モンスターはそこらにいるけど《狩人》が見当たりません(修正中)   作:眠たい兎

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PCが直るのを待ちきれずケータイで書いてしまった...やはり慣れない


ドスファンゴを仕留めたら一晩枕になった話

 《狩人》として活動する中で、俺が嫌いなモノが3つ存在する。大事なのは嫌いなモノという事で、決して強敵やまだ見ぬ災害クラスのモンスターを指しているわけでは無い。

 自室のベッドで横になっている俺は、今日一日の災難っぷりを思い出して深い溜息を吐く。

 

「ミコト~、ご飯できたよ」

 

 声が掛けられるが、残念ながら返事が出来る状態に無い。擦れた声なら出るが、どう頑張ってもウチの台所には届かないのは間違いない。

 パタパタと湯気の立つ皿を持って現れた幼馴染は、未だ感覚の無い手足をピクピクと動かす俺を見て心配そうな顔をする。

 

「だ、いじょ・・・・・・ぶ」

 

「本当?」

 

 頷く事で返事を返す。現状言葉で説明できていない為過剰な心配をさせてしまっているが、これは単なる『痺れ状態』だ。モンスターの前で陥らなければマッサージや時間経過で回復可能な、村では脅威度の少ない状態である。

 余談だが俺とて最初はマッサージを頼もうと思ったのだ。痺れた舌のせいで上手く発音できず、鉞だったり匙だったりをもってこられて諦めざるをえなかったのだが。

 

「原因が分かれば良いんだけど・・・・・・」

 

 彼女の呟きに、俺は今日の災難を振り返る。

 事態は数時間前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ギアノスの襲来以降、夜警や村の中央での待機を言い渡される事が増えた俺は、久しぶりの狩りに心を弾ませながら村を出た。狩りとは言っても鍛冶屋に頼まれた鉱物の採集と、余裕があればケルビやガウシカを狙っていく程度のものだ。

 暫く雪山を登ると、いつもの採取ポイントで袋を広げる。ピッケル等は持っていない為、鍛冶屋から貰った中古品の槌と鉄に穴を開けるための釘を使う。

 

「この作業は嫌いではないんだが・・・・・・」

 

 黙々と作業すればよいなら寧ろ好きなのだが、この辺りには気配を消すのが上手いヤツも生息しているので目視での警戒が怠れない。加えて今日は採取を行う際の天敵、ランゴスタの数がやけに多い。

 ランゴスタに食われるなんて事は無いだろうが、威嚇のつもりなのか背を見せれば麻痺を狙ってくるのだ。個人的に大嫌いなやつその1だ。

 

ブゥンブブブ・・・・・・

 

 羽音が一定の大きさを刻み始めたと思ったら即座に剣を抜き、背面に叩きつける。

 

キュイッ!

 

「これ近くに女王がいるんじゃないか・・・・・・?」

 

 短い断末魔を上げ、浮力を生み出す為の羽を折られたランゴスタは地に落ちる。その頭部を踏みつけてトドメを刺し、周囲に散らばる羽虫共の死骸に溜息を吐く。

 

「もう帰るか」

 

 直前まで掘り進めていた鉱石を強引に叩き落とし、それを袋に詰めると崖から放り投げる。袋は当然重力に従って帰り道付近の横道に落下する。

 こんな雑な扱いで良いのかとも思うだろうが、この世界の鉱石は一定の条件下以外では非常に硬く人の力では傷付けることすら困難だ。鍛冶屋なんかは代々その加工方法を研究しているらしく、今回の採取もそれに使われるのだろう。

 

「ん?」

 

 ふとした拍子に不穏な気配を感じ取る。幾ら自称だろうとも《狩人》を名乗るならばこれを気のせいとは流さない。即座に剣を抜き、耳を澄ませる。

 

ドッドッドッドッド

 

 幸か不幸か相手は微塵も隠す気が無いらしく、己の持つ武器を前面に押し出して突っ込んでくる。あの体躯とシルエットは間違うはずもない、皆の嫌われ者、通称”ドス生肉”ことドスファンゴだ。

 当然、コイツも俺の大嫌いな相手である。

 

「右牙が短い・・・・・・珍しいな」

 

 多くのブルファンゴは左利きだ。よって回避する際は左側に己を置く事を意識するのだが、今回突進してきた相手は右利きの様だ。

 

ブォッ!

 

 低く唸るような鳴き声と共に右牙を突き出してくる。

 牙の軌道を余裕を持って回避するとヤツが向きを変える前に後ろ足を斬りつける。武器を変えてからは初めての遭遇なのだが、前と比べると段違いに切れ味が上がっている。

 

ブンッ!

 

 腱を斬りつけられてなお直撃は勘弁願いたい攻撃を下がる事で回避、流石に突進は使えないだろうが、この巨体が足を止めて牙を振るうのも十分に脅威である。絶対に前世でのヒグマパンチ並みの威力がある。

 

「これで別の大型と一緒に相手してるとか⋯⋯まさにモンスター(な)ハンターだよなぁ」

 

 生憎これ以上の大型を相手取るのは多分今は無理だろう。クック先生くらいが今の俺の実力だと思う、雪山暮らしなのでそれこそ旅をしないと出会う事は無いだろうが。

 初手で機動力を奪っている為常に側面をキープするように動いているのだが、それでも牙が掠る度、足が触れる度にこちらの傷は増えて行く。当然一方的にやられ続けているわけではなく、腱や腹を狙って攻撃も行っている。

 

ブオォォォ!

 

 右前足の腱を捉えると、自重を支えきれなくなったのか崩れ落ちる。それでも大暴れし、その最後の抵抗は引っかかれば人間なんぞ軽々と吹っ飛ばすだけの力がある。蹄に蹴られぬよう、横腹から深々と剣を突き刺す。

 

「ふぅ・・・・・・にしても立派な牙だっ!?」

 

 流石のドスも力尽きたと判断し、それでも十分な距離を取って向かい合う。それが不味かった。

 

バフンッ!

 

 盛大なクシャミ、鼬の最後っ屁とばかりに放たれたその一撃は軽々と俺を吹き飛ばし、数メートル程の飛距離を叩き出す。それを最後に息絶えたらしいが、吹き飛ばされた方角が少しでもずれていたら俺も息絶えていたかも知れない。

 崖下に落ちなかったことに安堵しつつ、物言わぬドス生肉を転がすようになだらかな斜面へと運び、一息に突き落とす。俺はヤツの通った後の大雑把に除雪された道を通り、下山の後に荷車に鉱石と獲物を乗せる。

 

「ポポより重いぞ」

 

 最近気付いた事だが、俺の筋力は恐らく村では相当な部類に入る。前世の感覚だと中学生くらいの年齢であり、体格もそれ相応だから手押し相撲なんかをすると大人には負けるのだが、倒木を運ぶ時なんかはその軽さに驚いたくらいだ。だが多分それは狩りで付いた筋肉でなく、その後、獲物を運ぶ時に付いた筋肉なのだと思う。

 最初の頃にポポどころかガウシカすら四苦八苦して運んでいたのが懐かしい、そしてそれに対応できてる自分、というかこの世界の人間はやはり成長上限とかが外されている気がする。

 

「リリも大分成長してるしなぁ」

 

 何処とは言わないが柔らかそうな部分とか⋯⋯うん、やめとこう。風呂場での一件では本人にしこたま殴られたし、思い出したら殺されかねない。けどまぁ美人になってきたよなぁ。

 昔は親無しで引っ込みがちだと思われていた俺を色々引っ張り回す腕白娘だったが、今では時々素が出る程度の落ち着きのある美少女だ。俺が《狩人》なんていういつ死ぬか分からない生き方をしていなかったなら、きっと彼女に告白でもしているのではなかろうか。俺の感性的にプロポーズやらは少なくとも2~3年は後だろうけど。

 

「さてっと、おーい!」

 

 幼馴染の成長を振り返りながら重い荷車を引き、村の入り口に着くと見張りに声を掛ける。山道を上ってくる俺を見ていたらしく、あっさりと門(といってもブルファンゴの突進で多分砕け散る)を開けると入れてくれる。

 

「おかえり、って大分派手にやられたな。今相方が村長呼びに言ってるからちょっと待ってろよ」

 

「おう、つってもまぁ飲むもん飲めばすぐ治る」

 

「酒か?」

 

「もっと苦いヤツだよ」

 

 こちらでは親の許しさえあれば子供でも酒を飲む事があるが、体調を崩す事があるのは知っている為滅多に子供が口にすることは無い。そもそも酒は祭りの席で少量振舞われる程度であり、滅多に口にする機会が無いので大人がまだ早いと言って飲ませないと言う面も大きい。

 当然、苦いヤツはグレートではなく太陽草とアオキノコから出来るものである。

 

「っと、来たな」

 

「お前本当に耳がいいな」

 

 後ろからの一撃で命を刈り取って来そうな奴等が多いので、小さい音にも敏感に反応するようになる。時々雪崩なんかも起こるので、聞き逃しは本気で生命の危機に直結する。

 

「ほぉ・・・・・・また随分と大きいのを仕留めたの」

 

「村長・・・・・・普通最初は怪我の心配とかじゃないか?」

 

「ワシがせずとも他がするじゃろ」

 

 爺に心配されるのが最高というならするぞ、と言われれば肩を竦めるしかない。今日は早く帰って鼻水と一緒に吹き飛ばされたり鉱物採集したりで汚れた身体を何とかしたい、特にドス生肉の鼻水。

 

「おぉ、採ってきてくれたか!」

 

 鍛冶屋の嬉しそうな声を聞いて、持ち帰った鉱石に当たりが入っていてくれた事に満足する。正直鉱石の見分けは得意で無いし、正確な名前も不明なので鍛冶屋に何を頼まれているのかも実は不確かなのだ。

 

「おう、目当てのものがあったようで何よりだ」

 

 村でも採掘は出来るのだが、環境が変わると鉱石の質や種類も変わるのだとか。余程特徴的なの以外は皆目分からないが、良い刃物が出来るなら幾らでも採取してくるつもりだ。

 

「ミコト!怪我してるじゃない!」

 

「あ、あぁ。然程深くないから大丈夫だ、少し休めば血も戻るし」

 

 そう言っていい加減怪我を治すべく緑色の液体を呷り、一息で飲み干す。一瞬、飲みなれないが過去に感じた事のある味がして、咄嗟に吐き出そうとするが飲み込んでしまったものはそう簡単には出てこない。

 

「げっ・・・・・・あ・・・・・・」

 

 身体がピクリと痙攣し、ひっくり返る。意識はあるのに手足が動かず、感覚も非常に鈍い。

 

「ミコト!?」

「おい!」

「大丈夫か!?」

 

 周りの心配する声が聞こえるが、久しぶりにやらかした。これは間違いなく、俺の最も嫌うモノ、『ドキドキノコ』の症状の一つである。

 この後鍛冶屋に姫抱きにされ、俺の世話を任されたらしいリリが世話をしてくれることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 と、言うのが今日の出来事だ。鉱石採取をすれば大量発生したランゴスタ、初めて狩猟成功したドスファンゴには鼻水と共に吹き飛ばされ、最後にはアオキノコそっくりに擬態したドキドキノコ産の回復薬でノックダウンだ。

 

「食べられる?」

 

 軽く頷くと、えらく楽しそうに匙を口に突っ込んでくる。未だ口の中が痺れていた為大分苦労したものの、食べているうちに段々と痺れが抜けてゆく。

 

「ふぅ・・・・・・やっと普通に話せる」

 

「痺れ消しの薬が効いて良かった。それで何が原因なの?」

 

「・・・・・・ドキドキノコ」

 

 ポカンとした顔をしたリリ、概ね予想通りの反応だ。村に生えるドキドキノコは原則赤く如何にもな外見をしており、定期的に駆除されるので子供でも見分けられるのだ。

 

「・・・・・・今度見分け方を教えようか?」

 

「村に生えてるヤツなら見分けられる。外のキノコに擬態してたんだよ」

 

「ふーん・・・・・・」

 

 なんだか余り信用していない顔をされているが、本当なので信じて欲しい。

 

「本当だからな?」

 

 体の痺れが抜けると、ドキドキノコによって治せず仕舞の傷がズキズキと痛む。狩りの最中や運搬中はアドレナリンなんかがドバドバ出ているのか気にならないのだが、一旦村に帰るとやっぱり痛いものは痛いのだ。

 起き上がり、棚から回復薬を取り出す。

 

「待って!それ本当に大丈夫?」

 

 その心配はもっともだが、どれ程苦くとも今回は味を確認してから飲むつもりだ。少量口に入れ、思わず顔を顰めてしまう苦さを確認してから一気に飲む。

 

「うへぇ・・・・・・」

 

 自分の中を何かが這い回る感覚の後、急速に傷口が塞がる。残った不快感を力を込める事で打ち消すと、大きく伸びをして彼女に笑いかける。

 

「んー!完全回復!」

 

「って事はもう気を使う必要無いって事でいい?」

 

 安心した表情を浮かべた彼女に「おう!」と返す。

 

「なら、ちょっとそこに座って」

 

「え?」

 

「座って!」

 

 逆らえない雰囲気に圧されてベッドに座ると、頭に衝撃が走る。

 

「無理しちゃダメって言った」

 

「ん・・・・・・?」

 

「狩り、無理して挑んじゃダメって言った」

 

 ポカンとした俺の様子に、以前風呂で約束した内容を思い出す。確かに『無理して挑んじゃダメだよ』と言われた記憶がある、しかし今回は然程無理はしていない筈だ。現に、途中へまはしたが勝利している。

 

「あぁ。だが今回は無理したわけじゃないぞ?」

 

「あんなに血だらけだったのに?」

 

 確かに怪我はした、牙に掠った時や吹き飛ばされた時に負った傷だ。しかしかといってもその程度であり、痛みはすれど死ぬ事もなければ休めばちゃんと回復する程度だ。

 そこまで思った所で、俺が《狩人》として活動を始めた頃の一件を思い出す。俺は《狩人》を自称して外で活動こそしているが、大型モンスターに挑む事は無く挑むとしても強くてギアノス程度だ。よって滅多な事では怪我をすることが無い。

 

「・・・・・・怖かったか?」

 

 無言で頷く彼女の瞳からは涙が溢れ、手は震えている。

 

「あの時は3日、寝込んでたか」

 

「4日、その後も暫く動けなかった」

 

 そこで完全に涙腺が決壊したらしい彼女は、声を上げながら俺の胸に頭を預ける。そのままゆっくりと後ろに倒れ、彼女の体重を全て受け持つ。

 

「あの時は村に帰ってすぐに倒れたな」

 

「死んじゃうかと思った。あの時も、今日も」

 

「悪かった」

 

 やはり当時の記憶が忘れられなくなっているらしい。血塗れで帰って来て、その直後に倒れたのがそれを刺激してしまったのだろう。

 

「ねぇ、死なないって約束して」

 

「・・・・・・悪い。けど、生きて帰る努力はする」

 

 ここで「死なない」と言うのは簡単だ。しかし《狩人》はそれを約束できないものだろうし、その約束はきっとしてはいけないものだと思う。万一があった時、残った彼女が俺の帰りを待ち続けてしまうのは想像に難くない。

 

「・・・・・・無理は、ダメ」

 

「無理はしないよ」

 

「約束」

 

「あぁ、約束だ」

 

 頭を撫で、背中を摩る。暫くすると泣き疲れたのだろう、静かになったと思ったら規則正しい寝息が聞こえて来た。気付けば外も夕暮れ時をとうに越しており、街灯等ない村の住人は眠りにつく時間だ。

 

「ごめんな、リリ」

 

 ポポの皮から作った掛け布団を掛けると、手を伸ばし部屋を照らしていた二つの火皿に蓋を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミコトが倒れた後の村は、静まり返っていた。見張りは通常の倍の数居るが、可能な限り灯りを出さず息を潜めるのだ。ミコトが外での活動を始める前はこれに近かったが、今はそれ以上だ。

 

「やはり・・・・・・ミコトには居てもらわねばな」

 

「そうですね、毎晩これでは・・・・・・皆もちません」

 

 ワシの言葉に、娘のミゥが返す。僅かな灯りを点けた我家には、夜警の順番を待つものが緊張した顔で並んでいる。万一今日襲撃があれば、それを伝えるのは夜警の者の断末魔になるのだろうから。

 

「やっぱり誰か若いのを外に行かせるべきじゃないか?」

 

 鍛冶屋の提案に、若い連中が顔を青くする。実際鍛冶屋の提案は悪くないし、可能ならそれを推奨したい所でもある。幾つかの問題がある為実行に移せていないが、既に何度も話題には上がっているのだ。

 

「ぢゃが・・・・・・誰が行く?あのミコトですら怪我を負う外の世界に」

 

 奴が持ち帰った獲物は、外で得る物の価値を教えてくれた。彼が獲物を持ち帰れば村は満たされ、モンスターの襲撃を恐れて細々と暮らす生活から目を逸らさせてくれた。

 

「今回の獲物を見て、自分なら生きて帰れるなんて思う奴はいねぇよ!」

 

「おい、静かにしろ」

 

「アイツも護衛しながらは無理だって言ってたし・・・・・・」

 

 同時に外の生き物が如何に強大か、人間と”モンスター”の差を思い知らされる。たった数匹、人間とそう変わらない大きさのモンスターが迷い込んだだけで半数が殺されたのは大して昔の話ではない。

 

「けどよぉ、ミコトが狩りに行く度に村中がこれだ。怪我なんてしていたら数日続く、とてもじゃ無いが現状ではミコトに頼りすぎだ」

 

「だからこそ、奴が子でも作ってくれれば良いのだが・・・・・・」

 

「村長がこうビシッと・・・・・・無理かぁ」

 

 基本的に村では村長の決定は絶対だ。それは村長の意見は村の総意であるとされるからであり、村から出ればモンスターが跋扈する世界が広がっているからである。村からの追放は死を意味し、死と天秤に掛けて勝つもの等そうそう無い。

 だがミコトは例外だ、奴は村の外でも生きていける。ミコトは非凡な人間であるが、その人格は驕らず他人に合わせる事を知る好感の持てるものだ。だから村長として命令すれば大体の事は素直に聞くだろうとは予想される、ただ彼が常々言っている『旅をしてみたい』や『他の村に行ってみたい』と言う言葉がその行動に待ったを掛ける。

 

「娘共の事も悪からず思っているだろうに・・・・・・まさかモンスターに発情とかか?」

 

「「「!?」」」

 

「いや、好意の対象を殺してから持ち帰るとかねぇから」

 

 無いか・・・・・・まぁ無いだろうしあってもらっては困る。

 

「村長として命令は出来ねぇなら・・・・・・他の親共はどうか。娘をさり気なく薦めたりは?」

 

「見合いだと見るや露骨に避けるぞ、アイツ」

 

 これも何度か話に上がっており、失敗の報告しか聞けていない。これを足枷になる家庭を持ちたくないと言う意思表示と取るか、それとも別の理由からかは不明だ。

 

「やはり・・・・・・弟子でも取らす他あるまいか」

 

 ちらりと若い衆を見るが、千切れんばかりに首を振る様子を見て溜息を吐く。真っ当な反応の筈なのに情け無いと感じてしまうのは、既にミコトに毒されているからだろう。

 静かな会議は人を代え、日が昇り回復したミコトが顔を出すまで続いたのである。




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