Fate/Grand Order 魂の守護者   作:SKYbeen

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おまたせしました。
タイトル通り、変身します。


〈変身〉

 

 

 

「・・・・・・なんだ、あれは」

 

 

 洞窟を抜けた先、そこには巨大な空洞が存在していた。小高くせり上がった岩の丘には見た事も無い光の柱が立ち昇っている。その光は異様な気配を感じさせ、言い知れない予感を本郷に抱かせた。

 

 

「あれが今回の異変、その源だ。大聖杯───超弩級の魔術炉だな」

 

「ウソ・・・・・・! なんであんな代物がこんな極東の地にあるのよっ!?」

 

 

 聖杯の魔力は魔術に関わる者なら言わずとも知っている。あらゆる欲望を現し世に投影させる程の力は正に奇跡としか表せない神の所業だ。目の前の大聖杯はそれすらも超越する規格外の魔物。オルガマリーが言葉を失うには充分過ぎる代物だ。

 

 

『資料によると、どうやらアインツベルンという一族が作り上げたものだそうです。錬金術に長けた彼等は苦心の末これを生み出したんだとか』

 

「それにしたってこんなもの人間が作っていいものじゃないわよ・・・・・・! 現実を歪めかねない魔力を持った物質が存在するなんて・・・・・・!」

 

「おっと、お話の最中に悪いが、奴さんにバレたみてぇだぜ」

 

 

 キャスターが指し示す方角、そこには一つの影が居た。本郷は優れた視力を使い、出来うる限りの情報を得ようとした。そして気付いたのが、その異常さだ。

 漆黒の鎧を纏いし騎士。華奢な身体付きにも関わらず溢れ出る魔力は途方も無い実力者という事を教示している。右手に携えられた剣からは黒く歪んた燐光が漏れ出ていた。

 あれが、大聖杯を守護する最後の門番。これまでの敵とは格が全く違う、最強の英霊。

 

 騎士王アルトリア・ペンドラゴンその人が大聖杯の前に鎮座していた。

 

 

「───面白い英霊が居るな。二人・・・・・・相手取るに不遜は無い」

 

「あ゙!? テメェ喋れたのかよこの野郎!」

 

 

 冷たく、それでいて澄んだ声色で騎士王───セイバーは口を開いた。彼女が語る面白い英霊、それを示すのはまず本郷とマシュだろう。金色の瞳が二人を居抜き、たったそれだけで秘める力を感じさせる。伊達に他のサーヴァントを仕留めてはいないという事だろう。尤も、一人し損ねた英霊が青筋を浮かべ吠えていたが。

 

 

「何をしても、何処に居ても視られる。そんな状況では案山子に徹している方が都合が良い」

 

「けっ、さいですか・・・・・・」

 

「だがここに来たのはつまり───死ぬ覚悟は出来たという事だな、クー・フーリンよ」

 

 

 瞬間、大波が如く襲来する殺気。研ぎ澄まされた剣にも似たその死の気配は、生半可な力量の者なら昏倒させる程だろう。現にオルガマリーに至っては腰を抜かし、立つ事すらままならない。外観は至って見目麗しい、可憐な少女そのものだというのに。かの騎士王がまさか女性だとは夢にも思わなかったが、そんな些末事はどうでも良い。男だろうが女だろうが、目の前の英霊はとんでもないバケモノだ。

 

 

「しかし・・・・・・本当に面白い宝具を持っているな、娘。そこの男もまた、秘めた何かを感じさせる」

 

「・・・・・・意外とお喋りだな、騎士王っていうのも」

 

「強者を前にしては語りたい事も一つや二つあるものだ、男よ。だが確かに、無駄な語らいもここ迄だ。貴様達の力が本物かどうか、我が宝具をもって確かめてやろう───!」

 

「ッ! こいつァ拙い! 嬢ちゃん!」

 

「はいっ! 皆さん下がって!!」

 

 

 

 黒き魔力がセイバーの持つ聖剣───エクスカリバーに収束される。あれこそが数多の英霊を一撃で葬った必殺の宝具。大いなる災厄にして全てを呑み込む光だ。喰らえば全滅は免れないだろう。それを防げるのはマシュの宝具しか有り得ない。皆の前に立ち、盾を構える。間を開けずして二度の宝具の発動は相当の負荷が掛かるが、全身全霊で防がなければマシュ共々消滅する。皆を守る、その強い意思は蒼き光となり盾を覆った。

 

 

「『卑王鉄槌』、極光は反転する。光を呑め───!」

 

「宝具、展開します───!」

 

 

 セイバーは黒き聖剣を振り上げ。

 マシュは盾を打ち立てる。

 

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン )───!」

 

疑似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)───!」

 

 

 そして放たれた破滅の光は守護を司る壁へと向かい、食い破らんとその城壁を叩き続けた。極大の魔力の奔流は今にも盾を打ち砕く程に溢れ、徐々に亀裂を生じさせた。二度に渡る宝具展開は気合いや意思だけではどうする事も出来ないまでの魔力を消費する。キャスターやオルガマリーによる回復は施されても、これ程の一撃を防ぐのは至難を極めた。

 

 だが、それでもやるしかない───!

 

 

「う───あああッッ!!!」

 

「ッ! 何ッ!」

 

 

 咆哮するマシュ。誰にも崩せない鉄壁が如き覚悟を宝具へと具現させ、セイバーの光を押し返す。大気を引き裂き地面を抉りながら迫る自身の業にセイバーは驚きを隠せなかった。本気で放ったエクスカリバーを受け流すに留まらず、完全に防いだ挙句弾き返すとは。予想だにしない反撃だが、対処出来ない訳は無い。足元から魔力を放出、大きく跳躍した後に本郷達の背後へと降り立つ。

 

 

「見事───実に見事だ。我が聖剣を防ぎ、返すとはな。そうでなくては面白くない」

 

「キャスター!」

 

「応よ! 行け兄ちゃん!」

 

 

 優雅なまでの立ち振る舞いでセイバーは微笑んだ。女神の微笑にも見紛う美しさはどんな男性も魅了されるだろうが、ここに居る男達はそんなヤワではない。強化のルーンを施された本郷は弾丸に匹敵する速度で接近し、鋭く蹴りを放った。それを援護するように四方から火球をキャスターは飛ばす。宝具を発動した直後ならば魔力は多分に消費され、少なくとも十全の力は発揮出来ない筈。そう踏んだ二人はあらかじめこれを予見し、この一撃に賭けたのだ。

 迫る改造人間の蹴りと魔術師の炎。如何に騎士王といえど一矢乱れぬ連携を躱し切るのは容易ではあるまい。大きな効果は無くとも、せめて怯ませる事が出来れば。そう考えた本郷とキャスターだが、その期待は見事に裏切られる。

 

 

「無粋だな」

 

 

 その一言と共に、セイバーは流れるような所作でその尽くを避けた。さらりと靡く髪にすら掠らず、事も無げに全ての攻撃を受け流したのだ。

 卓越した運動能力。特別なスキルも使用せず、純粋な力量での回避は最早異常の域に達するだろう。

 

 

「今の連撃は見事だった。だが今一つ届かないな」

 

「!? ぐあッ・・・・・・!!」

 

「お前もだ、キャスター」

 

「やべっ───ガアァッ!」

 

 

 神速で振るわれる聖剣。二人がそれに反応出来たのは強化のルーンがあってこそだった。もしあとほんの少し遅れていれば、今頃肉体は半分に割れていただろう。だがその風圧でさえ凶暴な威力を孕み、暴風に本郷とキャスターは吹き飛ばされた。何とか体制は立て直すが、放たれた風圧はさながら鎌鼬。薄皮ではあるが皮膚は裂かれ、薄く血が滲んでいた。

 

 

「チイッ・・・・・・あんな宝具ブッパなしておいてケロッとしてやがる」

 

「だが奴の魔力も無尽蔵じゃない筈だ。必ず限界は来る」

 

「そこが狙い目・・・・・・ですね。ただそれまで持つかどうか・・・・・・」

 

 

 宝具発動による魔力消費はサーヴァントにとって死活問題といってもいい。基本的に多くの魔力を込める宝具はそう容易く何度も放てるものでは無い。見た所セイバーの戦闘法は膨大な魔力にものを言わせた超攻撃型。一撃一撃が重い分、使われる魔力もまた多量。外見こそ平然としているが、宝具を使った分魔力もそう余裕は無いだろう。何とかセイバーの魔力が枯渇するまで粘れればこちらにも勝機はある。

 

 そう、あくまで魔力が枯渇すれば。

 

 

「貴様らは勘違いをしている」

 

「なに?」

 

「いつ、私の魔力が有限だと言った?」

 

「・・・・・・テメェまさか!」

 

 

 セイバーは剣を振り上げた。黒き燐光が聖剣を覆い、やがて巨大な光として顕現する。あの光は先程マシュに放ったエクスカリバーだ。

 絶望が鎌首をもたげる。回復をしたのなら兎も角、何故間髪入れずに宝具が発動出来る? 通常のサーヴァントとなら考えられない所業だが、キャスターは察知した。次いでその結論に至ったのはセイバーについての情報をかき集めていたロマンだ。

 

 

『───そうか大聖杯! セイバーは大聖杯と直接繋がっているんだ! 無限の魔力リソースから魔力が供給されているから、彼女はすかさず宝具が使用出来る! マズいぞこりゃあ・・・・・・!』

 

「マズいぞ、じゃないでしょ!! 何とか出来ないの!?」

 

『それが出来れば苦労しませんよ! ってあれ、なんかこれデジャブ・・・・・・じゃなくて! とにかくそこから離れるんだ皆! マシュももう宝具が使えるコンディションじゃない!』

 

「チィッ!! 灼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン )!!」

 

 

 最早避ける暇も無い。頼みの綱であるマシュは既に宝具を使用するには厳しい状態だ。ならばここは自身の宝具にて耐えるしかなかった。

 持ち得る魔力を注ぎ込み、ウィッカーマンを発動するキャスター。その巨体を活用し、襲い来るエクスカリバーを受け止める。

 

 

「ほう。流石はアイルランドの光の御身。だがいつまでも耐えられるとは思わぬ事だ」

 

「クソが・・・・・・! ポンポンぶちかましやがって・・・・・・!!」

 

 

 だが、やはり騎士王の力は余りにも強過ぎた。元来エクスカリバーの光は対城宝具、キャスター渾身の魔術を持ってしても止められる代物ではない。圧倒的な破滅の光は少しずつ、だが確実にウィッカーマンを破壊しつつあった。寧ろこれ程まで耐えられるキャスターの宝具は天晴と言えるだろう。

 

 

「キャスター! ウオオオッッ!!!」

 

「本郷さん!?」

 

 

 今にも倒壊しそうなウィッカーマンの横を抜け、本郷は突貫を試みる。宝具を一方向に放出しているこの瞬間ならば彼女は無防備だ。その隙にさえ叩ければダメージは与えられる。故により確実な一撃を喰らわせる必要があった。

 再び本郷に熱が迸る。極小機械群が焼ける程に活性化し、強化細胞を一段階上へと昇華させる。腕は節くれ立ち鋭い爪が生え、顔にも異様な紋様が走った。

 〈飛蝗男〉───ではない。今の本郷に再度あの姿になるエネルギーは残されていない。形容するなら〈半飛蝗男〉とでも言うべき姿を本郷は取った。完全に変容していないこの形態ならある程度負担を減らし、平常時よりも攻撃の手段を増やせる。何より、肉体を蝕む熱が低い分、冷静な判断が可能だった。

 がら空きのセイバーの右。鎧ごと穿つつもりで本郷は突きを放った。バーサーカーすら斬り裂いた〈飛蝗男〉の爪は普通に殴るより遥かに強い。それは自信を持って言える事だ。

 

 だが───それも当たればの話。

 

 

「甘い」

 

「な───」

 

 

 持てる力全てを注ぎ放った一撃を、なんとセイバーは見切った。放出していたエクスカリバーを霧散させ、本郷の攻撃を避ける。時間にして一秒にも満たぬ動作を完璧にこなしたのだ。冷静な状況判断と見上げる程の身体能力、何より胆力が無ければ出来ない芸当を彼女は難なく行っている。その事実は僅かでも本郷の肉体を硬直させ、致命的な隙を生み出してしまった。

 ドス、と鈍い音が筋肉を通じ伝わる。エクスカリバーが本郷の胸を貫いた音だ。流れ出る鮮血は蛇口を捻ったように止まることは無く、大量の血は地面を濡らし紅く染めていく。

 セイバーは聖剣を抜いた。べっとりとこびり付いたそれを払い、冷徹なまでに凍てついた眼差しを立香達へ向ける。

 

 本郷は、力無く地に伏した。

 

 

 

「そん・・・・・・な・・・・・・! 本郷さぁぁぁんッッ!!!」

 

「Mr.本郷・・・・・・! 彼が・・・・・・まさか・・・・・・!!」

 

 

 悲痛な立香な叫び。それにさえ本郷は反応しなかった。事切れた人形のようにピクリとも動かない。消滅していない時点で死してはいないが、それも時間の問題だろう。

 セイバーがとどめを刺さない理由、それは本郷よりもキャスター及びマシュが厄介だと判断した為。異様に肉体を変化させ襲い掛かって来たのには少々驚いたが、しかしそこまで。素早くとも動きは単調、見切るのは難しくは無い。そもそも魔力切れが生じないという圧倒的利点がある限り、セイバーに出来ぬ事は存在しなかった。

 

 

「さて、次はお前達だ。覚悟を決め───」

 

 

 だがそこで、セイバーは言葉を止めた。

 

 向かう視線は背後。セイバーだけではなく、立香達全員もその方向を見ていた。

 

 皆が視線が送る先、本郷がゆらりと立ち上がっていた

 

 

「馬鹿な・・・・・・確かに心臓を貫いた筈。何故立ち上がれるのだ」

 

 

 ここで初めて、焦りという感情がセイバーに生まれる。本郷は誰が見ても致命傷を受けた。それは紛れも無く、事実今も本郷の心臓は動いてはいない。サブとして備えてある首の人工心臓が血液を循環させ、極小機械群が傷の再生にフル稼働していたが、それでも立ち上がるには至らない。本来なら長時間治療に専念せねばならないレベルの損傷だ。

 

 ならば何故、本郷は立ち上がれたのか。

 その理由は一つだった。

 

 

(ハヤト───)

 

 

 薄れゆく意識は本郷の脳にある情景を見せていた。

 

 当時都心によくある、乱立した建設途中のマンション。荒廃した姿をお化けマンションと揶揄され、放棄されたその前庭に彼は居た。

 

 

 

 

 ───頼もしいな。だけどちょっと待てよ。□□□ってぇのも、なんつーか、趣のない名前だと思わないか? だいたい、ヤツらがつけた名前ってのもな───

 

 

 

 

 人懐こい笑顔がよく印象に残っていた。

 

 消えかけの命を燃やし、彼は全てを掛けて本郷を救ってくれた。

 

 そして貰った。何にも変え難い、自分のもう一つの名を。

 

 

 

 ───最後の最後に贈り物だ。おまえに名前をつけてやる───

 

 

 

 簡単な事だった。

 最初から分かりきっていたのだ。

 

 

 

 ───名前だ、名前だな───

 

 

 

 自分が何の為にここに居るのか。

 命尽き、地獄へと堕ちる運命の自分が、何故。

 

 

 

 ───仮面をつけ───

 

 

 

 そんな事は、考えるまでも無い。

 何故なら、それが自分の役目だから。

 

 

 

 ───このマシンで───

 

 

 

 護るべき者が居る。

 その魂を護らねばならぬ人々が。

 

 ならばこそ、戦おう。

 護る為に、この力を振るおう。

 

 

 

 ───〈ショッカー〉と戦う、おまえの名前だ───

 

 

 

 

 そうだ。

 

 

 

 俺は。

 

 

〈俺達〉の名は─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 風が吹く。

 

 濃密に爛れた魔力を吹き飛ばすように、洞窟の中で風が吹き荒ぶ。

 セイバーの魔力放出だろうか? いや、違う。その風は、大地を踏み締める本郷から発せられていた。

 

 

 風が吹く。

 

 腰に覗く銀色のベルト。

 中心にある小型の赤い風車が轟音を上げ風を吸い込んでいく。

 その余りに異様な光景は、この場に居た全ての者を本郷へ注目させた。

 

 

 風が吹く。

 

 嵐のように唸りを上げ、大気をかき乱し、咆哮を放つ。暴風となり、風の音が洞窟に反響する中、核となる本郷は確かな声で放った。

 

 

「───ライダー───」

 

 

 風車が廻る。

 

 本郷の覚悟に呼応するかのように、回転数を増していく。セイバーですら怯む程の暴風はしかし、とどまる事を知らずに雄叫びを上げる。

 

 

「───変身───!」

 

 

 風が弱まり、次第に収まっていくのは、本郷が力強く言い切ったのと同時だった。

 

 そこに本郷猛の姿は無い。

 代わりに立っていたのは───異形。

 

 

 緑の仮面。

 

 真紅の複眼。

 

 漆黒のスーツ。

 

 奇妙な形状をした深緑の装甲。

 

 首に巻かれたマフラーが燃える闘志を体現するように靡いている。

 

 突如として現れた異形に、セイバーは切っ先を向け問うた。

 

 

「貴様・・・・・・何者だ」

 

 

 その問いに、異形は確固たる決意で応える。

 

 

 

 

お前達(人間の敵)と戦う者。

 

お前達の牙から人々を護る者。

 

 

 ───〈仮面ライダー〉だ」

 

 

 

 

 

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