Epic_of_Remnant another 完全臨界特区 高天ヶ原(Fate/Grand Order)   作:RUM

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第三章です。
今回は短めにしてみました。
質問、感想、誤字等あれば気軽にどうぞ。



fate /grand order 完全臨界特区 高天ヶ原 第三章

 意識が深く落ちていく。深く、深く際限なく、暗闇の洞穴に飲み込まれるように墜落する。

 見上げても光はない、下を見ても黒々した闇だけ。

―――ああ…… 俺は死んだんだ。

男は自然と腹部を貫いた一矢が致命傷になったと受け入れた。記憶の最後に残る断片を思い出してそれをすべて飲み込んだ。自分の後輩らしき少女の顔も、自分を補佐してくれる万能の天才も、陰ながら大いに協力してくれた人々、自分を日々助けてくれる誰か。それら全員の顔はもうわからない、雰囲気だけで個人を認識している。

―――ごめんな……

 男は言った、胸からあふれる悔しさと慟哭を涙に変えて。

だがもう遅かった。自分は既に亡き者……

 この墜落は黄泉への入り口か、三途へのいざないか、地獄の淵への招待か。

―――どうして俺は……

 悔しい。これは認められない。もう一度会いたい。

 何もわからないはずなのに、自分は忘れてしまったというのに、なぜか慟哭が止まらない。

 

『お前は、まだ死んでいない。あきらめるな、私がいる』

 

 どこかで声がした。凛とした女性の声だった。

 

『死にたくないだろ、だったら願え。目覚めたいと、願え。障害あるのなら私が跳ね除けよう、救い欲しいのなら、私がなろう』

 

―――誰だ? 誰なんだ?

 

『戻って来い、戻ってくるんだ。そこはお前の居場所ではない』

 

―――あ、ああ。

 

 豆粒のようなか細い光が見えた。手でつかめば握りつぶせるくらいの光だ。

 

―――俺は、あきらめたくない。

 

男は手を伸ばした。落下する中でも、大きく長く両手を伸ばした。

 

 

「ぶ、ふッ! ごほっ!」

藤丸は目を覚ました。のどに詰まった血塊を吐き出してベッドから飛び起きた。まず目に入ったのは自分が裸体で寝ていて、その体が包帯でぐるぐる巻きにされていたことだ。足にも同じように包帯が巻かれて、腹部ほどではないが若干血色に染まっていた。

「どういうことだ……」

現状に戸惑っていると寝起きで鈍っていた感覚が戻り、触覚、聴覚、視覚、味覚が明瞭になり、下腹部と右足に走る激痛に悶えた。

「あ、あああ……」 

痛みをこらえながら周囲を見回してみると、此処は初めに寝床に決めたビジネスホテルだった。ベッドの下に飲料用天然水のボトルが数本と、散乱した血染めの包帯がいくつか、加えて使い古しの注射針に輸血用血液パックなんかもあった。

「治して、くれたのか?」

誰だろうか? いやそれ以前に自分はさっきまで……

 

「目覚めたのか、マスター?」

 

 部屋のドアが開いたと思ったら、物陰から一人の女性が段ボール箱を抱えて現れた。

凛とした目じりと黒目、均整の取れた顔、背中の中ごろまで届く黒髪はリボンでポニーテールにまとめられ、服は上下漆黒のスーツ、ネクタイも真っ黒。

一度も見たことのない女性だった、それも「格好いい」という言葉がふさわしい凛とした若人(わこうど)。

彼女が荷物を置いて中身を整理する間、藤丸はサーヴァントに問う。

「あなたはサーヴァント、なのか?」

「ああ。私はそのつもりだが?」

「俺はマスターなのか?」

「馬鹿げたこと言う、私を呼んだのはお前であろう?」

「―――あ、もしかして……」

あの時、死に必死にあがいて叫んだ時に、偶然召喚されたのか? そういえば記憶が飛ぶ前に、誰かに声をかけられた気がした。誰かがやってきたと思ったが、まさかサーヴァントを自力で召喚したのか? 

「思い出したか? お前が呼んだサーヴァントの事を」

「記憶が飛ぶ最後に、すこしだけ…… 誰かの声が聞こえて…… それが……」

「私というわけだ。カルデアのマスター、藤丸立夏」

「―――ッ!」

藤丸は身構えた。初めて会ったサーヴァントが自分の事を知っているのは大抵悪い兆候だと藤丸は経験則から知っている。しかし、右足と下腹部に穴が開いている状態でサーヴァントと相対するのは自殺行為だとも感じていた。サーヴァントは藤丸のその心理を読み取ってか、軽く鼻で笑った。

「私はこれでもサーヴァントだ。マスターの事は基礎知識として頭に入っている。もちろん、令呪のパスもあるから、お前の記憶を夢として見たこともある」

「―――そうか……」

藤丸は構えを解いた。

「それにだ。お前に危害を加えるのが目的だったら、治療なんかせずに延命処置だけでいい。お前のようなバカ素人は魔術にいともたやすくかかってしまうからな」

「―――むむむ……」

確かに自分は素人だ。だが、バカにされるいわれはない。

「ムスッとするな。これでも褒めているんだ。素人がよくもここまで冒険をしていられたと、ね。―――だったら訂正すべきだな、お前は素人であってもバカ素人ではない。許せ」

サーヴァントはその場で振り返って軽く会釈した。

 その流れのまま、彼女は思い出したように、

「そういえば、自己紹介がまだだったな……」

サーヴァントは藤丸に自分の全体像を見せて、自信ありげに申し上げた。

 

「―――我が忌み名は、アサシン。真名は教えられない。もし他のアサシンとの差別化をしたければ……そうだな……ここは単純にスーツのアサシンとでも呼んでくれ」

 

 

 スーツのアサシンことアサシンは、藤丸に現在の置かれた立場について語ってくれた。

「まず、お前は一回死んでいる。心肺停止という奴だ」

開口一番でこれだから、藤丸から血の気がすっかり抜けて顔が紫になった。今の自分が生きていることが不思議でたまらないと、アサシンに言うと「私もまったく同じことを思っていた」と半笑いで言われた。

「まあ、すぐに病院を見つけて人工呼吸器とか輸血用血液にAEDというヤツも使って、お前の蘇生と延命にかなりの時間を費やした。ざっと五日くらいか?」

「五日間も死んでいたのか?」

「半死半生と言えば聞こえはいいが、どちらかと言えば九死一生だ。蘇生して心肺が動いても四日近くは自律呼吸ができていなかった。それで半日前にやっと自律呼吸ができるようになって、此処に運んだわけだ」

「―――俺が、死んでいた…… 本当に、死んでいたのか……」

「バカ言え、いくら死んでいようが、今生きているのならそれでいい。マスターは死人より生人に限る。そうは思わないか?」

藤丸は小さく頷いた。衝撃的な話であったが、もう過去だ。アサシンが言いたいのはそういうことだろう。言い方はどうであれ、勇気づけてくれているようだ。

「なあ、アサシン。他に何かこの東京についてわかっていることはないか?」

「わかっていること?」

「例えば、敵の兵士の事とか……」

「あの泥人形の事か?」

「え? ど、泥人形?」

あの兵士たち、人形だったのか。

「そうだ。砂と土と泥を固めて作った兵士の形の素体に本物の武具を付けた人形だ。ゴーレム、という人形とも違う。あれは、完璧に兵士として動ける代物だ。ゴーレムのように単純な命令のみが有効な木偶(でく)人形ではない。複雑な命令を遂行しながら統率力にもたけた、軍隊だ」

「サーヴァントの宝具ってことか?」

「わからん。宝具でなくとも、あの程度であれば魔術師でも作れる。頭脳にプログラムを埋め込むだけだ。難義ではなかろう」

「……じゃあ、それを操っているのはサーヴァントなのか?」

「不明だ。こちらはお前の看病に付きっ切りで捜索なんて半日前まで不可能だった」

「―――ごめん」

「謝る必要はない。この状況はお前の責任ではないし、お前が原因でもない。真に迫るべきは、この特異点を作り出した張本人と、兵士たちの司令官に他ならない。違うか?」

鋭い切り口であってもフォローを忘れない所に、彼女の不器用さを感じた。

「ありがとう」

「……」

数秒の静寂の後に、アサシンは咳払いする。

「他にわかっていることはない。あの人形どもを片端からぶっ潰せば大本が出てくると思われるが、今はお前がこの状態だ。せめて傷が癒えるまでは、発見を避けよう」

「傷が癒えるまでって、言われても……」

これだけひどい傷となれば一朝一夕で治るわけがない。最低でも一か月はかかるはずだ。

「それじゃあ、遅い…… 遅すぎる……」

「だがそれしか方法がないのも事実だ。我慢しろ、とは言わないが少しでも短くしたければ、飯を食え。よく寝ろ、治ると願い続けろ、いいな?」

「―――分かった」

アサシンが持ってきたビニール袋一杯のおにぎりを腹いっぱいまで食べ、失った水分(血液)をミネラルウォーターで補給し、傷を撫でまわす痛みに耐えながら古いガーゼと包帯を交換した。

「さあ、寝ろ。身の安全は私が守ろう」

「でも、アサシンも寝なくていいのか?」

「サーヴァントは寝なくとも活動できる。寝た方が魔力の節約になるが、今は気にするな。お前はバカの一つ覚えのように回復に全神経を回していればよい……」

「わかった。お休み、アサシン」

 

 

 

―――藤丸が熟睡してから数分後の事だ。アサシンはビジネスホテルにマスターを残し、一人外出した、腰に刀を帯刀して。彼の最も近くにいることが一番だということも分かっている。眼を離した隙に何かが起きるかもしれない可能性も推測できる。だがそれでもマスター守る使命を忘れていない、むしろそうするしかないと思ったから外に出た。マスターの命を保証するには自分で打って出るしかなかった。でないと巻き込まれてしまう。

アサシンをビジネスホテルの向かい側の広い駐車場で、待つ人物がいたからだ。

「待っていたのか? 律儀だな?」

複数のアパレルが入った商業ビルが闊歩する虚空に呼びかける。

「―――待ってた? 違うね…… 礼儀を守っただけだ、サーヴァント……」

虚空から霊体が舞い降りる。霊体は徐々に肉体の形を得ながら舞い降り、両足をついた。

 

―――サーヴァントだった。

 

 光沢のあるトリコロールの綿織物の着物に金色のラインが入った白いスーツのようなズボンを履き、膝、脛、前腕、肘に金色の防具を身に着け、頭には特徴的な小さい王冠を付けたサーヴァントだった。戦いに赴くには古今東西の常識からして派手過ぎるその出で立ちに、アサシンはため息交じりに別の意味で感心しながら右手に握った刀に手をかける。

「おい、会ったそばからやり合う気かよ。いくら俺っちが敵でも少しは会話するのが礼儀ってもんだろ?」

「貴様は馬鹿か? 結局は仕合うのだろ、だったら会話しようがしまいが、変わるまい」

アサシンは帯刀した刀を握り、親指で鍔を押して刃を露出させる。

「焦ることはねぇよ、俺っちとの戦いは逃げねぇから安心しろって。それに今日はマスターが目的ってわけじゃねぇ。今回は威力偵察ってやつだ。本格的にドンパチ大騒ぎするのは、あとの楽しみだ。でも、これだけ待たせたのだからちょっくら味見くらいはしてもいいよな? というわけで、俺っちは気配をぷんぷん臭わせて待ってたわけだが、それはあたりだったようだな。」

サーヴァントはアサシンを上から下まで見回す。

「いい体つきをしたお嬢さんだ。それに手練れでもある。身の構えから気配、殺気に至るまで熟練している。これだけの鍛錬は生半可な戦場で得られるもんじゃねえ。どれだけの修羅場をくぐったか知らねえが―――ぶっちゃけ、体から成りまですべて俺っちの好みだ。」

「―――馬鹿げたことをぐちゃぐちゃというな。耳が腐る。死にたいというのなら遠慮せず、言ってみろ。その饒舌に免じて介錯してやる」

「そうかよ。つまんねえな」

何も感じていないように見えて、サーヴァントはアサシンに警戒心を抱いた。自分が彼女を「お嬢さん」と言った瞬間に放たれた殺気に血の匂いが混じった。この女剣士は只者じゃない、とサーヴァントに思わせる強い殺意。ここまで来ると、闘気だけで「人間を殺せる」レベル―――いや、それよりひどい。

(なんだ、あのサーヴァント。クラスがどうであれ、いろんな奴と殺り合ってきたが、『剣気で殺せる』奴はいても『剣気が血塗れ』ってどういう要件だ……)

「どうした。饒舌な舌が止まったぞ? もっと負け犬のように吠えたらどうだ?」

「言ってくれるな…… だが、ここじゃあ万が一にも勢い余ったら、大事なマスターを踏み潰してしまいそうだ。場所を変えよう、此処の近くにスクランブル交差点がある。そこなら、邪魔も入るまい……」

「―――嫌だと言ったら?」

「そん時はここで仕合うしかねえな。一応捕捉しておくが、今熟睡しているマスターの身の安全は確約しよう。これは俺っちのプライドを賭け(BETし)てもいい」

「信じられないな。貴様の言うことには確証がない」

「そうか、んじゃあ。しょうがねえな…… 明日、今度は部隊丸ごと連れて来てやる。それならお前もやる気になるだろう……」

「―――ッ! ―――貴様と一戦交えても結果は変わらないということか?」

「いや、今日俺っちを完膚なきまでに打ちのめせば、明日の襲撃はなくなるし、超豪華特典としてこの特異点の秘密から全貌まで洗いざらい白状するぜ? これに関してもプライドを賭け(BETす)るぜ?」

「―――そこまで大見栄を切るとは、大した自信だな」

「なんたって、俺っちは最強だ。最強である俺っちはいくら見栄を張ろうが、何を賭けようが関係ない。結局は俺っちの勝利になる。お前っちが勝つことはありえねえ……」

サーヴァントは自信に満ち溢れた微笑でアサシンを挑発する。

「―――(どうしたものか……)」

一応、利点はある。ただし自分が倒れる可能性も捨てきれない、ハイリスクハイリターンの決断。アサシンは数秒考えた後、刃を露出させた日本刀を納刀しサーヴァントに向けていた殺気を緩めた。

「わかった。その提案に乗ろう……」

その時、彼から気の抜けたため息が聞こえた気がした。

 




マテリアル公開可能情報
『スーツのアサシン』
《パーソナリティ》
真名 不明     性別 女性 
身長 168センチ   体重 約57キロ
好きなもの 不明  嫌いなもの 不明
属性 不明     スリーサイズ 本人が興味ないので不明
《ステータス》
筋力D 耐久C 敏捷A 魔力E 幸運C 宝具C
《宝具》
不明
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