大空を陰から支える蜃気楼   作:itigo_miruku121
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霧・雲戦です。



大空を陰から支える蜃気楼 リング争奪戦編 ~3話~

マーモン「ふぎゃああああああああああああ」

 

 

骸「君の敗因はただ一つ。僕が相手だったことです」

 

 

 並中の体育館は正に地獄そのものと呼べるものに変容していた。重力は乱れ、床の中心には大穴が空き、壁には次元の切れ目のようなものがいくつも見られ、その様はもはや‥争奪戦というよりは地獄に住まうものが、地上の罪人を引きずり込んでいるようだった。

 

 

ドガァァン

 

 

 やがて、大穴の中心で膨らんでいた()()()が、水素に火を近づけた時のように激しい音と衝撃を放ちながら爆発した。その()()と六道骸との戦いを観戦していたものは皆、その光景に驚きを隠せず、表情を変えなかったのは荘厳な造りの椅子に座る、顔に古傷をつけた男のみだった。

 

 

骸「これで‥いいですか?」

 

 

 ()()が爆発し、消え去るとそれまで異界そのものだった体育館は元に戻り、今までの光景が幻影のように影も形もなかった。冥府へと罪人を誘った男は、覆面をつけた女二人に見せるよう手を開く。その掌には霧の紋様が刻まれた一つの指輪が完成されていた。

 

 

チェルベッロ「霧のリングはクローム・髑髏の物となりましたので、霧のリング争奪戦は沢田綱吉氏側の勝利とします」

 

 

 指輪を確認した覆面の女がそう宣言する。それを聞いた男は後ろに待つ自分と同じ制服を着た二人の男の元へと帰る。

 

 

犬「うっひょー!やっぱ骸様つれー!!」

 

 

千種「流石です、骸様」

 

 

 同じ制服に身を包んだ二人の男…。己と同じ施設にいた頃からついてきた二人の部下が、真っ先に自分の勝利を褒めたたえる。

 

 

獄寺「テメェどの面下げてきやがった!」

 

 

ツナ「待って獄寺君!骸、その・・・ありがとう」

 

 

 部下の称賛と共に、かつて自分と敵対し、自分を打ち負かした者たちがかみついてくる。

しかし、真に自分を打ち負かした者は、この場の誰よりも自分に尋ねたいことがあるにもかかわらず、先に礼を述べた。

 

 

ツナ「でも…何もあそこまでやる必要はなかったんじゃ」

 

 

骸「クフフ。どこまでも甘い男ですね、沢田綱吉。心配ご無用、と言っておきましょう。あの赤ん坊は逃げましたよ。彼は最初から逃走用の力は使わないでとっておいた。抜け目のない[[rb:赤ん坊>アルコバレーノ]]だ」

 

 

古傷の男「…ゴーラモスカ。争奪戦後、マーモンを消せ」

 

 

骸「こちらの大空とは違って、そちらの大空はとても荒々しいのですねXANXUS。まるで嵐のようです。それに…貴方は僕ですら畏怖するほどの計画を企てている」

 

 

XANXUS「ッ!」

 

 

 XANXUSと呼ばれた古傷の男が、その者…六道骸に鋭く冷たい殺気を向ける。しかし、彼は気にする素振りを一切見せず、話をつづけた

 

 

骸「おっと、僕はそれに関与するつもりはありませんよ。あまりいい人ではないのでね。ただ一つ・・・君より弱く、小さいもう一人の後継者候補をあまり甘く見ないことです。先人からの忠告と思ってください」

 

 

ツナ「えっ?」

 

 

骸「それと、沢田綱吉。君も気をつけた方がいい。このリング争奪戦には我々(味方)側でも、ヴァリアー()側でも、チェルベッロ機関(審判)側でもない…第三勢力とも言うべき存在が暗躍しています。その者は今は我々に有利になるように動いていますが、いつ刃の先が向くとも限りませんからね」

 

 

ツナ「それって…」

 

 

獄寺「テメェ‥適当なこと言って十代目を混乱させんじゃねーよ!」

 

 

骸「おや、あなたは僕の言う事が一番理解できるのではないですか?獄寺隼人。なぜなら君は、その乱入者から唯一物理的な接触をこの争奪戦で受けた人物なのですから」

 

 

獄寺「何を言ってやがる…」

 

 

骸「獄寺隼人。あなたはあの最後の図書室での戦闘時に、これまで聞いたことのない声を聴いているはずです。そしてあなたはその声と沢田綱吉の恫喝のおかげで、勝負より命を取った。違いますか?」

 

 

ツナ「本当!?獄寺君!!」

 

 

獄寺「!!……あの声!」

 

 

 そう告げて六道骸はその場に倒れ伏す。次第に男を霧が包みその霧が晴れる頃には男の姿はどこにもなく、髑髏があしらわれた眼帯を付けた女が寝息を立てていた。

 

 

犬「こいつすぐに倒れるぴょん、これだから人間は・・・」

 

 

千種「行こう、犬」

 

 

綱吉「ちょ、この子放置ですか!?」

 

 

犬「起きりゃ自分で歩けんだろ。そいつをチヤホヤするつもりもねーし、それにそいつは骸さんじゃねーからな」

 

 

 そう言い残し制服の男二人組は体育館を後にして、漆黒の闇の中に消えた。それと同時に閉口していたスーツ姿の赤ん坊が口を開き、置き去りにされた女を病院に搬送し、そのついでに獄寺から詳細を聞き出すこととなった。

 

 

リボーン「獄寺、骸が言ってたことは本当か?」

 

 

 並盛市内のとある病院、そこのとある一室に集まった沢田綱吉とその守護者たち。部屋の外や建物の外に誰もいないことを確認し、カーテンを閉めるとスーツ姿の赤ん坊が一人の守護者に問いただす。

 

 

獄寺「ええ、事実ですリボーンさん。確かに俺はあの嵐戦の時、今まで聞いたことのない野郎の声を聴きました。タイミングも骸の野郎が言っていた通り、十代目のあの有り難い恫喝があってすぐの事です」

 

 

リボーン「それだけか?後ろ姿とかは見なかったのか?」

 

 

獄寺「そのあとすぐにタービンが爆発したので…すみません」

 

 

山本「ちなみに、そいつはなんて言ったんだ?」

 

 

獄寺「確か…『ボスの元へ帰してやる。右腕を名乗るのならボスが戦う理由はくらいは理解しておけ』と」

 

 

リボーン「ボスの戦う理由…か。ってことはそいつはツナの知り合いかもしれねーな」

 

 

ツナ「え、えぇーー!俺、そんな不気味な人知らないよ!?」

 

 

リボーン「お前が知らないだけで無効だけが一方的に知ってる場合もあるがな、もしくはそこの間抜けが忘れているだけとかな」

 

 

ツナ「こ、こえー」

 

 

リボーン「とにかくだ。そいつは誰かはわからねぇが俺たちに近い人間であることは確かだぞ」

 

 

了平「どういうことだ?」

 

 

リボーン「そいつはこの争奪戦の存在を知っていた。つまり、俺たち(マフィア)側の人間だ。ここまでは解るな?」

 

 

山本「ああ」

 

 

リボーン「骸が言っていたが、そいつはこの争奪戦中は少なくとも俺たちが有利になるように動いている。さらに、そいつはツナがボンゴレファミリ―の後継者候補であることと、獄寺がツナの右腕を自称していることを知っているってことだ。恐らく今ここにいる連中全員と面識があると考えていいだろう」

 

 

ツナ達「「「「!!」」」」

 

 

リボーン「つーことで、オメェら。何か引っかかることとかねーのか?どんな些細な事でもいい」

 

 

 赤ん坊がその場にいるツナと獄寺・山本・笹川に顔をやる。四人はそれぞれ考えるそぶりを見せ、唸る。

 

 

リボーン「今回と関係あるかは知らねぇが、了平以外の三人は黒曜に殴り込みに行ったときにいたバーズってやつを覚えてるか?あの、帽子をかぶった変態野郎だ」

 

 

獄寺「ああ、あのクラリネット女の後にいた野郎ですか」

 

 

ツナ「京子ちゃんとハルを狙って、シャマルと大人イーピンに返り討ちにあった…」

 

 

山本「そいつがどうかしたのか?」

 

 

リボーン「実はな、あの黒曜の一件があってから、そいつが消息不明になっている」

 

 

獄寺「どういうことですかリボーンさん!」

 

 

リボーン「落ち着け。あの一件で骸に加担した連中はそのバーズってやつとそいつが操っていた双子を除いては全員が復讐者(ヴィンディチェ)に一度捕まっている。だが、そいつらだけは捕まらず、どこにいるかもわかってねぇ」

 

 

ツナ「死んだ・・・ってこと?」

 

 

リボーン「おそらくな。だが、死体があがってないうえに、ボンゴレガ確かめた限りだと殺ったやつも出てきてねぇんだ」

 

 

獄寺「それじゃあ…」

 

 

リボーン「ああ、文字通り消えちまってんだ。無論、ボンゴレをはじめとした巨大マフィアが総力を挙げてバーズの消息を追っているが、今のところ何一つ情報がねぇ。こんなことは俺も初めてだ」

 

 

リボーン「それにな、今思えば黒曜の件にはいくつか不可解な点がある」

 

 

山本「その、バーズってやつの消息以外にもか?」

 

 

リボーン「ああ。不可解というよりは、なんかしっくりこねぇんだ。霧の中にいるみてぇに」

 

 

了平「実は…俺も一つ極限に腑に落ちないことがある」

 

 

 それまで黙っていた了平が、リボーンの話に促されたかのようにその重い口を開く

 

 

了平「沢田、お前は俺が倒されたときに俺の病室に来たよな?」

 

 

ツナ「ええ、お兄さんが倒れたと聞いてすぐに…」

 

 

了平「実は、あの後お前たち以外の誰かが俺の病室を訪れたような気がしていたのだ。並盛中の制服を着たやつに…。そして、俺はそいつに何かを頼んだような気がするんだ…その内容は思い出せないが」

 

 

リボーン「!!了平、それは本当か?」

 

 

了平「確証はないがな。だが、そうだと俺の頭のどこかが叫び続けている」

 

 

獄寺「ボクシング部の後輩でもねーのか?」

 

 

了平「いや、後輩ではない。後輩たちも確かに来たが、ツナと同じ日ではない」

 

 

山本「ボクシング部の後輩と俺たち以外で先輩と面識がある並中の生徒…っすか」

 

 

了平「クラスの奴でもなかった。いくらボクシング馬鹿な俺でも、クラスメイトの顔を覚えないほど薄情ではないからな。それにしても・・・うがあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!極限にモヤモヤするぞぉぉ!!」

 

 

ツナ「ちょ、お兄さん!声が大きいですよ!!」

 

 

了平「ああ、すまん。いつもの癖が出てしまった」

 

 

獄寺「体力バカの芝生頭は放っておいて・・・。クラスの連中でもボクシング部の後輩でもない、芝生頭と面識がある並中の生徒・・・か」

 

 

山本「なんか、雲をつかむような話だな」

 

 

獄寺「お気楽に言ってんじゃねえぞ野球バカ!つーか、オメェは何かねえのかよ」

 

 

山本「__それが、生憎何もなくてな。俺は獄寺があの眼鏡に襲撃されるまで事実知らなかったし、乗り込んだ後でもあの鉄球使いのところで気を失ったからな」

 

 

獄寺「チッ、使えねぇな」

 

 

山本「ハハッ、だな」

 

 

ツナ「……」

 

 

 山本はいつものようにお気楽に獄寺の小言に返す。了平は靄がかかった真実に対するストレスを大声で発散させる。そしてツナは何か物耽るように黙りこくり、下を向く。

 

 

リボーン「…これ以上は考えても無駄だな。お前ら、とりあえず用心だけはしておけ。この争奪戦、何か得体のしれねぇもんが関与しているのは事実だからな」

 

 

全員「「「おう」」」

 

 

 その場はそれで解散になり、それぞれ帰路へとついた。だが、病院内で黙り込んでいたツナが就寝前、こんなことを言ってきた

 

 

ツナ「なぁ、リボーン」

 

 

リボーン「どうした」

 

 

ツナ「骸と戦った時、フゥ太って骸に操られてたんだよな?」

 

 

リボーン「ああ。ビアンキを刺してお前にも襲い掛かったな」

 

 

ツナ「…あれって本当に俺たちの知ってるフゥ太だったのかな?」

 

 

リボーン「どういうことだ?」

 

 

ツナ「あくまで直感なんだけど、あの時のフゥ太は本物じゃなかった気がするんだ。別の誰かがフゥ太に化けていただけで、本物のフゥ太はあの時、あの場にいなかった・・・・・・と思う」

 

 

リボーン「まさか…その正体が了平の見舞いに来た奴だって言うのか?」

 

 

ツナ「わからない。あとそれともう一つ気になってることがあるんだ」

 

 

リボーン「なんだ、はっきり言え」

 

 

ツナ「これも確証はないんだけど、お兄さんの見舞いに来たって言う並中の生徒は俺と同じクラスだと思う」

 

 

リボーン「なんだと?」

 

 

ツナ「お兄さんの話を聞いて思い出したんだ。俺、黒曜の連中が並中の生徒を襲撃し始めた時、並中の制服を着た誰かと親し気に話していたことを……」

 

 

リボーン「……そいつはどんなことを言ってたんだ?」

 

 

ツナ「あんまりはっきりとは覚えてないんだけど…。俺みたいに怯えてはなかった気がする・・・」

 

 

リボーン「・・・そいつはヒットマンだったのか?」

 

 

ツナ「ううん、覚えてる限りだと俺と同じ一般生徒だったはず。でも、今考えてみれば変だった。あの時俺みたいな一般生徒は皆だいたい同じように怯えていたのに、怯えるそぶりすら見せないで冷静に状況を判断してたから…」

 

 

リボーン「ボンゴレ(俺たち)以外にもお前の周りに潜入している奴がいるってことか」

 

 

ツナ「なぁ、リボーン。お前はボンゴレは何か他に知らないのか?」

 

 

リボーン「・・・実はな、これはまだ未確認の情報だが、今回の争奪戦で審判をしてるチェルベッロの連中にこの争奪戦の直前、怪しいやつが所属したって噂があるんだ」

 

 

ツナ「怪しいって・・・どんなやつだよ」

 

 

リボーン「それが…所属するときにそいつが名乗ったという名前と性別以外の一切が不明な奴でな。常にフードを被り変声機で声を変えてるから顔も肉声もわからねぇんだ」

 

 

ツナ「なんだよソレ…聞くだけで胡散臭いやつじゃん」

 

 

リボーン「ああ、こうも露骨に怪しいから俺もあんまり信じちゃいねぇんだが。ちなみに、そいつの名はミラッジョって言うらしい。イタリア語で蜃気楼って意味だ」

 

 

ツナ「蜃気楼…。なにそれ、意味わかんないよ」

 

 

リボーン「とにかくだ。現状コイツに関しては謎だらけだが、この蜃気楼野郎が了平やお前の言っていた並中の生徒と同一人物だとすると、ほぼ全ての辻褄が合うんだ」

 

 

ツナ「それってどういうこと……」

 

 

リボーン「蜃気楼野郎は黒曜の時はオメェのクラスメイトとしてお前や了平に接触し、俺たちの事情を知った。そこで何らかの方法で骸の支配下にあったフゥ太を助け自分が成り代わることで骸とも接点を持った。そして、その後争奪戦の事を知ったそいつは審判として動く裏で獄寺を救ったんだ」

 

 

ツナ「なんでそんな事…」

 

 

リボーン「さあな、そればっかりは本人にきかねぇと分かんねぇ」

 

 

ツナ「ああもう!XANXUSだけでも怖いのに、そんな不気味な人まで絡んでるとか死ぬほど怖いよ!!」

 

 

リボーン(だが、そうだとしても…。何故、そいつはバーズを殺したんだ?あの時ツナを狙った刺客は他にもいた。だが、そいつはバーズだけを殺し死体を消した。骸たちとバーズの違いは何だ?そいつの中でバーズと骸を区別化させた理由ってのは…いったいなんだ?)

 

 

 赤ん坊や大空の心中に陰りが見えながらも、夜は明けていく。大空は未だ習得できぬ大技の習得に向け文字通り死ぬ気で奮励し、その守護者たちもそんな彼にこれ以上用余計な不安をかけないようにと、各々がそれぞれ考え、話し合い、できることをしていく。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 そして、守護者戦最終日、雲のリング争奪戦の開戦時刻。ぶつかり合うのは互いに最強と謳われる守護者たち。そして、戦場も地面には数多の地雷、四隅には動体に反応して射撃するガトリングが置かれるなど、そんな強者に相応しい過酷で悲惨で無常なものになっていた。

 

 

 長髪の女「それでは、雲のリング。ゴーラモスカVS雲雀恭弥・・・バトル開始!」

 

 

 長髪の女による開戦宣言がなされると同時に、黒いロングコートに身を包んだモスカがロケットエンジンを噴射し、指に仕込まれた小型ガトリングを雲雀に向け撃ち続けながら、高速で接近する。

 

 

雲雀「……」

 

 

 対する雲雀は銃撃を難無く躱しながら、蛇行してその照準を絞らせない。だが、その蛇行で地雷のいくつかが反応し、甲高い警告音の後耳を劈くほどの轟音を立てて破裂する。

 

 

 黒煙がたちのぼる中、冷徹な機械の肌がそれを突き破り、雲雀をその視界に捕らえ息の根を止めに来る。

 

 

雲雀「……!」ブンッ

 

 

 雲雀は待ち望んでいたかのようにそれを迎撃し、モスカの腕を自慢のトンファーで粉砕し、さらに数発を動きのとまった金属の塊に見舞う。それらすべては数多の殺戮兵器を搭載した[[rb:殺人兵器>キリングマシーン]]を動かないガラクタに変えるには十分だった。

 

 

 地雷の爆裂音とは比べ物にならない衝撃音と衝撃波、そして倍の黒煙を一斉に放出しながら、モスカは稼働を止めた。雲雀はそんな巨大な爆発の中、リングを完成させるとそれを長髪の女へ放り投げ、その戦場で唯一座している男を挑発する。

 

 

雲雀「さぁ、降りておいでよ。そこの座ってるキミ。猿山のボス猿を噛み殺さないと帰れないなぁ」

 

 

レヴィ「なぬ!」

 

 

ベル「なぬじゃねーよ、タコ」

 

 

レヴィ「タコぉ!?」

 

 

ベル「この争奪戦、俺らの負け越しじゃん。どうすんだよ、ボース」

 

 

XANXUS「フン、モスカが一撃でやられたんじゃ何も言えねぇ。俺たちの負けだ」

 

 

雲雀「そういう顔には見えないよ」

 

 

XANXUS「向かってくるのは勝手だが、俺は手を出さねぇぞ。そこのガラクタを回収しに行くだけだからな」

 

 

 玉座に坐した男はその場で跳躍をし、雲雀の前に降り立つ。それと同時に雲雀は愛用のトンファーを目にも止まらぬ速さで振るうが、男はその悉くを躱す。

 

 

また、二人が移動するにあたり設置されたガトリングが火を噴き、地面の各所に埋まっている地雷が次々を爆発するが、二人はそれらを気にする素振りを見せずに激しい攻防を繰り広げる。

 

 

雲雀「いつまでそうしてるつもり?」

 

 

XANXUS「言ったはずだ、手は出さねぇと」

 

 

雲雀「好きにしなよ、どの道君は噛み殺される。それに変わりはないんだから…」

 

 

レヴィ「おのれ、たかが中学生のガキがボスを愚弄しおって…」

 

 

ベル「待てよムッツリ」

 

 

レヴィ「ん?ムッツリ?」

 

 

ベル「勝負に負けた俺らが手を出してみな。次期十代目への反逆とみなされて、ボス共々全員即打ち首じゃん」

 

 

レヴィ「では、あの生意気なガキの蛮行を黙ってみていろというのか」

 

 

ベル「さぁね。でも、なんか企んでるぜうちのボス。何企んでるかは知らねぇけどな」

 

 

 天才と謳われた王子の言う通り、雲雀に今なお攻撃されているXANXUSには先程から不敵な笑みが絶えず、その口角は歪んでいた。そしてその視線は、目の前の雲雀ではなくその奥に放置されている[[rb:ガラクタ>モスカ]]に注がれていた。

 

 

XANXUS『チェルベッロ』

 

 

覆面女『はい、XANXUS様』

 

 

 チェルベッロの女にXANXUSからの通信が入る。

 

 

XANXUS『この一部始終を忘れるな。俺は攻撃してねぇとな』

 

 

覆面女『?』

 

 

XANXUSからの不可解な通信に明確な答えを返さず、ただ眼前で繰り広げられる戦いを傍観し続ける。だが、その通信の真意はすぐにその場にいる全員が理解することとなった。

 

 

バシュン!!

 

 

 不意に戦場を一筋の光線が奔り、空を無数のミサイルが渡る。それは雲雀の背後から放たれ、激しく動いていた二人の動きを止めた。さらに、観覧席にいたヴァリアー、綱吉の両陣営をも戦場に強制的に誘致した。

 

 

獄寺「ゲホ、ゲッホ・・・ゲホ。いったい何が起きてやがる。野球バカに芝生頭!お前ら無事か!?」

 

 

山本「ゴッホ・・・。ああ、何とか。先輩、大丈夫っすか?」

 

 

了平「なにが起きているのだ・・・いったい」

 

 

獄寺「俺にもなにがなんだかさっぱり…。なっ、あれは!」

 

 

 黒煙が晴れ視界の靄と籠っていた熱が消えた獄寺の視界に叩きつけられるようにして飛び込んできたのは、指に仕込まれた小銃から絶え間なく鉛球をまき散らし、背中からは矢継ぎ早にミサイルををでたらめな昇順で発射し、胸の孔からは波動砲のように太いレーザーを辺り一帯に放ちながら、ロケットエンジンを噴射し高速で戦場を駆ける[[rb:モスカ>ガラクタ]]の姿だった。

 

 

XANXUS「言わんこっちゃねぇ。俺はこうならないように一刻も早く、そのガラクタを回収しようとしが、それを向こうの守護者が阻んだ。そのせいで、モスカの制御が利かなくなっちまった」

 

 

獄寺「暴走してるってのか」

 

 

 これを唯一予見できた男がざまあみろとでも言わんばかりの顔でそう言い放つ。この事態がこの男によって仕組まれていることは、その表情からも明らかだが、それと同時に男の言葉は、仕草は、その顔つきは、今戦場を架空している制御不能な殺戮兵器はもはやこの男にもそう簡単には止められないという事を暗に示していた。

 

 

ズドドドドォォォン!

 

 

 モスカの暴走でグラウンドだけでなく校舎全体が破壊の限りを尽くされていく。野球部のボールが校舎に当たらないように設置されたネットは消失し、それを支える支柱はいともたやすく折られ、崩れていく。本来ならばこのような光景を誰よりもこの学校を愛している雲雀恭弥が赦すはずはないのだが、彼はこの暴走の中で負傷したのか、思うように動けずにいた。

 

 

クローム「……」タッタッタ

 

 

 モスカの暴走により戦場と観覧席との敷居が無くなり、倒れた敷居の残骸を飛び越え、黒曜の制服を着た女が、暴走による無差別攻撃の合間を縫って戦場を渡る。

 

 

ピーー

 

 

クローム「!」

 

 

 女が踏んだ地雷が傾国音を響かせた後爆音と共に破裂する。女は同じ制服を着た男二人に間一髪救われるが、泣きっ面に蜂とでもいうのだろうか。三人が倒れ込んだ位置は、ガトリングの射程範囲内であり、その銃口が三人に向けられる。さらに、レーザーをその胸に光らせながら、黒煙と燃え盛る炎の中からモスカが破壊神のように、三人を挟む形で現れた。

 

 

山本「やべぇ、囲まれちまった!!」

 

 

 今まさに、ガトリングと破壊神の巨砲が火を噴くその瞬間、頭を抱え伏す三人を護る盾のように、橙色の炎が優しく巨大に拡がった。

 

 

獄寺「あれはっ!」

 

 

XANXUS「あの炎…きやがったか」

 

 

 波動砲が消え、ガトリングが全ての弾を打ち尽くした時、そこにいたのは、額と両腕に先程と同じ炎を灯し、瞳はその炎と同じ色を宿し、戦場に立つ覚悟を決めた沢田綱吉その人であった。

 

 

了平「あれは」

 

 

獄寺「十代目!」

 

 

山本「フン」

 

 

 自分たちのボスの登場と仲間の無事が確認できた男たちは一様にその表情を明るくさせる。だが、ボスの周囲に漂う蒸気が晴れるにつれ、その顔つきは再び険しいものへと変わっていった。なぜなら…

 

 

ツナ「……誰かは知らないが感謝する。ありがとう」

 

 

???『礼には及ばない。これは我々(審判)の仕事だ』

 

 

 なぜなら、自分たちのボスの背後。伏せた三人組の眼前には、ヴァリアーの制服のように黒いフードを深くかぶった、いかにも不審な男がまるで長年の相棒のような雰囲気を醸しながら、その場に立っていたからだ。

 

 

XANXUS「……誰だ、テメェ」

 

 

レヴィ「何者だ、あいつ」

 

 

ベル「さぁ?」

 

 

犬「何者びょん?こいつ・・・」

 

 

千種「……」

 

 

クローム「この人……まさか」

 

 

 不審な男の登場は各陣営の守護者を驚かせただけでなく、この暴走を企てた男の顔すらも歪ませた。だが、この場において唯一、その男の存在に別の反応を示した者たちがいた。

そう、あの覆面女たちである。彼女たちはその男に見覚えがあったのだ

 

 

長髪の覆面女「ミラッジョ!あなたはこんなところで何をしているのです!?」

 

 

短髪の覆面女「あなたの仕事は損壊した校舎の修繕などのはずです!」

 

 

ミラッジョ『ああ、俺も最初はそれに徹するつもりでした。ですが、あなた達が審判(私たち)の仕事を一向に遂行しないので、仕方なくこうして持ち場を離れてきたのです』

 

 

 不審な男は変声機を通した声で、自らの上司に淡々と告げる。古傷を顔に持った男は、先程まで暴走していた殺戮機械に目をやるが、あれは今眼前に現れた二人の人物を調べているのか、いつでも撃てるよう胸の孔を光らせたまま動かなかった。

 

 

長髪の覆面女「我々の仕事?私たちがいつ我々の仕事を放棄したというのです!」

 

 

ミラッジョ『今現在、こうしている最中です。勝利条件である雲のリングは沢田綱吉氏側の守護者によって完成された。つまり、もうすでに雲のリング争奪戦の勝敗は決している。なのに、あなた方は勝負を終わらせずにこのような惨劇を繰り広げている』

 

 

短髪の覆面女「しかし!ヴァリアー側の守護者は今暴走状態にあり、とても制御できる状態ではありません!」

 

 

 

ミラッジョ『それも、あなた方がすぐに試合を終了させていれば未然に防げた話です。今この惨状は、そこの古傷の男による計略によって引き起こされたのではなく、あなた達の職務怠慢が引き起こした現実です。いうなれば、これらは全て・・・あなた達が原因で起こった事という訳です』

 

 

長髪の女「そんな詭弁がまかり通りますか!第一、今はとにかくヴァリアー側の守護者をどうにかしなければ、収集も尽きません!!」

 

 

ミラッジョ『・・・わかりました。では、ヴァリアー側の守護者は沢田綱吉氏に一任しましょう。私が対処してもいいのですが、先程あなた達が言ったように私の本来の職務は、戦闘により破損した校舎の修繕や、戦闘の騒音を外部に漏れないようにすることですから』

 

 

 ミラッジョは暫しの沈黙の後、そう告げて戦場を後にしようとする。しかし、それをある一人の男が呼び止めた。

 

 

XANXUS「待て。テメェはチェルベッロの奴か…。ふざけた真似してくれたな…」

 

 

 片手に炎を宿し、今にもそれを解き放たんとしているヴァリアーのボスの恫喝に対し、ミラッジョは、少し喉元に手をやってからこう答える

 

 

ミラッジョ『黙れ、反抗期の不良息子が。お前のようなただ粋がってるだけの奴など、その辺のチンピラ以下だ。さっさと失せろ』

 

 

XANXUS以外「「ッ!!?」」

 

 

XANXUS「アァん?」

 

 

 その声はまるで魔界に住む悪魔のように低く、重く、そして暗い声だった。死という概念そのものを体現したような声は、歴戦のヴァリアーの幹部に冷汗をかかせ、幾度か死線を乗り越えてきた沢田綱吉側の守護者を心底震え上がらせ、常に鉄仮面を被っているような覆面の女たちの顔を容易く変えた。

 

 

XANXUS「ドカスが。この俺にそんなふざけたこと抜かして…ただで済むと思うなよ」

 

 

 ヴァリアーのボスは手の炎をより煌かせ、本格的な戦闘隊形に入る。だが、ミラッジョはそんな男を一瞥するだけで、男に背を向けてその歩みを再開する。

 

 

XANXUS「消えて灰になりやがれ、クズ」

 

 

 その炎が目の前のいけ好かない男ごと、全てを灰燼に帰さんとしたその刹那、二人の顔面をかすれるほどの至近距離をあの殺戮機械の巨砲が貫いた。

 

 

XANXUS「チッ。運のいい野郎だ」

 

 

ミラッジョ『さぁ、沢田綱吉。聞いた通りです。虫のいい話だという事は重々理解していますが、改めてお願いします。どうか、あのポンコツを止めてください。我々は、先程の理由で手が出せませんので』

 

 

 不機嫌の頂点に達しそうな男を無視して、ミラッジョは冷酷に沢田綱吉に頭を下げる。しかし、その男のそれは、一見すると懇願のようであるが、その実は脅しに近かった。なぜなら、先の言葉の後に、このような文句が続いたからである。

 

 

ミラッジョ『一刻も早くあの鉄くずの塊を鎮静化させなければ、あなたの戦う理由が失われてしまいますよ?先程のようにね。あれは今、あらゆるリミッターが解除されているので、あなた達が守りたいと思うものを、跡形も残さず消滅するなど赤子の手をひねる様なものでしょうね。さぁ、沢田綱吉。平和を真に願うのなら、それを恒久に享受したいと思うのなら、迷っている暇などありません。あれと戦い、命を危険に晒し、それを護りなさい』

 

 

バジル「なっ・・・!なんだと!?それはもう願いではなく脅しではないですか!!」

 

 

リボーン「XANXUSに喧嘩を売ったのは伊達じゃねぇってことだな」

 

 

ツナ「………それがボンゴレか」

 

 

ミラッジョ『ええ。それが、あなたや九代目がなろうとした誰よりも|恐ろしい()()()()ボスです』

 

 

ツナ「・・・」

 

 

 沢田綱吉はミラッジョを一睨みして、暴走する機械を止めに行く。モスカもまずは自分に向かってくる沢田綱吉を排除するため、彼に攻撃を集中する。二人の戦場はやがて、空へと移り、地上は二人がぶつかり合うことで起きる轟音や眩い光が降り注いだ。

 

 

ツナ「これで終わりだ」

 

 

 二人の力量の差は圧倒的で、終始ツナが暴走するモスカを翻弄する展開となった。そして、両腕をもがれ、大砲も放つことができなくなった機械の最後の突貫をも、ツナは片手で易々と受け止め、もう片方の手で両断する。

 

 

 焼き割れた機械の中からは腕や足をゴムのようなもので何重にも縛られ、今にも息絶えそうなほどに衰弱した一人の老人が地面に倒れた。

 

 

獄寺「なっ、中から人が!」

 

 

ツナ「この人……九代目ッ!」

 

 

 いつの間にか橙色の炎が消えうせ、本来の気弱な学生に戻っていたツナはハイライトを失った目で、目の前の非情な真実に言葉を失くしていた。すぐさま、リボーンが救急箱をもって近寄るが、反応はなく、リボーンの言葉から九代目はモスカの動力源になっていた可能性を示唆される。

 

 

XANXUS「よくもやってくれたな」

 

 

 先程まで不機嫌だった男が、この状況を待ってましたとでも言わんばかりに口を開く。その顔はまさに、目の前で親父を殺され、憎悪と哀しみに暮れる息子の顔だった。

 

 

XANXUS「誰だ、ジジイを容赦なくぶん殴ったのは…。誰だ、モスカごとジジイを真っ二つに焼き切ったのはよぉ!」

 

 

 XANXUSの言葉が中学生の心の奥深くに突き刺さる。それらはすべて紛れもない事実であり、その少年が自ら行った行動でもある。それ故に、その言葉は今まで受けたどんな仕打ちよりも深く、強くその心に突き刺さり到底癒えぬ傷跡を遺す

 

 

???「違う…。悪いのは綱吉君じゃない……私だ」

 

 

ツナ「!?」

 

 

 だが、そんな少年を救う神の啓示のように、弱々しい声が少年の耳に入る。その声は、足元に倒れ伏す、衰弱した老人が発しているものだった。

 

 

九代目「XANXUSの時間は……八年前から止まっていた。だが、私の弱さが・・・彼を永い眠りから目覚めさせ……ゆりかごよりの時よりもさらに積もっていた憎悪と怒りを……爆発させてしまった」

 

 

ツナ「ゆりかごって?」

 

 

リボーン「八年前に起きた、ボンゴレの歴史上最大ともいわれるクーデターの事だ。その首謀者は九代目の息子、XANXUSであると言われ、その悍ましい事実は極秘扱いにされた。知るのは、ボンゴレの上層部と当時戦ったボンゴレの精鋭だけだ」

 

 

九代目「綱吉君、私はいつも…君の事をリボーンから聞いていた。好きな女の子の事や、学校の事……。君がこれまで一度だって・・・喜んで戦っていないことも……。いつも眉間にしわを寄せ、祈るように拳を振るう。そんな君だからこそ……。マフィアのボスには到底ふさわしくない考えを持つ、キミだからこそ…私は君をボンゴレ十代目に選んだ…。」

 

 

ツナ「そんな!九代目はXANXUSを選んだんじゃあ…」

 

 

九代目「だが、これだけははっきりといえる。間違いばかりしてきた私だったが…君をボンゴレ十代目にしたことは……間違って、なかった」

 

 

 少年を救う声はそこで途切れ、少年の眉間にかざされていた炎も次第に小さくなり、やがて消えた。そして、その炎が消えると同時に、ボンゴレと同盟を組んでいるキャバッローネファミリーの救護班が、ボスであるディーノと共に現れ、九代目を病院へと搬送していった。

 

 

XANXUS「お前だけは許さねぇ」

 

 

ツナ「!?」

 

 

XANXUS「九代目へのこの卑劣な仕打ちは、実子であるXANXUSへの。そして、崇高なるボンゴレの精神への挑戦と受け取った」

 

 

ツナ「なっ!」

 

 

XANXUS「しらばっくれんな。九代目のあの胸の焼き傷が動かぬ証拠だ。 お前がしたことの前ではリング争奪戦など無意味! 俺はボスである我が父のため。そしてボンゴレの未来のために貴様を倒し、仇を討つ」

 

 

 九代目が担架に乗せられ搬送されていくのを見届けたXANXUSが怒りに燃える声で宣戦布告する。だが、それは自分が十代目になるため、十代目に就任した後独裁体制を敷きやすくするための大義名分であり、九代目はあくまでもそのための道具に過ぎなかった。

 

 

リボーン「これが狙いか。ゆりかごの一件を知る連中を黙らせ、尚且つ自分が真に十代目に相応しいと認めさせることができ、就任後に圧政を敷きやすくする一番の方法は、ツナに九代目を殺させることで悪役に陥れ、弔い合戦としてリング争奪戦を起こし、そこで九代目の仇をとることだからな」

 

 

バジル「つまり、このリング争奪戦自体が仕組まれた罠だったという事ですか!」

 

 

リボーン「ああ。そう考えれば守護者の命も、リングも度外視してきた理由にも説明がつく」

 

 

 涙を流し、震える少年が弱々しくも立ち上がり、悲嘆に襲われ、体を振動させながらXANXUSに告げる。

 

 

ツナ「XANXUS、そのリングは返してもらう。お前に・・・お前に九代目の後は継がせない!」

 

 

 その瞳には光と覚悟が戻り、それにあてられるようにして、各守護者たちも各々の理由で戦闘準備をとる。対するヴァリアー側も同じように、これから訪れる戦いを愉しむかのような不遜な笑みを浮かべながらおのれの武具を取り出す。並中のグラウンドは緊迫した空気に包まれるが、それを快刀乱麻を断つようにしてある声が響く。

 

 

ミラッジョ『はい、そこまで。何度も言わせるなよお前ら。今宵はあくまでも雲のリング争奪戦。守護者全員参加(ボス戦)じゃねえんだよ』

 

 

リボーン「テメェ、ふざけんのもいい加減にしやがれ!こんな事されて俺たち(ボンゴレ)が黙ってると思ってんのか?」

 

 

ミラッジョ『頭にきてんのはわかるけどさ、人の話は最後まで聞いた方がいいよ?ボク』

 

 

リボーン「んだと?」

 

 

ミラッジョ『言ったろ。()()()()()()()って。つまり、ボス戦があるってこと。今回の戦はあくまでも前哨戦で、真に雌雄を決する戦いは別にあんの。というか守護者戦だけやって、ボス戦はやらないなんてことあるわけねーだろうが』

 

 

獄寺「なに適当なこと言ってやがる!だいたい、テメェらヴァリアー側と繋がってた連中にそんな権限ある分けねえだろうが!」

 

 

ミラッジョ『それがあんだよ、爆弾男。そうだろ?俺の上司さん方』

 

 

覆面女「え、ええ。我々チェルベッロ機関は正式にこのリング争奪戦を取り締まる許可を九代目より授かっております。これは一度、皆様にお見せしたと思いますが、お忘れでしょうか?」

 

 

 そう言って覆面女が、橙色の炎が宿った格式ばった文書を見せる。そこにはイタリア語でこの争奪戦の開戦を認めること。その管理をチェルベッロ機関に一任することが記されており、九代目直筆と思われるサインもされていた。

 

 

バジル「何を調子のいいことを!それは九代目に無理やり押させたものだろ!!」

 

 

 しかし、その書面に反発する声が上がる。後継者選びにおいて、ボスと同等の権利を持つ門外顧問である沢田家光。その下で働くバジルだ。しかし、ミラッジョはそのままの態度で真っ向から対立する。

 

 

ミラッジョ『無理やりでも何でも、本物が押したものに変わりはねえだろうが。あんたの上司が認めたのが何よりの証拠だ。それとも、あんたは自分のお館様を信じれないってのか?』

 

 

バジル「屁理屈を叩くな!とにかく!自分はそんなもの認めないぞ!!」

 

 

ミラッジョ『だったら、今からもう一度押してもらうか?あの文字通り死にかけの老体に鞭打って。お前も見たろ?九代目の炎が弱くなって、最後には消えたのを。棺桶に片足どころかほぼ全身浸かってて、這い出られるかどうかもわからねぇ状態の人にそんな無理強いするなんざ、お前らの方がよっぽど極悪非道だよ』

 

 

バジル「貴様ァァァ!」

 

 

ミラッジョ『とにかくだ。新しく押してもらうことが不可能である以上、お互いの主義主張を通したければこれに従え。嫌なら嫌でも構わん。その代わりこの街が一夜にして地獄と化すがな』

 

 

獄寺「何を言ってやがる!」

 

 

ミラッジョ『だってそうだろ?XANXUS率いるヴァリアー側はこの街がどうなろうと、お前らを消すために全力を注ぐ。実際、これまでの争奪戦でも校舎を出来得る限り破壊してきたからな。だが、お前らはそうはいかない。この街が消えれば、お前たちが守りたいものが消える。たとえお前たちが勝っても、お前たちは負ける。・・・違うか?後継者候補(沢田綱吉)さんよ』

 

 

ツナ「……」

 

 

ミラッジョ『沈黙は肯定と受け取るぜ。つまりだ。お前らの街を守りつつ、お前らの正当性を主張したいなら、[[rb:チェルベッロ機関>俺]]に従え。それ以外に、お前らが勝つ方法などない』

 

 

ツナ「……わかった、それでいい」

 

 

獄寺「十代目!」

 

 

山本「ツナ!」

 

 

了平「沢田!」

 

 

クローム「ボス…」

 

 

ミラッジョ『流石ボス、その断腸の思いで下した苦渋の決断に敬意を表しざるを得ないね』

 

 

獄寺「何をいけしゃあしゃあといってやがる……。ほとんど脅してたじゃねーか」

 

 

ミラッジョ『それじゃ、早速準備に取り掛かろう。まず、ヴァリアー側も沢田綱吉側も、共に持ってるリングを渡せ。あ、沢田側の雲の守護者は別にいいぞ、既に預かってるからな』

 

 

了平「な、なぜ死に物狂いでとったリングを返さにゃならんのだ!!」

 

 

ミラッジョ『ボスの指示に従えねえのかお前は。お前んとこのボスは俺らに従うって明言したんだぞ?ボスがそうするのなら、守護者もそうしろよ』

 

 

ベル「しっし、嫌だね。なんでお前みたいな奴の言うことに従わないとダメなわけ?」

 

 

ミラッジョ『嫌ならそれでもいいぞ?腕引きちぎってでも、取るだけだから』

 

 

 そう言ってミラッジョがベルの腕の関節部分を掴む。ベルはもう片方の手にナイフを握り抵抗しようとしたが、難無くいなされ、無理矢理脱臼させられた。

 

 

ベル「いってえええええ!こいつ……王子の俺の肩を脱臼させやがった!!」

 

 

ミラッジョ『リングをよこすのならはめ直してやる。断るのなら、今度は腕ごと貰う。さぁ、選べ。二者択一だ』

 

 

ベル「渡す!渡すから戻せ!!」

 

 

ミラッジョ『流石王子、下々の者の意見に耳を貸すとは寛大だ』

 

 

 ゴリッという鈍い音共に、外された関節が戻され、リングがミラッジョの手に渡る。受け取ったミラッジョはリングを嵌めていた方の手首にある機械を取り付けた後、それを長髪の覆面の女に渡し、次の争奪戦勝者の元へ向かった。

 

 

ミラッジョ『さぁ、次はお前の番だムッツリタコ。さっさと渡せ、茹蛸にしてやろうか』

 

 

レヴィ「それよりまず俺の質問に答えろ。ベルの手にはめたあの機械は何だ?」

 

 

ミラッジョ『ボス戦に参加する生存している守護者全員に配られるモニター付き小型通信機だ。どうせお前ら全員、つけろって言って素直につける連中じゃないからリングと交換で俺が強制的につける』

 

 

レヴィ「お前は何者だ?」

 

 

ミラッジョ『俺はチェルベッロ機関に所属する一人の術師だ。質問タイムはこれで終わり。さ、次は沢田側だ』

 

 

ツナ「ま、待って!」

 

 

ミラッジョ『なんだ、まだなんかあんのか?』

 

 

ツナ「さっき生きてる守護者全員って言ったけど…それってまさかランボも入るの!?」

 

 

ミラッジョ『当たり前だ、お前のとこの子牛だけじゃない。ヴァリアー側のムエタイグラサンも召集対象だ』

 

 

了平「それって…ルッスーリアのことか!」

 

 

ツナ「生きてるからな、当然だ。招集されねぇのはそこのガラクタ(モスカ)と生存が確認できてないスクアーロ、あとは霧戦で出てきたそっちの男とかだな」

 

 

 沢田綱吉側のリングを回収しながらミラッジョが答える。感情が読み取れない機械音声で告げられるそれは、この世のなによりも冷たく冷酷だったが、絶対不変の事実であることもまた証明していた。

 

 

ミラッジョ『大空以外のリングも回収したし、これで事前準備は整った。さぁ、それじゃあ記念すべきボス戦の名前と、開戦日時は……』

 

 

覆面女たち「「大空。我々は勝利者が名実ともに正当な次期ボンゴレボスとなるこの戦いを大空のリング戦と位置づけます。開戦は明日、午後22時に並盛中にお集まりください。それでは皆様、明晩にお会いしましょう」

 

 

XANXUS「明日でこの喜劇とテメェらの人生も幕引きだ。それまでせいぜい無駄な努力でもして足掻け、ドカス共」

 

 

 手に紅焔を揺らめかせながらXANXUSがツナ達に告げる。そして、ミラッジョの方に視線を変え、睨みながら告げる。

 

 

XANXUS「コイツらを始末したら次はテメェだ。首を洗って待ってやがれ」

 

 

ミラッジョ『粋がるなっつてんだろ、親殺しが。テメェは強い言葉習うよりも先に[[rb:並盛中>ここ]]の演劇部にでも入って演技力を身につけんのが先だ』

 

 

 ミラッジョの声と共に、彼以外のチェルベッロ機関の女たちとヴァリアーが姿を消す。残されたミラッジョにツナが声を掛けようとした瞬間、大勢の大人たちが駆け込む足音が聞こえてきた。

 

 

ディーノ「遅かったか!」

 

 

ツナ「えっ、ディーノさん!?」

 

 

リボーン「お前、何しに来たんだ?九代目はどうした?」

 

 

ディーノ「何言ってんだリボーン。俺はさっき家光から連絡を受けて、急いで車飛ばして今並中に着いたぞ?それより、九代目はどこだ?風前の灯火って聞いたが…」

 

 

獄寺「なっ、適当なこと言ってんじゃねぇぞ!テメェさっき九代目を運んでいったじゃねーか!」

 

 

ディーノ「ハリケーンボムこそ何言ってんだ?俺が九代目を運んだだと?」

 

 

ツナ「あのですね、ディーノさん。ホンの十分くらい前なんですけど、ディーノさんとその部下の人たちが九代目を担架に乗せて搬送していったんです。」

 

 

ディーノ「なっ…。それ、本当か!?リボーン・・・」

 

 

リボーン「__ああ、本当だ。お前とお前の部下の連中が確かに九代目を搬送していった」

 

 

ディーノ「なんだよソレ。十分前だと俺はまだ家光から連絡を受けてた最中だぞ!?」

 

 

ツナ「えっ!?それじゃあ、俺たちがさっき見たディーノさんは…」

 

 

リボーン「クソッ!九代目がやべぇぞ!!ディーノ!!」

 

 

ディーノ「ああ、わかってる。おい、お前ら!九代目が俺に擬態した何者かに攫われた!全力で探せ!!そう遠くへは行ってねぇ筈だ!」

 

 

部下「「はい!」」

 

 

 ディーノの令を受け、部下たちが散開していく。ツナとその守護者たちも、それぞれ捜索に駆り出され、夜の並中の騒ぎは日が昇る一時間前まで収まることはなかった。そして、その騒ぎの中、ミラッジョは疲労困憊になりながらも慌てふためく沢田綱吉をじっと見つめていた。

[newpage]

 場所は変わって並盛市のとある病院内。そこの病室に九代目と清水健人の姿はあった。そう、あの時ディーノに擬態し、九代目を救ったのは清水健人だったのだ。あの場のミラッジョはあくまでも有幻覚で創りだし、ミスディレクションのために利用したに過ぎない。

 

 

 清水の前世の知識によって治療を施された九代目は、清水が創り出した幻術空間に閉じ込められていた。九代目が意識が回復し目を覚ますと、そこには人の形に燃える藍色の炎が

自分をじっと見つめていた。

 

 

清水「起きたか、敬語を使わない無礼は許せよ?ボンゴレ[[rb: IX世>ノーノ]]」

 

 

九代目「君は…誰だい?」

 

 

清水「この世界での[[rb:正体>俺]]を見ても、あんたは俺を人だと認識するのかい」

 

 

九代目「私とこうして会話をしている以上人だと私は認識するよ」

 

 

清水「そうかい。なら、人でいい。俺は、この世界での俺はツナのクラスメイトだ」

 

 

九代目「そうか…綱吉君の。もう一つききたい、ここの外はどこかね?」

 

 

清水「並盛町のとある病院だ。あんたはツナによってモスカの中から救出された」

 

 

九代目「そうか、つまり…綱吉君は真実を知ってしまったんだね?」

 

 

清水「全部じゃないがな。それと、あんたに一つ謝ることがある。あんたとツナを戦うよう強制したのは俺だ」

 

 

九代目「ちがう、彼をこんな悲劇に巻き込んでしまったのは私だ。君のせいじゃない」

 

 

清水「違う。俺は雨戦が行われたくらいから、あんたがあの中にいた事も知っていた。そして、あんたを救う事も出来た。だがそれをしなかった。何故だと思う?」

 

 

九代目「……綱吉君を鍛えるためかい?」

 

 

清水「そうだ。正確にはアイツを支えるためだ。俺がもし、その時にあんたを助けていたら、あいつはただ現実を知らない、闇の部分を知らないままボスになっていた。それでは意味がない。あいつには裏世界の[[rb:日常>闇]]を知ったまま、今の性格のままボスになってほしかった。だから、俺は敢えてアンタを助けず、あいつにあんたを焼き切らせた」

 

 

九代目「君は……何者なんだい?」

 

 

「俺はこの世界とは違う、別の世界にいた殺し屋だ。女子供は勿論、赤ん坊からあんたみたいな老人。だれかの恩師や師匠、命の恩人。果ては実の親まで。ありとあらゆる人をありとあらゆる方法で殺してきた。」

 

 

九代目「そんな君が、なぜ綱吉君を鍛えるような真似をするんだい?」

 

 

「俺には名前がなかった。名前を貰う前に親を殺したからだ。だから、前世の俺は何よりもまず己を指す名前を欲した。殺すべき標的、俺に殺しを依頼してくる依頼人、標的の情報を俺に伝える情報屋、殺した奴の遺体を処理する掃除屋、人を殺した俺を讃える役人、俺を殺しに来た殺し屋…。とにかく会う奴全員に俺の名前を問うた。でも、誰も答えなかった。答えてくれなかった。そればかりか、いつしか俺には名前のない怪物なんていう渾名ができ、それが俺を指す名詞になった」

 

 

清水「でも、あいつは…ツナは違った。あいつは、会った俺にすぐに名前をくれた。この世界での俺の唯一無二の名を。だから俺は、俺が心から宿願して欲したものをくれたあいつを、立派な奴にする。それだけだ。例え、この世界そのものを敵に回し、いずれ俺が消え去るとしても」

 

 

九代目「君は……なんと哀しいんだ」

 

 

「同情はいらん、そんなものは何の足しにもならないからな。ただし、その代わり。この争奪戦が終わるまで、この幻術空間から出ないでくれ。今頃、キャバッローネのディーノとかいう奴らが総出でアンタを探してる。それは俺があんたに擬態して上手くやり過ごすから、大人しくしておいてくれ。あんたの贖罪はツナが争奪戦に勝った後にある」

 

 

九代目「ああ、わかった。すまないね」

 

 

「じゃあな。動こうとしなければ争奪戦が終わる頃にこの空間は消えて、あんたは現実世界に戻れる。その際、記憶は弄らせてもらうがな」

 

 

九代目「君はこれから…どうするんだい?」

 

 

清水「俺は…。俺は俺の贖罪をするだけだ。それが今、俺にできる唯一の恩返しだからな」

 

 

 その声が空間内に響き、人型の炎はその激しさを衰えさせやがて消えた。現実世界に戻った清水は幻術空間の出口を閉じ、自身を九代目に擬態させた後、病室全体にかけていた不可視の幻術を解き、ディーノと家光の部下を病室に入れた。

 

 

 そして、記憶喪失のふりをしてそれらをやり過ごすと、有幻覚に九代目のふりをさせ、自身は、以前赤ん坊の術師を覗き見た時に見た、ヴァリアーの次期幹部候補の一人に化け、病院を後にした。

 

 

 そして数時間後……。

 

 

覆面女「それでは、大空のリング争奪戦。XANXUS vs 沢田綱吉、バトル開始!」

 

 

 覆面女の開戦の合図がグラウンドに木霊する。この日、いよいよ長きにわたるリング争奪戦に終止符が打たれる。これに勝つことは即ち、名実ともにボンゴレ十代目となり、その血塗られた宿業を受け継ぐことになる。

 

 

しかし、参加者の思惑は全く違っていた。一方は、暴政を敷き、自分がまさに裏社会を統べる覇王にならんとする、憤怒と積年の恨みによって目覚めた悪鬼。

 

 

 もう一方は、そんな暴君の誕生を阻止し、己が善とする平和を血と権力と金が支配する裏社会にも持ち込もうとする少年。その少年はそのためならば、今ある秩序を壊すのをも厭わない覚悟が、若年ながらも既に身についていた。

 

 

 そんな争奪戦に陰る一つの暗雲。それは果たして何を考えなにを成すのか。そしてそれから何が生まれるのか。それらすべての答えが、この日、出ることになる。

 

 

大空のリング争奪戦。いよいよ開戦!

 

 

大空を陰から支える蜃気楼

リング争奪戦編 ~3話~

   ~完~




次回でリング争奪戦編が終わります。

未来編が長すぎて泣きそう

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