Epic_of_Remnant another 完全臨界特区 高天ヶ原(Fate/Grand Order)   作:RUM

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なにぶん初めての投稿なのでよろしくお願いします。


fate /grand order 完全臨界特区 高天ヶ原 第一章

亜種特異点「ANOTHER」

【完全臨界特区 高天原】

 

 

 万年雪を湛える高山の地下に存在するフィニス・カルデア。魔術師アニムスフィア家が管理するこの機関は「天文台」と一般的には説明されるが、実際は星以上のものを観測している。それは、人類の歴史「人理」だ。歴史を観測し、人類史の継続を続けさせるために、この「天文台」はある。幾分か前、この機関はサーヴァントと呼ばれる使い魔と時に協力し、時に敵対して、人類のすべてを救い、世界の歴史を守った。尊い者を対価に。

 

「マスター、私は愚か者ですか?」

マスター藤丸立香が就寝した真っ暗のマイルームにて、一人のサーヴァントがベッドの上に座っていた。眠るマスターの髪を分けて、彼は頬を緩めた。

よく眠っている。世界を救ったマスターなのだから、眠るときくらいは安らかでないとならない。彼はそれが気がかりだった。過酷な特異点探索、絶望なまでの恐怖を乗り越え、それでも前に踏み出した偉大なるお人なのだから、心身は強い方だと思うが、自分からすれば年端もいかぬ子どもだ。だからと言って彼を「制御」しようとは思わない。

この人との出会いは偶々だ。偶然の交差と形容できるだろう。マスターが偶々召喚サークルを使っていたら不意に何も意図なく私は召喚された。

あの時のポカンとした顔は忘れられない。

「こんにちは…… サーヴァントですか?」

印象は良かった。少し抜けていると思ったが、それがマスターの魅力だ。誰にでも表裏なく接し、誰でも遺恨はあれど平等にしようとする。その心に好意を持ったのは言うまでもない。マスターほどの求心力さえあれば、世界征服も夢ではない。

「ふふふ、やはり私の主はこの人だけだ……」

――――ん?

後ろの気配に気づいた。今まで消していた、というよりも気付かれるために気配を露わにした、という方が正しい。自分も警戒を最大限に高めていた。マスターのマイルームは一種の特異点に近い。不特定多数のサーヴァントが出入りし、ここに居座っている。無論、マスターのプライベートな時間は一人にするのが常識だが、それをないがしろにする輩も知る。

「さて、どうしたものか……」

少し考え、振り返った。

「なんだ、清姫。何か用か?」

「旦那様に何をしていらしたの?」

「何も、ただ顔が見たかっただけだ」

「ウソつき」

「本心とはまた違うだけで、ウソとは限らん。私はこれでもすべて本当のことを言っている。それよりも、私の言葉を嘘と断じるのは構わんが、お前はここで騒ぎ(戦争)をするつもりか? マスターの就寝を邪魔するのは嫁として失格とは思わないのか?」

「私は旦那様の正妻です、ならばここは私のテリトリー。出ていくのはあなたではなくて?」

「――――――」

「…………」

殺気が交差する。清姫は私を葬る気だ。迎え撃つ私もそのつもりだが、いかにせんここは場が悪い。だが奴は「狂戦士」のクラス。理性がぶっ飛ぶのは避けたい。彼女は年端もいかぬ子どもだ。マスターよりも年下の英霊だが、「狂化EX」スキル持ちだ。私と本気で戦うことになったら、どちらも消滅必至だ。

「分かった。私の負けだ。ここは下らせてもらう」

「イイですよ。さようなら」

「マスター、お休み」

私はその場を去った。

 

――――――私は思う。このマスターが、一番だ。優秀なマスターはいくらでもいるがここまで好意的に接してくれる人いないだろう。例外はある。だが例外がないだろうと思うほどに、マスターは私のマスターに相応しいのだ。

「寝ようか、明日も早い」

 

 

 

「おはよう、マスター」

赤い外套のエプロンのアーチャーが食堂で声をかけた。カルデアの厨房では、料理ができるサーヴァントたちが毎日料理を作ってくれる。古今東西さらに時代も異なる異種の料理の合作などもあり、毎日ネタに事欠かない。

「今日はどんな朝食がいいか?」

「おすすめは、私の自家製マスタードで作ったサンドイッチだよ」

厨房の奥で中華鍋を揺らすブーディカが言った。

「おや、ご主人。本日はこのタマモキャットが練りに練りまくったうどんも用意してあるぞ。もちろん味は保障するぞ。」

「じゃあ、両方貰おうかな。全部食べたいから量は半々にしてほしい」

「あいよ」

「了解、キャット」

「あいあいさー!」

注文が終わると、見慣れた顔が現れた。

「おはようございます、先輩」

「おはようマシュ、今日もメガネにあってるね」

「……ッ! あ、ありがとうございます、先輩」

「まったく、朝からイチャイチャしてるな。お二人さん……」

「クーフーリン、おはよう」

「おはようございます、クーフーリンさん」

「おはよう嬢ちゃん」

声をかけてきたのはランサーのクーフーリンだ。カルデアには、「狂王 クーフーリン《オルタ》」「キャスターのクーフーリン」「ランサーのクーフーリン」がいる。クーフーリン統一でも本人たちが聞き分けてくれるので今のところは何とかなっている。もし、これ以上クラス別のクーフーリンが増えたら、自分たちも聞き分けに苦労するだろうな、と最近危惧している。

「おや、アーチャー。今日の勧めは何かな?」

「ふ、何を言ってるクーフーリン。今日の勧めは日替わり朝食だ。そこのメニューが目に入らないのか?」

「マスターと違って俺の扱いはいつもこうかよ」

「当然だ。マスターには毎日苦労を掛けている。こちらとしても、使い魔としての最低限の義務はこなさなければならない。それがたとえ、料理の一品だったとしてもだ」

「ほう、言うじゃねーか?」

二人はいつもこんな感じだ。犬猿の仲のようだが、どうも互いに憎んでいる節はない。互いに皮肉を込めて話しているからわかりにくいが、雰囲気は親友のそれだ。

「ご主人。朝食ができたぞ」

「ありがとう、キャット」

「キャットさん、私の朝食は先輩と同じでいいですか?」

「了解したぞ。このキャットに任せておき」

「じゃあ、マシュ。俺は先に席を確保しておくよ」

「はい、わかりました」

 

「まったく、今日も騒がしい/楽しくなりそうだ」

 

立香は席を見繕った。何気にカルデアには規格外に巨漢なサーヴァントたちが多い。マシュと一緒に食べられるだけのスペースがあればいいといいが……

 

―――ドクンッ!

 

「…………ッ!」

ガシャンと立香はトレーを落とし、その場に座り込んだ。この音にサーヴァントたちが一斉にマスターに顔を向けた。無論、サンドイッチもうどんも床にぶちまけてしまった。

「せん、ぱい?」

異変に最初に気付いたのはマシュだった。それに追従するようにマスターの異変にサーヴァントたちは総毛立った。

「熱い/痛い」

令呪が赤黒く染まる。血管が破れ、毛細血管が爆発する。神経がバーナーであぶられているかのような熱さと痛みに耐えながら藤丸立香は必死に歯を食いしばった。

 

―――手の甲が痛い。腕が焼ける。このままでは血液が沸騰してしまいそうだ。

 

「先輩! 先輩!」

「大丈夫か、マスター?」

「私が非常事態警報鳴らすから、だれか早く医療班を呼んで……」

「クーフーリン、お前の速さならすぐに行けるはずだ」

「おう、任せろ」

「先輩、せんぱい!」

痛みが許容量を超え、意識が遠のいていく。意識がどこか深くに引っ張られるようだ。

「マ、シュ……大丈夫、お、れは……」

「せんぱい、せんぱい」

涙ぐんだ後輩の顔が掠れる。

「だい、じょう……ぶ……だ、か……ら」

マスターはここで事切れた。

 

 

 

「先輩は、先輩は、大丈夫なんですか? ダヴィンチちゃん!」

マシュは声を荒げた。医療班とナイチンゲール女史にマスターを回収されてから十時間近くたっているが、一行に事態が終わることはなく、マスターも医療班も無菌室で缶詰だ。マルタ、天草四郎、ジャンヌダルクなどの聖人、アイリスフェール、ジェロニモ、メディアを含めた魔術関連のエキスパートが続々と加わっているが、終わる気配すらない。時々交代で出てきた医療班の方に詰め寄っても「何ともいえない」を繰り返すばかりで何も情報が得られない。

 そのさなか額に汗をかき、疲れ果てた顔でダヴィンチちゃんが現れた。

「マシュ…… 彼の様態は、はっきり言って芳しくない」

「……ッ!」

「ベッドが聖遺物になるレベルで処置を施している。まずは現代医療からアプローチしてみたが効果がなく、魔術的アプローチに切り替え、聖人の祈りから、交霊術、古今東西全ての超自然的現象を試してみたけど、効果はなかった」

「そんな、じゃあ、先輩は……一生目覚めないんですか!」

「そこまで危惧はしてない。この状況は前みたいに特異点に意識だけ飛ばされた状況に似ている。どこかで似通った存在に憑依する形で存在を維持しているかもしれない」

「確証はないのに、楽観的過ぎます」

「マシュ、君は焦りすぎている。少し冷静に……」

「冷静になれません。先輩が……目の前で、あんなに苦しそうにして……」

マシュは自分の不甲斐なさを悔いている。自分に何かできなかったのか? 異変にもっと早く気づけたのか? 何よりこの状況で何もできない自分が一番不甲斐ない。

「いいかい、マシュ。自分だけで全てできるわけじゃない。人には得手不得手がある。不得手なところは他人に任せて、君は得手なところだけをすればいい。そうやってここはいつもやってきたんだ。君は君に出来ることさえしっかりとすれば、自ずと結果は出てくる」

「は、はい……」

「まずは特異点を観測することから始めよう。残りの分野はサーヴァントや局員に任せて、マシュはその一つに心血を注ぐんだ」

「わかりました。行ってきます」

マシュは廊下を全速力で駆けて行った。ダヴィンチちゃんは大きく息を吐いて、後方に隠れた気配に声をかけた。

「探偵さん、今回は推理してくれないのか?」

「情報が少なすぎる。推論に推論を重ねるのは性に合わない」

「それはどうかネ?」

無菌室のドアが開き、ひげを蓄えた英国紳士が現れた。

「……モリアーティ。どうしてここに?」

「私が呼んだ。彼はいろいろとユニークな発想をしてくれる。それにヴィランの視点から逆説的に考えられると思ったわけだ」

「なぜ、私ではないんだ?」

「それは君が危ない人だからだよ、ホームズ君?」

「それを君が言うのか、モリアーティ?」

「ホームズ、君は好奇心が強すぎる。それに今回は魔神柱の仕業の可能性もある。協力者としてはバアルと行動を共にしていた頃の自分に何かしらの参考になる点がないかと思っただけサ。それに、君は解き明かすのが仕事だ。そこに至るための情報がない限りは何もできないそれが探偵だ、そうじゃないかネ?」

「だが推論はできるぞ。例えナノレベルの情報でも、そこから犯人を見つけるのが真の探偵だ」

「では、ヴィランとしての見解を含めて答え合わせと行こうじゃないか?」

モリアーティは頬を緩めて微笑した。この男たちが何を考えているのか、ダヴィンチちゃんにはわからなかった。しかし、この二人が互いに協力するときというのは、これ以上頼もしいことはない。大惨事が起きない限りは……

「では、まずはマスターの容態から……」

「身体すべて正常。しかし令呪は黒く染まっている。契約としての機能は保ったままに、その機能の半分以上が消失している。加えて形も変化した。若干の文様変化、しかし画が増えたわけではない」

「意識レベルは?」

「すべて正常。肉体的ダメージばなく。魔術的介入もない。それに属さない、神霊的な現象である可能性は完全にゼロだ」

「つまり、それ以上からの介入というわけだ」

「……これで分かることはあるかい、探偵さん?」

「―――ほぼ君と同じだ。やはり思いつくところは同じか?」

「だがこれは推論だ。これが本当だというのなら、マスターの令呪の機能のほとんどが失われた理由も説明がつく。ダヴィンチ女史、令呪はどの部分なら機能している?」

「うん。どこまでかはさっぱりだが、零基復元、宝具開放といった機能は消失、魔力の中継点としての機能は残っているし、契約の機能も残っている。無論、現界の依代の機能もある。だが、それもかなり弱くなってしまっている。これではまるで……」

「契約者が夜逃げしたようだ、とかネ?」

モリアーティの言葉にダヴィンチちゃんは核心を得たようだった。

「私から言わせてみればこの表現が一番合っていると思うネ。契約書も家賃もすべて整っているのに関わらず、住人だけが突然消滅した。このような状況は普通はあり得ないだが……外的要因さえあれば可能だ。住人を消えさせるほどの理由。例えば、借金取りとネ!」

「モリアーティ。君は少しは自重するべきだ。そうである理由は確証がない限りはどうともいえない」

「すまないねホームズ。ヴィランは推測で物を語り、それを証明したくなる生き物なのサ。君のような真実のみを追い求める探究者とは違ってね?」

「とにかく。ダヴィンチ女史、これは一刻を争う。マスターの意識が取り戻されなければ、マスターの肉体はこのまま衰え、死んでしまう。その前に、この事態を収拾するべきだ」

「ならば、私はマシュと共に立香の意識がどこにあるのかを探ろう。二人には、引き続きマスターの意識を取り戻す方法を……」

「それは無理だ。ダヴィンチ女史、君も分かっているはずだ」

ダヴィンチちゃんは慟哭した。ホームズとモリアーティは既に解に至っている。そして自分も、既に解を知っている。それでも理解できない。だが、これが答えだというのなら飲み揉まざるを得ない。

「ああ、わかっている……」 

監獄塔の時は魔神からの介入もあったが、意識は判然に分離してはいなかった。下総国の場合は、時間こそかかったが意識を取る戻すことができた。だがこれとは全く違う症例…… 令呪の変質、機能停止…… このようなことはなかった。つまりまったく別の原因。この事件は魔神柱は関係していない。

「その様子ならば、君も理解しているようだ」

「だが本当に、あり得るのか?」

ダヴィンチちゃんは確認した。

「当然だ。そうでなければこのような現象の理由がつかない」

「ならまず、その場合の対処法について探るとしよう。彼の意識がどこに飛んだのか? どこにいるのか? 何をしているのか? そこを確かめるとしよう」

 

 




自分の考えたサーヴァントの登場は次になると思います。
公開情報は後々にこちらで増やしていきます。
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