大空を陰から支える蜃気楼   作:itigo_miruku121

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今回で黒曜編は半分が終わりました。


大空を陰から支える蜃気楼 黒曜編 ~2話~

幻術を解除し幻術空間を消した俺は、黒曜ランドから笹川京子の兄が運ばれたという病院に向かった。

 

 

清水「ツナから運ばれた病院が何処かはきいていないが、今朝いたあの病院でほぼ間違いないだろう」

 

 

受付で笹川京子の兄がいる病室の番号を知り、その病室のドアを叩くと中から男の声で開いているぞと返事が返ってきた。

 

 

清水「失礼します」

 

 

笹川兄「ん?・・見ない顔だな。誰だ?」

 

 

清水「初めまして笹川先輩。俺はツナと・・沢田綱吉と同じクラスの清水健人といいます」

 

 

笹川兄「おお、沢田のクラスメイトか!!」

 

 

ツナの名前を出すと笹川兄は見るからに興奮した。どうやらツナは彼とも何かあったようだ。

 

 

清水「動かなくていいですよ先輩、傷口が開きます。一応聞きますけど、大丈夫でしたか?」

 

 

笹川兄「ああ、骨を何本かやられたがな。あの黒曜中の制服を着た男は恐ろしく強かった・・この程度で済んだのは不幸中の幸いというものだろう」

 

 

清水「先輩……」

 

 

笹川兄「しかし……あのパンチは我が部に欲しかったぁぁぁぁ!」

 

 

清水(それほど酷くやられても落ち込む様子はあまりないか……こいつは強いな)

 

 

清水「ハァ……。ツナから電話である程度は聞きましたが妹さんは大丈夫でしたか?」

 

 

笹川兄「京子は……」

 

 

俺が笹川京子のことを話に出すと、笹川兄は先程までの明るい表情と声はどこへやら。陰鬱な顔つきになり、その声も元気がなくなっていた。それはまるで神に自らの罪を懺悔しているかのようだった。

 

 

笹川兄「京子には……このことを伝えていないんだ」

 

 

清水「誰かにやられたってことをですか?……どうして」

 

 

笹川兄「昔、俺はとある事件で大怪我を負ってな。それ以来、京子は俺が怪我をすることを極端に嫌うのだ」

 

 

清水「それじゃあ…適当に誤魔化したってことですか、妹さんには」

 

 

笹川兄「ああ、心苦しいがな。だが、それでいいんだ」

 

 

清水「それは・・なぜですか?」

 

 

笹川兄「沢田から聞いたかもしれんが、俺は並中ボクシング部の部長だ。これまでいろんな他校のボクシング部を倒してきた。そんな俺は当然いろんな奴から恨みをかっているだろう、今回のこともそれが原因の可能性もある。」

 

 

清水「もしそうなら・・なぜ先輩個人ではなく並中生徒全員を標的に…」

 

 

笹川兄「俺に適わないとわかっているから別の方法で俺を攻撃することにしたんだろう。俺だってボクシング馬鹿とはいえ並中生徒が無差別に傷つけられて頭に来ない程薄情な男でもないからな。雲雀は奴らを倒しに行ったらしいが、あの男は雲雀と同等かそれ以上の腕の持ち主だった。おそらく一筋縄ではいかないだろう。」

 

 

清水「自分を鍛えてリベンジするのではなく、誰かの力を借りて先輩に報復しに来たというわけですか…」

 

 

笹川兄「ああ、全くもって卑劣だ。同じ競技に身を投じていたとは思えん程にな。」

 

 

笹川兄「おっと、話が逸れてしまったな。どこまで話していた?」

 

 

清水「妹さんに真実を教えず、適当に誤魔化した。というところまでです」

 

 

笹川兄「そうだったな。ともかく京子が真実を知れば十中八九相手の事を知ろうとするだろう。そうすれば今度は京子が標的になってしまう……」

 

 

笹川兄「それだけは断じてあってはならない!!そんなことが万が一、たとえ那由他の彼方の一に匹敵する確率で会ったとしても、あってしまったとしたら…

 

 

清水「あったとしたら…どうしますか?」

 

 

笹川兄「俺はその男に対する怨嗟の念を抑えきれずに、たとえこの身が地獄の悪鬼に堕ちようとも必ずこの拳で殴殺してやる!!」

 

 

そう断言した笹川兄からは病床に伏す人間が発しているとは思えぬ気迫と殺気があり、その一言一句からは、それが嘘偽りのない宣言であることを悟らせる覚悟が感じ取れた。

 

 

清水(この気迫に殺気、それにこの覚悟。あの地獄でもこの年で放てる奴は限られていたぞ…。それほどまでに妹が大事か……羨ましいな。)

 

 

俺は妹のために・・俺にはいなかった家族のためにそこまでの殺気と覚悟ができる笹川兄を羨望の眼差しで見つめ、その気を悟らせまいと努めて押し殺して言葉を紡いだ

 

 

清水「そんなことをすれば…妹さんが悲しみますよ」

 

 

笹川兄「そうだ、そうなれば京子は必ず悲しみに暮れ、泣いてしまう。たとえ自分がどんなにひどい重傷を負っていようとも。自分より俺の身を案じて悲泣する」

 

 

清水「やさしいんですね…」

 

 

笹川兄「ああ、自慢の妹だ」

 

 

笹川兄「だがもしもそうなれば、俺は愚かな行動を愚直な思考で行ってしまった俺に対して・・何より京子を…二度と泣かせぬと誓った妹をまた泣かせてしまったことに対する悔悟に耐え切れず自ら命を絶ってしまうだろう」

 

 

清水「そんなことをすれば余計に妹さんが哀しむだけです!」

 

 

笹川兄「ああ、そうだ。そうすれば俺は自らの勝手な都合で永遠に京子を泣かせてしまうことになる。これは地獄に行っても償えない罪だろう」

 

 

そう話す笹川兄はどこか悟ったような遠い目をしていた。俺はそんな笹川兄にかける言葉見つからなかった。病室は暫くの間沈黙が支配した。

 

 

笹川兄「いかん、湿っぽい空気になってしまった。これでは治るものも治らないな。清水もすまんかったな、こんなくらい話に付き合わせてしまって」

 

 

清水「いえ・・元はといえば俺から切り出した話ですし。すみませんでした・・大怪我をされているのにこんな話をさせてしまって」

 

 

笹川兄「いいんだ、途中でやめようとしなかった俺にも非はある。ともかく気をつけろよ。あの連中は恐ろしく強いぞ。用心をした方がいい」

 

 

清水「はい、肝に銘じておきます」

 

 

笹川兄「それと……沢田のことを頼んだぞ」

 

 

清水「ツナのことですか?それはまたなぜ」

 

 

笹川兄「お前もそうだが、あいつは京子と同じクラスだ。それにあいつもお前も京子にとって大切な人だ。お前らが今回の一件で傷つくようなことになれば、京子はまた悲しんでしまう」

 

 

清水「…」

 

 

笹川兄「だから沢田が何かあいつができること以上の危険なことに首を突っ込みそうだったら、お前が止めてくれ」

 

 

清水「‥‥‥なぜ、俺にそれを頼むんですか?俺より強くてツナとも仲がいい人なら他にもいるでしょう」

 

 

笹川兄「確かにな、山本もタコヘッドも頼りになるが・・どうしてだろうな。これはお前にしか頼めないことだと俺は思うんだ」

 

 

清水「…」

 

 

笹川兄「タコヘッド…獄寺は沢田に付き従うことを第一と考えていることが多いからな。沢田を止めるというより、沢田がアイツを止めることの方が多いだろう」

 

 

清水「じゃあ山本は…」

 

 

笹川兄「あいつは能天気な性格でな、大抵のことをごっこ遊びだと思っている節がある。そんな奴には沢田を止めるなんて考えもしないだろう」

 

 

清水「‥‥」

 

 

笹川兄「それに、二人とも沢田のためなら自分の身を顧みないところがある。獄寺は特にそれが著しいが、山本も沢田のためなら野球を暫くできない体になることを厭わないだろう」

 

 

笹川兄「だから、お前しかいないんだ。沢田と関りがありなおかつ、あいつの言う事に対して反対の意見を述べられるお前しか…」

 

 

清水「……わかりました、その役目引き受けます。でもツナが俺の言う事に耳を貸さない場合もあるでしょうけどね」

 

 

笹川兄「それでも構わない。反対意見を言える人物。がいることが重要だからな。警告の意味を持つ道路標識になってくれればいい。沢田という運転手に注意喚起をする存在に」

 

 

清水「それではツナの様子を見てきますので、これにて失礼します。先輩、お大事に」

 

 

笹川兄「清水…頼んだぞ」

 

 

清水「はい」

 

 

そういって俺は笹川兄からの眼差しを背に受けながら、病室の扉を閉めた。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

病院を後にした俺はツナの家に向かったが、生憎ツナは不在だった。母親曰く「獄寺君たちとどこかに出かけた」とのことだがおそらくは黒曜ランドだろう。大方、あの赤ん坊が黒幕の狙いに気づきツナを向かわせたに違いない。

 

 

清水「さて、俺はどうするかな‥‥。ツナを見張り、笹川京子と三浦ハルを黒幕の手先の魔の手から守ることは簡単だ。問題は本体である俺が誰に付くかだが…」

 

 

清水「ツナに関してはあの赤ん坊にほぼ一任しよう。あの赤ん坊はスパルタだが、イエスマンではないからな。最初にこの能力で出した鳥、アレの有幻覚でいいだろう。後の二人だが…[[rb:俺>本体]]は三浦ハルに付こう。俺は三浦ハルの顔を一度も見ていないからな、いろいろと応用が利いた方がいいだろう。笹川京子には俺の有幻覚に尾行させる」

 

 

俺は自分と鳥の有幻覚がそれぞれ自分の保護(または監視)対象の元へ向かったのを確認し、自分は三浦ハルの所在をきくためにツナの家に戻った。

 

 

清水「何度もすいません、ツナのお母さん。先程聞き忘れていたことがありまして…」

 

 

沢田母「別にいいのよ清水君。それより聞き忘れてたことって何かしら?」

 

 

清水「ツナの友達の三浦ハルはご存知ですか?」

 

 

沢田母「ハルちゃん?ええ、知ってるわよ。彼女がどうかしたの?」

 

 

清水「実は彼女に直接伝えなければならないことがあったのを失念していまして…今どこにいるかご存知ですか?」

 

 

沢田母「それは知らないわねぇ~」

 

 

清水「そうですか・・では、彼女が向かいそうな場所に心当たりはありますか?」

 

 

沢田母「ケーキ屋さんとかかしらねぇ……。ハルちゃん、行きつけのケーキ屋さんがあるらしいわ」

 

 

清水「その店の場所を教えてもらえないでしょうか?」

 

 

沢田母「ええ、いいわよ。えっと、ここからね____」

 

 

ツナの母から店の場所を教えてもらった俺は彼女に一礼し、店へと急いだ。だが、そのケーキ屋に彼女はいなかった。

 

 

清水「クソ!早く見つけないと……」

 

 

苛立ちを隠せないままに来た道とは別の道を歩き、その道中にある公園のベンチに腰を掛けた俺は幻覚で自分の姿を消し、ツナたちの様子を知るために有幻覚と視覚と聴覚を共有した。

 

 

清水(まずはツナだな)

 

 

鳥の有幻覚と五感を共有した俺に飛び込んできたのは、建物の壁をスクリーンに二つの画面にそれぞれ映し出されている二人の女と、その前に立つ帽子をかぶり、眼鏡をかけ、肩と帽子のつばにそれぞれ一羽ずつ黄色い小鳥をのせた年老いた男。そして、その男に手出しをしないツナ達の姿だった。

 

 

ツナ『京子ちゃん!ハル!!』

 

 

清水(右側に映し出されているのは笹川京子だ。という事は左側に映っている女が三浦ハルか……。それにしても・・やはりいたか。ツナの精神を殺す[[rb:ヒットマン>殺し屋]])

 

 

清水(ツナ達の中にいる赤い髪の女はこちら側の人間(ヒットマン)か?だが、彼女すら手が出せないという事は、あの映像はリアルタイムで送られている。そして、笹川京子にも三浦ハルにも既に刺客は送り込まれているという事だろう)

 

 

清水(だがあの赤ん坊が寝ているという事は、おそらく俺と同じくあの赤ん坊も想定して対策済みなのだろう。過信するわけではないが、もうしばらくはこのままでもいいだろう。それに、今動いてはツナ達が不審に思う。せめてあの映像が遮断されるか、ツナ達があの老人を倒し、次に進まない限りは手が出せない)

 

 

清水(だが、ここまでは俺の想定内だ。…さぁ年老いた老人よ、お前の殺害方法(凶器)を見せてくれ)

 

 

老人『そ、う、だ、なぁ~。・・では、お仲間でボンゴレ10代目をボコ殴りにしてください』

 

 

ツナ『え、えぇ~!!』

 

 

不良風の男『なんだとテメェ!』

 

 

何かを背負った男『獄寺!』

 

 

不良風の男『クッ』

 

 

老人『そこの沢田君を殴れと言ったんですよ?』

 

 

ツナ『!!』

 

 

清水(‥‥‥小さい男だ。自分が絶対有利な状況でしか動かない矮小な男。あれでよく[[rb:ヒットマン>殺し屋]]などと胸を張って公言できる。俺が奴ならその恥ずかしさのあまり、送り込んだ刺客にまず俺を殺させる)

 

 

老人『私のもう一つの趣味は人を驚かせることでしてねぇ。驚いた時の無防備で、無知で、無能な人間の顔を見るとそれだけで興奮して!!』

 

 

清水(矮小なくせに、一人前に快楽殺人鬼を語るか・・恥を知れ。お前なぞ、そんな大層なものではない。お前など自分がいるところが砂の城だと気づかぬまま、自分はこの城の王だと慢心する哀れな変態だ。)

 

 

清水(お前よりは、あの地獄のような世界にいた変態の快楽殺人鬼の方がよっぽどマシだ。)

 

 

清水(マザコンが度を過ぎた結果、若い人妻ばかりを狙い、両の乳房と子宮だけを取り除いてから殺していたあの変態…そんな殺しを繰り返すうちに、取り除く際の女の絶望に満ちた顔と肉が抉られ、様々な器官や血管が切れる音に快楽を見出していったあの快楽殺人鬼の方がな)

 

 

清水「とにかく、この男はもう見る価値がない。三浦ハルの顔と現在位置が分かっただけで十分だ。次は笹川京子だが…」

 

 

 

次に俺は、笹川京子を尾行させていた俺の有幻覚と五感を共有させた。

 

 

笹川京子を尾行していた俺の有幻覚は傍から見ても不審に思われない適度な距離をとって彼女を尾行していた。

 

 

清水(さっきからまさに骸骨が服を着た何かが、彼女の周りを飛び回っているが・・アレがあの変態が送り込んだ刺客か……)

 

 

清水(あの矮小な男に合って、醜い格好でビュンビュンと…まさに蠅だな。あの長い爪が凶器だろうが、俺から見れば蠅の手足にある爪にしか見えないぞ)

 

 

俺がそんなことを思っていると笹川京子がバス停に止まり、黒い髪をした彼女の友達と談話を繰り広げ始めた。俺は彼女が止まっているバス停の一つ先のバス停に止まり不審に思われないように注意を払いつつ、横目で彼女を観察し続けた。

 

 

ツナ達があの男の言いなりになっているのか、それともただ単にあの男がツナ達を使って愉しんでいるのか数分が経過しても彼女に蠅が手を下すことはなかった。

だが、そんな時間もすぐに終わりを告げ、ついに笹川京子に蠅の爪が襲い掛かろうとした…その時だった

 

 

刺客「Gyaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

 

 

突然、笹川京子に今にも襲い掛かろうとしていた蠅が呻き声を上げ、痙攣しながら地面に倒れ伏したのだ

そして、その刺客を尻目に一人の白衣を着た中年の男が笹川京子を庇うようにしてその前に立った。

 

 

???「はぁ~い京子ちゃん、助けに来ちゃったよぉ~?おじさんカワイ子ちゃんのためなら・・次の日の筋肉痛も厭わないぜ」

 

 

清水(あの男…一見ふざけている様にみえるがその実、プロだな。しかもかなりのベテランだ。一切の隙がねぇ)

 

 

俺がその男に注意を払っていると、今度は身近で人体を強く殴打した音が鳴った。

俺は慌てて五感共有を解除し、姿を消したまま周囲の様子を探った。

そこには、中華風の衣装を纏った拳法家と思わしき女と、以前ツナに抱えられ運ばれていた牛柄のシャツの男がどこからか現れており、俺の隣には三浦ハルその人がいた。

 

 

清水(三浦ハルがいた公園ってのはここだったのか…というか隣にいたのに気づかない俺って……。だが、そんなことより・・あの拳法家風の女が今目の前で蠅の片割れに放っている蹴りや突き…相当な威力だ。的確に急所を狙い当てている)

 

 

拳法家風の女「許せないな、女性を狙うなんて」

 

 

牛柄のシャツの男「やれやれ。ハルさん、もう大丈夫です」

 

 

ハル「ハヒ?」

 

 

清水(あの中年男といい、この二人といいタイミングが良すぎる……あの赤ん坊がしてた対策ってのはこれか。確かに、あの男の隙の無さや、拳法家の相当な腕を知っていれば不安要素は皆無に等しい…。あの赤ん坊はどこまで人脈があるんだ?)

 

 

ハル「ハヒ!何の騒ぎですか?」

 

 

拳法家風の女「ランボ、ハルさんをお願いね」

 

 

牛柄のシャツの男「OK。さ、ハルさん」

 

 

ハル「ハヒ!?」

 

 

牛柄のシャツの男「ここはイーピンに任せましょう」

 

 

ランボと呼ばれた牛柄のシャツの男が三浦ハルを連れて安全なところに退避した途端、蠅の片割れが三浦ハルの後を追うように動き出した。

 

 

しかし、それをイーピンと呼ばれた拳法家風の女が難なくいなし、顎下を掌底で打つ。そして、がら空きになった鳩尾に突きを繰り出し、最後に捻じれた体形を戻す回転に合わせ回し蹴りを顔面側部にくらわせた。

 

 

清水(完全に動きを見切っている……これほど一方的な戦いは久しぶりに見た。あの地獄ではこんなに一方的な展開だと、すでに片方の命はないからな)

 

 

だが、蹴られた蠅も衝撃を体を回転させることで逃がし、さらにその回転に乗せて攻撃を繰り出してきた。

 

 

清水(蠅も少しはやるな。だが目の前の女には遠く及ばない…もしあいつがあの世界に降り立ったとしたら…降り立った十数分後には死体となっているだろう。あの世界にいる連中の大半は理由もなく人を殺すからな。だからこそ、あんな馬鹿げたことが常識化されている)

 

 

回転に合わせて女の胸を刈り取るようにして出された攻撃は難無く躱され、続く第二撃は女が素早く動いたことで空を突き、その隙に女から脇腹にカウンターを喰らっていた。

 

 

清水(一方で、あの女の方は数日は通用するだろう。あの世界における殺し合いを肉体戦闘に限れば数ヶ月に延命できるな。それほどの腕だ。そして、完全に見切っていても油断せずに隙を見逃さない観察眼、敵に空を突かせるほどの俊敏さ……素晴らしい)

 

 

三撃目からは蠅も目の前の敵に対し容赦がなくなったのか、首を集中的に狙い始めた。しかし、三撃目は女に防がれ、四撃目はまた難無く躱されてしまった。

 

 

そして蠅が体制を直す前に女は蠅の膝と肩を踏み台にして電柱にいったん飛び移り、蠅の方へ向き直り飛びかかった。

女は蠅の首に片方の足を掛けながら背広に座り、蠅の左手にもう一方の足を絡め、自分の腕を自分の背に回し蠅の右手を背と腕の間に通し蠅の右手に対し仰向けになるように倒れた。

 

 

イーピン「高三元(ハイサンゲン)!!」

 

 

女はその声と共に体を起こし、蠅の首は掛けていた足と背に回していない方の腕で曲げ、蠅の両手はそれぞれ掛けていた自分の体の部位で圧をかけた。

 

 

絞められていくうちに気絶したのか、蠅は全身の力が抜けたように崩れ落ちた。それに伴い上に乗っていた女も地面に降り、先程の牛柄のシャツの男を追いかけていった。

俺は透明化を解除し、倒れ伏し一切動かなくなった蠅に近づいた。

 

 

清水「体中の骨という骨が折れている…が、まだ生きている。ならばいい。お前の主に恐怖を与えるにはお前の存在が不可欠だからな。とりあえず、お前ら蠅は幻術空間に隔離さしてもらう。安心しろ、主もすぐにお前らに会いに行くから」

 

 

俺は笹川京子の方に残した有幻覚にも幻術空間に蠅を放り込むよう命令を出し、本体であるあの男がいる黒曜ランドに向かった。

そこでは、あの矮小な男が気絶したまま放置されていた。

 

 

清水「ツナ達は…先に行ったか。良かった。これから俺がすることを見られたくはなかったからな……。」

 

 

清水「地獄から来たりし名前のない怪物による惨殺演劇いざ開演……ってね」

 

 

俺はそう呟きながら老人の後を追うように幻術空間へと消えていった。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

バーズ「痛ッ…。ここは・・どこです?私は生きているのですか??」

 

 

気が付いた私は、顔に走る痛みに耐えながら状況の把握を試みた。しかし、視界は一面が暗黒に包まれており、何も聞こえない無の世界が広がっていた。

 

 

バーズ「にしても、おのれシャマルに小娘!私の大事なブラッディツインズ(以下ツインズ)を…」

 

 

顔面を走る痛みが治まった私は、脳裏に焼き付いたシャマルと小娘が私のかわいい双子を撃退するシーンに対する小言を口にしながら前に進むことにした。

私が前に進むたびに、地面からは砂利の上を歩いているかのような音が聞こえた。

 

 

バーズ「砂利の上…?ここは、黒曜ランドではないのですか??」

 

 

???「ああ、そうだ。ここは名もなき地獄の悪鬼が創り出した空間」

 

 

バーズ「誰です!姿を見せなさい!!」

 

 

???「初めまして自称快楽殺人鬼。本来ならここで私の名を明かすべきだろうが、先ほど言ったように俺に名前はない。好きに呼べ。」

 

 

先程まで私が砂利道を進む音しか聞こえなかった世界に突如、機械のように無機質な声が響きました。

その声はどこから聞こえてくるのか正確にはわかりませんでしたが、なんとなく私の行く手を塞ぐかのように前方から聞こえてきた気がしました。

 

 

バーズ「地獄の悪鬼を名乗るものの声がするという事は…ここは地獄というわけですかな?」

 

 

私は先程まで昂っていた気持ちを何とか静め冷静であるように努め心中の激昂を悟られないようにしながら、少しでも情報を手に入れるため地獄の悪鬼とやらに話しました。

 

 

???「いや、まだ地獄ではない。だが近いうちにそうなる。バーズ、お前にとってのな」

 

 

バーズ「それは・・どういう意味ですかな?」

 

 

???「そう早まらなくてもすぐに体験することになる。百聞は一験に如かずってやつだ。ただし、この場合の一見は見物の見ではなく経験の験だがな」

 

 

バーズ「おやおや・・ずいぶんと余裕ですね。私にはツインズが」

 

 

???「あの蠅のように汚らわしい双子のことか?」

 

 

バーズ「そ、そうです!今にでも貴様を八つ裂きに」

 

 

???「あの双子ならすでに仮死状態だ。俺の術中にいるから完全に死ぬことはできないがな」

 

 

バーズ「なっ!う、嘘をつくな!!」

 

 

???「嘘ではない。その証拠も今見せてやる」

 

 

すると私の脳裏にある映像が浮かび上がってきました。

シャマルに倒されてしまった私のかわいい双子の一人は、あの映像で最後に見た倒れたまま動きませんでした。

 

 

???「こいつが罹った病気は【振動シンドローム】その症状については言及しないがあの映像を見ていたお前ならわかるだろう。早い話が動けば死ぬってやつだ。」

 

 

視界は脳裏に浮かび上がってきた映像に支配されながら、両耳からはあの無機質な声が木霊し続けています。

 

 

???「俺がこいつにやったのは治療だ、正確に言うと症状により破壊された体内の器官を俺の力で補っている。治療というより延命行為だな」

 

 

バーズ「では・・これはまだ…」

 

 

???「ああ、生きている。辛うじてだがな」

 

 

耳を澄ますと確かに消えてしまいそうな音量ですが、確かに呼吸音が聞こえ映像を凝視すると肩で呼吸しているのも確認ができます。最も、その動作で症状を引き起こしているらしく激痛は絶え間なく私のかわいい双子を襲っているようですが

 

 

???「話は変わるが、お前…黒ひげ危機〇髪って知ってるか?」

 

 

映像が雑にブツ切りされたかと思うと、あの無機質な声はふざけているかのようにこんな問いをかけてきました

 

 

バーズ「急に何の話だ!ふざけているのか!!」

 

 

???「知らないなら教えてやる。黒〇げ危機一髪ってのはな、この国にあるおもちゃだ。穴の空いた樽に剣を順番に差し込み、当たりの穴に剣が差し込まれると樽の真ん中にいる黒ひげが吹き飛びって仕組みだ」

 

 

バーズ「それがどうしたというのだ!!」

 

 

???「俺はそのおもちゃを初めて見た時これは何と残酷なものだと衝撃を受けたよ。玩具とはいえこんなものを開発し、あまつさえ平然と売っているのかってな」

 

 

バーズ「だからそれがどうしたというのだ!!」

 

 

???「でもな、殺し屋の性ってやつなのかね。こうも考えてしまった‥‥。これを生きた人間にやればどうなるんだろう・・ってな」

 

 

バーズ「まさか・・・貴様……」

 

 

???「そのまさか。実験台としてお前のかわいい双子を使わせてもらった。これがその時の映像だ、じっくりと鑑賞しろ」

 

 

バーズ「貴様ァァァァァァァ!」

 

 

私の叫びを無視するかのように再び私の脳裏にある映像が映し出された。

そこには、あのチャイナ娘が暴れていた公園と、そこに無残に倒れる私の双子。

そして、チャイナ娘に連れて行かれたはずのあの制服姿の小娘が映っていた。

 

 

???「言わなくてもわかっていると思うが、映っている三浦ハルは俺が擬態したものだ」

 

 

その機械音声の補足が切れるのと同時に映像内の三浦ハルはしゃべりだした

 

 

ハル?『自称快楽殺人鬼の変態さん、見てますかー。これよりあなたのためにとってもデンジャラスなことをお見せしたいと思いまーす!!』

 

 

ハル?『そこで倒れている蠅のように醜い殺人鬼さん、お名前をヂヂさんと仰るそうです。彼は今は眠っていますが、実は体の中は既にデンジャラスなことになっております!!』

 

 

映像内の地獄の悪鬼が擬態したという三浦ハルは、ヂヂを指さして話をつづけた

 

 

ハル?『具体的に言ってしまうと先程大人イーピンさんに折られた骨をさらに細かく、みじん切りされた玉ねぎのように極小に砕いて、その砕いたすべての骨の両端を鋭利な刃物状にしてから元のように繋ぎ止めてあります!!おー・・聞いただけでも背筋が凍るようなデンジャラスさです!!』

 

 

バーズ「なん・・だと・・・!!?!?」

 

 

ハル?『この骨が黒ひげ危〇一髪でいう剣になるわけです!えっ・・それじゃあ樽はなにになるんだ・・・ですか?フッフッフ…』

 

 

バーズ「まさか・・貴様・・おい・・やめろ・・・」

 

 

ハル?『樽はズバリ!ヂヂさんの臓器です!!』

 

 

バーズ「やめろオオオォォォ!!」

 

 

ハル?『私、つくづく不思議に思っていたんです。当たり以外の穴に剣が刺さっているとき、黒ひげさんの見えていない部分はどうなっているんだろうって。当たりに刺さると飛び出すという事はそれ以外の穴は当たっていないという事なのでしょう。でも、もしあれが…』

 

 

映像の女はそこで言葉を一度きり、口角を口が裂けるのではないかと思うほど上げて嗤い口を開いた。

 

 

ハル?『あの当たり以外に突き刺される剣。あれが…()()()()()()()()()()()()()()()と仮定したなら……どうなるのでしょうね』

 

 

バーズ「……悪魔め」

 

 

ハル?『という訳で今回はこんな企画をお送りします!題して!!

【ハルのハルハルエクスペリメントデンジャラス!!黒ひげ危機一〇の秘密を探れ!!】』

 

 

私の脳裏に映し出されている映像なのに、なぜかテロップまで表示されていた。だが、私にはテロップが表示されていることは理解したが、それが何と書かれているかを理解することはできなかった。

私には、映像に出ている女が悪魔が化けているのか手先のようなそれに準ずる者のようにしか思えず、映し出されているテロップも悪魔の呪文にしか見えなかった

 

 

ハル?『とまぁ、それらしいタイトルを宣言したのはいいんですが‥ここで一つ問題が発生します。‘‘それは剣を刺す人がいない’’という問題です。私自ら刺せばいいのですが、私は今回、カメラマンに徹したいのでダメです。ですから!黒ひげさん自身に刺していただきましょう!!』

 

 

バーズ「なんだ・・この悪魔は……さっきから‥なにを言っているんだ」

 

 

ハル?『ヂヂさーん、起きてくださーい。あなたの()()がここにいますよー。殺るなら今がチャンスですよー』

 

 

ヂヂ『ヴ・・ヴヴヴ・・ヴァ』

 

 

ハル?『あ、起きましたね。さぁ、ヂヂさん。あなたの標的は目の前にいます!先程の恨みを晴らすためにも一切の躊躇なしに私を殺してしまいましょう!!』

 

 

バーズ「やめろ!ヂヂ!!そいつの口車にのるんじゃない!!!死ぬぞ!!!」

 

 

私の忠告を無視し、ヂヂは女の姿をとらえると一切の遠慮なしに女の命を刈り取るには十分すぎる攻撃を繰り出した。

女はまた薄気味悪い笑みを浮かべ、腹部から首めがけ常軌を逸した速さで繰り出される攻撃をただただ見ていた。

そのままヂヂの長く鋭利な爪が女の喉を引き裂き、赤い鮮血を多量に放出されるかと思われた瞬間、女はただ一つの言葉を発した。その口角が上がり歪んだ口から白い犬歯を見せながら

 

 

ハル?『実験開始』

 

 

女がそういった刹那、今まさに首の動脈に深く刺さり抉ろうとしていた爪が、手が、腕が止まった。そして、それまで健康的とは言えないがどこか底知れぬ恐怖を感じさせていた要因の一つであるヂヂの灰色ががった肌が多量の内出血で青黒くなっていった。

その青黒い痣は心臓を除いた全身に広がり、ヂヂは痛さのあまり声も出せないのか口を堅く閉ざしたままその場に倒れこみ、のた打ち回った。

 

 

バーズ「ヂヂ!しっかりしろ!!ヂヂ!!」

 

 

私が荒げた声に対しヂヂは返事をせず、のた打ち回り続けた。地面にそうしていると骨がどこか別の臓器や肉に刺さるのだろうか、その動きは収まるどころかだんだんと激しくなっていった

だが、そんなヂヂの声にもならない悲鳴をよそに私の耳を暗く冷たい声が支配した

 

 

???「無駄だ。言ったはずだ、()()()仮死状態だと」

 

 

???「これは既に行われたものだ。今お前が見ているのは俺の有幻覚というカメラに録画された映像だ。だが、安心しろ。双子はどちらもまだ生きている。お前の殺害に加担するためにな」

 

 

バーズ「ど、どういうことだ!!」

 

 

???「まぁ、見てれば分かる」

 

 

暗く冷たい声が切れるとそれまで停止されていた脳裏の映像が再び再生し、女は依然もがき苦しみ、体の色がすっかり変色してしまったヂヂに近寄り膝を抱えて座り、優しくどこか狂気を感じさせるように語りかけた

 

 

ハル?『フフフ…死にたいですか?ダメですよ…あなた達双子はまだ死ぬ(退場)にはまだ早すぎます。最後の大仕事が残っていますから・・主役を殺すという大仕事がね…』

 

 

ハル?『という訳で、【ハルのハルハルエクスペリメントデンジャラス!!黒ひげ危機一〇の秘密を探れ!!】はここまでとなります!一旦カメラと役者の皆さんをそちらにお返しします!!後は頼みましたよ……俺』

 

 

女のいう番組が終了に近づいたからか、脳裏に浮かんだ映像はだんだん蜃気楼のように霞んでいき、最後には消えた。消える間際映っていた女はボンゴレ十代目と同い年の男に変わっていたような気がするのは気のせいだろうか

 

 

???「任された。さぁ、待たせたな。いよいよ主役(お前)の出番だ」

 

 

脳裏の映像が完全に消えると、それまで暗闇に包まれていた空間にはどこからか僅かな光が照らされ、それまで聞こえていた声の主が姿を現した。

 

 

 

目の前の男はあの映像が消える前にかすかに見えた男と全く同じ背丈格好をしており、光が照らされているというのにその眼には一切の光がなく周囲の暗闇よりもさらに暗くて深い闇を宿していた。

 

 

バーズ「お前が・・・私のツインズを……」

 

 

???「ああ、そうだ。お前のツインズを半殺しにした。そして、今からはお前を殺す」

 

 

バーズ「なぜだ!なぜ私を狙う!!理由は何だ!!誰かに頼まれたのか!!」

 

 

???「違う、俺がお前を殺す理由は誰に頼まれたからでもない。俺の意志だ」

 

 

バーズ「意志だと!殺し屋の貴様が!?誰に頼まれたわけでもなく自分の身勝手な意志で殺すだと!!?」

 

 

???「ああそうだ。俺はお前が殺したい。だから殺す。それ以外の理由などない」

 

 

バーズ「ふざけるな!自分が殺したいから殺すだと!?そんな傲慢で身勝手な理由が許されるか!!」

 

 

???「お前にそれを言う資格はない。お前も自分のくだらない性癖のためにあの双子を使い幾人も葬ってきただろう。自分は許されて他人がやるのは許さない。傲慢極まりないのはお前の方だ」

 

 

バーズ「くだらないだと!?お前がただ私の趣味嗜好を好まないだけではないか!!お前は趣味嗜好が気に入らないから私を殺すのか!!」

 

 

???「見くびるな、変態。俺は別にお前の性癖など興味もない。たとえお前が死体にしか興奮しないやつでも、四肢が欠けている人間にしかそそられない人間だろうとどうでもいい」

 

 

バーズ「ではなぜだ!なぜ私に殺意を抱いた!!」

 

 

???「至極簡単だ。お前は俺の・・‘‘清水健人’’の恩人の一番大切なものに手を出した。だから殺す。それだけだ」

 

 

バーズ「恩人だと!?貴様のような人道を外れた外道に恩人などいるものか!!お前のいう恩人とやらが誰だかは知らんがなこれだけは言ってやる!!私たちのような殺し屋には恩人などいない!!お前が勝手にそう思っているだけだ!!!」

 

 

清水「……」

 

 

バーズ「お前の恩人もお前の正体を知れば手のひらを返したようにお前への態度を変える!!お前のことなど最初から知らなかったかのようにふるまう!!恩人とやらが表の世界の人間なら尚更な!!裏の世界の住人なら散々利用された挙句に殺されるのがオチだ!!」

 

 

清水「……」

 

 

バーズ「だから私たちに‘‘恩人’’などというものは存在しない!そんなものはお前が抱いている幻想だ!!!私たちにあるのは()()()だけだ!!わかったか!!」

 

 

清水「…ご高説大変痛み入る。お礼に俺からもお前に一つ()()を教えてやる。

お前はこれからその()()に殺される」

 

 

バーズ「何!?どういうことだ!説明しろ!!!」

 

 

清水「これ以上語ることはない。ではさらばだ、自称快楽殺人鬼。もし次あの世界であったなら本当の()()()()ってのを教えてやる。()()()の先輩としてな」

 

 

清水と名乗った男が闇に消えた瞬間、私の足元が耳を劈くほどの轟音を轟かせ崩れた。それはまるで大震災に見舞われた高層ビルのように一気に根元から崩れ落ちるようだった。

 

 

足元が崩落し、何も見えない奈落の底へと落下していく。落下中は一切の物音が聴こえず、視界は暗闇に支配されたまま、ただただ()()()()()()という事だけが理解できた。

暫くして何か固い地盤のようなものに足を強打した私は、両足を折ってしまい立てなくなってったものの落ちているという浮遊感からは解放された。

 

 

バーズ「クソ・・両足を折ってしまいましたか……これでは歩いて移動はできませんねぇ。しかし、先程あの清水という男が言っていたことはどういうことなのでしょう。私は‘‘幻想’’に殺されるというのは……」

 

 

そんな思考を巡らせていた私の頭にはどこからやってきたのか、私のかわいい小鳥ちゃんたちが止まっていました。

 

 

バーズ「おや、小鳥ちゃん達ではないですか。ツインズ達はあの男にやられてしまったようですがあなた達は無事だったのですねぇ」

 

 

小鳥「「…」」

 

 

バーズ「小鳥ちゃんたちがどこから入ってきたのかはわかりませんが、少なくとも出口はあるという事ですね。では、すみませんが小鳥ちゃんたち、私を出口まで案内してください。あ、できるだけゆっくりお願いしますよ。なにぶん両足を折ってしまい、歩くことができませんので…」

 

 

小鳥「「……」」

 

 

バーズ「……おや?どうしました?・・ああ、お腹が空いているのですか?仕方ないですねぇ…ほら餌ならここにありますからいっぱい食べてください。」

 

 

私は胸ポケットからハンカチを取り出すと、それを広げ小鳥ちゃん達のえさをその上に出しました。ですが、小鳥ちゃん達は一切の反応を見せずに黙って私の頭から動こうとしません。

 

 

バーズ「おや・・お腹が空いているのではないのですね。では一体なぜ動かないのですか?」

 

 

私は小鳥ちゃん達を手に乗せようと小鳥ちゃん達を触ろうとした瞬間、それまで黙り続けていた小鳥ちゃん達が声をあげました

 

 

小鳥「「……ス」」

 

 

バーズ「おや、どうしましたか?」

 

 

小鳥「「…ズ……ス」」

 

 

バーズ「鈴?鈴が欲しいのですか?」

 

 

小鳥「「コロス!コロス!バーズ、コロス!!」」

 

 

バーズ「な!なんですって!?」

 

 

小鳥ちゃん達はそういうと私の頭から飛び立ち、頭上数メートルから私の頭頂部めがけて急降下をしてきました。それはまるで地表に向け真っ逆さまに落下する隕石のように…

 

 

バーズ「や、やめなさい!小鳥ちゃん達!!やめるのです!!」

 

 

私の注意など聞く耳を持たず小鳥ちゃん達は落下の勢いに任せ私の頭頂部を啄木鳥のように啄んできます。いや、それはもはや、私の頭という木に穴を開けんと何度も啄む啄木鳥そのものでした。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

小鳥が男の頭を啄み始めてもうどれくらいの時間が経過しただろう。

 

 

男の頭は既にいくつもの穴が空き、髪の毛は全て抜け、空いている穴に頭皮と共に入り込んでいる。脳は何度も啄まれた結果、前頭葉・側頭葉・後頭葉はそれぞれサイコロレベルまでに分解され脳内の血管や頭皮や毛髪と乱雑に絡み合っている。また頭頂葉は海馬が見えるようにまで穴が貫通しており、そのほかの脳の部位は頭皮や毛髪、脳や顔の血管などと絡み合い煩雑を極めている。

目は内側から突き破られ、両頬には小鳥がギリギリ通れる程度の穴が開けられ、耳は外から引きちぎられ、口からは引きちぎられた口蓋垂が見え隠れしている。

また、顔や首周りの筋肉は繊維の一本一本に至るまで引き裂かれており、外からは痛々しい裂傷痕がいくつも見えている。

そして胸部から腹部にかけては今も中であの小鳥たちが啄み続けているのだろうか、何かが体内を縦横無尽に動き回っており、時折体内からギギギギギギといった呻き声が聴こえてくる

 

 

既にバーズという男は心臓も停止し、呼吸がとまり、完全に事切れている。しかし小鳥たちは・・ツインズ達は男の体内を蹂躙するのをやめない…否()()()()()()。なぜなら、男の体内の蹂躙をやめるという事は自分たちの死を意味するのだから

 

 

 

 

 

 

大空を陰から支える蜃気楼

 ~黒曜編 第二話~

    終わり




書きたいシーンはあれどそれを簡潔かつ単純にできないので毎回これだけ長くなってます。
すいません
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