Fate/Grand Order 魂の守護者   作:SKYbeen

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〈召喚〉

 

 

 

 

 

 夢を、見ていた。

 

 

 そこは、一言で表せば大都会だった。ビルの木々に囲まれた、コンクリートの森。まばらに電気が付いているのもあれば、鉄筋がむき出しになったまま放置されているものもある。それらは、殆どが高度経済成長の産物だった。

 暫く周りを歩いてみた。現代には見られない、昔の日本がそこにはあった。歴史を垣間見ているようで、興味が絶えない。

 

 そんな折、ある場所に行き着いた。高く聳え立つマンションの下、ぽっかりと空いた平地に二人は居た。本郷と、日本人らしき青年。らしき、というのは、その男の顔が薄くぼやけ、あまり判然としなかったから、そう表すしかなかった。その分、首に巻いてある真紅のマフラーが、とても際立って見えた。

 

 

「せめて、見たかったな。もう少し先の世の中を」

 

 

 男は、そう言って立ち上がり、本郷に右手を差し出した。ゆっくりと、それでいて力強く。その手には、首元のマフラーが備えてあった。

 

 

「未来は、いい世界になってるだろう。・・・・・・そうだよな」

 

 

 差し出された手を、本郷は強く握り込む。

 よく見れば、身に纏う空気が、というより、彼自身が若く見えた。風貌はまるで変わらない若々しさだが、どことなくそう感じる。

 

 

「そうさ。未来になれば、変わるかもしれない。俺たちは・・・・・・ハヤト」

 

 

 ハヤトと呼ばれた男は、そっと目を閉じていた。その両足は大地を踏み締め、微動だにしない。

 

 

「・・・・・・ハヤト」

 

 

 本郷の頬に、熱い何かが伝う。

 

 涙、だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

 

 立香は、気が付けばベッドに横たわっていた。転移した直後、重なった疲労により倒れたからだ。全身が鉛のように重く、気だるさがまとわりつく。少し時間を掛けながら身体を起こすと、何故か顔が濡れている事に気が付いた。いつの間にか立香は、涙を流していた。

 

 あれは、本郷の記憶だったのだろうか。サーヴァントと契約を結んだ時、時折片方の記憶を垣間見る事がある。無論、立香は魔術的な知識に乏しい為知る由もないが、夢に見たのは紛れもなく本郷の姿だった。

 

 彼が流した涙の理由。あのマフラーの持ち主は、一体誰なのだろう。古くからの友人? それとも家族? 推し量る事しか出来ないが、あの瞬間、本郷がどうしようもない哀しみに襲われていたのは事実だ。それは、同じように流れ落ちるこの涙が証明している。

 

 

(・・・・・・本郷さん)

 

 

 立香の中で、本郷猛という男は、理想になりつつあった。強く雄々しく、そして誰よりも優しい、そんな人物像。その広く大きい背中は、何よりも頼もしいものだった。だから、あの涙がどうにも頭から離れない。彼程の男があれだけ巨大な悲哀に駆られるのは、どうやっても想像が出来ないでいた。

 この疑問を晴らすには、本人に聞けば早いだろう。だが、聞けるはずもない。多分あれは、思い出したくない記憶だろうから。今はそっと、胸の内にしまっておこう。

 

 そう決めた時、控えめにドアが開いた。カルデアの制服に着替えたマシュが、泣いている立香を見て困惑の表情を浮かべた。

 

 

「せ、先輩? どこか痛むんですか?」

 

「え、あ・・・・・・いや、大丈夫だよマシュ。ちょっと夢を見てただけなんだ」

 

「夢、ですか?」

 

「うん。多分、本郷さんの」

 

「Mr.本郷の、ですか・・・・・・。確かサーヴァントと主従関係を結んだ時、生前の記憶が流れる事があるそうです。先輩が見たのは、恐らくそれによるものかと」

 

「そう・・・・・・なんだ」

 

 

 涙を拭い、立香は立ち上がった。まだ少しふらつくが、問題は無い。

 

 

「そういえば、本郷さんとドクターは?」

 

「ドクターはカルデアスの修復業務に当たっています。Mr.本郷は私が部屋に案内しました。

 様子を見に行きますか? どの道、Mr.本郷もドクターのもとへ行かなければなりませんし」

 

「分かった。行こうかマシュ」

 

 

 とは言うものの、あの夢を見た後では本郷に会うのはあまり気が進まない。あくまで夢なのだが、本郷の記憶を垣間見てしまった立香は少々気まずい感覚を覚えていた。

 ただ、そうも言ってはいられない。息を一つ吐き、冷静に努める。先に出たマシュを追うようにして、立香も部屋を後にした。

 

 

「Mr.本郷、失礼します」

 

 

 本郷の居る部屋はそう遠くはない。すぐに着くと、控えめにマシュがドアを開けた。部屋の内装は、立香のものとほぼ変わらない。見栄えのない、無機質な空間だ。

 本郷は、固そうなベッドに腰掛け、何かを弄っていた。知恵の輪だ。慣れた手付きで動かし、あっという間に外す。コツさえ掴めばなんて事はない、シンプルなものだった。

 長年使っているものなのか、やけにくたびれたそれをベッドに置き、本郷は口を開いた。

 

 

「これは、俺の友人がくれたものなんだ」

 

 

 分かれた知恵の輪を見つめる本郷は、昔を懐かしんでいるように見えた。

 

 

「知恵の輪を、ですか?」

 

「昔は不器用だったからな。力の加減が分からなくて、何度もねじ切りそうになった。こいつを上手く外せるようになったのは、ずっと後の話だ」

 

 

 知恵の輪自体は単純な鉄で出来ている。常人では曲げる事さえ至難の業だ。これを小枝のように容易く折るには相当の力がいる。

 本郷には、それが出来た。だが、単純が為に力のコントロールが上手くいかず、失敗を重ねた。注意しなければ簡単に壊れてしまう。今でこそ完璧に扱えるが、最初は何もかもを壊してしまっていた。

 

 

「・・・・・・本郷、さん。その人とは長い付き合いだったの?」

 

「いや。だがあいつには色んな事を教えて貰った。もう随分前に死んだが・・・・・・あいつを忘れた事はない」

 

 

 その顔は、至って穏やかなものだ。どこか哀愁漂う面持ち・・・・・・昔を思い返しているのだろう。つまり、夢で見たあの場面を。

 死んだ友人というのは、夢に出てきた青年の事なのか。本郷と握手を交わし、安らかに生を終えたハヤトという青年が。

 思えば、立香は本郷の事を何も知らない。過去、逸話。それらはサーヴァントである以上、必ず付随する。如何に魔術に疎いとはいえ、有名な伝記は知っているつもりだ。それでも本郷猛という名は、〈仮面ライダー〉という称号は聞いた事もない。

 

 知りたい。この人が、いかにして英霊に至ったのかを。その笑みに隠された過去を。沸き立つ好奇心に任せ立香は尋ねようとしたが、そこに意外な訪問者が現れた。

 

 

「フォーウ!」

 

「む」

 

「えっ、フォウさん!」

 

 

 どこから入ってきたのか、白い毛並みの生き物が飛び込んできた。フォウと呼ばれたその生き物は、そのまま本郷の肩に飛び乗ってしまった。

 

 

「マシュ、これは・・・・・・?」

 

「えっと、こちらはフォウさんと言います。カルデアのマスコットですね」

 

「フォウ!」

 

 

 そう説明されるものの、この生き物がなんなのか本郷はやや困惑した。ウサギにも見えるが、しかし猫のようにも思える。何とも珍妙な動物だが、そこは考えたら負けなのだろう。とりあえずそれは置いておき、本郷は立ち上がった。

 

 

「さて、ロマンのところへ行くか。ここに来たのも俺を呼ぶ為だろ?」

 

「はい。あ、この際ですからフォウさんも一緒に連れていきましょう」

 

「ああ」

 

 

 マシュに促されるまま、本郷は後に続く。

 実際カルデアに来てみて感じたが、ここは相当に広い。職員の案内が無ければたちまち迷ってしまうだろう。見取り図のようなものがあればすぐに覚えられるのだが。

 そんな事を考えていると、大仰なドアの前に辿り着く。ただ、ドアといっても大きく破損し、奥に見える部屋も悲惨な有り様だ。レフのもたらした被害は想像以上に大きいらしい。

 

 

「立香くん! 目を覚ましたんだね。体調は大丈夫かい?」

 

 

 部屋の中央に浮かぶカルデアス、その修復に当たっていたロマン。立香達の姿を見て急いで駆け寄って来る。その顔は疲労困憊という様子だ。

 

 

「まぁ、バッチリとまでは行きませんけどね。でも大丈夫です」

 

「そうか。ならあまり無理はしないようにね。・・・・・・うん。マシュとMr.本郷も異常は無さそうだ。じゃあ早速だけど、ブリーフィングを始めよう」

 

 

 ぱちんと頬を叩き、ロマンは気を引き締める。オルガマリーという人材を亡くした今、このカルデアを統括するのは彼しかいない。重荷かも知れないが、任された以上は遂行するのが男というものだ。

 

 

「ひとまず特異点の修復、お疲れさま。君達が無事で何よりだ。・・・・・・立香くんにはなし崩し的に押し付けてしまって本当に申し訳ない。けど、事態を収めてくれて感謝してるよ」

 

「俺は・・・・・・俺の出来ることをやっただけです。それに、マシュや本郷さんが居なかったら、俺は何も出来てなかった。所長だって・・・・・・」

 

 

 固く拳を握り込む立香の心は、悔しさで満たされていた。彼女を救えなかったという残酷な事実が重くのしかかり、心を強く締め付けた。どうしようも出来なかったのは分かっている。それでも、この滲み出る無力感は、一体どうすればいいのか。

 立香は極めて優しい少年だ。人を想い、命を慈しむ善良な心を持っている。故に、死というものが心を苦しめる。

 本郷は、人の死を目の当たりにした彼の負担を和らげたかった。立香の肩に手を置き、優しく諭す。

 

 

「彼女の死は、決して無駄なんかじゃない」

 

「本郷・・・・・・さん」

 

「所長はこう言った筈だ。俺達で世界を救え、と。死の恐れを抑え込んで、最期まで勇気を振り絞ってその意志を伝えたんだ。なら、俺達はそれに応える義務がある」

 

「・・・・・・」

 

「悔しいのは分かる。俺だって・・・・・・彼女を救いたかった。だからこそ、前に進むんだ。それが彼女への手向けになる」

 

 

 その時立香は気付く。本郷も、同じ後悔を抱いているのだと。助けられなかったという事実が、本郷にとってどれ程の意味をもたらすのか。それはきっと、想像もつかない苦悩だろう。

 しかし悲観に暮れるのは後回しだ。成し遂げねばならない事が、今の自分達にはある。何よりもそれを優先すべきだ。オルガマリーも、きっとそう発破をかけるだろう。

 

 

「Mr.本郷の言う通りだ。ボクたちに立ち止まる事は許されない。事態は一刻を争うんだ。皆、これを見てくれ」

 

「これは・・・・・・地球が所々黒く歪んでいますね」

 

「これが歴史に生じた歪みだよ。しかも君達がレイシフトした冬木とは比べ物にならない程、巨大で圧倒的だ。これが複数確認されている」

 

 

 紅蓮に染まっていたカルデアスが元の蒼色となる。だが、映し出されたのは黒く歪な渦。それこそが異変の原因たる特異点だ。

 

 

「現在解析が完了したのはここだ。西暦1431年、フランス・オルレアン」

 

「1431年・・・・・・百年戦争か」

 

「百年戦争?」

 

「その名の通り、およそ百年間も続いた戦争だ。フランスとイギリスの国境を決めた戦争でもある」

 

「それが歪められ、特異点となってしまったのですね」

 

 

 百年戦争とは、フランス史において重大なターニングポイントである。

 発端はフランス王朝が断絶の危機を迎えた時。およそ四百年もの間続いた王室が、突然不思議な程継承者が死を遂げてしまい、ついには王朝が断絶。フランスは大混乱に陥った。

 そしてそこに目を付けたイングランド王がフランス王権を主張、当然フランス側は拒否するが、納得のいかないイングランド側は強硬手段に出る。これが、百年戦争の始まりだ。

 

 

「歴史に名を刻んだ大きな戦争だ。これが今回の様に狂ってしまえば・・・・・・」

 

「そう。過去を変えれば未来が変わる、なんて事も言うけど、実際歴史の修正力っていうのは強大だ。ちょっとやそっとじゃ変えられるものじゃない。けど、結果として人類は終焉を迎えてしまった。なら、考えられる可能性は一つ」

 

「・・・・・・歴史の分岐点か」

 

「その通り。観測された特異点は、人類史にとっては根幹となる重要な選択肢でもある。それが崩壊した事で、人類が存在していたという事実が消失してしまったんだ。君達には、これを直ちに修復して欲しい。

 ・・・・・・責任を押し付けてるのは分かってる。でも頼れるのは君達しかいないんだ」

 

 

 ロマンが出来るのはせいぜい裏方の仕事。直接レイシフトし、原因を解決する事は敵わない。結局は頼るしかないのだ。年端もいかぬ少年少女と、一人の英霊に。それがどんなに歯痒いか。情けないとすら思ってしまう程、ロマンは力になれないのだと。

 

 しかし、それは大きな思い違いなのだ。

 

 

 

「今更だな、ロマン」

 

 

 本郷は、そう言って笑った。

 

 

「君の気持ちも分かる。俺達に頼むしかないと思ってるのも。だが、いつ誰が嫌だと言ったんだ?」

 

「そ、それは・・・・・・」

 

「ドクター。私達は逃げようなんてさらさら思ってませんよ」

 

 

 力強い二つの眼差しが、ロマンを貫いた。恐れを感じさせない、意志の宿った瞳だ。二人の英霊は、もうとっくに覚悟は完了していたのだ。そして、その二人の主も。

 

 

「俺達で、未来を守りましょう!」

 

 

 立香はロマンの手を取り、固く握り締めた。自分よりずっと年下の若者が、大きな決意を持って。重い責任を一身に背負い、大義を成し遂げんとする姿は、つい数時間前まで一般人だとは思わせない。恐れや不安もあるだろうに、それを見せず懸命に勇気を振り絞るのは、人類の為に奔走したオルガマリーと同じだ。

 

 

「・・・・・・そうだね。所長もそれを望んでるだろう。ボク達で・・・・・・カルデアの皆で、人類に光を取り戻そう」

 

 

 握られた手に力が込もる。決意が宿るのはロマンとて同じ。立香達が戦いに赴くのなら、自分に出来る事を全力でやるのみ。裏方だろうとなんだろうと、彼らの助けになるのなら、一分一厘手を緩めてはならない。オルガマリーに託された遺志を無駄にはしないと、今一度ロマンは誓った。

 だが実際問題、意思どうこうでは解決しない問題もある。第一に戦力だ。戦えるサーヴァントが本郷とマシュだけでは厳しい面もある。特異点に転移する前に、戦力の増強が必要だ。

 

 

「じゃあ皆、早速だけど味方のサーヴァントを喚ぼう。二人だけじゃ寂しいしね」

 

「えっ、召喚出来るんですか?」

 

「そりゃあそうさ。実際、ここで召喚されたサーヴァントは居るしね」

 

「おっと、誰か私の事を呼んだかな?」

 

 

 ロマンの背後より聞こえる声。現れたのは見目麗しい女性であった。だがそれ以上に目を引くのは、メカニカルな右手と大仰な杖だ。

 

 

「ロマン、この人は?」

 

「紹介するよ。彼の・・・・・・ああいや、彼女はレオナルド・ダ・ヴィンチだ」

 

「気軽にダ・ヴィンチちゃんと呼んでくれたまえ」

 

「レオナルド・ダ・ヴィンチって・・・・・・あの!?」

 

「いかにも。私が世紀の天才とまで称されたレオナルド・ダ・ヴィンチその人さ」

 

 

 レオナルド・ダ・ヴィンチ────それは一言で表せば天才そのもの。モナリザや最後の晩餐など、後世に残る絵画を描いた画家でもあり、その他にも様々な分野に秀でた人類史上最も多才な人物だ。

 だが、ここに来て至極当然な思考が本郷の脳に浮かぶ。もし目の前のレオナルド・ダ・ヴィンチが史実通りであれば男の筈である。が、どう見ても女性にしか見えない。身体構造的にも完全に女のそれだ。

 呆気にとられる本郷を尻目に、レオナルド・ダ・ヴィンチ───もといダ・ヴィンチちゃんは本郷へ近寄った。

 

 

「ふむ、君が〈仮面ライダー〉か。噂はかねがね」

 

「ロマンから聞いたのか?」

 

「まさか。あの時の戦闘は映像こそ無かったが、音声はしっかり記録してある。ライダーキック! ってね。あれは中々にカッコよかったぜ?」

 

「・・・・・・」

 

「む、君は今私が女だという事実に驚いている風だね? まぁ疑問に思うのは仕方の無い事だ。けど私が男が女か、なんていうのは瑣末事でしかないよ? 君も生真面目、というか頭の固い男だねぇ」

 

「そ、そういうものなのか・・・・・・」

 

 

 言われてみれば、冬木で戦ったセイバー───アルトリア・ペンドラゴンも伝記では男だったが、いざ対面してみれば女性であった。

 もしかすると史実が間違っている、という可能性も考えられなくはないので、確かに男女の是非は関係ない・・・・・・のだろうか。少なくとも、本郷の歴史観が狂い始めたのは言うに及ぶまい。

 

 

「さてと。これから君達はサーヴァントを召喚するんだろう? ついてきたまえ、召喚陣まで案内しよう」

 

 

 やけに意気揚々とダ・ヴィンチちゃんは歩き始めた。天才はともすれば奇才ともされるが、彼女もその類なのかも知れない。何を考えているのか定かではないが、ひとまず本郷達は後に続いた。

 三分程だろうか、何もない廊下を歩いていくと、やがて召喚陣が敷いてある部屋に辿り着く。中心に陣がある以外は特にこれといった特徴は見当たらなかった。果たして、どのように召喚の儀が行われるのだろう。

 本郷が興味を抱き始める中、ダ・ヴィンチちゃんは懐から虹色に輝く石を取り出し、立香へ渡す。

 

 

「それじゃあ立香くん、この石を召喚陣に置いてくれないか」

 

「これは?」

 

「聖晶石といってね。サーヴァントを召喚する触媒みたいなものだよ。数に限りがあるからそう何度も喚べないが、今回は二回まで可能だ。早速、召喚してみたまえ」

 

 

 彼女に促されるまま、立香は召喚陣の中心に石を置いた。

 それと同時に、眩い閃光が放たれる。陣から発せられる魔力の光が埋め尽くし、この場にいる者の視界を支配した。

 時間にしてものの二、三秒。光が収まると、陣の中心には人影があった。

 召喚は成功した。その上、呼び出したサーヴァントは、立香達がよく知っている人物だった。

 

 

「・・・・・・ったく、次に呼ぶ時はランサーでって言ったろーがよ」

 

「その声は・・・・・・!」

 

「キャスター!?」

 

「おう。久しぶり、でもねーな」

 

 

 蒼いフードを下ろすと、いつか見た野性的な笑みをキャスター・・・・・・クー・フーリンは覗かせた。特異点で出会った時と何ら変わらない、何処かそっけいないが親しみのある雰囲気を纏っていた。

 

 

「まさか君が喚ばれるなんてな。また会えて嬉しいよ、キャスター」

 

「兄ちゃんも元気そうでなによりだ。改めてよろしくな」

 

 

 本郷とキャスターは握手を交わした。先の特異点では彼の力が無ければ攻略は敵わなかっただろう、そう断言出来る程に彼の力量は高い。まさかいの一番に召喚されるとは予想だにしていなかったが、仲間になると心強い。

 

 

「ケルトの英雄クー・フーリンか。これは何とも頼もしい限りだ。じゃあ二回目の召喚、よろしく頼むよ立香くん」

 

「了解!」

 

 

 再開の挨拶も終え、立香は再び石を置き召喚を始める。溢れる閃光が部屋を包み、雷鳴が耳をつんざく。キャスターを召喚した時よりも激しい光が収まると、陣に人影があった。

 どんな英霊が召喚されたのか───? 期待の眼差しで見やる立香達。しかし、その姿を一目見て、誰もが大きな衝撃を受けた。

 

 その身に纏うは漆黒の鎧。地に突き立てるのは黒き聖剣。開けられた瞼の向こうには、透き通る金色の瞳が覗いていた。

 

 立香は思わず息を呑んだ。否、息を吐くことすらその瞬間は敵わなかった。それはマシュも同様で、大きく動揺したように目を見開いている。

 忘れもしない。彼女こそが、自分達を苦しめた強敵。〈仮面ライダー〉と戦い、散った筈の彼女が今、このカルデアに召喚されたのだ。

 

 

 

 

「サーヴァント・セイバー。召喚に従い参上した。

 問おう───貴様が私のマスターか?」

 

 

 

 

 

 

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