は緑色の制服を着用し、獣のような顔をしていた。その男はどこか犬を彷彿とさせる雰囲気をしていたが、同時に転生前で嫌になるほど体感した冷たくて鋭い殺気も放っていた。少なくともそれは普通の喧嘩が好きな中学生が放てるものではなかった。

 

 

清水「俺はお前みたいなのを相手にしているほど暇じゃないんだ。わかったら帰れ」

 

 

???「そんなつれないころ言わずにさ喧嘩しようよー」

 

 

清水「うるさい、どうしてもやりあいたかったら、俺をそうさせるだけの理由を言ってみせろ!!」

 

 

???「はーい、それじゃあ正直に白状しまーす」

 

 

???「俺は今あんたの中学を騒がせている連続襲撃事件の犯人の一人れーっす!」

 

 

清水(早速当たりか幸先がいいな。でもいきなりってことは犯人グループは少人数なのか?)

 

 

???「あれれ?どうしちゃったの?もしかして、怒り心頭で何も言えなくなったとか?」

 

 

清水(コイツ・・もう少し泳がせればもっと情報を吐かせられるな)

 

 

清水「……わかった。その喧嘩買ってやる。だが始める前に一つ聞かせろ…なぜ並中生徒ばかりを狙う」

 

 

???「本当の狙いは別にあるんだけどねー…それに辿り着くには並中が一番手っ取り早いってだけ。所謂通過点ってやつ?」

 

 

???「それじゃあ今度は俺から質問!…‥今からやられるあんたがそんなこと聞いてどうすんの?」

 

 

清水「フっ・・俺を倒せたら教えてやる・・・・・いくぞっ!」

 

 

???「うっひょー!俺っちそういうの大好き!!あんた気に入ったよ!!」

 

 

清水(コイツ・・やっぱり普通の学生じゃねぇ…殺気といい、今の攻撃といい・・プロの殺し屋(ヒットマン)だ。はぁ・・なんで俺は転生してまで殺し屋(ヒットマン)を相手にしなきゃいけねぇんだろうな)

 

 

その後俺は当初の予定通りわざと負けた。その男の攻撃の一撃一撃は風を切る音がするほど速く、鋭く狙いも正確で常人ではまず認識すらできないものだった。

だが俺は転生前の世界で培った様々な「経験」があったので、致命傷になりそうなものだけを避けた。

 

 

???「弱ぇ~弱ぇ~…あれだけ大口叩いたから少しはやるかと思ったのに…。これがうわさに名高い並盛中の風紀委員かよ……おそるるにたらぁ」

 

 

獣風の男は俺が手を抜いたとは露ほどにも考えず、壊れた懐中時計を仰向けに倒れこむ俺の胸板に置き何処かへと去っていった。

 

 

男の気配が消えた後、俺は有幻覚に救急車を呼ばせ病院へと搬送された。様々な検査をされたが、それは自分の体を幻覚で騙し、実際に症状がでたと体に誤認させることでやり過ごし、しばらくの間安静が言い渡された。

致命傷になりかねない攻撃は全て避けたので、そんなに重症ではないのだが…

 

 

搬送されてから数時間後、検査の休憩時間に飛ばしておいた視覚だけを共有した鳥の幻覚が、昨日あの男が着ていた制服と同じ制服を着た人間が集結している場所を発見した。

俺はすぐさま今の自分と同じ姿の有幻覚を代わりにベットの上に寝かせ、自分は姿を消し窓から病院外へと飛び出した。

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

そこは黒曜ヘルシーランドという既に廃墟と化した娯楽施設だった。錆びれて殆ど読めなくなった案内板から読み取れる部分を読み取ると、ここは昔、植物庭園やガラス張りの当時としては全く新しい建物が建っており、とても人気を博したという。

だが今はそんな面影はなく、誰も近寄ろうとしない忘れ去られた娯楽施設となっていた。

 

 

柵を乗り越え中に侵入した俺は、一番大きな建物に続く道にいたヤモリを幻覚で操り、視覚と聴覚を共有しその建物に侵入させた。

 

 

その建物の最上階、窓際の部屋には三人の男がいた。

 

 

一人目は三人用のソファに座り目の前で跪く男を、不気味で怪しく嗤いながら見つめる男

 

 

二人目はソファに座る男を恨めしい目で睨みながら、動けないのか跪き細かく震える男

 

 

そして、三人目は部屋の片隅で背丈に似合わぬ大きな本を抱えながら、光の消えた目でその二人を見つめる男の子

 

 

清水(跪いているのは…雲雀さんか……。まぁ、相手はプロの殺し屋(ヒットマン)グループのボスだからな…一般の学生じゃ勝てねぇよ。雲雀さんなら経験を積めば何とかなるだろうが、今じゃ無理だ。で、ソファに座っている男が今回の黒幕か…あの様子だと雲雀さんが来るのも計画のうちだな。そしてその計画の目的は雲雀さんでもなさそうだ。)

 

 

清水(そして一番気になるのはあの男の子だ。背丈に似合わない本を持っているのもそうだが、雲雀さんの味方でもなさそうだし、かといって黒幕の仲間でもなさそうだしな……。一番可能性が高いとこで人質ってところだろうが……彼を攫ったとして、困るのは誰だ?)

 

 

雲雀「‥‥…クッ」

 

 

黒幕「君が喧嘩を売ったあの男の正体はトライデント・シャマル。僕も驚きました、まさか超一流の殺し屋(ヒットマン)と呼ばれる男がこちらに来ているなんてねぇ」

 

 

雲雀「……何のこと」

 

 

黒幕「彼の得意技はね?不治の病原菌を持つ蚊を操り敵を病死させる。『トライデント・モスキート』」

 

 

雲雀「ッ!?」

 

 

黒幕「君が『トライデント・モスキート』で感染したのは桜クラ病。桜に囲まれると立っていられなくなるという病。君のために急いで用意したんですよ?この・・美しい桜をね…」

 

 

雲雀「ッッ!!?」

 

 

清水(桜なんてどこにもない。でも雲雀さんの様子を見るに、黒幕の言うことは真実で、雲雀さんには桜が見えている……。俺と同じ術師か……しかも[[rb:殺し屋 > ヒットマン]]という経歴まで同じ…)

 

 

俺はヤモリのとの間隔共有を解除し、幻覚で空間を作り出し、そこに一人で立て籠もり考えを整理することにした。

 

 

清水(ああいうタイプは人を嬲り殺すのが好きなタイプだ。そう考えるとあの男の子の人質の用途も同じだろう……。あの子で誰かを釣り、つられた人物を嬲り殺す。ああいう子供を人質にした場合一番効果があるのはその子の親だ。だが、一般家庭なら基本的には殺し屋(ヒットマン)に狙われることはない。誰かに依頼されれば別だが・・あの男は自分の意志で人を殺すタイプの人間だ。誰かの指図に則り人を殺すくらいなら、まずそいつを殺すだろう。)

 

 

清水(となると、あの男の子も特別な事情を抱えているという事。黒幕が殺し屋事情に精通していることから、あの子も裏社会の人間だろう。そして、この平和な並盛町で殺し屋事情に精通している人物…または家庭といえば………)

 

 

清水「狙いは・・・ツナか・・・。」

 

 

清水(ツナの横にいたあのスーツを着た赤ん坊・眼鏡をかけた口ひげのおっさんを中心に屈強な体格で荘厳な連中・そのおっさん連中に慕われるあの赤ん坊……。恐らくあの赤ん坊とおっさん連中は十中八九裏社会の住人だな。そしてツナは……裏社会のどこぞの組織の次期後継者……またはその候補ってところか)

 

 

清水「ツナの詳しい事情は今度あの赤ん坊か、ツナ本人から直接聞けばいい。次は標的がツナとして『黒幕がどうやってツナを苛め愉しむか』だが…」

 

 

清水(ツナを精神的に追い詰める場合、まず一番有効なのはあいつの家族を狙うことだ。父親は今不在らしいから、母親だな。だが、それはまずしないだろう。母親はツナとは違い『完全なる一般人』だ。そして裏社会的に見ても『後継者、または候補の母親』だからな。もし消息不明になれば、組織が全力を挙げて探すだろう。最悪『ツナが後継者争いから降りる』なんてことになりかねない。そうなれば組織的には大問題だ。それに黒幕も裏社会の組織に喧嘩を売っているが、いきなり組織全体を相手にするような暴挙はしないだろう。もし俺がアイツなら、少しずつ瓦解させていく。)

 

 

清水(では、両親以外でツナが多大な精神的ダメージを負う人物は誰だ?それも殺すのが比較的簡単な人物………。)

 

 

清水(あの赤ん坊の知り合いはダメだ。あのかかと落としの威力から考えて彼を含む全員が一定以上の戦闘能力を持っているだろう。となると…ツナ個人と『あの赤ん坊が来る前から繋がり』を持っていた人物。・・ダメだ・・・思いつかねぇ……)

 

 

ピリリリピリリリ!!

 

 

清水「!!」

 

 

その時、ポケットにしまっていた携帯が着信を受け、着信音がけたたましく鳴り響いた。

その画面に映し出されていた番号は、俺が今最も連絡を取りたいと望んでいた沢田綱吉その人だった―――

 

 

ツナ『もしもし!清水君!?今、電話大丈夫??』

 

 

清水「ツナか、ちょうどよかった。俺もお前にききたいこt」

 

 

ツナ『京子ちゃんが!京子ちゃんのお兄さんがやられちゃったよ!!』

 

 

清水「ちょ、ちょっと落ち着け。冷静にならねぇと伝えたいことも伝えられないぞ?」

 

 

ツナ『ああ‥うん…ごめん。』

 

 

清水「とりあえず、お前の話からだな。深呼吸を二、三回して落ち着いてから話せ。聞き終わるまで切らねぇから」

 

 

ツナ『すぅ・・はぁ・・・。スゥ・・・ハァ・・・。よし、えっとね__』

 

 

ツナの話を要約するとこういう事だった。

今日の学校を終え、帰路に着く途中で血相を変えて走る笹川京子を発見。事情をきくと自分の兄が例の襲撃事件の被害に遭ったとのこと。

彼女を落ち着かせるため、共に笹川兄の病室へとついていき安否を確認する。

その後は、泣きじゃくる笹川京子を自分と兄の二人で慰め、気絶した彼女を兄と同じ病室のソファに寝かせ、自分は院内の公衆電話から急いで俺に電話をかけてきた。

 

 

清水「……なぁ、ツナ。お前にききたいことがあるんだ」

 

 

ツナ『何かな清水君』

 

 

清水「その笹川京子って女とお前の二人に共通してる友人っているか?」

 

 

ツナ『いるよ』

 

 

清水「誰だ」

 

 

ツナ『ハル・・三浦ハル。名門緑中の生徒でよく京子ちゃんと一緒にケーキを買いに行ってる』

 

 

清水「そうか・・わかった。ありがとう」

 

 

ツナ『別にいいけど・・そんなこと聞いてどうしたの?』

 

 

清水「いや、何でもない。気にするな。また明日、学校で会おうな。ツナ」ピッ

 

 

俺はそう伝えると通話を切り、今の電話を踏まえての考えを整理し、結論を出した。

 

 

清水(今のでハッキリした。黒幕の狙いはツナだ。そして黒幕・またはその仲間が狙う可能性のある、ツナに多大な精神ダメージを負わせることができる戦闘能力を持たない人間は『笹川京子』と『三浦ハル』この二人だ。三浦ハルは赤ん坊と出会ってから知り合った人物みたいだが、『笹川京子と一番仲がいい』という事が重要だ。彼女自身に被害が及ばなくてもさっきの慌てようだからな。これがもし、『彼女本人に危害が及び』なおかつ『彼女の大親友』も被害を受ければそのダメージは計り知れないものになる)

 

 

清水(加害者が京子に『ツナのせいでこうなった。あなたやあなたの友人が傷ついたのは全て沢田綱吉が悪いのですよ』なんて言えば…俺や赤ん坊みたいな裏社会の住人ならともかく、表社会に住む普通の女子中学生には耐えきれない。必ず狂人になるか、自殺する。最悪の場合、ツナを殺し、笹川京子の一族が孫の代まで『ツナを後継者にしようとしている組織に消されてしまう』場合もある。そうなれば誰も救われない。裏社会の闇に呑まれた被害者が増えるだけだ)

 

 

清水(そうはさせねぇ…。笹川京子も、三浦ハルも、…ツナの大切なものは…俺が守る。例え俺の存在が嘘偽りの物だとしても、『ツナの大切なものを守った』という事実だけは遺す!!)

 

 

結論を出し終わると同時に、俺の体内では不思議な現象が起きた。

 

 

右半身は初めて幻覚能力を使用した時と同じ、あの藍色の炎がすべてを燃やし尽くす勢いで燃え盛り、汗腺からは多量の汗が排出されていた。

 

 

一方、左半身は右半身とは逆に、氷のように冷たくそこはまるで絶対零度の環境下で、在るものすべてを凍らせるかのようだった。その感覚は転生前の世界で人を殺していくうちに味わった、極寒の冬の海溝に身を投じ、沈んでいく感覚に似ていた。

 

 

清水(どんな事情かしらねぇが、俺に名前を付けてくれた恩人・・ツナの大切なものを蔑ろにするやつはたとえ神でも赦さねえ……)

 

 

清水「かかってこい[[rb:ヒットマン > 殺し屋]]。[[rb:殺し屋 > ヒットマン]]の本当の恐ろしさってやつ…教えてやるよ」

 

 

黒曜編 第一話

 

   終




語彙力の乏しさとそれからくる表現力の貧しさが恨めしい今日この頃

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