もし、エヴァンゲリオンのキャストが、全てFate / stay nightのキャストだったら……
シリーズ内の一話の形式をとった、一話限りの短編です。
殆ど冗談みたいな話なので、お気楽にお読み下さい。
【キャスト】
衛宮士郎 = 碇シンジ
セイバー = 綾波レイ
遠坂凛 = 惣流・アスカ・ラングレー
アーチャー = 加持リョウジ
衛宮切嗣 = 碇ゲンドウ
言峰綺礼 = 冬月コウゾウ
藤村大河 = 葛城ミサト
ライダー = 赤木リツコ
間桐桜 = 伊吹マヤ
柳洞一成 = 鈴原トウジ
ギルガメッシュ = 渚カヲル
バーサーカー = 第14使徒 ゼルエル
アイリスフィール・フォン・アインツベルン = 碇ユイ
俺は、衛宮士郎。ある日突然、ずっと別居状態だった親父、衛宮切嗣に呼び出され、正体不明の謎の生命体“使徒”と戦う汎用人型決戦兵器“エヴァンゲリオン”の、初号機のパイロットにされた。
俺の親友で、生徒会長でもある柳洞一成が、エヴァ三号機の起動試験中に使徒となった。
初号機で出撃した俺は、一成を攻撃できなかった。しかし、ネルフ総司令でもある親父は、初号機の操縦をダミープラグに切り替え、三号機を始末させた。その行為に激昂した俺は、初号機を乗っ取り、親父に反抗した。だが、L.C.Lの圧縮濃度を限界まで上昇させられて強制排除され、俺の籠城はあっけなく終わった。
衰弱した士郎は、一時ネルフの病棟に入れられた。
その待合室に、弐号機のパイロット遠坂凛と、零号機のパイロットのセイバーが待機していた。
壁にもたれ掛かった、凛が口を開く。
「だめかもしれないわね、あのバカ。立ち直れないわよ、きっと……」
「士郎は?」
横で、ソファーに腰掛けた、セイバーが凛に聞いて来る。
「怪我はしてないんだし、その内気付くわよ……今頃、夢でも見てんじゃないの?」
「夢?」
不思議そうな顔をするセイバーに、凛が尋ねる。
「あんた、見た事無いの?」
退院すると直ぐに、俺は、親父の前に引き出された。
命令違反、及び初号機を私的に占有した件について尋問されたが、俺は何も答えなかった。
逆に、何故、何の躊躇も無くあんな非道ができるのかを問うと、親父はこう答えた。
「……士郎、誰かを助けるという事は、他の誰かを助けないという事だ。」
誰かを助けるために、他の誰かを犠牲にする。そんな親父の考えに付いていけなくなった俺は、エヴァを降りる決心をした。
俺の姉代わりでもあり、エヴァの戦闘指揮官でもある藤村大河に見送られ、俺は駅に来ていた。
そこで藤姉から、俺のクラスメートは、全てエヴァのパイロット候補生であった事を聞く。しかし、もうそんな事はどうでも良かった。最後に、藤姉が言った。
「私は士郎に、自分の夢、願い、目的を重ねていた。それが、士郎の重荷になってるのも知ってる。でも私達は、士郎に未来を託すしか無かった……」
「勝手な言い分だよな……」
「それは、分かってる……」
藤姉と別れ、駅のホームで電車を待っているところに、非常事態宣言が発令されたと告げるアナウンスが流れる。
「使徒だ……」
俺の心に、迷いが生じる。このまま、ここを離れていいのか?
ネルフ本部に、第12使徒、バサカエルが迫る。
駒ケ岳防衛線を突破したバサカエルは、その手に持つ巨大な剣で、あらゆる物を破壊する。その威力は、18もある特殊装甲をあっという間に撃破してしまった。
「弐号機を、ジオフロント内に配置!いいわね、遠坂さん?」
「OKよ!」
大河の指示で、弐号機の凛が、ジオフロントで使徒を待ち受ける。
「初号機はどう?」
切嗣の指示で、セイバーは初号機で出撃準備をしていた。
しかし、セイバーを乗せた初号機は、神経接続を拒絶してしまう。
「駄目です!パイロットも、ダミープラグも受け付けません。」
「僕を、拒絶するつもりか?アイリ……」
そう呟いた切嗣は、新たな指示をセイバーに出す。
「セイバー、零号機で、使徒を殲滅せよ。」
「了解しました、マスター。」
それを聞いた、大河は苦言する。
「無茶です、司令!零号機は、左腕の再生がまだ完了していません。」
「大丈夫です。」
「だけど、セイバーちゃん!」
「士郎が、二度とエヴァに乗らなくてもいいように……私が、使徒を倒します。」
「せ……セイバーちゃん……」
モニターには、進行を続ける、バサカエルの状況が映し出されている。
顔の前で手を組んで、黙って戦況を見詰める切嗣に、副司令の言峰綺礼が話し掛ける。
「衛宮、弐号機と零号機だけで、あの使徒を阻止できるのか?」
「やるしか無いだろう。」
「何故、衛宮士郎を帰した?あの少年が居れば……」
「命令に従えない、不良品に用は無い……居ても、邪魔なだけだ。」
「ふん……理解できんな、お前達親子は……」
「お前こそ理解できない。使えない者に、頼るなどと……」
それを、下層で見ていたオペレーターの間桐桜が、技術開発部上長のライダーに尋ねる。
「先輩、衛宮司令と言峰副司令って、仲が良くないんですか?」
「仲が良く見えるのであれば、あなた、医者に行った方が良いですよ。」
「はは……」
ライダーの答えに、桜は、ただ笑うしか無かった……
ジオフロント内に侵入したバサカエルに、弐号機の凛が挑む。
「負けられない……バカ士郎にも、セイバーにも……ここで負けたら、エヴァを降ろされる。」
ありったけの銃火器で攻撃する弐号機、しかし、強力なATフィールドに防がれ、バサカエルには一向にダメージを与えられない。
「このおおおおっ!もう、負けられないのよ!私はっ!」
凛は、使用不可のモードスイッチに手を伸ばす。
「モード反転!ビーストモード!!」
「だ……だめよ!遠坂さん!」
大河の制止を振り切り、凛はビーストモードを発動する。
「持ってよ、エヴァ弐号機……わたしも……がんばる……」
その目を赤く血走らせ、凛の弐号機がバサカエルに突進する。強力なATフィールドを突き破り、バサカエルに喰らい付く。そして、その首を喰いちぎった。
「や……やった!」
歓喜する大河達、だが、その喜びも一瞬だけだった。
「何?!」
停止したバサカエルが、再び動き出す。手に持った巨大な剣で、弐号機の左腕を切り落とした。
「ぎゃああああああっ!」
凄まじい激痛が、凛を襲う。
「な……何?あれ?」
続いて、バサカエルの体が赤く輝き、喰いちぎられた首が元に戻っていく。
「さ……再生してる?」
ビーストモードの反動と、腕を切り落とされた痛みで満身創痍の凛。それに対し、バサカエルは完全に元通りになってしまった。
「負けられないのよ……わたしはあああああああっ!」
「もうダメよ!下って、遠坂さん!」
大河の制止を聞かず、突進して行く弐号機。しかし、先程は突破できた筈のATフィールドに阻まれ、跳ね返されてしまう。
「な……どうして?」
呆然とする弐号機に、バサカエルの剣が飛ぶ。首を切断され、弐号機はその場に崩れ落ちる。
シェルターに避難していた俺は、遠坂やセイバーの事を考えていた。
今頃、遠坂も、セイバーも戦っている……だけど、俺は……
頭に、遠坂の言葉が浮かぶ
“避難訓練?あんたバカァ、私達パイロットには、関係無いじゃない!”
その時、凄まじい衝撃がシェルターを襲った。天井が崩れ、何かが落ちて来たのだ。その落下物を見て、俺は驚く。
「こ……これは……弐号機の首?と……遠坂は?」
そのシェルターは放棄され、避難していた人達は、別のシェルターに誘導される。外に出た俺は、そこで、とんでも無い光景に直面する。
俺の目の前に、無残に撃破された弐号機の姿が飛び込んで来る。
「と……お……さか……遠坂ああああああっ!」
「何を吼えている?」
「え?」
声のする方を向くと、畑の中にアーチャーが立っていた。
「こんな所で、何をしている?」
「お……お前こそ、何をやってるんだ?」
「見ての通り、スイカの手入れだ。」
アーチャーは、スイカ畑に水を撒いていた。
「な……何で、こんな時に?」
「こんな時だからだ……死ぬ時は、ここがいいのでな。」
「死ぬ?」
「何だ、知らなかったのか?使徒が、ここの地下に眠るアダムと接触すれば、人は全て滅びると言われている。サードインパクトでな……それを止められるのは、エヴァンゲリオンだけだ。」
呆然とする俺に、更にアーチャーは質問して来る。
「使徒となった友人を、攻撃できなかったそうだな?」
「……だから、何だ?」
「友を殺すくらいなら、自分が死んでもいいとでも思ったか?」
「それの、どこが悪い?」
「自分が痛みを背負うことで、万物全てを救えると考えている。おめでたい話だ。」
「何っ?」
「理想論を抱き続ける限り、現実との摩擦、無常は増え続ける。」
「何が言いたい?」
「お前が取ろうとしている道は、そういうものだ。無意味な理想はいずれ現実の前に敗れるだろう……それでも振り返らず、その理想を追っていけるか?」
司令室では、切嗣が立ち上がり、出入口に向かって歩き出す。すれ違い際に、綺礼に声を掛ける。
「ここを頼む。」
「何処へ行く気だ?」
「やはり、零号機ではあの使徒は止められない。初号機を、ダミープラグで動かす。」
「できるのか?拒絶されているのだろう?」
「できなければ、皆、ここで死ぬだけだ。」
「そうか……」
切嗣は、そのまま司令室を出て行った。
本部に迫るバサカエルの前に、今度は零号機が立ちはだかる。左腕は無く、右腕には、N2爆弾が抱えられていた。
「私が、使徒を倒さなければ……もう、士郎がエヴァに乗らなくてもいいように……」
それを見た、士郎は叫ぶ。
「セイバーっ!」
「セイバーは、死ぬつもりで戦っている。」
「え?」
「お前のためにだ……お前に、二度と戦わせないために。」
お……俺を、戦わせないため?
「皆が、今自分ができる、最大限の事をしようとしてている……それに比べて、お前は何だ?無意味な理想に引きずられ、自分のできる事すらしようとしない。」
「な……何だと?」
「今のままでは、誰も救えない。何もしないのは、見殺しにするのと同じだ。たったひとりの友を救えなかった後悔のために、全世界の人間を見殺しにするつもりか?」
アーチャーの言葉は、士郎の胸中を深く抉った。
「はああああああああっ!」
零号機は、ATフィールドを全開にする。そして、バサカエルに突進して行く。
バサカエルのATフィールドを突き破り、懐に飛び込む。N2爆弾を、その胸倉に押し当てる。そして……
「セイバアアアアアアアアアアッ!」
凄まじい爆発が、辺りを包み込む。士郎は、腕で顔を塞ぎ、爆風に耐える。
爆煙が晴れた後には、ボロボロになり停止したバサカエルと、爆発で残った右腕も失ったが、何とか生き残った零号機の姿があった。
「せ……セイバー……やったのか?」
だが、バサカエルの目が再び赤く輝き、また、活動を開始する。
「な……何だ?……再生しているのか?」
士郎は愕然とする。N2爆弾で砕かれた筈のバサカエルの体が、見る見る内に元に戻って行く。それに対して、両腕を失い、エネルギーを使い果たした零号機は、もう成す術が無い。そこに、バサカエルの剣が炸裂。零号機も、その首を刎ねられ、完全に活動を停止してしまう。
「セイバアアアアアアアッ!」
バサカエルは、また進撃を開始する。もう、本部は目の前だ。
しばし、呆然とその光景を見詰めていた士郎だが、意を決し、ネルフ本部に向かい走り出す。
「エヴァに乗るのか?」
そんな士郎を、アーチャーが呼び止める。
「お前には、関係無いだろう?」
「なら、一度しか言わんから良く聞け。普通に戦っていては、今のお前に勝ち目は無い。何をしようが、お前はあの使徒に太刀打ちできない。」
「何?」
「ならば、せめてイメージしろ。現実で敵わぬ相手なら、想像の中で勝てる物を幻想しろ。イメージするのは、常に最強の自分だ。」
士郎は、少しの間、無言でアーチャーを見詰めていた。そして、直ぐにアーチャーに背を向け、その場を走り去った。
格納庫では、切嗣がダミープラグでの初号機の起動を指揮していた。しかし、何度やっても、初号機に拒否されてしまう。
「アイリ……どうしても、僕を拒むのか?」
「親父!」
そこに、士郎が駆け付けた。
「何故、ここに居る?」
「俺を、もう一度エヴァに乗せてくれ!」
「何?」
「俺は、エヴァンゲリオン初号機パイロット、衛宮士郎だ!」
遂に最終装甲も突破され、メインシャフトを降下し、バサカエルは司令部の壁を壊して侵入して来た。
「ふん……間に合わなかったか、衛宮……」
特に慌てる様子も無く、淡々と呟く綺礼。大河達は、逆に恐怖で言葉が出なかった。
バサカエルが、大河達に向かってその巨大な剣を振り上げた時……
「うおおおおおっ!」
側面の壁を破って侵入して来た、エヴァ初号機がバサカエルを殴り倒した。
「士郎?!」
初号機を見た、大河が叫ぶ。
初号機は、バサカエルに組み付き、射出リフトまで押し込む。
「藤姉!」
士郎の叫びに、直ぐさま対応する大河。
「ロック解除!リフト射出!」
バサカエル共々、初号機が地上に射出される。
地上に押し出され、地面に転がる初号機とバサカエル。初号機は直ぐに立ち上がり、バサカエルに突進して行く。バサカエルも起き上がり、ATフィールドを展開する。
「いけええええっ!」
初号機は、その手でバサカエルのATフィールドを引き裂き、懐に潜り込む。そして、プログレッシブ・ナイフでバサカエルのコアを一突きする。
「GUUUU……」
一瞬、呻き声を上げるバサカエル。その目からも光が消え、完全に停止する。
大河達も、地上に上がって来る。停止したバサカエルを見て、安堵の言葉を漏らす。
「やった……」
だが、やはりまた直ぐに動き出す。その剣で、初号機の胸を切り裂く。
「ぐぅはあああっ!」
その衝撃で、大きく後方に跳ね飛ばされる初号機。バサカエルの目に光が戻り、破壊されたコアが見る見る内に再生していく。
「そんな……また、再生した……」
「分析結果が出ました。」
驚愕する大河の横で、携帯用端末でデータ解析を続けていた、ライダーが言う。
「あの使徒は、12のコアを持っています。殲滅しても、11回は完全蘇生します。」
「何ですって?」
「更に、一度使った攻撃手段は、耐性が出来るため二度と通じません。」
「え?……じゃあ、何?あと9回、全く違う攻撃手段で殲滅しなければいけないの?」
「そういう事になります。」
「そんな、無茶な?」
その横で、オペレーターの桜が叫ぶ。
「初号機の活動限界まで、あと30秒です!」
その言葉に、大河は更に混乱する。
「あと30秒で、どうやって、あの化物を9回も倒せってのよ?!」
ひとりで、パニクってしまう大河。
一方、初号機の士郎は、バサカエルの猛攻に防戦一方だった。新たなバサカエルのATフィールドは、もはや、初号機のどんな攻撃でも破れなかった。
だ……だめだ、このままじゃやられる……だ……誰も護れない……セイバーも、遠坂も、藤姉も、みんな死ぬ……
その時、士郎の脳裏に、アーチャーの言葉が浮かぶ。
“イメージするのは、常に最強の自分だ”
最強の自分……最強の、武器……
「トレース・オン!」
士郎のイメージにより、初号機の手に、赤い巨大な槍が投影される。
それを見た、大河が叫ぶ。
「あ……あれは?ロンギヌスの槍?」
「うわああああああああああっ!」
初号機は、槍を両手で持って、バサカエルに突進する。槍は、バサカエルのATフィールドを突き破り、バサカエルを貫いた。
「GIYAAAAAAAAAAAAA!」
断末魔の叫び声をあげて、バサカエルは制止する。赤く輝いていた目は完全に光を失い、もう二度と、光を取り戻すことは無かった。徐々に、バサカエルの姿も擦れていく。
その時、バサカエルの心の声が、士郎の頭に流れ込んで来る。
“それが、お前の武器か?”
「い……いや、これは……」
“幻想か……だが、幻想とはいえ侮れん……よもや、ただの一撃で、この身を9度も滅ぼされようとは……”
そこまで伝え、バサカエルは消滅した。同時に、士郎の創り出した槍も、消滅していった。
「か……勝った……のか?」
その直後、突如天から降って来た巨大な槍に、初号機が貫かれた。
「うぐっ……」
初号機は、槍で地面に串刺しとなった。士郎は、その一撃で意識を失ってしまう。
「な……何なの?」
大河達は、上空を見上げる。
「あ……あれは……」
遥か上空に、巨大な人影が浮かぶ。それは、眩いばかりに黄金に輝く、エヴァンゲリオンだった。
「な……何?あの、黄金のエヴァは?」
そこに、高らかに、黄金のエヴァンゲリオンの中から声が発せられる。
『ははははははは……中々に良くやったが、所詮は偽物。本物の前では、その存在自体が無意味よ!』
その光景を見詰めながら、アーチャーが呟く。
「これもシナリオの内か?衛宮切嗣……」
つづく
嘘です!続きません!
この話は、これでおしまいです。
勢いだけで書いてしまいました。
Fateファンの皆様、エヴァファンの皆様、ごめんなさい。
選んだ話が“男の戦い”だったので、士郎と凛、セイバーの絡みが全然ありませんでした。
その代わり、アーチャーとの絡みは十分に書けました。
凛は、アスカそのまんまですが、ハマリ役なので問題無いと思います。
大河は、ちょっとしっかりしすぎてるかもしれません。本来は、士郎とアパートで集り生活してるところが一番ハマるんですが。
桜をマヤにしたのは、“先輩”と言うのはやはり桜しかいないと……ライダーをリツコにしたのは、桜との兼ね合いです。
バーサーカーを使徒にしたのは、殆ど無敵で、何度倒しても復活してくるので……