Fate/Grand Order 魂の守護者   作:SKYbeen

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今回、本郷さんはサーヴァントとしての制約がついてます。理由は色々あるのですが、それは追々説明していこうと思っています。


〈証明〉

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

 

 一体、何処にこんな場所があったのか。

 

 本郷が立つこの空間は、ダ・ヴィンチちゃん曰く「なんとなく造ったトレーニングルーム」、だそうだ。

 だだっ広い正方形の箱には何の障害物もなく、完全な密室。壁も床も、サーヴァントの仕様に耐えられるよう頑丈にしつらえてあるらしい。

 確かにここならば、存分に戦闘は出来るだろう。だがはっきり言えば、本郷は困惑していた。

 

 セイバー────アルトリア・オルタを召喚したのは、まだいい。意外ではあったが、それ以上の驚きはない。立香という主と契約を結んでいるうちは、彼女は全面的に味方なのだ。

 

 だが・・・・・・まさか召喚されて真っ先に勝負を挑まれるとは。消滅の間際に約束したとはいえ、流石に予想外だ。

 

 

「覚えているか、あの時の約束を」

 

「・・・・・・ああ。もちろんだ」

 

「うむ。反故にされず、安心したぞ」

 

 

 出逢った時と変わらないその凛とした佇まいは、あるいは見惚れるものだ。麗しい美貌は、男女問わずあらゆる者を惹き付ける。それは美しさとはまた違ったカリスマ性があるのだろう。

 だが、彼女から漏れ出るのは炎。身を焦がす程の熱。王としてより、騎士としての戦いを何よりも望んでいる。

 

 本郷猛───〈仮面ライダー〉との死闘を。

 

 

「最初に断っておくが・・・・・・本当に本気でいいんだな」

 

「私を侮辱しているのか? 貴様に手加減される程、私は脆弱ではない」

 

「いや、すまん。確認で言っただけだ」

 

「フン、ならいい。

では見せてみろ。お前の、戦う姿を」

 

「・・・・・・」

 

 

躊躇いがない、と言えば、嘘になる。彼女は全力での望んでいる。生半可な手合わせとは違う、死合だ。互いがぶつかればただでは済まない。いくら特異点で敵同士だったとはいえ、今は仲間。出来る事なら傷付けたくはない。

 

だが、約束を裏切る程、本郷は腑抜けた男ではない。

 

 

「・・・・・・変───身!」

 

 

 密室である筈のトレーニングルームが、瞬く間に暴風で埋め尽くされる。〈タイフーン〉が咆哮を上げ、風を巻き起こす。姿を掻き消す程の風に包まれた本郷の姿は、一瞬のうちに強化服を装着、〈仮面ライダー〉へと変身した。

 

 

(これが・・・・・・)

 

 

 正真正銘の、全開の状態。不全など微塵も見当たらぬ、最高のコンディション。あの時のような損傷は無く、カルデアの魔力を供給され、保持する力も万全を期している。

 

 これで、やっと。

 

 

「やっと・・・・・・本当の貴様と戦える」

 

 

 アルトリアの口角が上がった。歓喜に沸き立つその心は、それを燃料に一層激しく燃え上がる。心臓はさながら核融合炉。魔力がとめどなく溢れ、小さな肢体に迸る。闇の光、それこそがオルタナティブの力。黒き王の祝福は、闇に染まった聖剣に宿り、淡い燐光を放つ。

 空気が軋んだ。小刻みに震え、大気に亀裂を走らせる。途方もないその威圧は凡才の英霊とは一線を画す、最早宝具と呼んで差し支えないまでに膨れ上がった。

 しかし、〈仮面ライダー〉が怯む事は、全く無かった。平然と、事もなげに堂々と直立している。

 

 それでいい。

 

 この程度でしてやられるようでは、所詮はそれまでの男という事。

 何にも屈さぬ強き魂こそ、〈仮面ライダー〉の力。それを打ち砕くのが、我が剣と光だ。

 

 

「では───往くぞ!」

 

 

 そう言い切ると、アルトリアは剣を構えた。虚空に煌めく剣の光は、その軌跡を残し光り輝く。歓喜の笑みと共に、光は一筋の線となり、刃へ形を変えた。

 

 一閃。神速の剣戟が〈仮面ライダー〉に降り掛かる。速すぎる、そう形容してなお有り余る速度だ。だが、紙一重の所作でそれを躱す。空振りに終わる一撃を、アルトリアはすかさず斬り返し胴を狙った。だがそれも、〈仮面ライダー〉は難なく躱した。

 そうだ。こうでなくては面白くない。とめどなく溢れる魔力を惜しみなく放出し、幾千の軌跡を叩き付けた。

 

 

「これを避けるか・・・・・・!」

 

 

 しかしその尽くが回避され、アルトリアに驚嘆の色が浮かぶ。数多の戦士を斬り捨ててきた聖剣の一振りが、眼前の男には掠りもしない。その事実は、相手が如何に熟達した英霊かという事を表していた。そして同時に燃え盛らせる。〈仮面ライダー〉を前にして、騎士としてのプライドが一気に最高潮へ達した。

 歓びで満たされる騎士王。熱く迸るその様とは裏腹に、〈仮面ライダー〉はいやに静かだった。

 

 

「どうした! 貴様の力はこの程度ではないだろう!」

 

「・・・・・・」

 

 

 斬る、避ける、斬る、避ける・・・・・・。瞬きすら許さない連撃はしかし、〈仮面ライダー〉には当たらない。剣戟は更に勢いを増し、圧倒的な暴風を纏い空間を裂いていく。それでもなお、〈仮面ライダー〉は避け続けた。まるで流れる疾風のように。一切無駄のない挙動は、息を呑む程美しい。そう錯覚するまでに。

 剣の風圧で室内が荒れ果てる。壁や床が傷付き、見るも無残な状態へ変わっていく。何もかもがボロボロに壊れかけた時、壮絶な攻防は一旦終わりを迎えた。アルトリアが距離を取った為だ。〈仮面ライダー〉は依然として、不気味な程静かなままだ。

 

 

「貴様・・・・・・やる気はあるのか? 避けるばかりで芸の無い。私があの時戦ったのは別人だったか?」

 

「・・・・・・」

 

 

 憤りすら覚えるアルトリアに対し、ようやく〈仮面ライダー〉は静寂を破った。

 

 

「お前は言ったな。本気で来い、と」

 

「無論だ。よもや本気ではないとは言わないだろうな」

 

「本気さ。正直避けるので必死だった。それ位、お前の剣は鋭く速い」

 

「フン」

 

 

 実際、〈仮面ライダー〉の反応速度を持ってしても、彼女の剣は凄まじいものがある。単純な威力もさる事ながら、特筆すべきは速度と精密さだ。常人では全く見切れぬ軌跡は全て急所を狙っており、回避が至難であったのは事実。こちらがカウンターを決める暇も無いのは当然だ。

 だがこれは、〈仮面ライダー〉が自らの性能を完全に発揮出来ていない為だ。あるべき力を解放し切れず、アルトリアと戦っていた。

 サーヴァントであるが故の制約────現状〈仮面ライダー〉が本来の力を発動出来るのはほんの僅かな間だけだろう。

 それでもアルトリアは本気で来いと言った。ならば、それに応えよう。

 

 

「・・・・・・今度はこっちの番だ」

 

「ほう・・・・・・とうとうその気になったか」

 

 

 〈タイフーン〉が唸りを上げる。風を巻き込み、活性化した極小機械群の熱を吹き飛ばす。強化細胞がより活発に動き出し、秘めている力を膨れ上がらせる。

 〈仮面ライダー〉の魔力が目に見えて増大した。今度こそ、彼の一撃が飛んでくる。ならば、正面から迎え撃つまで。アルトリアもまた膨大な魔力を漲らせ、極光の剣を放たんと聖剣を掲げた。

 

 そして放出する。万物を呑み込む光を───!

 

 

「エクスカリバー・・・・・・モルガ───」

 

 

 だが、それは敵わなかった。

 

 

「・・・・・・な、に」

 

 

 混乱、困惑。そんな色を多分に含んだ、短い一言が、意図せずして洩れた。騎士王たる者が状況を呑み込めていない。何故なら、剣を構えようとした時には、既に背後の壁にめり込んでいたからだ。

 痛みが遅れてやってくる。身がねじ切れる、そう錯覚する程の激痛。

 どうでも良い。何故、この肉体が彼方まで吹き飛ばされたのかを考える方が先だ。

 

 

「大丈夫か」

 

「・・・・・・」

 

 

 壁に身体を預けるアルトリアを本郷は持ち上げる。既に変身は解除され、少しばつの悪そうな面持ちだった。

 

 

「・・・・・・貴様、今、何をした。一体どうやって、私を吹き飛ばしたのだ?」

 

 

 きっ、と鋭い眼光が本郷を射抜く。それに怒りは無いが、代わりに大きな疑問があった。どんなスキルを使ったのかは定かではないが、自分程のサーヴァントが何も反応出来ないとなると、それはまやかしかこちらの認識をずらす何かしか有り得ないのでは、と。そうして生じた空白に、本郷が攻撃を加えたのだと、アルトリアは考えた。

 卑怯だ。そうは思わない。手合わせとはいえ、実戦になれば卑怯もへったくれもない。勝てば正義、負ければ悪。単純明快な真実だ。

 それ故に、疑問を呈する。どうやってこのような所業を成し得たのかと。シンプルにその答えが知りたかった。

 

 理由でも考えているのか、本郷は少しだけ言葉を詰まらせた。程なくして、その訳を語る。それは、アルトリアに多大な衝撃を与えるのに充分だった。

 

 

「跳んで、殴った」

 

「・・・・・・なんだと?」

 

「だから、そのままだ。俺はお前目掛けて、ただ全力で跳んで殴った。それだけだ」

 

 

 そんな、馬鹿な。

 

 絶句とは、まさにこの事を言うのだろう。本郷の言葉の意味を咀嚼するのに、アルトリアはかなりの時間を要した。もし言っている内容が事実なら本郷は・・・・・・〈仮面ライダー〉は、自分が全く反応出来ない速度で接近し、攻撃を加えたのだ。この騎士王アルトリア・ペンドラゴンが認知不可能なまでの拳撃を。

 有り得ない。最優とまでされた英霊が、指一本動かす事すら敵わなかった。本郷の実力は、あまりにも圧倒的だったのだ。

 

 

「・・・・・・変身を解いたのも解せん。あれで私が屈したと思ったのか?」

 

「それは違う。あれは・・・・・・あの状態は、あまり長くは保てない。お前に攻撃した時がタイムリミットだった」

 

 

 変身の強制解除。それこそが、今の本郷にとって最大の弱点と言える部分だろう。

 〈タイフーン〉を最大限駆動させ、体内の強化細胞及び極小機械群を活性化させる。そうする事で、生前の力を発現可能となる。しかし、短時間のみだ。限界が訪れると、変身は強制的に解除されてしまう。平常時なら問題はないだろうが、もし強敵と対峙した時、このデメリットはあまりにも大きすぎる。多用は禁物だ。

 

 だがそれを差し引いても、本郷の強さは桁外れだ。騎士王アルトリアですら劣る強さは計り知れない。

 

 何故、これ程の強さを?

 

 そも、本郷猛という人間は、本来英霊となれる人物ではない。その性質、在り方は善であれ、元々は只の人間だった。人間、だったのだ。

 改造人間という忌まわしき名。人を象りながら人でない生物兵器。一度肉体を変えられた者は、二度と人としての生を許されない。与えられるのは、果てなき孤独と殺戮だ。

 強いて挙げるなら、本郷の強さはそこにある。改造人間としての性能に加え、何十年と戦い抜いたその戦闘経験は、例えどんな英霊だろうと簡単に超えられるものではない。

 

 だがそれ以前に本郷猛という男は───〈仮面ライダー〉という生物は、強くなり過ぎていたのだ。

 

 

「・・・・・・最初から勝敗は決まっていた、か」

 

「・・・・・・すまん」

 

「何を謝る? 元はといえば私が始めた事、貴様が私より強かっただけの話だ。・・・・・・悔しいがな。

 だが、いまいち腑に落ちん。これ程の強さ、一体何処で手にした? 貴様程の手練れならば、相応の逸話くらいはあっても良いものだが」

 

「逸話・・・・・・か」

 

 

 そんなものは、無い。

 

 〈ショッカー〉は常に歴史の闇で蠢き、決して表舞台に現れる事は無い。陰に潜み、人を貪り喰らう、文字通りの秘密組織だ。彼らと戦っていた自分に、人々へ語り継がれるような伝説などあるものか。そこにあったのは、血なまぐさい殺し合いでしか無かったというのに。

 

 この強さは、力は。そうして得たものだ。

 

 

「・・・・・・悪い。今は、まだ」

 

「そうか」

 

 

 それ以上、アルトリアが問い詰める事は無かった。本郷の持つ強さ、それを確かめたいのは事実だ。だが、彼の哀しげな表情を見てしまえばそんな気も失せる。強大な力に裏打ちされた残酷な真実が、きっとそこにあるのだろう。容易く口外したくはない、おぞましい過去が。

 ふぅ、と息を吐き、アルトリアは鎧を解いた。黒い優雅な風合いのドレスに身を包み、トレーニングルームを後にする。

 

 

「・・・・・・」

 

 

 そろそろ、話す頃合いだろうか。

 

 アルトリアのように、自分には有名な伝説などない。自らが語らねば、立香達は自分の出自が分からないままだ。それは信頼を損ねる形にもなる。

 だが間もなく次の特異点へ向かわねばならない。過去を何もかも語るには時間が足りな過ぎる。転移先で束の間の休息があれば、その時に話そう。

 

 そう決めた本郷は、アルトリアに続いた。

 

 

「セイバー! 本郷さーん!」

 

 

 別の部屋で待機していた立香が駆け足で向かってくる。その後ろにも先程の面々が軒を連ねていた。

 

 

「二人ともお疲れ様だ。身体の方は大丈夫かい?」

 

「問題ない。が、少し空腹だ」

 

「なら食堂に行くといいよ。ここのスタッフは料理の腕も優秀だからね。

 そうだ、Mr.本郷もどうかな? この際だし、ここを見て回ろう」

 

「そうだな。俺も行こう」

 

「同感だ。右も左も分からぬとなっては不便だからな。行くぞ〈仮面ライダー〉」

 

「ああ。あとセイバー、俺の事は本郷でいい」

 

「む、そうか。ならそう呼ばせてもらおう、ホンゴウ」

 

 

 そう言いながら、本郷とアルトリアは肩を並べ食堂へと向かう。先程まで激闘を繰り広げていた人物と思えない程、二人は話し合っていた。

 

 

「・・・・・・なぁ。アイツらってあんな仲良かったか?」

 

「えぇっと・・・・・・は、波長が合うのではないでしょうか。オルタさんもMr.本郷も実力者ですし。なんというか、シンパシーを感じるところがあったり」

 

「そう、なのかなぁ? でも頼もしくて何よりだよ。キャスターも居るし」

 

 

 そんな彼等を訝しげにキャスターは傍観していた。冬木では完全に敵対していたアルトリアと本郷が、ああも仲良くしているとは。

 だが立香が言うように、この三人が味方というのはこの上なく心強い。未だ未熟な立香とマシュでは乗り越えられない壁も、この頼れる味方が居れば難なく突破出来る。そう断言出来る程、彼等は強い。

 

 

「俺達も、強くならなくちゃな」

 

「・・・・・・はい、先輩!」

 

 

 だからこそ、いつまでも頼り切りではいけない。自分達もまた、強くならねばならない。

 

 今一度、二人はそう誓ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 深い、海の中に居た。

 

 

 

 

 海とは言っても、冷たい底ではない。皮膚を焼き、肉を溶かす、紅蓮の火。狂おしく程に焦げ付き、大気が絶えず身体を焼いていく、炎の海だ。

 

 激痛だ。しかし、痛みは無い。それを感じる器官はとうに失せてしまった。あの時のまま、自分の時間は停滞している。

 

 ここから出たいか?

 ───どうでも良い。

 

 また大地を駆けたいか?

 ───どうでも良い。

 

 死した者が欲を得ようなど、それは生命に対する冒涜だ。

 

 

 焼ける灼熱のまどろみは、ゆるゆると精神をくすぐる。永遠と続く虚無は、ある意味で救いであり、またある意味で、苦痛でもある。

 

 だがもし───再び生を享受出来たのなら?

 

 だとするならば、またもう一度、戦いたい。

 生涯で唯一心震えた、あの男との熱き死闘を。

 

 だが、この牢獄に居ては、それも敵わない。

 

 そう、思っていた。

 

 

「・・・・・・」

 

 

 深く沈んでいた意識が、強引に引き上げられた。全てを焼き尽くす炎が彼方へ消え、凍える程の外気が肌を舐める。

 光が見えた。暗い、しかし業火で満たされたあの世界に、一筋の光が。

 

 手を伸ばしてみる。不思議と、暖かい感じがした。それをがっちりと掴み、流れのまま上へと昇っていく。

 

 

 ───何処に向かうというのだ?

 

 

 疑問が頭に浮かんだ時、少し驚いた。物事を考える能力が、まだこの朽ちた身体に残っていたのかと。

 

 だが、それも一瞬。

 次に目をあけた時、広がる光景はどこかの聖堂だった。

 

 暫しの間、思わず立ち尽くす。自分が何故ここに居るか、という疑問。それもある。だが何より頭を掠めるのが、この空間が・・・・・・というより、この世界そのものが空虚だ。改竄された世界だと、直感で思った。

 

 

「───よく来てくれました、我が同胞。貴方たちのマスターがこの私です」

 

 

 耳障りな声が脳に木霊した。癪に障る、聴くに堪えない声だ。

 その主は旗を掲げ、歪に笑う少女だった。それだけではない。自分の周りには、それぞれが異なる力を感じさせる者が召喚されていた。

 

 

「呼ばれた理由は分かっていますね? 破壊と殺戮、それが私の下す命令です。

 春を騒ぐ村があるのなら、思うままに蹂躙しなさい。

 春を唄う町があるのなら、思うままに破壊しなさい。

 どれ程の邪悪であれ、どれ程の残酷であれ───神は全てをお許し下さるでしょう」

 

 

 そこから先は、正直どうでも良かった。

 

 これ以上、あの小娘の声を聴いていたら、頭がどうにかなりそうだった。

 あの娘も、それを取り巻く連中にも、欠片も興味は無い。

 

 破壊と殺戮?

 

 果たしてそれは意義ある行為なのか。

 壊す為だけの破壊、殺す為だけの殺戮。

 これ程愚かで穢れた行いは無い。

 

 だがそれ以前に、何もかもどうでも良かった。

 

 少し目を閉じる。

 その度に、あの時の戦いが浮かぶ。

 

 炎に塗れ、奥底より込み上がる咆哮を。

 燃え盛るこの闘志を。

 

 持ち得る総てを掛けて、戦い、そして敗けた。

 

 

 そうだ。

 

 生涯でただ一度の敗北だ。

 

 そして勝利したのが、お前だ。

 

 

 本郷猛───〈仮面ライダー〉!

 

 

 今一度、お前と戦えるのなら。

 死した者がそれを望んでも良いのなら。

 

 私は、喜んでこの命を燃やし尽くそう。

 

 そうだ。

 この現し世に生を受けたのは、それだ。

 

 再び、本郷猛と戦う為に。

 何故かは解らない。だが、そんな予感があった。

 

 その為に、私は・・・・・・。

 

 

「どうしたのですか、バーサーク・アヴェンジャー。貴方も皆に続きなさい。このフランスの街を地獄に変えるのです」

 

「・・・・・・」

 

 

 復讐者。

 

 そのクラスで、自分は召喚された。サーヴァントという枠にはめ込まれ、望んでもいない生を与えられた。全てはこの娘の手駒として。

 

 誰かに命令されるのは久しぶりだ。何故なら、自分は王だったからだ。造られた者達の王として、自分は君臨していた。

 

 だから、という訳では無い。例えこの小娘が我が主だとしても、従う義理も道理も無い。

 成すべき事は、初めから決まっている。命令を聴く必要は、無い。

 

 

「私は、誰の指図も受けない」

 

「・・・・・・それは本気で言っているのですか?」

 

「私は私のやりたいようにやる。それだけの事だ」

 

「・・・・・・まぁいいでしょう。何を企んでいるのかは知りませんが、フランスを滅ぼすのにサーヴァントは充分足りている。好きな様にしなさい。

ただしあくまでも貴方の主はこの私───ジャンヌ・ダルクであるという事をお忘れなく。ある程度の自由は許可しますが、私の命令には従うように」

 

 

 思い通りに動かない事を、彼女は快く思っていないらしい。訝しげに睨み付け、不信を向ける。

 

 構いはしない。こんなもの、歯牙にも掛けない。沸き立ち始める衝動を、止められる者は誰も居ない。

 

 

「・・・・・・一つ、お前に言っておく。私をクラス名でも、真名でも呼ぶな」

 

「・・・・・・? では何と呼べば満足するのですか?」

 

 

 聖堂を後にする前に、教えておく事があった。

 呼び名だ。

 いちいちクラス名で呼ばれるのは、不愉快極まりない。

 

 自分には、名前がある。

 

 クラス名でも、ましてや真名でもない。

 この身体を与えられた時から授かった、もう一つの名が。

 

 そうだ。

 

 それこそが。

 

 

 

「・・・・・・〈大佐〉だ」

 

 

 

 ───それこそが、我が闘争の名なのだ。

 

 

 

 

 

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