大空を陰から支える蜃気楼   作:itigo_miruku121

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黒曜編最終話です、次回からリング争奪戦編に参ります。
あと、少し原作のネタバレのようなものがあります。


大空を陰から支える蜃気楼 黒曜編 ~4話~

時は少し遡りツナを除いた一行がランチアと戦い、ツナが骸と出会い話をしていたころ

 

 

清水「自分の本拠地に留守番を任せる番犬も置かずに自分も外出とは…慢心極まりないな」

 

 

バーズとブラッディツインズを幻術空間で虐殺した俺はツナ達より一足早く黒曜ランドの本館に足を踏み入れていた。[[rb:ツナ達>標的]]の中にもいない男が突然侵入してきたことで、慌てて数人かは撃退に来るだろうと危惧したがそんな事はなく俺は廃墟と化した夢の施設の内部を一人でぶらついていた。

 

 

清水「笹川の兄にはツナが危険なことに首を突っ込まないように頼まれているが‥それは果たせそうにないな。すみません笹川先輩…今度会ったら気が済むまでスパーリングの相手してあげますから」

 

 

笹川の兄から託されていることを果たせそうにないことに多少の罪悪感を負いながら荒廃した建物内を歩いていく。そしてある扉を開けた先にある室内で俺はこの建物内に入って初めて人の姿を見た。

 

 

清水「お前は確か…雲雀がボコられてた時にいた」

 

 

???「……」

 

 

俺の前にいたのは以前雲雀が今回の黒幕に一方的にされていた時、表情一つ変えずにその場にいた身の丈に合わない大きさの本を抱えた男の子供だった

 

 

清水「・・・・なるほど。今のお前には自意識がないんだな。あの紫頭は俺と同じ幻覚能力に加えて人を操れるわけだ・・・[[rb:蜃気楼>俺]]より俺らしいじゃねぇか」

 

 

俺もこの能力を使えるようになってから知ったことだが…通常、幻覚を見せるや物体を御認識させるなどといったように人間に幻術をかける際にはかけた側に何らかの症状がある。例えば幻視なら術者の眼に僅かな痛みが走り、物体の誤認識なら指先の感覚が数秒鈍くなるなどといったように。それらは ()()()()()()()()とでも言うべきなのか…

ともかく、そういった抵抗は十人十色でかける術の強さなどによって違ってくる。

 

 

清水「今、お前に軽く幻を見せようとしたが俺に対する一切の反応がなかった。つまり‘‘俺に抵抗する自意識がハナからない’’ってことになる。そうなると考えられるのは誰かの操り人形になってるか、死んでいるかのどちらかだ」

 

 

目の前の誰かの操り人形になっている子は相も変わらず光を奪われた虚空な目でじっと俺を見つめている。まるで主から待機命令が出されているロボットのように

 

 

清水「名前も知らない坊主。今お前に聞こえているかは知らねえが言っておく。今から[[rb:お前の自意識>お前]]を取り戻してやる。目が覚めるとそこはありとあらゆる光源が失われた世界みたいに真っ暗だが決して振り返らずに進め。そうすりゃじきにお前のよく知る光景が見えて隣にはツナがいる。お前の罪はツナが赦してくれる。それじゃ行くぞ」

 

 

???「あり……が・・とう…」

 

 

俺がその子どもの前に立ち頭に手を置くと、今まで黙秘を続けていた口から途切れ途切れだが謝礼の言葉が漏れ、空虚の瞳からは一筋の光る筋が頬下にかかっていた。

 

 

清水(礼を言われるような人間じゃねぇよ‥俺は)

 

 

自己嫌悪に陥りながらも俺は俺とその子どもを包み込むように黒い層の球状の幻術空間を作り出した

 

 

数分後さっきの子供に擬態した俺は幻術空間から姿を現し、あの子供が抱えていた本と三本槍の穂先のようなものを宝物のように抱えながらあの男が現れるのを待った

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

そして時は進み‥ツナたちが本物の六道骸と顔を合わせた。

 

 

ツナ「フゥ太!お、脅かすなよ・・」

 

 

清水(ツナ…無事にここまで来たのか…さすがだ。ボス候補は伊達じゃないってことだな)

 

 

ツナ「いったいどこ行ってたんだ?あの後ずいぶん探したんだぞ・・みんなも心配してた」

 

 

清水(しかし‥あまり感傷にも浸っていられないな、あいつにバレる。だからすまないな赤髪の女‥お前に恨みはないがこれも俺があの男に操られた子供であるために必要なことだ)

 

 

ツナ「フゥ太何やってんだよ!!」

 

 

清水(ツナ‥悪いな。その女にはこの子供にかかっていた支配に俺のアレンジを加えて譲渡した。だが‥この程度では済ませないだろうな‥あの男は)

 

 

ツナ「ビアンキ!ビアンキしっかりして!!」

 

 

清水(俺のせいでツナが辛い目に合っている……ああ・・胸が引き裂かれそうだ。俺に名前をくれた恩人を他でもない俺が傷つけている…クソ‥気に入らねぇ……。なのに俺は‥これからツナを・・・殺そうとするなんて)

 

 

ツナ「おい、フゥ太!!」

 

 

清水(俺がツナを攻撃する…これだけはしたくなかった……。ツナの前では俺を‥清水健人を…[[rb:転生前の世界 >地獄]]に住む怪物を出したくはなかった…。クソ‥クソ‥クソッ!!)

 

 

骸「クフフ…さぁ、どうします?ボンゴレ十代目」

 

 

清水(ツナ‥すまねぇ!!恩人であるお前を殺そうとするなんて…何が大空を支える蜃気楼だ!!支えるどころか失くそうとしてんじゃねぇか!!クソがっ!)

 

 

骸「ほう・・彼ではなく僕に向かってきますか・・さすがはボンゴレの次期後継者候補ですね」

 

 

清水(ツナ‥こんな状況でもお前は元凶を叩こうとするのか…感服したよ。お前はすごいやつだ・・やっぱり)

 

 

ツナ「痛ぇ!!」

 

 

骸「クッハッハ!君にはいつも驚かされる。ホラホラうしろ、危ないですよ?」

 

 

清水(恩人に牙を向けた以上、おれはもうお前の近くにいられない。ツナ‥お前が友達だといった清水健人はここで消える。地獄の怪物が名前をもらって人間の真似事をするなんて烏滸がましい事だったんだ。じゃあな‥ツナ。お前がこの闇に満ちた世界を出られないというのなら、お前はこの世界ごと包み込む大空になれ)

 

 

ツナ「お前は誰だ!!」

 

 

清水(ッ!!)

 

 

ツナ「そうだ…今から言うのは全て俺の主観だ。直感と言ってもいい。でも・・それでも俺は声を大にして言う。こいつはフゥ太じゃない…ましてや骸・・お前にマインドコントロールもされていない」

 

 

清水(お前‥まさか…)

 

 

ツナ「おかしいと思ったんだ。ビアンキを刺しておきながら俺には俺でも躱せる攻撃しかしてこない。いや、正確に言うと‘‘俺が少しでも動けば躱せる攻撃’’しかしてこなかった」

 

 

清水(それは俺の…清水健人としてのせめてもの気持ちだ。せめて恩人を殺さないようにと)

 

 

ツナ「ビアンキを刺した時の眼は確かに今みたいに光がなかったんだ。でも、何か固い決意みたいなのが瞳孔の奥で炎みたいに激しく燃え盛っていたのを感じた」

 

 

清水(ツナ…やっぱりお前‥俺の幻覚を)

 

 

ツナ「今はその決意の炎が消えて何もない暗闇しかない気がするんだ。さっき絡まった後襲われる前にこのフゥ太の眼を見たんだけど、そこには炎が消えて何もない真っ暗闇だったんだ。常人だろうとビアンキみたいな裏社会の住人だろうと、その中に放り込まれたなら自殺しそうなほどに…」

 

 

清水(確信は持ってない‥が俺の幻覚を見破るか。フフ‥お前はどこまですごいやつなんだ…初めてだよ‥俺の幻覚を見破ったのはそしてそんなお前に敬意を表し、あの男に意趣返しだ)

 

 

俺は部屋の奥にいる男に幻覚をかけ、俺があの犬のような男にやられた際の風紀委員の姿を映した。すると男の顔色は急激に変わりマグマのように赤く煮えついていた。

その男は先程までの冷静さをかなぐり捨て、憤怒に包まれながら何かわめいていたが俺の耳には入らなかった。だが、その声は[[rb:地獄に住む怪物>俺]]にも耳障りだったのか[[rb:清水健人>俺]]が口を開くと同時に、あの世界で誰もが常に出していた殺気と深い絶望に陥らせる暗さを放出していた。

 

 

清水「黙れ、自分で手は下せぬ臆病なパイン頭」

 

 

その声とそれに含まれていたものはこの世界の裏社会の住人でも味わったことのないものだったのか、それを向けられた男だけでなくツナの近くにいる赤ん坊までもが殺気を放ちながら俺を鬼の形相で睨んでいた。そして俺の足元でツナは今にも漏らしそうな顔と心底から恐怖に怯え震えが止まらない体で俺に振り返った。

 

 

清水(ある意味死ぬより怖い事を体験させてしまったな…悪い、ツナ。あと少しで消えるから耐えてくれ。できる限り抑えるから…だから、そんな今にも赤ん坊のように泣きわめきそうな顔をしないでくれ)

 

 

俺は目の前のツナの顔に身も心も粉々になる思いになりながら、なんとかそれを匂わせないようにしながら言葉を続ける。[[rb:地獄に住む怪物>俺]]はあの男の慄然とした表情に満足したのか殺気と絶望感を収めていた。

 

 

清水「お前はただ我儘を言ってダダをこねているだけの餓鬼だ」

 

 

骸「貴様・・それ以上口を開いてみろ……六道巡りをその身をもって体験させてやる……」

 

 

男は先程の殺気や暗い絶望が自分に向けられたものという恐怖から何とか立ち直ったようで、俺に六道がどうのと言っていたが良くきこえなかった

 

 

清水(六道…並中の図書室にある本に書いてあったな。人間が死ぬと行くとされる六つの世界…だったか?その中に地獄道ってのがあったが……。その地獄から来た俺が死ねばいったいどの世界に連れて行かれるんだ?…少し楽しみだな)

 

 

などとまるで遊園地のアトラクションに乗るかのような気持ちを心の片隅におこしながら俺はその後も言葉を並べた

 

 

清水「だが、それでいい!裏社会の住人(俺たち)はどいつもこいつも駄々をこねるクソガキだ!!私利私欲や自分の感情だけで他人の命や意志をいとも容易く踏みにじる」

 

 

突如口調を変え、意見も変えた俺に三人は先程までの態度から一変して変人を見る目でこちらを見ていたが、俺は向けられる奇異の視線を気にしなかった

 

 

清水(俺がそこに寝ている赤髪の女を()()利用している様にな…)

 

 

清水「自分から進んでこっち(裏社会)に来た連中はどいつも救いようもねぇ屑共だ!!この男(ツナ)みたいなやつは滅多にいないだろう…だからこそ俺はこいつに…沢田綱吉に懸ける!!このどこまでも甘い男がこの先どこまで行き、どうするのか!!それを見てみたい!!」

 

 

ツナ「俺の名前…なんで知っているんだ」

 

 

清水「だからな、脱獄囚。お前にはこいつ(ツナ)の踏み台になってもらう。安心しろ、お前はこの男に負けるが死にはしない。こいつはそういう男だ。だからこそあの爆弾男や野球バカ、そこに寝ている女が命を張り、その赤ん坊が派遣された」

 

 

その後、俺は少しあの男と言葉を交わす。途中ツナが何かをぼやいていた気がするが気のせいだろう。そしてその男との会話を終えると同時に俺はあの女に仕込んだ()()()()を作動させ自分の姿を陽炎のようにぼやけさせながらツナに目線を合わせる。

 

 

清水「ツナ…俺の幻覚を見破るとは流石だ。流石はボス候補といったところだな」

 

 

ツナ「君は…誰なんだ?俺の名前やあだ名を知っているようだけど…」

 

 

清水「怪物()に名前はない。俺の親は二人とも俺に名前を付ける前に俺を殺そうとして死んだからな」

 

 

ツナ「えっ!?…それじゃあ君は……」

 

 

清水「ツナ‥お前は優しいやつだ。俺や俺の両親などといったあの地獄を体現したような世界の住人にまで包容しようと情をかける」

 

 

ツナ「そんなつもりはないよ!だけど・・親がいないっていうのは‥寂しいと思うから」

 

 

清水「そんなものこの世界だと珍しくもない。お前は人間だ、無理にすべてを包み込もうとするな」

 

 

さりげなく笹川兄から頼まれていたことを果たす。笹川兄は俺にずっとツナの隣にいて、ツナに何かが起こる度に警告を発してほしかったのだろう。だがそれは叶わず、まるで遺言のような形でその警告はツナに向けた。これ以上‥大空を蜃気楼が傷つけるわけにはいかないから

 

 

ツナ「でも!俺の周りでそういう人が増えるのは嫌なんだ!!そしてそういう人が俺の周りにいたのなら少しでも支えになってあげたい・・それだけなんだ!!!」

 

 

清水「正に大空そのもの・・だな。だがそれなら尚更だ‥蜃気楼なんていう一時的な現象のことは放っておけ」

 

 

ツナ「嫌だ!俺はまだ君が誰だか知らない・・でも君は俺を知っている!!つまり俺と君は知り合いの可能性があるんだ!!知っている誰かを放っておくなんて真似俺にはできないよ!!!」

 

 

ツナの眼の端に滴が貯まってきている。ああ・・ツナ。お前は俺みたいなやつのためにそこまで思って、涙まで流してくれるのか……。だがその恩恵に‥包容に甘えるわけにはいかない。二度も大空を曇らせてあまつさえ雨を降らせてしまったのだから

 

 

清水「俺みたいな朧気なやつより、俺が今姿を借りてるこの子供のことを心配してやれ」

 

 

ツナ「そうだ!フゥ太!!フゥ太はどこに!!」

 

 

清水「心配するな‥この子供は今頃お前の部屋で眠っている。面倒になったら困るから姿は俺が見えないようにしているがな。当然、負っていた精神的負傷や身体的負傷も完治して、マインドコントロールも解除してある。これがその証拠だ」

 

 

そう言ってあの子供がツナの部屋で健やかに眠っている姿を見せる。この一件が終わったら透明化を解除してやればいいだろう。それで今回の俺の仕事は完遂する。

 

 

ツナ「よかった……本当に‥よかった。」

 

 

清水「さ、見せるべきものも見せたし俺はこれでさようならだ」

 

 

ツナ「ま、待って!まだ話したいことはいっぱいあるんだ!!」

 

 

清水「泣きそうな顔をするな、次期ボンゴレボス十代目候補。ボスがそんなんだとファミリー全体が舐められるぞ」

 

 

悲しくても、哀しくても、今は泣くな。その眼の端にモノが溜まっている顔を俺に見せないでくれ。俺が死ぬ。お前は帰ってから泣け。お前にはお前の帰りを待っている奴が大勢いる…お前にはお前を受け入れてくれる奴が…その雫を分かち合ってくれる人たちが

 

 

ツナ「待って!せめて君の名前だけでも!!」

 

 

清水「言ったはずだ、怪物()に名前はないと。だがお前は俺の名前を知っているはずだ」

 

 

ツナ「えっ・・それってどういう……」

 

 

清水「俺に名前を付けたのは紛れもないお前だ。あの時・・並中で寝ていた俺にな」

 

 

ツナ「!!君は・・まさか!!」

 

 

清水「じゃあな、ツナ。健闘を祈る。また縁があったらどこかで会おう。お前が俺を覚えているのならな」

 

 

ツナ「待って!清水君!!君は!!!」

 

 

ツナが俺の名前を呼ぶ声に応えたくなる心を殺し、ツナ達三人にあの子供を救出した人物などといった記憶の一部置換と置換した部分以外での俺に関わる記憶を消去した。

 

 

ツナ「し・・みず‥‥くん」

 

 

ツナに見られないように自分の姿を消し、ツナが俺の名前をつぶやきながら気を失うのを静観する。

 

 

ありがとう‥ツナ。お前は[[rb:清水健人>俺]]の、そして[[rb:俺>地獄の悪鬼]]の唯一にして最大の親友だった

 

 

清水「さぁ‥これで俺はそこに眠るボンゴレファミリ―十代目ボス候補とは何の関係もないただの幻覚だ」

 

 

そう自分に言い聞かせるように呟くと俺は赤髪の女に仕掛けた()()()()によりその女の体内に吸い込まれるようにして消えた。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

ズドォォォォォォン!!

 

 

暗く閉ざされ静寂に包まれた空間に突如、快刀乱麻を断つようにして轟音が轟く。その轟音と同時に床に大きな凹みができ、そこには学生服を着た一人の男が気を失っているのか倒れていた。そしてその男の隣にはグローブと額から橙色の炎をだしている男とスーツを着た赤ん坊が立っていた。

 

 

リボーン「終わったな」

 

 

その赤ん坊の台詞と共に燃え盛っていた橙色の炎は消え、それを灯していた男は温和な雰囲気を匂わせながら答えた

 

 

ツナ「うん…あっ!ランチアさんの毒は?」

 

 

リボーン「心配ねぇぞ、ボンゴレの医療班が到着した。ランチアの毒も用意した解毒剤で間に合ったそうだ」

 

 

ツナ「よかったぁ…。骸‥!し、死んでないよな?無事だよな!?」

 

 

リボーン「ったく甘いなお前は」

 

 

その時、倒れこむ男と同じ服を着た二人の男が這いずりながらもその男に近づいていった。

 

 

温和な雰囲気の男は自分に憑依し、利用していた男になぜそこまで忠義を果たせるのかと問いただす。

 

 

一方、赤ん坊は制服を着た男三人がなぜそこまでマフィアを恨むのか。その理由を問う

 

 

その問いに対し這いつくばる二人の男は自分たちの壮絶で悲惨な過去を語る。

 

 

自分たちはかつて所属していた組織がとある理由により壊滅の危機に陥り、その事態の打破が急務となった上層部に人体実験のモルモットにされ、逃げ出すことも許されず人道を外れた実験ばかり行われていたこと。そして、そんな状況を文字通りぶち壊したその男についていくと決め、自分たちをそんな目に合わせたマフィアというものに対し復讐を誓ったと

 

 

その話を聞いた温和な男はどこか悲し気な表情を浮かべながらも

「自分も仲間が‥自分の居場所が傷つくのを黙ってみていられない」

と事情を理解しつつもそうはっきりと答える

 

 

その男の宣言の直後、その部屋の非常口から黒いロングコートと黒いシルクハット、顔や服の隙間など本来肌が見えるべき場所は包帯で巻かれているという何とも異様な格好をした人物が三人現れ、制服の男たちを首輪付きの鎖で拘束し、連行していった。

 

 

ツナ「誰‥今の人たち」

 

 

リボーン「復讐者(ヴィンディチェ)。マフィア界の掟の番人で、法で裁けないやつらを裁くんだ。そしてツナ、あいつらには逆らうな。逆らうと面倒だ」

 

 

ツナ「でも…。それじゃあ骸たちはいったいどうなるの!?」

 

 

リボーン「さあな‥だが甘くはねぇぞ。俺達の世界(マフィア界)は甘くねーからな」

 

 

ツナ「……。いッ!イテテテテテ!!ナニコレ!?体中が筋肉痛!!」

 

 

リボーン「小言弾のハイパー死ぬ気モードは凄まじく全身を酷使するからな。その反動が痛みとなって帰ってきたんだぞ」

 

 

ツナ「なんじゃ!!そりゃあ!!……‥」

 

 

リボーン「あまりの痛さに気を失ったか。まだまだみっちり鍛えねぇとな。でもこれで、九代目からの指令はクリアだぞ。よくやったな。俺も鼻がたk…」スピー

 

 

言葉を言いきる前に赤ん坊は先に気絶して倒れてしまった温和な男を枕にするかのようにして眠った。しかし・・その部屋には未だあの全身包帯と黒ずくめの異様な者たちが残っていた。その部屋に横たわる赤い髪の女の方をじっと見つめながら…

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

復讐者「ボンゴレ・アルコバレーノ。両者トモ眠ッタ。ソロソロ姿ヲ現セ…侵入者」

 

 

???「侵入者って…まぁ、その通りだけどさ。俺だって来たくて来たわけじゃないし…むしろ無理やり連行されたから被害者だぞ?」

 

 

赤い髪の女から声が室内に響き渡ると同時に、その体から湯気のようなものが舞い上がり、やがて一人の人の形を形成して包帯男たちの前に現れた。

 

 

復讐者「御託ハイイ。単刀直入ニ訊ク。貴様ハ何ダ」

 

 

???「俺は…‥。いや、いい。俺に名前はない。前の世界だと親は俺の名前つけずに死んでいつの間にか名前のない怪物なんて通り名がついてた。だから呼ぶならそう呼んでくれ」

 

 

男は口を開き始めたが、横で安らかに眠る温和な男をどこか羨望と感謝が入り混じった目で見つめると、言葉を改めそう語った。

 

 

復讐者「我々ガ訊イテイルノハソウイウ事デハナイ。今ノ貴様ガ何ナノカト訊イテイル」

 

 

男は包帯男たちのその問いに対しどこか困惑した表情を浮かべ、頬を片方の指で搔きながら言った

 

 

???「それに関しては俺もいまいちよくわからねぇんだ。なんとなくだがあんたたちとは同じ感じがするけど・・ちょっとばかり違うみたいだし……。」

 

 

男がそういった瞬間、包帯男たちから針のように鋭く氷のように冷たい殺気がその男に向けられていた。だが、その男は表情を変えるどころか汗一つかかずに変わらぬ態度であり続けた

 

 

復讐者「貴様…我々ノ正体ヲ知ッテイルノカ…」

 

 

???「知らねえし興味もない、ただ何となく似た感じがするってだけだ。それよりもだ…あんたらよく気づいたね。俺がとっくに気づいているってことに。一度完全に俺を失くしたんだけどなぁ…なんでわかったの?」

 

 

復讐者「笑ワセルナ。ボンゴレガ、コノ男ドモニ『自分ノ居場所ガ傷ツクノヲ黙ッテミテイラレナイ』トイッタ時、貴様ハ静カニ笑ッタダロウ。ソレニ気ヅカナイ我々デハナイ」

 

 

???「あちゃー…やっぱりバレちゃってた?あの赤ん坊も気づかなかったみたいだからいけるかなーとか思ったんだけどな。やっぱこの世界にもすげぇ奴はいるもんなんだな」

 

 

復讐者「貴様・・フザケルノモイイ加減ニシロッ!」

 

 

男の飄々とした態度に業を煮やした包帯男の一人がコートの袖から鎖を出し、殺気を先程よりも強め男に向けると、その男はまるでそれを待っていたかのように嘲笑うかのような笑みを浮かべ再び自分を湯気のようにゆらめかせた

 

 

復讐者「貴様ッ!逃ゲルノカ!!」

 

 

???「逃げる?馬鹿言っちゃいけない。俺はそこに眠っているボンゴレの手助けをするためにここに来た。そして今回の一件はもう終わっている。故に、俺はお前らと戦う理由はない。それだけの話だ。これは逃走ではなく帰還だ。お前らも帰った方がいいぞ、もうすぐここにマフィアの医療班が来る。顔を合わせたくはないんだろう?」

 

 

復讐者「フッ…。帰還ダト?妄言ヲホザクナ。貴様ノヨウナ蜃気楼()ガイッタイ何処に帰ルトイウノダ」

 

 

興奮する包帯男とは反対にどこまでも冷静沈着な包帯男が皮肉を込めてそう呟くと、今にも消えかけている男はこう返した

 

 

???「確かに。俺はそこの大空を陰から支えるのが仕事だ。つまりその男が歩みを止めない限り帰還はあり得ない。だからこれは帰還というよりは…出発だな。またその男に災難が降りかかったときに支えられる場所へと出発するんだ。」

 

 

復讐者「貴様ニハ、ボンゴレガコノ先歩ム道ガ見エテイルト?」

 

 

???「ま、今のツナはあくまで‘‘ボス候補’’だしな。候補ってことは他にも一人は候補がいるってことだろ?それなら次にマフィア共がやることと言えば決まってる。どっちがボスに相応しいか競わせでもするんだろ。今のボスはツナみてぇな穏健派かもしれんが、マフィアのボス争いが無血で終わるわけがねぇ。必ず一悶着ある。」

 

 

復讐者「……」

 

 

???「ああ、それと。そこの興奮冷めやらぬ包帯男。俺と戦いたいなら真ん中にいる男みたいにとまではいわないがもう少し冷静になれ。術師相手に冷静さを欠いたらその時点で負けだぞ。じゃあな、もう二度と会わないことを祈ってるよ……自動人形(オートマタ)

 

 

復讐者「「「死ネッ!!」」」

 

 

男の言葉が終わる刹那、男が立っていた場所を一斉に鎖鎌が三方から襲ったがその攻撃が男を穿つことはなく、ただ床の埃を巻き上げながら虚しく虚空を突くだけだった。

 

 

 

大空を陰から支える蜃気楼

 ~黒曜編 第四話~

    終わり




復讐者のキャラ崩壊がすごい…。こんなにすぐ頭に血がのぼるキャラじゃないのに

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