モンスターはそこらにいるけど《狩人》が見当たりません(修正中)   作:眠たい兎

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村にやってきたギアノスを討伐したら幼馴染を抱く事になった話

 ギアノスという生き物は、爬虫類の癖に知能が高い。いや、この世界の爬虫類は人間より賢かったりする事がままあるが。

 ドスギアノスを中心に一つの群れを成し、連携して狩りを行う彼等は人間にとって脅威であり、獲物が獲れない日が続くと村を襲うこともあるのだとか。

 

「けどまぁ……【狩人】と【村人】じゃ勝手が違うよなぁ」

 

 サシでの戦闘であれば、俺にとってギアノスは然程脅威にはなり得ない。かと言って積極的に狩る相手にするかと言われれば、群れを相手にするリスクは大きく、逆に食用にする事も出来ないので得るものは少ない。つまり、狙って狩る相手ではない。

 

 クォッ!

 

 腱を斬られ地に伏したギアノスが弱々しく鳴き、俺は片手剣を急所に突き立てる。

 このギアノスは、群れからはぐれでもしたのか餌が取れなかったらしく、人の住む村があると見るや忍び込んできたらしい。手近な村人に襲いかかった瞬間に、丁度研ぎ直された片手剣を持った俺に遭遇してこの通りだが。

 

「助かったよ……首付いてるよな?」

 

 ギアノスが死んだのを確認すると襲われた村人、ジョーが近寄ってくる。他にも村人は居たのだが、ギアノスを確認した瞬間叫びながら逃げてしまった。

 

「付いてるよ。まずは村長に報告してくるかねぇ」

 

 斃れたギアノスの尻尾を掴んで引き摺るように村の集会所へ足を伸ばそうとすると、助けた村人は慌てて付いて来る。ギアノスの1匹くらいならあんたが普段持ってる鍬でも応戦できると思うんだが...

 

「なぁ、ミコト。お前こいつとも戦えるんだな・・・・・・」

「時々遭遇するからな。親玉がいたら逃げる事になるけど・・・・・・どうやら今回はこの1匹だけみたいだし」

 

 村の近くに潜んでますとかなら分かるが、あのドスギアノスが俺のいる村を襲うとは思えない。場合によるのだろうが、俺を見ても威嚇以上を仕掛けて来ることは滅多になく、戦闘に発展したのも最初の1回だけだ。

 その時は俺が胸や左腕を負傷し、奴は脚を斬られて片脚を引き摺っていた。要は痛み分けで終わったのだ、あちらとしてもこちらが不用意に近寄らない限り攻撃はしなさそうだし、それ以降こちらも近寄ろうとはしていない。

 

「親玉がいるのか?」

「大きいのが1匹な、頭が良いんだ」

 

 つい先程ギアノス相手に殺されかけたのを鮮明に思い出したのか、彼はブルルっと震えると辺りを見渡す。

 

「滅多に山を下りる事は無いと思うよ。留守の間に縄張りを奪われるのは困るだろうし」

 

 特にブランゴなんかに。

 

「コイツらから縄張りを奪う奴らなんかいるのか・・・・・・」

 

 群れを成すモンスターだけでもブランゴがいるし、洞窟内であればブヨブヨした奴なんかも居そうだ。俺は洞窟には入らないけど。

 

「単体でならもっと強いのが結構いるからな」

 

 集会所の扉を叩くと、どうやらモンスターでは無いと判断したのだろう。入室を促す声が聞こえる。

 

「おぉ、ミコト。ってジョー!? 無事だったのか」

 

 ジョーはてっきり死んだと思われていたらしい。その辺に【狩人】と【村人】の価値観の差を感じつつも、引き摺って来たギアノスを前に押し出すと空気が凍った。

 

「まぁ俺も死んだと思ったよ。実際後少しミコトが来るのが遅かったら・・・・・・」

 

 残念ながらジョーの話は誰も聞いていない。大人はギアノスの死骸と俺を見比べているし、子供は空気を読んでか黙ってギアノスを見つめている。

 やはり肉食系の生き物は危なくなければ子供にはカッコよく見えるのだろう。大人の警戒心とは逆に、その瞳には好奇心が宿っている。

 

「ミコト、ソレに仲間はおるか?」

「多分村にはいないんじゃないか?」

 

 狩って帰る【狩人】に、村の中にモンスターが潜んでいるかどうかを確認する術は無い。それこそ異常の有無なら村人の目の方が優れていると思う。

 

「ふむ・・・・・・まぁ何はともあれ無事で良かった。済まないがミコト、確認に付いてきてもらってもええか?」

「勿論だ、その前に一旦防具を取りに行きたいがいいか?」

 

 無いとは思うがドスギアノスがいたならば防具無しは現状無謀の極みだ。ギアノスなら兎も角、防具を着込んでなお痛み分けだった奴を相手に裸は確実に死ぬ。

 まぁ防具と言っても動きを阻害しない程度に厚い布なのだが。

 

「それこそ当然じゃな、先ずはこの周辺から頼む。村の東、北、西、南の順番で代表とじゃな」

 

 流石は村長と言うべきか、未だギアノスの死骸と睨めっこ中の者が多い中冷静に今するべき事を挙げる。

 村長が鍛冶屋と取り調べの親父、村娘2名を指名すると確認に行くように指示する。

 

「そんじゃ行くか。頼りにしてんぜ」

 

 鍛冶屋が笑って言うがその目は真剣そのもの、彼が槌を扱う時のものだ。まぁ武器無しでギアノスの群れのいる可能性がある所を見てこいと言われたら当然とも言える。

 彼が先頭に立ち、俺がその左後ろを付いて行く。申し訳程度に武装した取り調べの親父が後ろを警戒しながら、3人に囲まれるような形で村娘2人が歩く。

 

「しかしよぉ、お前あのモンスターに勝てんだな・・・・・・」

「サシならな?群れに挑む程無謀じゃないよ」

 

 昔1度やったけど。

 

「もしもだ。もしもだぜ?今群れと遭遇したらどうだ?」

「なんとか時間稼ぎくらいは出来ると思う。でも防具があれば撃退もできないことはない・・・・・・かなぁ」

 

 鍛冶屋の問いかけで強ばっていた3人の顔が解れるのが分かる。特に村娘2人はそれが顕著で、それまでは忙しなくキョロキョロしていたのが落ち着いて周りを見られる様になったようだ。

 

「ただ頼むから背中を向けて一目散にってのは止めてくれな。ことギアノス相手には殺して下さいって言ってるもんだ」

 

 逃げる背中は襲わずにはいられない、という訳ではないだろうが、それでも確実に自分達より弱い事の証明にはなるだろう。

 特にギアノス達は自称で素人とはいえ【狩人】を知っているので、逃げずに睨み付ける相手は警戒するだろう。

 

「どういう事?」

 

 村娘の一人、関わった事はそう多くないが以前風呂を借りに来た時に話した子が質問する。

 モンスターに襲われた→食い殺される、が当たり前らしいこの村の常識ならその問いも当然で、そもそもギアノスって何?である。現に鍛冶屋は「ギアノス・・・・・・?」と呟いている。

 

「何も知らずにドキドキノコを食って倒れた奴らがいたとする。一見何の害もなさそうなキノコを食って倒れたんだ・・・・・・当然、そいつらはアオキノコだって警戒するようになるだろ? もしかしたらこいつにも毒があるんじゃないかって具合にさ。この場合は俺がドキドキノコ」

 

「んで俺らはアオキノコか。・・・・・・そう言えばお前キノコ好きだよな」

「美味いじゃん?」

 

 そんなこんなを話している東エリアを一周し、家で防具を身につけてから集会所へと戻ってくる。

 結局、ギアノスは見当たらなかったので解散となったのだが、各家々の確認に立ち会って欲しいと言われて非常に疲れた。初めて見た女の子の部屋は男部屋とは比べ物にならないくらい整っており、密かに尊敬の念を覚えた。

 

 

 

 

 

 

 モンスターの襲来を聞いた村人の行動は早かった。皆近くにあった棒や鈍器だけを握りしめ、集会所へと集まったのだ。

 齢30を数えた連中の顔色は恐怖に染まっており、襲われたと言うジョーの家族は涙している。

 

「・・・・・・ミコトはまだか。彼奴ならもしかしたらと思ったが・・・・・・」

 

 村長、祖父の言い分は尤もで、現状襲って来たモンスターに対抗出来る可能性があるのは幼馴染くらいだろう。

 未だ集会所に来ていない幼馴染の万が一を思うと涙が溢れる。

 

「気休めにならんかもだが・・・・・・さっき奴に手入れの終わった武器を渡した。きっと大丈夫さ」

 

 鍛冶屋のおじさんが見かねて声を掛けてくれる。彼が武器を持っている事に安心するが、襲来したモンスターが10年と少し前にも村に現れたのと同種だと話しているのが聞こえ、“もしかしたら”の想像が更なる現実味を帯びる。

 

 ズリッ・・・・・・ズリッ・・・・・・

 

 何かを引き摺る音が聞こえ、村人が一斉に息を潜める。泣いていた者の口は近くの者が塞ぎ、親が子供を押さえ付ける。

 集会所は針を落とす音すら響きそうな程静まり返る。

 

 コンッ

 

 扉を叩く音が聞こえ、皆が一息吐く。襲われたというジョーさんと彼以外は皆いるので、消去法で彼だと分かる。

 

「ミコトか、入れ」

 

 祖父の声を聞くと、先ずはジョーさんが入り、次いでミコトが入ってくる。・・・・・・あれ?

 

「おぉ、ミコト。ってジョー!?無事だったのか」

 

  鍛冶屋のおじさんの声でジョーさんの家族は安堵から再び涙を流す。ミコトは苦笑すると左手を前に出し、血に濡れた何かを前に出す。

 

  空気が死んだ。

 

  ・・・・・・倒したの?この短時間で?

 

「ミコト、ソレに仲間はおるか?」

 

  最初に我に帰ったのは祖父だった。嘗ての襲来を思い出してか普段の『そやつ』が『ソレ』になっている。

 

「多分村にはいないんじゃないか?」

 

 彼の言葉で空気が緩む。その後は祖父が組分けをして確認作業を行う様に指示する。

 彼が出て行くと同時に皆の視線がジョーさんと祖父へと向く。

 

「で、ジョー。説明を」

「つってもそうねぇよ。農作業を終えて鍬を片そうと思ったらいきなり奴が出て来てよ」

「ミコトはどうじゃった?」

 

  恐らく祖父が聞きたいのは彼が苦戦して倒したのか、楽々と倒したのかだろう。どちらにせよ彼が村の最高戦力なのは間違いないが、1匹とはいえ村を半壊させたモンスター相手に圧勝となると、本人に戻る気持ちがあっても旅になど出せない。

 

「不意打ちなのもあったんだろうが早かったぜ。上にそいつが乗ってたからよくは見れてねぇんだが、首に斬りつけて脚を斬って立てなくなったらグサリと・・・・・・」

 

 彼は無傷であったので予想は付いていたのだけど、やはり彼は相当強いのだ。動いてるのは見た事は無いけど、彼の持って帰る茶色い獣はとても大きい。きっと凄く強いのだ。

 

「ふむ・・・・・・リリ! 何をぼさっとしておる! とっとと既成事実を作ってしまえ!」

 

「はっはい! ・・・・・・はい?」

 

 反射的に返事をしてしまってから何を言われたかを理解する。あぁ・・・・・・また姉さん達に・・・・・・

 

「早くせんと他の女に取られるぞ。奴なら10人くらい嫁がいても養えるだろうが・・・・・・ふむ、奴の子供も強いのかの」

 

「ダメです!」

 

「ならほれ、早くせい」

 

 反射的に答えてしまってからそれを自覚し顔が熱くなる。他の人達から生暖かい視線と、彼を狙う他の子達の強い視線が刺さる。

 

「うぅ・・・・・・」

 

 私だって彼の事は好きだから他の子に譲る気は無いが、未経験な私が言うのもなんだが彼は強敵すぎると思う。

 前も気が付いたら湯浴みをさせられていたし、それ以外にも私なりに頑張って誘ってみたり押してみたりはしたのだ。

 

 コンッコンッ

 

 再び扉が叩かれ、防具を装備した彼と同行した人達が帰ってきた。普段は決してそうは見えないのに、武器を手に防具を纏って立つ彼の姿は本当に強そうに見えるから不思議だ。

 

「北の組行くぞ」

 

 北の人達を連れて彼は歩いていく。昔は大人しく、男の子なのに喧嘩の一つもしなかった彼はいつの間にあんなに強くなったのだろうか。

 この後解散が言い渡されるまで、人前で閨での事を説明されたのは死ぬほど恥ずかしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 鍛冶屋のおっちゃんに何故か「頑張れよ」とか「男になれよ」と肩を叩かれ、やっと家に帰れたと思ったら今度は幼馴染が家にやってきた。

 ・・・・・・俺は男だよな?

 

「どうした?」

「あ、あの。一晩泊めて貰えませんか」

 

 何故か敬語な上、顔を真っ赤にしている彼女に何があったのか。余程昼間の騒ぎが怖かったのか、それとも村長と喧嘩でもしたのか。

 

「・・・・・・お前なぁ。もう15だぞ?」

「う、うん。分かってるよ」

「分かってるならいいんだけどさ」

 

 いや、良くない。良くないがもう暗くなる時間に、ましてやギアノス騒ぎがあったばかりなのだ。そんな中彼女をほっぽり出すのも気が引けるし、なにやら覚悟を決めた顔をしているのできっと何を言っても帰らないだろう。

 

「あ、ご飯は任せて。作るよ」

「お、おう。頼む」

 

 彼女が厨房に向かったのを確認すると、散らかりっぱなしの自室へと駆け込み片付ける。付けっぱなしだった防具を外し、念の為片手剣だけはすぐに取れる範囲に置いておく。

 因みに俺の部屋に散乱しているのはすり鉢や空の瓶、名状し難い何かだ。もう大体何があったかは分かるだろう。

 

「出来たよ〜」

 

 既に我が家の厨房で何が何処にあるかで困らない時点でどんな頻度でここに居るかが分かると言うものだ。通い妻かな?

 

「今行く!」

 

 あ、違うこれ一人暮らしを始めた息子の家にちょくちょく顔を出して家事をする母親だ。

 部屋を出るといい香りがしている。恐らくこれはキノコとポポ肉だ。

 

「おぉ、美味そう。完全に俺の好みを把握してるよなお前」

「何年の付き合いだと思ってるのよ。ほら、冷めないうちに」

「いただきます」

 

 俺がいただきますと言うのを見届けてから彼女も席に着く。何故かは知らないが俺がそれをするまでは立っているのだ、彼女は。

 一口分の大きさに切られたポポ肉をキノコと一緒に食らう。意外と歯応えのある肉と柔らかく厚いキノコの相性は最高だ。

 

「うん!美味い!」

「それはなにより。初めて食べた時にはびっくりしたけど肉って美味しいんだよね」

「流石にモンスターみたいに生で食うことはないけどな。ついでに言うと村長がポポノタン独占してるのがちと不満だが・・・・・・」

 

 最初は食うという発想がなかったポポノタンだが、棄てられる所を差し押さえ、試しに村長と二人で焼いて食って以来、すっかり好物になってしまった村長が独占してしまっている。

 まぁその分優先的にその他いい部位を貰えているのは有難いので直接文句は言わないが、それだけ優遇してもらっても惜しくなるくらいポポノタンはそら美味いのだ。

 

「ポポノタン?」

「何でもないさ。ほら、とっとと食って寝よう」

「――っ!」

「落ち着いて食えよ」

 

 急に喉に詰まらせた彼女に湯冷ましを渡し、背中を摩ってやる。相変わらず彼女はそそっかしい。

 

「ふぅ・・・・・・うん、頑張る」

 

 いや、頑張って落ち着くな。

 食べ終わった食器を下げ、水洗いして並べたら後は寝るだけだ。一応リリには寝間着替わりに俺の服を貸すつもりだが、もう彼女の服を常備していいんじゃないかとすら思い始めた。

 

「よし!んじゃ寝るか」

「あ、ちょっと!」

 

 前回同様に積んである藁に向かう俺の手を彼女が掴む。

 

「え、何さ」

「あの、ベッドで寝よう」

「いや、俺がそこで寝たらお前何処で寝るのよ」

「いいよ、一緒にその・・・・・・寝るから」

 

 不覚にも最後可愛いと思ったが、思ってしまったが故に一緒に寝てはダメな気がする。下半身的な理由で、より飾らずに言うと元気になりそう。

 

「・・・・・・いや、不味いでしょ。未婚の女が男と寝るのは」

 

 既婚だともっと不味いけど。

 

「いいから!ほら!大丈夫責任取らせるから!」

 

 グイグイと引っ張られてベッドへと連れ込まれる。勿論抵抗しようと思えば出来るのだが、これで彼女が俺のハイジベッドまで付いてくるのも問題だ、確実に風邪をひく。

 ベッドに連れ込まれた俺は無の境地を目指し、早々に寝ようとするのだが、いい体勢が見つからないのか隣で彼女がごそごそと動くので眠れない。

 

「ねぇ・・・・・・」

「ん?」

 

 彼女は少しもじもじとして言った。

 

「お願いします。抱いて下さい」

 

 俺は彼女の首の下に手を敷くと彼女の腰に手を回し、彼女が目を瞑ったのを確認する。そしてそのまま眠りに落ちた。

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