Fate/Grand Order 魂の守護者   作:SKYbeen

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〈疾風〉

 

 

 

 

 〈仮面ライダー〉= 本郷猛は改造人間である。

 

 

 サーヴァントになる以前、〈ショッカー〉と呼ばれる組織に肉体を改造され、本郷猛は人間ではなくなった。肉を、骨を、皮を、臓物を、末端の神経さえ、その全てを造り替えられた。

 System.Masked.Rider.───略式〈S.M.R.〉と称された改造人間計画、その唯一の成功例である。頭脳、肉体、どちらも優れた素質を持つ本郷は〈S.M.R.〉の素体として適合し、多大な犠牲を払いながらも完成へと至った。

 感覚器官を強化する〈ヘルメット〉、肉体を保護し、倍力効果により身体能力を底上げする〈強化服〉、極小機械群をより効率的に稼働させる核電池搭載ベルト〈タイフーン〉、もう一人の自分とさえ呼べる超高性能バイク〈サイクロン〉。これら全てが揃う事により、〈S.M.R.〉は完全となる。あらゆる改造人間を超えた、最強の改造人間である。

 

 だが、本郷が死するまで最強で居られたのは、彼が〈S.M.R.〉だからではない。

 

 牙を剥く者に立ち向かい、弱き者を護る───〈仮面ライダー〉だからだ。

 

 

 

 一陣の風が舞い上がった。強化服の倍力効果により〈仮面ライダー〉の脚力は最大限上昇している。遠く離れた場所に居たとして、そんな距離は無いに等しい。一瞬の内に〈仮面ライダー〉は立香達の元へと駆け寄った。

 

 

「大丈夫か、藤丸くん」

 

「ほ、本郷さん・・・・・・なんですか? その姿は・・・・・・」

 

「ようやく俺も宝具が使えるようだ。遅くなってすまない」

 

 

 充満する歪な魔力は相も変わらず嫌な感覚を抱かせる。しかし〈仮面ライダー〉の傍に居ると、不思議と暗い気持ちは消えて無くなり、巨木に見守られているような安心感がそこにはあった。

 しかし現時点で〈仮面ライダー〉は百パーセントのパフォーマンスは発揮出来ない。心臓は貫かれ、急ピッチで再生を促すも修復はまだ二割程度。〈飛蝗男〉への完全変身も未だ影響しており、本来の三分の一以下にまで性能は低下している。

 

 だが───それで充分。

 

 

「キャスター、皆を頼む。今頼れるのは君しかいない。アイツは俺が倒す」

 

「それは構わねぇが・・・・・・兄ちゃん一人で勝てる相手じゃねぇぞ」

 

「かもな。だが、勝ってみせるさ」

 

 

 〈仮面ライダー〉の言葉には虚勢や焦燥は微塵も無い。代わりに垣間見えるのは必ず勝つという自信。絶望的な差は埋まらぬというのに一切の恐怖すら介在していない。この漲る自信は何処から来ているのだ? 疑問に思うキャスターだが、しかしそんな事は野暮だと言えるだろう。

 

 本郷猛は改造人間であり、〈仮面ライダー〉である。

 勝利の理由はそれだけでいい。

 

 

「ほう・・・・・・随分と身なりが変わったな。それが貴様の真の姿、というやつか」

 

「そうだ。お前を倒す俺のもう一つの姿───〈仮面ライダー〉だ」

 

「カメンライダー・・・・・・しかとその名を刻ませて貰おう」

 

 

 睨み合う最強の騎士と最強の改造人間。澄んだ瞳を閉じ、セイバーは本郷の名を───〈仮面ライダー〉という文字をその脳裏に焼き付ける。例え異質の戦士とて誉れ高き者である事に相違は無い。一人の王として、そして一人の騎士として、彼女は〈仮面ライダー〉に敬意を払った。

 目を閉じたのは一秒、それ以下の僅かな瞬間。出力が落ちている〈仮面ライダー〉でも一撃を叩き込める隙だ。それを見逃さない理由は何処にもない。

 強化服の倍力効果を存分に発揮し、〈仮面ライダー〉は跳んだ。これまでよりもずっと速く、姿が霞む程の高速で。銀色のグローブを固く握り込み、全力で殴り掛かる。

 初撃を予測していたセイバーは瞬時に剣を構え、その腹でパンチを受け止める。重くのし掛かる圧力は放たれた拳が尋常でない威力である事を如実に表していた。

 間違いなく、〈仮面ライダー〉に変身してからの彼は力が何倍にも増している。致命傷を受けているにも関わらず、それを全く感じさせないまでの覇気は実に見事だ。セイバーは笑わずには居られない。これ程の戦士を前にして、笑わずに居られるものか。

 

 奇襲のつもりだったが、防がれたものはそれまで。素早く切り返した〈仮面ライダー〉は拳を開き、手刀の形を取る。そのまま勢い良く下ろし、狙うはセイバーの剣を持つ手首だ。優れた剣を振るうとはいえ得物が無ければ体をなさない。武器を削げば戦力は半減すると見越して〈仮面ライダー〉は手を狙った。

 

 だが騎士王の名は飾りではない。受け止めた衝撃にも怯まずセイバーは右手を思い切り翻し旋風を巻き上げた。両者の間に巨大な風圧が発生し、〈仮面ライダー〉の肉体を持ち上げる。その僅かな瞬間に足より魔力を噴出、セイバーは一瞬のうちに距離を取った。

 

 この間たったの二秒。常人では欠片すら捉えられない高次元の戦闘が繰り広げられていた。

 

 

 

「・・・・・・強い。貴様は本当に。だからこそ惜しい」

 

「・・・・・・何がだ」

 

「そのままの意味だ。十全の貴様と戦えない事の何と口惜しさか。それだけが、今この刹那の心残りと言えるだろう」

 

「・・・・・・」

 

 

 ヘルメット、その開口部に当たる場所からは夥しい血が流れていた。心臓の損傷は〈仮面ライダー〉の想像以上に深刻であり、今も尚鮮血は口内から溢れ出ている。

 心臓の修復はおよそ四割まで完了しているが、全身に血液を循環させるには心許ない。サブの人工心臓にも限界はあり、戦闘を続行出来るのは〈仮面ライダー〉の強い精神だからこそ。有り体に言ってしまえば根性で無理矢理動いているだけで、実際は立っていることすら不可能に近い。

 それでも強い感情というのは時に理屈を超えた現象を引き起こす。死する運命を覆し、肉体に熱を走らせる。かつてハヤトがそうであったように。

 

 

「言いたい事はそれだけか」

 

「む?」

 

「確かに今の俺は万全じゃない。だからってお前を倒せない理由にはならない。違うか?」

 

 

 強く、〈仮面ライダー〉は言い放つ。

 

 

「・・・・・・フ、それもまた一つの理かも知れんな。

 良いだろう、ならば証明してみせろ〈仮面ライダー〉!」

 

 

 その言葉を皮切りに、両者は跳躍した。肉薄する聖なる剣と鋼鉄の拳。リーチの差で先にセイバーの切っ先が強化服を抉るだろう。それは自明の理、当然の帰結だ。だからこそ〈仮面ライダー〉の狙う先はセイバー本体ではない。肉体を真っ二つにせんと迫る聖剣だ。

 僅かでもタイミングがずれれば断たれるのは〈仮面ライダー〉だ。持てる能力を総動員し、そのギリギリを見計らう。肉を斬る寸前、剣が触れるほんの一瞬、相手が一寸でも油断するのはそこしかない。

 

 

(ここだ!)

 

 

 そして訪れる好機。眼前に迫る聖剣が強化服を捉える瞬間、〈仮面ライダー〉は剣を掴んだ。万力が如き怪力で握り締め、少しも力は緩めない。最高峰の性能を持つ強化グローブでさえ裂かれる切れ味は大したものだが、こんなのは気にするまでもない。生まれた隙に比べれば些末事の一つだ。

 目を見開くセイバー。真っ直ぐ向かってきた拳は自身を殴り飛ばすものだとばかり思い込んでいたが、その思い込みに付け込まれた。まさか寸前で得物に掴み掛かろうなどとは。一ミリでも予測がずれ込めば大怪我では済まされないというのに、何という豪胆さと繊細さだろう。

 

 力を込めようが聖剣はびくともしない。この様子ではてこでも離すつもりは無いのだろう。その証明とでもいうのか、空いた左手は愚直なまでに空を裂き、顔面に直行していた。初めて漂う死の香りがセイバーの鼻腔をくすぐる。黒く粘ついたタールのような、暗い気配だ。

 

 

「くっ──!」

 

 

 それは正しく紙一重。全力で身体を駆動し、高速のパンチを何とか躱す。結果的に頬を掠めるまでに留まったが、まともに喰らえば今頃頭は無かっただろう。今の一撃はそれ程の威力を感じさせた。

 だが一々怯んでいる暇などない。セイバーはすぐに魔力を放出。聖剣より多大な魔力を放ち、巨大な風圧を発生させる。掴む〈仮面ライダー〉の拳は僅かながらに弛み、そうして出来た瞬間にてセイバーは剣を引き抜いた。

 直後に振り下ろす。音を置き去りにする唐竹割りは〈仮面ライダー〉を持ってしても捉え難い速度だ。だが〈仮面ライダー〉はそれを瞬時に身体を捻る事で回避、その際の勢いを利用し鋭い回し蹴りを放った。鉄をも容易く粉砕する蹴りだ。

 

 拙い───そう考えるまでにセイバーは既に行動を取っていた。素早く剣を返し丁度蹴りと重なるように防御する。当然軽減は出来ても衝撃までは殺し切れず、セイバーは剣ごと吹き飛ばされ背後の岩壁に激突した。防げたのは類希な直感があればこその業だ。

 大きなダメージは、無い。寧ろ瀕死の重傷なのは〈仮面ライダー〉だ。だというのにこの強さ、最早常軌を逸しているとしか思えない。計り知れない強さにはある種の畏怖さえ覚える程だ。それでもなお、意思の炎は弱まりはしない。

 

 

「そうだ。戦え〈仮面ライダー〉。貴様の力はこの程度ではない筈だ」

 

「・・・・・・」

 

 

 再び激突する騎士王と改造人間。目まぐるしく飛び交う拳と剣。暗闇に煌めく戦いの輝きは宛ら聖戦の再現。誇りと誇りがぶつかり合う、何処までも純粋な戦いがそこにはあった。

 

 

「凄い・・・・・・なんて戦いなんだ」

 

 

 固唾を飲んで見守る立香はいつの間にか〈仮面ライダー〉とセイバーの戦いに魅入っていた。そんな事をしている場合ではないと理性では分かっている。だとしても目が釘付けになり離れない。何処までも雄々しく戦い続ける二人の英霊は何よりも美しく、輝いて見えたのだ。

 だが、やはり残る理性が語り掛ける。本郷は、〈仮面ライダー〉は勝てるのだろうか、と。心臓を貫かれてなおあそこまで戦うのは相当の負担を強いているだろう。あのまま長引けば十中八九〈仮面ライダー〉はやられてしまう。そんな負の想像が立香にはまだ介在しているのだ。

 

 

「しっかり観とけ、坊主」

 

「キャスター・・・・・・?」

 

 

 不安げに見守る立香を励ますようにキャスターはその背を叩いた。

 

 

「確かによ、兄ちゃんはボロボロだ。そしてセイバーは魔力切れが無いときた。こりゃあ相当厳しいだろうよ」

 

「だ、だったら尚更助けに行かないと!」

 

「ダメだ。いいか坊主。アイツは任せろと言った。ならここは兄ちゃんを信じるしかない。手助けなんてしてみろ、それこそ俺は顔向けが出来ねぇ。アイツの覚悟を踏みにじった事になるからな」

 

「キャスター・・・・・・」

 

「それは兄ちゃんだって分かってるこった。勝てる可能性なんざほぼ無いに等しいってのはよ。それでもアイツは一人で戦うと決心した。己の持つ全てを掛けてな」

 

 

 此度の聖杯戦争にて、クー・フーリンはキャスターとして現界した。本来の好戦的な気性はある程度なりを潜め、あくまで理知的な導く者としての性質を持っている。しかし彼は根っからの戦士であり、誇り高き騎士の精神を持つ男。故に、〈仮面ライダー〉が決意した覚悟を穢すような真似は死んでも出来ない。そこに勝機が無かったとしても絶対に手を貸したりはしない。下らない矜恃と言えばそこまでだろう。だがそれが、何よりも優先すべき誇りでもある。兎に角今は〈仮面ライダー〉の戦いを見守るしかないのだ。その勝利を心から信じて。

 

 

「刮目しろ。決して瞬きなんてするな。あれが、英雄の姿だ」

 

 

 激しく吹き上がる風。全てを掻き消す暴風と、それに抗い駆け抜ける疾風。二つが重なり合い起こる旋風は立香の元へさえ吹き荒れる。肌を撫でるその風は、確かに恐怖をも想起させる不吉なものかも知れない。だがそれ以上に感じるのは、〈仮面ライダー〉が掴み取る勝利の熱風だ。無論、勝利の女神がどちらに微笑むかなど分かりはしない。予感にしか過ぎない感情はしかし、強く、確かなものには違いなかった。

 

 

(・・・・・・ッ)

 

 

 着飾った言葉など必要ない。ただひたすらに勝利を願う。必ず勝ってくれ、と。文字通りの他力本願、それでもそうするしかない。希望となるのは〈仮面ライダー〉ただ一人なのだから。

 

 だが、状況は困難を極めていた。

 

 

「・・・・・・ぐ・・・・・・ふ」

 

「!? 本郷さん!?」

 

 

 攻防の最中、〈仮面ライダー〉は突如後方へ跳躍。程なくして膝を着き、有り得ない量の血を吐き出す。どっぷりと流れる血液は水溜まりのように地に沈み、血みどろの仮面を映し出すまでに溢れていた。

 肉体の限界───とっくに振り切っていたツケがいよいよもって回ったのだ。首の人工心臓では到底間に合わない血液循環、強制的に酷使した事でそれすらも機能不全に陥り、体内の強化細胞が急速に不活性化している。やむを得ず修復途中の心臓を起動させるが、完全に再生しきっていない今の状態では回復までに時間が足りない。手脚は痺れ、視界は霞み、耳に届く声も遠く聴こえる。戦闘続行は今度こそ不可能に思えた。

 

 

「やはりな。だがここまでよくぞ抗った。貴様は強く、真に猛き英雄だ。せめてもの、最期は痛みも無く葬ってやろう」

 

「や・・・・・・やめろぉぉぉッ!!!」

 

「ッ! 行くな坊主!」

 

「先輩!?」

 

 

 虚空に煌めく聖なる剣。慈悲深いまでの穏やかな面持ちのまま、セイバーは剣を振るう。それは〈仮面ライダー〉という一人の戦士への敬意であり、その誉れある魂へ報いる最大限の感謝でもあった。

 立香は駆ける。キャスター達の制止など振り払い、〈仮面ライダー〉を救う為に。間に合わないのは分かっている。そんな事は分かり切っているが、黙って居られなかった。自分達の為に死力を尽くして戦った人間をむざむざ見殺しになど出来るものか。込み上げる涙を堪え、立香は手を伸ばす。

 

 

 頼む。

 

 死ぬな。

 

 俺はまだ、アナタに何もしちゃいない───!

 

 

 

 

 

「・・・・・・な、に」

 

 

 此処に居る全ての者が、その光景に驚嘆した。

 

 命を別つ筈の剣。神々しい輝きを放つその切っ先を、銀のグローブが固く握り締めていた。

 

 

「・・・・・・もう、放さないぞ」

 

「馬鹿な・・・・・・! 何故まだ生きていられる? 貴様がどれ程優れた回復力だとしても心臓を貫かれ無事な筈はない!」

 

「そうだ。お前の言う通りだ」

 

 

 剣を握る拳は更に力を増す。

 

 

「もう、お前の声も、姿も、そこにいる事すら、今の俺にはハッキリと分からない。だがこれは・・・・・・この痛みだけは本物だ」

 

「痛み、だと?」

 

「正直、お前の剣は痛いなんてもんじゃない。今にも意識が飛びそうだ。だが、そう感じるという事はつまり・・・・・・まだ、俺は生きてる。お前に勝つまで、俺は死なない」

 

「・・・・・・き、さま───!?」

 

 

 背筋が凍る思いとはこの事を指すのだろう。何にも屈さぬ高潔さを持つセイバーでさえ、彼の執念に恐怖を抱いた。一秒、それにも満たない一瞬、刹那の時。全身を巡る恐怖の感情は直ちに身体を硬直させ、一つの人形へと変えてしまう。

 直後、巨大な何かが腹部へと襲い掛かった。鎧に保護されていたにも関わらず、途方も無い衝撃は肉を伝い、激痛を走らせる。堪らず苦痛に顔を歪めるセイバーは、吹き飛ばされながらも体制を立て直し、よろめきつつも地に足を下ろす。

 視線を上げれば、そこには幽鬼のように立ち上がる〈仮面ライダー〉が居た。

 

 

(・・・・・・今、のは)

 

 

 たった今放ったパンチに〈仮面ライダー〉は一つの疑問を呈した。

 全力ではあったが、今のはなんて事は無い単なる拳撃。それ以上でもそれ以下でも無い。それでも疑問に感じるのはただの一撃では無かったという事。ほんの一瞬だったが、今確かに風を纏っていた。特に意識もしないが、拳から肘辺りに掛けて風が渦巻いていたのだ。

 宝具の解放に伴う力なのだろうか。これまでも風は〈仮面ライダー〉に力を与えてきたが、魔術めいた術を持っている訳ではない。サーヴァントになったが故の、思いがけない利点。これなら、あの宝具にも対抗出来る。

 

 

「〈タイフーン〉・・・・・・!!」

 

 

 突如として嵐が巻き起こる。発生源は〈仮面ライダー〉、その腰元。銀色に光る核電池内蔵ベルト〈タイフーン〉が唸りを上げ風を吸い込んでいた。回転は時間と共に上昇し、爆音となり響き渡った。

 

 風が、嵐が、〈仮面ライダー〉の力となる。

 

 

「フン・・・・・・決めるつもりか。面白い。貴様の淡い希望を打ち砕いてやろう」

 

 

 一筋の紅い血を滴らせるセイバーに負の想いなどは無い。反転し黒く歪んだ騎士王だが、そんな下らないものは彼方へと追いやった。今あるのは目の前の戦士を打ち倒す、その一点のみ。小細工など必要ない。相手が真っ向からくるのなら、全力で応えるだけだ。

 剣が光を纏う。魔力が、セイバーの魂が込められた聖剣の光は天をも貫かんと空へと昇る。

 

 そして───〈仮面ライダー〉もまた、天へと跳んだ。

 

 

「トオオッ!!」

 

 

 例え満身創痍とて改造人間の脚力ならこの程度の跳躍は何の苦にもならない。出力が未だ低下する最中だとしても、〈仮面ライダー〉は宙を跳ぶ事を選んだ。逃げ場などない恰好の的になる空中を、何故。

 それは打ち破る自信があったからだ。万物を穿つ聖剣の光を砕けると確信があったが為だ。

 

灼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)

 

擬似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)

 

 英霊達は宝具の名をこの現し世に解き放ち、大いなる力を振るった。炎を、盾を、光を。姿形は違えど、そこには偉大なる英雄の魂があった。

 

 ならば、自分も解放しよう。

 友より授かった、この名を。

 

 

「エクスカリバー───モルガァァァン!!!」

 

 

 放たれるは極光。

 灼き尽くすは破滅の光。

 決して勝てぬ圧倒的な力を前に、〈仮面ライダー〉の風は吹く。

 人はそれを陳腐だと笑うだろう。何とも子供じみた低俗な名だと。それならばそれでいい。存分に笑えばいい。だがこれは何にも譲れぬ信念の記号。掛け替えのない友から受けた、誓いの名だ。

 

 

 今こそ風を掴み取れ!

 

 

 極限までスピードを上げろ!

 

 

 迫り来る闇を振り切れ!

 

 

 背負う想いを世界に解き放ち、〈仮面ライダー〉は叫んだ!

 

 

 

 

「ライダァァァ───キィィッックッッ!!!!」

 

 

 

 

 風を纏いし〈仮面ライダー〉。エクスカリバーに呑まれようとも吹き荒れる風は収まりはしない。果てしなく勢いを増し、暴風となる。風が光を、旋風が漆黒の悪意を消し飛ばし、黒き騎士王は〈仮面ライダー〉の蹴りを受けた。鎧は粉々に砕かれ、禍々しくも何処か美しい欠片となって空を舞う。

 

 

 ああ、そうか。

 

 自分は負けたのか。

 

 

 清々しい敗北感だ。

 

 限界を超えた先の先、果てなき闘争の丘でセイバーは敗北を喫した。何が敗因か考えるまでも無い。本郷猛が〈仮面ライダー〉となってより、自分は負けると心の片隅で理解していた。この敗北は必然だったのだ。負けると分かっていたが、しかし互いに全力を尽くした。後悔は無い。地に伏した騎士王は、穏やかな笑顔を刻む。

 

 

 

 

 そして〈仮面ライダー〉は───その強き意思を暗い海へと沈めたのだった。

 

 

 

 

 






なんか過去に関係あるのかと思ったらただのドルオタって嘘だろカシラァ!
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