大空を陰から支える蜃気楼   作:itigo_miruku121

7 / 8
雨戦の描写に力入れ過ぎた…。
それでも乏しい表現力だけど、自分なりに頑張ったつもりです




大空を陰から支える蜃気楼 リング争奪戦編 ~2話~

 嵐のボンゴレリング争奪戦が行われた翌日の深夜、並盛中学校の校舎B棟では雨のリング争奪戦が行われている。

前日の嵐戦とは戦場もかなり違っており、校舎はまるでシェルターのように外と完全に遮断され、窓には何枚もの厚い鉄板がはめ込められている。そして、校舎に映し出されたスクリーンには校舎内の様子が見て取れた。

 

 

 校舎内はまるで大きな地震が起きた後のように床や天井、柱の数本などが粉々になっており、屋上に設置された貯水タンクから激しい轟音とともに大量の水が毎秒注がれていた。覆面女の説明では、この水は特殊な装置により海水と同じ成分にされ、一定の水位に達すると獰猛な海洋生物が解き放たれる・・・・ということらしい。

 

 

ミラッジョ『あそこまで閉鎖されて、校舎内で戦われるなら術師の仕事は決着がついてからだな。・・・それまではじっくりと見物させてもらおう』

 

 

 俺はスクリーンに映し出される山本とスクアーロという名前の白髪のロン毛剣士の戦いを見ながら、特に意味もないのに宙に浮いていた。

 

 

スクアーロ『ヴぉおおおおおおい!刀の小僧!!貴様この短期間でなにがあった!!前の戦いとはまるで別人じゃねぇか!!気に入ったぞぉ!』

 

 

山本『ははっ、アンタにそう言われるってことは確かに強くなってんだな。でもまだまだこんなもんじゃねぇぞ・・・俺はアンタを倒せるくらい強くなってるつもりだからな』

 

 

スクアーロ『ハッ!言うじゃねぇか刀の小僧!!だったらその証拠を…見せてみろぉ!!』

 

 

スクアーロというロン毛剣士はその名の通りまるで鮫のごとく獰猛に目の前の獲物(山本)に襲い掛かりその鋭い牙を山本の骨肉につきたてようとする。対する山本もそんなスクアーロの攻撃をいなし、僅かな隙を見つけてはそれを縫うようにして目の前の(スクアーロ)に堅実に一撃一撃を加えていく。

 

 

ミラッジョ『スクアーロとかいう奴…遊んでやがるのか?プロにしては動きに無駄な動きが多すぎる…。山本の攻撃を受けているのがその証拠だ・・何を考えてる?それに・・なんだ?この妙な違和感は…』

 

 

 俺がスクアーロの動きになんとも言えない違和感を感じている最中も試合は進行し、校舎内の水位もアキレス腱の少し上程度まで上がっていた。

 

 

山本『時雨蒼燕流、攻式五の型。五月雨ッ!』

 

 

 山本が中斬りを放ちながらすばやく刀の持ち手を変え、タイミングをずらしスクアーロに斬りかかる。しかし、スクアーロはその一連の行動を待っていたかのように斬撃に己の剣を合わせた。まるで罠にかかった獲物を見るような不敵な笑みを浮かべながら…

 

 

ガキィィン!!

 

 

山本とスクアーロの剣戟が合わさった時、鼓膜が破れるほどの金属音が鳴り響いた。そして、山本の手がまるで麻痺しているかのように一切動かず、スクアーロがあることを高らかに宣言した。それは、俺が感じていた違和感を説明するには十分なものだった。

 

 

スクアーロ『お前が使っているその剣。時雨蒼燕流はな…その昔!俺がこの手で捻り潰した流派の一つだ!!つまり!この戦いでお前がその流派を使い続ける限り!俺には勝てないってことだ!!わかったか!刀の小僧!!』

 

 

山本『ッ!時雨蒼燕流を・・・潰した?』

 

 

ミラッジョ『なるほど・・違和感の正体が分かった。山本の使う技は全部ばれてたってわけだな』

 

 

 スクアーロはその後、そのときの詳細を誇るように語りだした。この世界の剣帝といわれたテュールという男を倒し、己の剣を完成させた。そして彼はその剣を試すために世界各国の様々な流派の後継者を相手に戦い潰していった。そのうちの一つに山本が使っている時雨蒼燕流があった・・・というわけである。

 

 

スクアーロ『分かったか刀の小僧!お前には最初から敗北しか用意されてなかったんだよ!!分かったら……死ねぇ!!』

 

 

 山本に最後の一撃を与えるスクアーロ。山本は動かぬ片腕をもう一方の腕で殴って無理やりに動かし、何とかそれを回避する。そして体勢を立て直すためスクアーロから逃げる。

 

 

ミラッジョ『山本の奴。獄寺よりもその場の状況判断が長けている。だが・・これからどうする?』

 

 

 山本はスクアーロがいる階層より一つ上の階層で麻痺が取れぬ腕を冷やすが、スクアーロは山本がいる階層の床ごと自分の剣で壊し、山本の命を齧り取ろうとする。

そうして落ちてきた山本の首をスクアーロは掴み、喉に剣先をあてながら山本を挑発する。

 

 

スクアーロ『ヴぉおい!刀の小僧!!最初の威勢はどうしたぁ!?それとも…その足りねぇ頭でも敵わねぇと悟ったか??……だが俺は知ってるぜ?まだ一つ・・出していない型があるってな?』

 

 

山本『・・・』

 

 

スクアーロ『時雨蒼燕流、攻式八の型。その名を秋雨。俺が倒した継承者が最期に出した技だ!』

 

 

山本『あき、さめ・・・?』

 

 

スクアーロ『ああ、そうだ!あの老いぼれたカスが最期に放ち、俺に見切られ、三枚におろされた秋雨だ!!お前も時雨蒼燕流を使うなら…伝承者と同じ最期をたどりやがれ!!』

 

 

 そういってスクアーロは山本を蹴り飛ばす。言葉の通りに秋雨をうって来いといわんばかりに…。そして、実際その顔は、眼は、両端が上がった口角は、そう告げていた。

 

 

山本『そういうことかよ…親父』

 

 

ミラッジョ『山本の表情が変わって、目に光が宿った。何かに気づいたな』

 

 

 蹴り飛ばされた山本は大海に浮かぶ浮島のように、徐々に上がる水位の中何とか一角を水面上に出している瓦礫の上で立ち上がり、スクアーロのほうに向き直り、剣を構えた。

 

 

スクアーロ『その両手で柄を持ち、居合いのような独特の構え……知っているぞ!さぁ、打て!秋雨ォォ!!』

 

 

スクアーロの言葉が終わると同時に両者は駆け出した。一方は余裕を感じさせる不敵な笑みを浮かべながら、もう一方は何かを信じ、それ以外の一切を考えていないような真っ直ぐで明確な意志を宿した眼を向けながら

 

 

スクアーロ(終わりだ…)

 

 

山本(時雨蒼燕流、攻式八の型・・・)

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 両者が交差したその刹那、二人の周りに銀色の閃光が煌いた。そしてその閃光とともに刀の峰で思いっきり殴られる音が数回聞こえ、ある一人が少しはなれた場所飛ばされ沈んだ。

 

 

山本『あははっ・・やっぱりな』

 

 

白いロン毛を己が剣で斬り飛ばした男__山本武は自分が考えていたことが正しかったという結果に軽い笑いを飛ばし、男が沈んだ水面を見つめた。

 

 

スクアーロ『貴様ァ!時雨蒼燕流以外の流派を使えるのか!?』

 

 

飛ばされた男__スペルビ・スクアーロは己を斬り飛ばし、自身の予測とはまるで違う技を繰り出した男を見つめ、騙されたような表情を浮かべ言った。

 

 

山本『いいや、今のも時雨蒼燕流だぜ。あんたが知らない技だったってだけだ』

 

 

スクアーロ『何だと!』

 

 

山本『八の型、篠突く雨は親父が作った型だ!』

 

 

 親父が作った型。目の前の刀小僧は確かにそう言った。その言葉は自分の中にあった剣豪としてのプライドを揺るがし、かつてある男に誓った負けないという誓いの根底を覆しかねないものだった…。

 

 

スクアーロ(同じ流派を名乗っておきながら違う型を作る……。まさか!時雨蒼燕流は継承者の弟子がそれぞれ違う型を編み出すのか!!同じ流派を名乗って!!)

 

 

 男にとってそれは信じがたい事だった。男が己の剣を試す相手として時雨蒼燕流を選んだ理由は、完全無欠最強無敵を謳っているという事だけではなく、継承は一度きりという噂が流れていた事もその一因だった。

自分がそれまで相手してきた流派はそのほとんどが継承の機会は複数回あり、たとえ一度継承に失敗しても、また次の機会に成功すればよい・・というものだった。

 

 

しかし、その流派は一度継承に失敗すれば二度とその流派を名乗ることもできず、流派自体が途絶えてしまうという狂気じみた継承方法と、そんな方法の中でまるで自分を追い込むように完全無欠最強無敵を謳う…。そんな修羅道を自ら歩む流派……その名を時雨蒼燕流

そんな流派の存在を知っては一人の剣士として昂る自分の血を抑えられなかったのである。

 

 

スクアーロ『まさか貴様がここまでやるとはな…。だが!すでに一度くらった篠突く雨は既に見切った!!さっきみてぇな奇跡はもう二度と起きねぇぞ!刀の小僧!!』

 

 

 自分の知識不足が原因とは言え、自分に確かに一撃を加えた男に心からの称賛を送る。本来なら、目の前の才ある男に剣技を教え、自分と同じ剣の道を進んでもらいたいが…これは真剣勝負。そんなことを口に出すのは相手に対し失礼であり、なにより自分のプライドが赦さないのだ。

 

 

山本『流石だぜ・・そうこなくっちゃな。んじゃ、いってみっか・・時雨蒼燕流、九の型!』

 

 

 目の前の刀小僧はまるで野球のバッターのような構えをとる。自分に一撃を加えたほどの男がそのようなふざけた構えを取る。本人は野球しか取り柄がないと言っていたが…ふざけるな・・貴様はそれほどまでに才を持ちながら・・何処まで俺を…世の剣士を侮辱するッ!

 

 

スクアーロ『図に乗るなガキィ!俺の剣の真の力を思い知れぇ!!』

 

 

 我が魂の咆哮とでも言わんばかりに声をあげ、己が剣技の最大にして最強の技を出す。これは貴様に対する俺からの最大の称賛であり、怒りであり、哀しみであり…最高の[[rb:殺意>敬意]]だ。

 

 

 鮫特攻(スコントロ・ディ・スクアーロ)。かつて剣豪と謳われたテュールを倒したスクアーロ最強の剣技にして、最強絶対の技。目にも止まらぬ速さで空を連続で切りながら標的に向かっていき、標的は勿論、その周囲にあるすべてを切り刻む。その速さは足元の水面を抉り、標的までの道のりの水をモーゼの如く割りながら突進していく。その様は正に、海で暴れる暴虐な鮫、そのものだった

 

 

山本『ふんっ!』

 

 

[[rb:刀小僧>標的]]は刀で水しぶきをあげ、自分の姿をくらませる。だが、その程度の小細工でこの技は、俺のこの憤慨は、失望は静まらない。獲物の血の匂いを嗅ぎ追跡する鮫のように標的に向かっていく。

 

 

山本『くっ、ちっ、くそっ・・!』

 

 

スクアーロ『で?どうした!ここまでか!!刀小僧!!』

 

 

 高速で繰り出す剣劇を刀小僧は全て自分の刀で防ぐ。初見でこの速さに追いつけている…やはりこの餓鬼は剣士としての才能がある。なのに・・なぜ・・・その才能をみすみすドブに捨てるような真似をする!

自分のそんな抑えきれない激情は、剣技をより獰猛に、暴虐にさせる。刀小僧はわずかな隙を見つけてまたどこかに姿を消してしまった。

 

 

スクアーロ『どこに消えても無駄だ!潔く死ねぇ!』

 

 

 戦場である校舎そのものを壊すほどの勢いで縦横無尽に駆け巡る。辺りの物を切りつけながら…。その時、自分の目の前の水面に後ろから刀小僧が今にも切りかからんとしているのが映って見えた。

 

 

スクアーロ(逆!?ここまでやるとはな…だが、俺の剣に…死角はない!)

 

 

 俺は自分の肘を逆に向け、後ろの刀小僧の腹に自分の剣を突き刺す。テュールの剣技を自身に取り込むために俺は自分の手を捨て、義手に改造してあるのだ。そのため俺の剣には死角がなく後ろから斬りかかれても何の問題もない。しかし・・俺が刺した刀小僧は一切の血流を流さなかった…

 

 

スクアーロ(この感覚!まさか・・俺が斬ったのは…水面に映った影かッ!)

 

 

 俺の剣で決壊したかのように俺の体全身に水が濁流のような勢いで降りかかる。流石の俺もまるで決壊したダムのように強い勢いの水に襲われては身動き一つとれない…

___そして、その水流が去ったとき、俺は頭に強い衝撃を覚え、視界は足元の水たまりを映していた。

 

 

山本『時雨蒼燕流、攻式九の型。うつし雨』

 

 

 それが俺の耳が水中に入る前に拾った音声だった…。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 山本がスクアーロを下し、勝利を収めた後。覆面女の宣言通り戦場に獰猛な海洋生物が解き放たれた。それは皮肉なことに人喰い鮫だった。

山本はスクアーロの助命を覆面女に訴えるが、女共は『勝敗は既に決したのでこれ以降は我々の管轄外』と言い放ち、他のヴァリアーの面々と共に闇夜の中へ消えていった。

 

 

山本はそれでもスクアーロを助けようとしたがスクアーロ自身がそれを拒み、山本に『剣の腕は悪くないから、あとはその甘さを捨てろ』と言い残し鮫に呑まれていった。

そして、そのスクアーロは今…俺の目の前に気を失い、全身包帯まみれの状態で眠っている。

 

 

 というのも、あの戦場にはキャバッローネファミリーとか言う連中が待機しており、山本が負けた際は彼を助けるために手配されていたのだ。だが、実際はスクアーロが敗北し救出されたという訳である。

余談だがスクアーロを飲み込んだ鮫は俺により刺身にされ、あの地獄で使用していた様々な偽名を使い並盛市中の寿司屋や魚屋に届けられている。

 

 

 で、今の俺はスクアーロが搬送された病院の看護師の一人という事になっており、担当医やディーノとかいうキャバッローネファミリーのボスを幻覚で騙し、こうして密室空間に二人だけという状況を作り出している。

 

 

清水「スペルビ・スクアーロ……お前ほどの男がなぜあんな男に忠を尽くしている。お前はヴァリアーのボス候補だった男だろ?そんな男がなぜ・・ボスの座を他人に譲り、一守護者にまで成り下がっている……。お前の大空には…何がある?」

 

 

 俺は目の前の男に語りかける。当然、返答はなく、心電図の機械音が定期的なリズムを刻みながら部屋に鳴り響くのみ。

 

 

清水「……すこし・・お前を覗かせてもらうぞ。お前の大空が抱える秘密…この争奪戦に隠された真実……その全てを」

 

 

そう言って俺はスクアーロの頭に手を置き、手のひらに意識を集中させる。やがて、蜃気楼()はその姿を消していき、目の前の男に吸われるようにして消えていった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

壁や床、その部屋を支えるすべての柱までもが大理石で出来ている荘厳な造りの一室。壁にはいかにも高級そうな絵画や彫刻が幾つも飾られていた。それらに隠れるように、黒く冷たい黒鉄の銃口が部屋の全方位を狙えるように点在している。

 

 

その部屋は正に裏世界の組織に相応しい部屋で、組織が誇る発足以来から現在に渡り続く繁栄と華やかな歴史という光。そしてその組織を長年に渡り力が全てを支配する裏社会で存続させる所以の一つとなった絶対的力とそれにより手に入れた莫大な金と権力という闇。その二つを象徴していた。

 

 

 しかし、今はそんな豪華絢爛な部屋の面影は消えていた。大理石の壁や床、柱は戦闘の余波により破損や完全に破壊され、中には風化しているものもあった。当然、さぞかし著名な画家や彫刻家がその技術の全てを捧げ、マニアが喉から手が出るほど欲しがるだろう名作の数々は元の形を失くし、絵画は燃え尽き灰の山に姿を変え、彫刻は無残に破壊されただの醜い石の塊となっていた。

 

 

清水「この惨状…あの世界を思い出す。どこの世界でも戦闘が起きればこんな風になるんだな」

 

 

 俺は懐古し懐かしき地獄に思いを馳せながら、目の前に座る傷だらけの若きスクアーロ()に目線を落とす。今の俺はこの男の精神に潜っているだけなので、触れることも会話をすることも叶わないが、それでいい。過去に実際あった事実を知ることができればそれでいい。

 

 

清水「ここがどこかは大体想像つく。で、今お前の後ろで戦っているのが誰なのかも大方予想できる。お前たちは」

 

 

 一度そこで言葉を切り、男から視線を外す。男が倒れかかっている折れた大理石の柱の近くには中心に銃弾が描かれ、その上を交差するように狩猟用の銃とよく似た銃があり、交差する銃口の上には二枚貝に翼が生えている・・そんな紋章が刻まれた一枚の石板がある。今にもひび割れそうな程深い亀裂が入っているそれは、まるでこの組織がこの男の組織に受けた被害を表しているようだった。

 

 

その石板から目線を、染みる傷口とは別の何かに苦悩するようなそぶりを見せる男に戻す。

 

 

清水「お前たちは……()()()()()()()()()()()()()のか」

 

 

 詳しい理由や経緯は知らないが、男が所属する組織は自分たちのボスにその刃を向け、この男とそのボスは自分たちの飼い主(大空)と直接対決をしている…という訳である。

大方、この男は力及ばずに倒れ今は大空どうしで戦っているのだろう。

 

 

???『なぜだ!なぜだ老いぼれ!!答えろ!!』

 

 

 二つの大空が戦闘で発する炎の灯り以外一切の光源がなく、暗く、重く、冷たい空間に荒々しく少し若い声がこだまする。まるで、大空に向かって一匹の肉食獣が遠吠えをするかのように…。

 

 

???『なぜお前は俺に嘘をついた!なぜ正直に言わず俺を裏切った!!』

 

 

 その肉食獣は己が魂の咆哮を叫びながら、相対する大空に喰らいつく。相対する大空は同程度の力をぶつけることでその勢いを相殺するだけで、一切の手を出さなかった。しかし、その包容が、行為が、善意が、肉食獣の精神をより逆撫ですることになった。

 

 

???『それだ、その無駄な善意が…他人を見下し、哀れむような吐き気のする程気持ち悪ィ偽善が!それがムカつくんだよ!穏健派だなんだとほざいていながら、テメェの本性は欺瞞に満ちたカスだ!!テメェも!テメェの守護者も!!外で戦ってるテメェの手下も!!どいつもこいつもクズでカスで使えねぇゴミだ!!』

 

 

???『哀しい男だ。お前は・・なぜ?』

 

 

 あらん限りの罵倒を受けた男が初めてその口を開く。その声は年老いた老人そのものであり、とても業界最強と謳われた暗殺組織のナンバー2を倒し、連戦でボスと戦い、ましてやその攻撃の一切を相殺し、疲弊させるほどの戦闘技術を持っている男の声とは思えなかった。

 

 

清水「状況から見て、この声の男がボンゴレファミリーの現ボスか。年老いているとはいえ、この巨大な組織をまとめ上げるだけのカリスマと戦闘力…裏世界最強は伊達じゃないな」

 

 

???『うるせぇ!それはテメエが一番よく知ってんだろうが!』

 

 

 肉食獣の雄叫びは未だ続く。目の前の老人に対する憎悪はまだまだ収まらないのだ。

 

 

???『なぜお前は俺が自分の本当の息子ではないことを黙っていた!|超直感()()()()()()()()()()()()がなくてはボンゴレのボスになれねぇってことを!!俺がボンゴレのボスにはなれねぇってことを!楽しかったか?愉快だったか?真実を知らねぇ[[rb:ガキ>俺]]がテメェの嘘に見事に騙され、長年に渡りその掌の上で操り人形みてぇに踊るさまは!!』

 

 

 ボンゴレのボスに自分はなれない。そう魂からの咆吼をあげる。その叫びには目の前の男に、大空に裏切られた悲痛と憤怒が、哀れで愚かな自分に対する憤りと嘲りが含まれていた。

 

 

清水「なるほど…これで納得がいった。ブラッド・オブ・ボンゴレってのが何なのかはわからねぇけど、今回の争奪戦は全て仕組まれたことだったわけだ。となれば・・やることもおのずと決まっている」

 

 

 俺は悲哀と憤慨に満ちた叫びが轟き続ける暗闇からその存在を消し、元いた病室に戻る。備え付けの時計を見ると時刻は丑三つ時を指し示していた。

 

 

清水「丑三つ時か…|俺()()が動き出すにはちょうどいい。()()()()()()()よ、とくとみてろ。これが、お前たちの()。|名もなき怪物()()()の実力だ。」

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

スクアーロが負けた。あの耳障りな声をもう耳にしなくて良いと思うと幾分か気分が良い。だが完全に気分爽快であるかと言われれば、首を横に振る。なぜなら、この街に来てから微かに感じていた悪寒が、つい数時間前からさらに強くなっていたからだ。

 

 

???「ったく、この僕にまで寒気を生じさせるなんてね。この街にはいったい何がいるというんだい?」

 

 

 自分に割り当てられたホテルの一室の窓を開け、漆黒の帳が降りた住宅街を睨む。そんな僕を嘲笑うかのように、少し強い風が窓から室内へと入ってくる。

‘‘お前では俺は捕らえられない’’まるで正体不明の何かがそう言っているかのように

 

 

 

コンコン

 

 

???「マーモン、いるか?」

 

 

 その風が止むと同時に部屋の扉が叩かれ、一人の男が入ってくる。男の名はレヴィ・アタン。雷の守護者であり、今回の争奪戦では一時は敗北しかけるが、逆転勝利を収めた悪運の強いやつだ。僕はこの男の顔があまり好きじゃないけど、扱いやすい性格をしているから嫌いではない。

 

 

マーモン「やぁ、レヴィ。どうしたんだい?」

 

 

レヴィ「マーモン、お前も感じているか?この何とも言えない重圧感。ボスとはまた違った…」

 

 

 驚いた。この悪寒は術師である僕しか感じていないと思ったけどそうじゃなかったのか。ヴァリアーの幹部の中でもこいつは一番気づかないと思っていたのに…。

それとも、()()()()()()()()()()()()強くなったのか?

 

 

マーモン「無論だよ、なんなんだろうね全く。この街に来てから微かに感じてはいたけど、つい数時間前から急に強くなったよ。怒ったときのボスを目の前にしている時と似た気分だよ」

 

 

レヴィ「まさか・・・あのガキ共が何かをしているのか?」

 

 

マーモン「まさか。あいつらは守護者すらまともに集められないんだ、そんな余裕はないと思うよ」

 

 

 などと口では言っておきながら内心は不安を隠せない。なぜなら、あいつらにはリボーンがいるんだ‥昔から破天荒な奴で何をしてくるか分からない。何をしてくるか分からないのなら用心をするにこしたことはない。

 

 

レヴィ「マーモン。念のために念写を頼めるか?いつもの倍の金額でもいい」

 

 

マーモン「今の言葉、忘れないでよ」

 

 

 レヴィは生理的に嫌いだけど、こういう気前のいいところや即時即決ができるところは気にいっている。イタリアに帰ったらどうやってふんだくってやろうか…。

 

 

マーモン「それじゃあ行くよ、念写」ズビー

 

 

この街に来てやった様に念写をする。あの時レヴィは汚いなんて言っていたけど、今回は相手が謎の存在ってこともあるのか何も言ってこない。いつもそうやって無駄口をたたかないでくれると嬉しいんだけど…

 

 

レヴィ「どうだ?」

 

 

マーモン「待って、そんなにすぐには浮かび上がってこないよ」

 

 

 しばらくして、目の前の紙に何かが浮かび上がってくる。さぁ‥正体を明かしてもらうよ…この街に棲む謎の化物。

 

 

マーモン「な!なんだこれは!!」

 

 

レヴィ「どうした、何があった!」

 

 

マーモン「クソ!どこまでも僕を馬鹿にして!!ふざけるな!」

 

 

レヴィ「落ち着け!何が浮かび上がったんだ!」

 

 

マーモン「これだよ…。まったくもってふざけてる。ここまで侮辱されたのは久しぶりだよ」

 

 

 沸き立つ怒りを抑え紙をレヴィに見せる。レヴィはそれを見て首を傾げている…。当たり前だ‥こんなものが浮かび上がってきたら、その意味を理解しなかったら謎でしかない。

 

 

レヴィ「『Thank you baby』だと?…どういう意味だ?」

 

 

マーモン「さぁね、僕もその真意はわからないよ。でも、一つだけ言えることがある」

 

 

レヴィ「なんだ?」

 

 

マーモン「さっきから感じているこの嫌な重圧感と悪寒。これは[[rb:ヴァリアー>ぼくたち]]に。いや、僕に念写をさせるためにわざと発していたんだよ」

 

 

レヴィ「意図的にだと?なぜそんなことをする…。」

 

 

 ああ、もうこのタコは何で今ので理解しないんだ。この理解力のなさがあるから僕はこいつが嫌いなんだ。

 

 

マーモン「知らないよ。ただ‥()()()()()()()()()()()()()()()()()()それだけは事実だよ。そして僕たちは、その怪物の思惑通りの行動をとったって訳さ」

 

 

レヴィ「俺たちに警戒態勢を取らせるほどの威圧が‥ブラフだと!?」

 

 

マーモン「そうだよ。全く…文字通りの怪物でも棲みついてるのか?この街は」

 

 

 そんな悪態をつきながら再び窓から見える街の景観を睨む。しかし、今度は無風でただ静かに一定のリズムを刻む時計の秒針の音が淋しくぼくの鼓膜に入ってくるだけだ。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 場所は変わり、並盛神社の裏手にある山の山岳部。

 

 

清水「術師が幹部にいるだろうと あの世界で仕事前に集中する感じを思い出して、その気概を町全体に飛ばしてみたが、案の定探ってきたな。」

 

 

 草木も眠り、月明りも町の街頭も星明りも、何も差し込まない完全なる暗闇の中で俺は計画を開始する。先程、あの剣士の精神世界で見た戦いがどうなったかは知らないが、あの時の叫んでいた男の言葉から、今回の争奪戦が正式なものではないことを知った俺は頭を巡らせ一つの計画を立てた。

 

 

清水「今回の争奪戦は云わばあの剣士の大空が織りなす復讐劇の一つだ。恐らくそれはもう始まっていて、ツナを倒せば完遂するのだろう。となれば‥考えることは一つだ。それは…」

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。精神世界できいた通り、ボンゴレファミリーのボスになるためには、ブラッド・オブ・ボンゴレというのが必須である。しかし、あの剣士の大空にはそれがない。ならば、その理由を覆すほどの何かをあの男が成し遂げればいいのだ。例えば……

 

 

清水「例えば、現在のボスをツナに殺させ、その弔いとしてツナを殺す。とかな」

 

 

 今もなお、あの戦いできいた老人の男がボスを務めており、あの叫んでいた男がその老人の息子だという事が信じられていたとすれば…。

それは全ての者を納得させ、ボスになるのに異を唱える者はいなくなるだろう。それどころか、組織の歴史に英雄として名を残すことも可能になる。

 

 

清水「この狙いが仮に当たっていたとしたら、あいつらは現在のボスを何らかの方法でこの戦いに参加させているはずだ。本部には影武者でもおいてな。で、さっきの探りであいつらの拠点と人員構成が分かった。その中でまず怪しいのはあの機械だ。ゴーラ・モスカなんて名前だったが、おそらくあの中だな」

 

 

 わざと(怪物)の存在を匂わせて探らせ、それを逆手に取り敵の内情を知る。相手が精巧な術師であればあるほど、知れる情報も多く、正確なものになる。探ってきた術師は何か特別な存在だったようで、必要以上の情報を知れた。だからそのお礼としてあんなメッセージを残した。

 

 

清水「今、俺が動力源(今のボス)を救ってもいいが‥それだとあいつらにバレる。連中はどうせ暴走でもさせて、アレにツナの守護者の誰かを狙わせる腹積もりだろう。だから俺は敢えて、ツナにあれを破壊させる。ツナにとっては文字通り心が痛む出来事だろうが‥俺はアイツが乗り越えるべき事象まで消してやるつもりはない」

 

 

清水「だから…今、俺がするべきことは俺の隠れ蓑の用意と…連中(ヴァリアー)()()()()()()全員の顔と所在を知ることだ」

 

 

 太陽が昇り、朝霧がまだ少し生じている町の中を、下半身から徐々にその霧に同化させながら進む。

数分後、朝日が雲に隠れ、町を薄暗さが襲う。そして再び朝日が雲からその姿を現した時、すでに街の霧は晴れ、二匹の雀が大空へと飛び立った。

 

 

リボーン「……」

 

 

 その飛び立つ雀をじっと眺める一人の男。このとき彼が何を考えていたか…それを理解できるのは彼と、その雀のみだった。

 

  大空を陰から支える蜃気楼

 ~リング争奪戦編 第二話~

       終わり




アルコバレーノを手玉に取る清水さんマジ化物
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