モンスターはそこらにいるけど《狩人》が見当たりません(修正中) 作:眠たい兎
少し暇ができたので書いたのですが...ちと少なめです。
まとめて修正しました。
2020 9 9
俺の生まれ育った村において、同年代の子供の数は極端に少ない。また老人の数も同様で、この世界を認識するようになってからずっと気になっていた事だ。
俺の親は俺を産んですぐに死んだ、と聞いている。当時ギアノスによる大きな襲撃があったと聞いていたので、多分多くがその時の犠牲になったのだろうとは思っていた。親を殺された事について思う事が無いわけでは無かったが、この世界で奴らが生きる為には“仕方がなかった”と思う事にしていた。
「で、俺はそう思ってたんだけどさ。どう考えてもお前は“討伐”対象なんだわ」
ブヨブヨとしたゴム質の皮膚を持つ種族の、同族と比べて遥かによく“肥えた”個体の屍を足蹴に言う。
通常個体より戦闘能力において遥かに劣っていたその個体の屍の周りにあるのは、ご丁寧に首だけとなった白骨の山だ。いくつか腐臭を放っているモノもあり、少し前まで笑っていた少年のものも見つけた。
【狩人】に憧れて、武器の振り方なんかを聞いてきた初めての子供だった。つい数日前には風呂にもいれてやった。
「モンスター殺しまくってる俺が言うのもなんだけどさ、お前もうちょっと良い趣味持ってりゃ良かったよ」
今回の狩りの目的は行方不明の原因の究明、珍しく村長直々に報酬を提示された上での依頼であった。
ここ1ヶ月で5人の子供が目を離した隙に消え、帰ってくる事が無かった。村中総出で探し回って見つからなかった為犯人をモンスターと断定、俺が出ることとなった。
「お前明らかにさ、“愉しんでただろ”」
言わば特殊個体だったのだ、このフルフルは。恐らくは何らかの切っ掛けに人間の味をしめ、時間をかけて嬲り殺す事に楽しみを見出したのだ。
そして最後には首を引き千切り、身体は喰らったのだろう。楽な獲物を、子供を狙って襲う事を覚えたそいつを狩るのは、ギアノスを狩ることより危険が少なかった。
「お前置いといて連れて帰ってやりたい奴はいるんだけど、これで終わりとは言いきれないからな」
地面に落ちていた木製の短刀を拾い、ズルリズルリと小さく肥えたそいつを引き摺っていく。その足取りはやけに重かった。
村の半数が集まり、集会が行われた。今日の議題は『行方不明者の捜索とその結果』だ。
「また見つからなんだか・・・・・・これはモンスターによるものだと断定するが、良いな?」
祖父・・・・・・村長が確認を求めたのは幼馴染ではなく、行方不明の男の子の両親へだ。この件がモンスターによるものだと認める事、それは被害者がもう死んだものとして扱うと言う事なのだから。
「・・・・・・分かりました」
長い沈黙の末、掠れるような声で応えたのは男の子の父親だ。それを聞くと、今度は幼馴染へと視線を移す。
「ミコト、依頼をする。報酬は可能な限り考慮しよう、元凶を討伐して欲しい」
「まだ元凶が分からないけど、了解だ。行方不明になった場所と状況を教えてくれ」
二つ返事で了承する幼馴染に、過去数回の事件の詳しい情報の説明が入る。その後集会は解散し、家族のいるものは家族の元へと急ぐ。
家族のいないものや犠牲者の家族、家が村の中央にある者はと言うと、ミコトの周りに集まっている。これは保身の為というのもあるが、精神的に余裕のある者が手伝った方が良いという考えもあっての行動だ。
「なぁミコト、お前さん元凶は分からんと言ってたろ?本当か?」
「本当に分からない、そもそも誰も悲鳴を聞いてないんだろ?」
鍛冶屋のおじさんの質問にミコトが答える。その通り、目を離したのはほんの少しの間なのだ。子供達がミコトの真似をして木製の武器で遊んでいて、1人がトイレに行ったきり戻らなかったと言うのが事件の発端である。
「即死って事じゃねぇの?」
「血の跡も無かったんだよな?」
私も一撃で殺されたのだと思っていたが、血の跡が見つかっていないのが確かに奇妙だ。それ故すぐにモンスターの仕業とはされず、村を捜索する事となったのだ。
となると・・・・・・
「子供が自発的に外に出たってこと?でも出入口には見張りが・・・・・・いたわよね?」
姉さんがジロリとジョーさんを睨む。
「当たり前だ!ここ暫くで5人だぜ?そもそも子供にはあの扉は開けられねぇし、外からは閂を落とせねぇ」
サボりの常習犯だったジョーさんだが、ミコトに救われてからはそれなりに真面目に当番をこなしているし、以前でもこの状況でサボる程愚かでもなかっただろう。
「なら空ってこと?」
「子供とはいえ人間を一瞬で攫えるやつか・・・・・・どれも相当に大型だな。なら誰か見てるんじゃないか?」
私の意見もハズレだったらしい。
「強いて言うなら全部村の外れで起きてて、5件中4件が村の西側で起きてるって事か」
「だが1件は東側だろ?それに西側はモンスターも通れねぇような崖しかねぇぞ?」
西側の最端はきりたった崖が天然の壁となっており、それ故に何処よりも安全と思われてきた場所だ。
「これで原因がモンスターじゃくて転落でした、とかはねぇよな?」
「4人も?それにだとしたら東側での原因はなんなのよ」
「そりゃアレだ・・・・・・やっぱねぇか」
ジョーさん、おじさん、ミゥ姉さんがあれこれ言っているが、どれもピンとくるものがない。
「ミコトの知らないモンスターって事は考えられない?」
「無いとは言わないけど・・・・・・それだと倒し方を探す所からなんだよ。解決出来ないと意味が無いからな」
「だよね・・・・・・もしかしたら崖を登り降り出来て悲鳴を上げさせることなく人を攫うモンスターかぁ」
考えるだに恐ろしいモンスターだ。ミコトも想像してしまったのか難しい顔のまま固まっている。
「・・・・・・ヤツなら、出来るか。あの警戒心の塊みたいなケルビにすら気付かれなかったヤツなら・・・・・・」
「あん?どうしたよミコト」
「今から崖を見に行く、もしかしたら痕跡が残ってるかも」
そう言って走って行くミコト。追いかけようかとも思ったけど、万一モンスターに遭遇したら完全に足でまといだ。
息を切らせて戻ってきた彼は、勢いそのままにドキドキノコをカバンに詰め込んで“外”に出ていってしまった。
ミコトのヤツが何かを載せて帰ってきた。その報せを聞くとすぐに人が集まった。
「・・・・・・のぉミコト、ソレはなんぢゃ?」
ソレとは足と翼を持った巨大なミミズの様な何かである。それが力を失ってそこにいるのだ。
「フルフル、隠密能力に長けていて雷を使って狩りをするモンスターだよ。こいつにとっては人間が狩りの対象だったらしい」
「ふむ・・・・・・了解した。他に報告する事はあるかの?」
儂の問いかけに対して少し考えると、後で報告に向かうと返してきた。
「では報酬は何が良い」
「ソレを使った武器が欲しい、詳しくは鍛冶屋と相談になるか?」
「そうじゃな、あまり食えそうにも無いし食料にはなるまい。好きに使うといいじゃろ」
幸いな事に食料の備蓄は十分にあるし、そもそも人間を食べてきたモンスターを食すのは抵抗がある。ギアノスとやらも同様だ。
ふと、鍛冶屋や薬師が興味深げに観察する傍らで、息子を失った両親とそこの娘が死体を睨み付けているのが目に入った。
「ふむ・・・・・・ミコト、それに鍛冶屋。武器を作るのにそいつの頭は必要か?」
「いや、牙もねぇし使い道は無いだろう。ミコトはなんかあるか?」
「いや、無い。そもそも武器にするために持ち帰ったわけでも無いからな」
どうやらコレを見越しての事だったらしい、恨みをぶつける対象として、持ち帰ったのだろう。死体に鞭打つ行為ではあるが、遺族が発散も出来ずに自暴自棄になられるよりは良いだろう。
「感謝しよう」
「・・・・・・あん?ミコト、お前あれ程言ったのに剣の柄で殴ったな?刃と違ってそこまで強くねぇんだって」
鍛冶屋が死体の側頭部を抑えて言う、確かにそこが小さく凹んで変色している。
「いや、それは俺じゃない。多分コレだ」
ミコトが出したのは小さな木製の短刀、子供達がミコトの真似をして投げたり振ったりしているものだ。
「・・・・・・まさか、あの悪ガキがやったのか」
「モンスター同士ならこんな傷にはならないよ、どっかで頭を打った可能性は否定出来ないけど。でも最期までコレ、手放さなかったみたいだし」
この場を離れようとしていた者も足をとめ、モンスターの頭の殴打痕と木製の短刀を交互に見る。友達を亡くした子供達は自分用のそれを握りしめ、涙を流している。
「あの、ミコト・・・・・・それを受け取っても、いいか?」
目を真っ赤にしながらも子供の親が遺品を受け取りに出てきて、ミコトは黙ってそれを差し出す。
所々で嗚咽があがる中、1人また1人と場を去ってゆく。儂がその場に背を向け、自宅に引き上げるとすぐにミコトが追ってきた。
「報告の件なんだが、いいか?」
「構わん、お前達は下がっておれ」
家族を下がらせると、2人だけの空間が出来上がる。言い出しにくそうにしているミコトに対し、こちらから切り出す。
「ミコトよ、あの場では納得して見せたが奴が元凶だと言うには少しばかり、根拠が弱いと思うのぢゃが?」
「間違いない、報告はその件なんだ。奴は巣で仕留めたんだが・・・・・・首だけが並んでたんだよ、ずらりと」
「・・・・・・それは、ヤツにとっての戦利品か?」
我々人間も同じ様な事をする。ミコトがモンスターを狩って帰れば食肉としてだけでなく、それを素材に家具や飾りにも使うのだ。
「いや、時間をかけて楽しんでたんだ。恐らく死にかけたら最後に首を引きちぎってたんだろう、フルフルは本来一度飲み込んだらそれっきりだからな」
「了解した、それで報告は終わりか?」
「いや、もう1つある。そこに並んでた首なんだが・・・・・・多分この村の人間以外のものもあったんだ、つまり・・・・・・」
それを聞いて頭が真っ白になった、村長としての態度を崩さなかったのは奇跡と言えよう。旅に出たがっていたミコトが、ついに他の村の手掛かりを見つけてしまったのだから。
当然ながら、その後村の主要人物らに非常呼集を掛けた。
今回スマホからの投稿です、後日修正が入ると思います