Epic_of_Remnant another 完全臨界特区 高天ヶ原(Fate/Grand Order)   作:RUM

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しばらくぶりになります。
リアルが忙しいことと、まあ、諸事情で……執筆を諦めたくなるほど、心が折れた。
どうにかして最後まではやろうと思います。


fate /grand order 完全臨界特区 高天ヶ原 第八章

幾度見た光景だ。

 人生最後に鬼神のごとく戦場を駆け抜けた記憶だ。

 だが――――それは、不変ではなかった。

 定説が日々変わり続けるように私もまた変わる。

 「私」は誰でもない。誰にもなることができない。

 人々が願い続け、創り続け、紡ぎ続けるたびに、「私」はあらゆる存在に変わるのだ。

 民衆が「男」と定義する限り私は「男」になる。

 民衆が「女」と定義するなら、私は「女」になる。

 もとより私は「信繁」ではなく「幸村」なのだ。

「こいつは無辜の怪物……いや、元から存在が書き換わる存在だ」

アサシンは相手の心を突き刀(言葉)で刺す。

「無辜の怪物は存在が歪められる。しかし、コイツは真田信繁の存在が歪められて生まれた、真田幸村ではない。無辜の怪物そのもの、人々の願いによって形作られて『創作』の結晶。召喚されるたびに召喚者のパーソナリティによってある程度存在が操作される特異性を持った『創造の外殻』でチューニングされた『誰でもない真田幸村』がコイツの正体だ!」

「―――御託は済んだか、暗殺者!」

幸村の槍が火炎を纏い、ランサーの魔力が高まる。アサシンを殺さんと切っ先が向けられる。

「ああ、十分だ」

「なら、死ねッ!」

火炎を纏った朱槍がアサシンに投擲され、アサシンはひらりと避ける。その間にランサーは急接近し刀でアサシンを袈裟懸けに一閃する。

「……ッ!」

アサシンは体を限界まで反り、ランサーの一閃を紙一重で避けたが、ランサーは刃を返しながら即座に切り上げる。だがこれもアサシンをとらえることなく空を裂いた。

アサシンは左足を軸にして態勢を戻し、切り上げで手薄になった横腹に切り込む。

「―――取った!」

アサシンの切り込みは見事だった。伸び切った姿勢で隙だらけになった弱点をカバーするのはサーヴァントといえど不可能だ。しかし彼女が聞いたのは肉が断ち切れる血なまぐさい音ではなく、ゴドンッと鈍い音だった。

「……え?」

アサシンは目を疑った。

切り込んだはずの刀身がランサーの鎧の直前で止まっていた。

 そして、ランサーはそのわずかな時間を見過ごすことなく、アサシンに上段からの振り抜きをたたきつけた。

「―――ッぐ!」

アサシンは持ち前の速度を持って距離を取ろうとしたが間に合わずに袈裟懸けに胴体を裂かれた。しかしわずかに回避が上回ったのか、致命傷にならずまた距離を取られてしまった。

「惜しいな。もう少しで、両断できたんだが……」

スーツに血が染み込みジワリと傷が広がる。ぽたぽたと滴る大きな血の粒と顔色の悪さがダメージの大きさを物語っている。痛みに顔を歪めながらも、決して怖気づくことかなく、アサシンの切っ先は常にランサーの心臓をとらえている。

「躱せないならわざと受けることでいなしたのか? 相変わらず避け方だけは見事だ。だが、こちらにも三騎士というプライドとキャスターの切り札という自負がある」

「物理保護のギフト…… キャスターの仕業か……」

「正解。この鎧には生半可な武具では傷つかないように障壁を張ってある。宝具級の一撃ならまだしも鈍(なまく)ら刀程度では掠りもしない」

「切り札というのは『キャスターのギフトを受け入れられる』から…… だけではないな、お前の宝具も理由なんだろう?」

「わかっているのならどうして一人で戦おうとする? その調子だと刀を振るうだけでも一苦労の筈。だというのに助けを求めるどころか援護も要求せずに私に立ちはだかった。そこまでして単騎掛けにこだわる必要もないだろ?」

「当然。お前の狙いはそれだ、幸村。お前の宝具は強い敵と対峙するほど効果を増す。集団戦になればなおさらお前は強化される。だから『わざわざ弱い』私一人が前に出たんだ」

「だが、それも意味をなさない。お前は既にまともに戦える状態じゃない」

アサシンの闘志は消えてなくとも、脚は震え、顔色も蒼く、何より袈裟懸けの傷のダメージが大きく、満身創痍でなくとも重傷なのは変わりない。

「ああ、そんなの分かっている」

承知の上でアサシンは構え直す。

「これはケジメだ、幸村。私はためらった、お前たちを正しいと心の奥底で肯定して見逃してしまった。だから貴様たち二人との決着は私がつける。そのために、私はここに来たんだ、抑止力の使いとして……」

「だったら、どうする?」

―――メラメラとした炎が幸村の全身を包む。

「お前を倒す…… 我が、秘剣にて貴様を仕留める!」

―――アサシンの、突風にも似た魔力の流れがランサーを通り抜ける。

「まだ余力を残していたか?」

「いや、かなり切迫している。予定ではこの技は最後の最後まで取っておくはずだった。この戦いはキャスターも観戦しているだろうから、切り札は残しておくべきだと思った…… だがそうしてもいられない。これ以上、時間を稼がれるのも…… 馬鹿げている!」

アサシンは刀を握りしめた。

傷から響く鋭い痛みをこらえ、刀の切先をランサーに向ける。

ランサーは全力の魔力を身に込める。

距離は約三十メートル前後。サーヴァントの疾走であればあって無いような間隔。

ランサーはアサシンに狙いを定め、槍を構えると脚部に力を籠める。

「行くぞ、アサシン!」

 武士は、踏み出す。

同時に彼の纏った魔力すべてが烈火となり、彼の体を紅蓮に染め上げる。

「真名開放ッ!」

―――その炎は獄炎のような恐ろしさではなく、人々の描いた幸村という願いを形どったかのような清廉で熱く燃え盛る猛々しい不沈の焔であった。まるで、真田幸村という創作でしかなかった伝承がそのまま自身の存在の証明として顕現した。

まさに、戦場に勝利を穿つ烈火の武士である。

「――― 鬼神合一・火炎車!」

これこそ幸村の宝具である。無辜の怪物により、存在が歪められたことで獲得に至った。真田幸村という存在を描いた人々によって願い、形作られた自分という存在の発露と終着点が彼の宝具である。無論、これを受ければサーヴァントは一撃で粉みじんになる。回避も可能であろうが、距離の関係上近すぎてできない。アサシンであれば最低限の動きと持ち前の速度で、直撃は避けられるだろうが、どれだけ最良で見積もっても致命傷を免れない。

「―――ふぅ……」

アサシンは軽く息を吐き、瞑目しほどなく開眼。

心を静めながら、眼前の獄炎を直視し、彼女は迎え撃つ姿勢を変えず、じっと彼を見据える。

ランサーは存在が不確かも、その実力は計り知れない。

ランサーとの実力差はステータス、技、宝具どれをとってもアサシンが勝る部分がほとんどないと素人目にもわかるほどの圧倒的だ。加えて、彼には防御強化の術が施され刃を身に届かせることすら怪しかった。

だが、そんな彼女にも唯一、英雄真田幸村に勝てる見込みがある方法がある。すべて劣ったとしても自分を単なる人斬りと下卑されたとしても、それだけは勝てる自信がある。

アサシンは切っ先をランサーの胸に狙いを定める。しかし彼の一撃がアサシンの懐を抉るまで僅かな時間しかない。だがそれでもアサシンにとっては十分すぎる時間だった。

 

―――踏み出す足は左、踏み込む距離は一歩。

 

彼女は最小限の動きを持って業火を纏う仇敵に刃を突き出し、幸村の決死の一撃を迎い打つ。

両者の交錯は一瞬、宝具を纏ったランサーの突撃は彼女をかすめた後に停止し、アサシンは刃を突き出した状態で動かない。サーヴァントの眼をもってしても何が起きたのか把握できな程短く静かだった。どちらが勝ったのか、外野の小太郎とインフェルノは両者の動きを注意深く見た。

一撃同士の交わりの数秒が永遠と感じていた時……

「ぶッ……」

アサシンは吐血し、刀を杖の代わりにしてやっとのことで姿勢を保った。

「残念です、まさかこれほどとは……」

アサシンが振り向くと、そこには心臓のあった部分に風穴をあけられ消滅しかけた幸村がいた。

「キャスターのギフトごと私を貫いたのか? いや、失敬。そうでもしないと私は殺せませんからね……」

「で、どうする? ……戦闘続行スキルがあるんだろ?」

アサシンは深刻なダメージでガタガタ震える体を起こして、血を滴らせながらもランサーを睨め付けた。

「ああ、だがそこでお前を倒したところで、控えている二人を倒す前に自壊する。それに最後に聞きたいこともある」

「なんだ?」

「お前は悲しくないのか? 私たちの願いは知っているはずだ。だったら賛同してもいいはずだ。それなのにどうして、お前はそれを捨てられる?」

アサシンはランサーから視線をそらしたが、アサシンは一息ついて真っ直ぐにランサーに目を向けた。

「それは、それが皆の願いだからだ。一連の事態はお前たちが原因だ。すべてたった一人のためでも、それが本人の願いであるとは限らない。私はその人に『正してほしい』と託された。だからお前たちの前に立った。それだけだ」

「なるほど、お前も結局は私たちと同じだったわけだ…… 先に聞くといい、アサシン。お前ならあの扉も両断できよう」

ランサーの形が消える。光の粒となって消えゆく体を哀の感情を浮かべながら……

「そうだ。これを持って行け」

ランサーはアサシンに一本の小刀を投げ、アサシンは受け取る。

朱色の漆塗りで細工の凝った業物だ。

「私はな、心の奥では今でも迷っていた。主の正しさは、私の正しさと同義なのかと思えなかった。だから私は天運に身を委ねた。いつか全力で戦っていれば、正しい結末にたどり着けるだろうと見切り発車して……」

「らしくないな、ディルムットと同じタイプの生真面目なお前が」

「だから負けたのかもな。だが最後の結末までは見てみたい」

「分かった、これは大切にしよう」

「無論だ。これは命よりも大切な、私の存在した意味そのものなのだから……」

その言葉を最後にランサーは消滅した。

その直後、アサシンは倒れた。霊核は損傷してないがそれ以外の場所が半壊しているためだ。ぶっちゃけ立てていることがおかしい。

「大丈夫ですか?」

小太郎たちがアサシンに応急処置を行った。

(閑話休題)

 ライダーを下したスカサハが合流した。アサシンの傷はスカサハのルーンで回復を促し、一旦の休憩を挟んだ。その中で話題になったのは、自分たちの行き先を阻む扉だった。

「おお、これはかなり重厚だね」

「重厚というのなら私の宝具でどうにかなりますか?」

「いや、インフェルノの宝具でどうにかなる代物ではない。この場合の重厚さというのは『神秘の高さ』の事さ。この壁は神性が宿っている。それも『この壁以下の神秘を無力化する』効果を持っている。これを破壊するためには『これ以上の神秘で破壊する』もしくは『神秘を纏っていない一撃で破壊する』の二択しかない。魔力を伴わない純粋な破壊力だね。でもそう簡単には壊せない。この壁自体、核シェルターのレベルをはるかに超える強度を持っているから、破壊は困難だろうね。無論、これ以外の壁も床もすべて同様の作りになっているから迂回も不可能だ」

「ではどうやって…… スカサハの神殺しの力ではどうですか?」

「難しいな。破壊出来ても私の魔力の方が尽きるレベルだ。これをするくらいならチクチク壁を削った方が楽だ」

皆が悩んでいるとアサシンが前に躍り出た。

「……どけ、任せろ」と一言だけ言って扉に向け刀を突き立てた。

その瞬間に起きた光景に皆、目を疑った。

アサシンの一刀が、扉を貫いた。そのまま横に薙ぎると扉は水平に真っ二つに倒れ、先の通路が顔を出した。

「ウソ……」

ダ・ヴィンチちゃんを含め、ほとんどが絶句した。スカサハは「このくらいはできるだろう」と涼しい顔をしている。

「どうした? 先に行かないのか?」

絶句した皆をしり目にスカサハとアサシンは先に進んだ。一拍遅れて小太郎たちも先に向かった。

 

門を抜けた先は通路だった。真っ白な内装に飾りっ気のない廊下だ。だがサーヴァントたちは足を止めた。

「この魔力量は……」

ダ・ヴィンチちゃんからの連絡が入る。

『うん、計測してみたが、おそらく神代レベルを超える濃度だね。感受性の豊かな人でなくても死ぬくらいには濃い。サーヴァントでなければ通れない』

「そうか、なら問題ない」

アサシンは躊躇なく踏み出した。小太郎が罠があるかもしれないと止めに入ったが、アサシンは無視して先に進んだ。サーヴァントたちもそれに追従する。

『そろそろ全てを聞かせてもらってもいい頃じゃないのか?この廊下の先は長い、時間潰しに聞かせてはくれないか?先ほどの対人魔剣を含めてね』

アサシンは目を細めてダ・ヴィンチちゃんを睨んだが、程なくため息して……

「私はお前を信頼していない。マスターに属する者としての敬意はあるが、お前を信頼するほど私は人ができていない」

「それは残念だ。なら勝手に答え合わせさせてもらうよ……」

ダ・ヴィンチちゃんは朗々と語り始めた。

「君は抑止力のサーヴァントなのは、この事象とくに敵側のサーヴァントと繋がりが深く、彼らに対してのカウンターになる力を持っていたからだ。そのカウンターというのが、君の対人魔剣の力だね」

「ーーーーーー」

「でも君の魔剣は神性に対する特効を持つわけじゃない。それよりももっと埒外な……殺人に特化した魔剣だ。生前、相当な修羅場をくぐったと見える」

「ーーーダ・ヴィンチ殿……そのアサシンの目が……」

「おっと、気に障ったか?でも実際そうなのだろ?」

ダ・ヴィンチちゃんの歯に着せぬ言い方に、アサシンは歩を早めた。無言の反発だった。

「ホームズの真似事はするべきじゃないか。だがまぁ一応、あのサーヴァントは無害そうだから信用してもいいと思うよ」

「だといいのですが……」

永遠と続く階段を歩き続ける。次第に濃くなる魔力の流れを最奥から感じながらアサシンたちは先を見つめた。

歩き続けてから数十分。階段の先に光が見えた。

自然とアサシンの足が速くなる。ほかのサーヴァントも連れられて下っていく。小太郎はアサシンの傷を心配していたが、彼女の顔色は相変わらず険しいが傷は完治したようだ。出血で腹を抑えていた手は今ではぶらりと下ろしている。この調子であればほぼ万全な状態で戦いに臨める。

光が大きくなる。感じたことのない巨大な魔力の突風が肌に当たり、精神的に押し潰されそうな魔力が吹き荒れるなかを一歩一歩下っていく。

 

ーーーそして、視界がひらけた。

 

そこにあったのは、ドームだった。

今自分たちはそのドームの縁に備え付けられた階段にいた。

眼下には見慣れた少年の姿が一際大きい、古代遺跡の様相のある祭壇に供えられていた。祭壇の四方に松明が置かれ、傍に身の丈以上もある羽織を着た青年が呟くように術を施している。

あの若者はサーヴァントだ。

アサシンが刀を抜く。臨戦態勢をとるカルデア側に対して、若者は振り向くことなく告げた。

「降りてくるといい。手出しはしない。君たちがマスターこと私を倒したいのであるのなら、構わないがね」

アサシンは階段を下った。他のサーヴァントは様子を見る。

「キャスター。やっと会えた」

「あー、その声はアサシンか?まさかこんな世界の最果てで相見えるなんて、君は相当に不幸のようだ」

「言ってろ、キャスター。お前には山ほど言いたいことがあるが、それではラチがあかない。だから簡潔に言うぞ。さっさとこの茶番劇を閉幕しろ。観客もすでに飽き飽きしている。貴様は今すぐ劇場の戸を開け。そしてマスターを解放して全てを終わらせろ」

「終わらせる?観客は飽き飽きしている?戯言は寝て言え。寛大で器の大きな朕でも、うっかり羽虫を消してしまう粗相をして醜態を晒すのは好かん」

「その羽虫というのは、私のことか?」

「知らん。貴様がそう思うのであれば、そうなのだろうな?」

「なんだ顔見知りのよしみで挑発は程々にしてやろうかと思ったが、よほど死にたいらしい」

「アサシン風情がいい気になるなよ。気配遮断というアドバンテージもない貴様に勝利する可能性は一分たりともない」

ここでキャスターはアサシン以外のサーヴァントに目を向けた。

「カルデアのサーヴァントよ、私の顔見知りが失礼をした。コイツは礼儀も知らない愚か者だからな」

と言ってキャスターは一礼した。

「ようこそ、朕が城へ。朕が真名は、中華大陸初の皇帝、始皇帝と申します。以後、お見知り置きを」

 

―――始皇帝

 

これを聞いて最初に浮かぶのは、中国の最初の皇帝であるという偉業であろう。他にも傍若無人の語源にもなった暗殺者荊軻の標的になったり、万里の長城を整備したりと数々の逸話がある皇帝だ。

『始皇帝?なぜ、そのような人が、マスターを?』

「それには深い理由があるのですよ、ダ・ヴィンチ女史」

『っ!!』

「まずはその疑問から解くとしよう。そもそもここはどこなかのかというと、日本の首都東京だ。今はというと戦いやら魔術の施工のためにもう色々とグチャグチャになっているから、その面影はほとんどなくなってしまった。付け加えて、ここは君たちの東京ではない。東京という下地を使って作った特異点、私たちは『高天ヶ原』と呼称しているがね」

『高天ヶ原』とは日本という島国が作られるまえに天上に存在したとされる土地である。天岩戸の件舞台であり、天照大御神などの天津神が住んでいるとされている。

「賢いダ・ヴィンチ女史に加えて名探偵殿がおられるのであれば、わかるはずだ。ここがどうして『高天ヶ原』なのか?なぜ、朕がマスターを求めたのか?」

『まさか、いや、それを本気でやろうとしているのか!』

ダ・ヴィンチちゃんから嬉の感情が消えた。そして彼、始皇帝の狂気を理解できてしまった。

「ダ・ヴィンチちゃんどういうことですか?始皇帝は何をしようとしているんですか?」

画面外からマシュの声に皇帝はニヤリと笑う。

「その声はシールダーだね。安心して欲しい。儀式が終わればマスターを傷一つなく返そう。元から朕はマスターを殺すつもりはない。まぁ、致命傷ではないが傷だらけにしてしまったのは謝罪しよう」

「え?ええ?先輩を返してくれるんですか?」

「ああ。朕は皇帝だ。嘘はつかない。この儀式が終われば、私は退去するつもりだし、この特異点も消滅させる」

「な、なら、どうしてサーヴァントを使ってここを守っているんですか?」

「それはね、マシュ……。この世は残酷だからさ。私の抱いた願いはただ一つ。一人を救うことだ。聖杯探索で得た絆を無にしないために、結果を残して明日への道を得るために、私はここにいるんだ」

「なるほど。抑止力へのカウンターということか?」

「ホームズさん。カウンターって?抑止力ってどういうことですか?」

「要するに、彼がやろうとしているのは抑止力が働く案件であり、あのサーヴァントたちはそれを抑止するための存在ということだ」

「そうさ、名探偵。私は抑止力から守らなくてはならないのさ。彼を、このマスターを」

と言って始皇帝は手を叩く。

それは術の始まりを意味しているかに見えたが全く違う。

空中に描かられた術式が圧縮された空気が開放され、まるでプラネタリウムのように天蓋を光の粒が覆った。粒一つ一つが術式の機転であり、粒の形も四角、三角、円、帯など魔術系統が違うモノもごちゃ混ぜにした複合式が幾重にも連結する。

「これは……まさか脳細胞か?」

「ほう、ダ・ヴィンチ女史、君にはわかるか? そうさ、この術は朕の作った【脳細胞】を参考にした自己増殖、自己発展の術式さ。必要なのは時間とそれを管理する頭脳だけ。術式の構築は術式そのものがする、成長する魔術と言えばわかるだろう」

「成長する術式! そんなものが?」

「ああ、スーパーコンピューターを参考にしたものだ。だが知性はない。この術がやっているのは朕の紡いだ術の最適化と進化だけだ」

「だとしても、この術式を回すだけの魔力はいったいどこから仕入れている!」

「世界すべてからさ。この世界のすべて、全ての山、全ての海、全ての陸からあぶれだす魔力をここに貯蔵したのさ。今でも魔力は増大し続けているのは、それが理由だ」

「世界すべてだと?」

「ああ、世界すべてさ。そうだよな、アサシン」

「私に言わせたいのか、始皇帝?」

「いや、ただ、真実を言っていないのが不思議だったのさ。そうかなら、いいネタバラシだ。貴様たちに教えてやろう。この特異点の正体を……」

始皇帝は不敵な笑みを浮かべながら言った。その一言に戦慄するであろうという確信を持った。姑息な笑みだ。

 

―――ここは平行世界、人理の崩壊が達成された世界だ。

 




ふう、何とかできた。
最後まで見た人ならわかりますが、つまりそういうことですよ、キャラがね、許してください。
あと……リアル事情。
では気を取り直して設定を公開します。
図書館のランサー 真田幸村
身長179センチ マスターにより変化
体重72キロ マスターにより変化
好きなもの なし
嫌いなもの なし
属性 マスターにより変化
「クラス、ランサー。真田幸村。戦士として必ずやその身に勝利を収めて見せましょう」
日本で最も有名な武将の一人。本名、真田信繁。
大阪夏の陣、冬の陣で武勇を振るい、徳川家康の本陣を破壊するという功績を残して散った知将にして日の本一の兵。
ではなく、彼は創作物の中で存在する信繁の擬似人格を有した真田幸村である。幸村が英霊たるのは真田幸村という存在の抜群の知名度、創作物における彼の活躍に加え「信繁」だけでなく「幸村」が英雄として人々に認知されているために「物語中の英雄」として昇華した。このため彼は正規の英霊ではなく、能力はかなり低いがそれを知名度補正で補っている。マスターが正しいと思う道に進む限り彼は付き随い、悩みがあるというなら彼は最大限に答えを出すために悩んでくれるだろう。
 彼は、自身の人格が揺らいでいることに悩みを抱えている。彼は正規の英雄ではなく、人々の作り出した幻想の集合体であるが故に、自己のアイデンティティを持っていない。加えて召喚されるたびに、その時代背景や召喚者の想像などによって人格が都合よく変わってしまう。つまり、消滅とは自分の人格の消滅を意味する。
 これを逆手にとれば、自分と相性のよい「真田幸村」を引き当てられるが、彼からしてみれば毎回召喚される度に、自分ではない誰かの人格とその記憶を有し、記憶のなかで巻き起こる人々のあらゆる記憶の潮流を気持ち悪さを感じていた。
聖杯かける願いは「自分の人格の固定化」

物語中では、ちょい役……門番だからね、しょうがないね。
 キャスターの計画には賛同していたが、キャスターの考え方にわずかな迷いを持ち、ステータスの強化や切り札の威力に不安点があったため、キャスターの強化を与えられていた。(門番だからという理由もある)
しかも強みは全部メタられていたもんね……で、でも彼の能力は実際最強格で、タイマンならスペック上、神話級のサーヴァントともやり合えからね。


ステータス
英霊としては弱い方ではあるが抜群の知名度による補正を受けているためそれなりの数値に落ち着いている。武器は槍と刀を併用する。技術は人々の想像の産物であるがゆえに他を凌駕する。
筋力C 耐久D 敏捷B 魔力E 幸運E 宝具C

スキル
騎乗C

対魔力E

戦闘続行B

突破戦術 B
いかなる不利であろうとも全てを受け入れ、策略を巡らして不利を打開する能力。彼は知将であり、武人であることもあって数値は高い。

創造の外殻 EX
人々と理想とイメージが組み合わさることで、自身に大きく影響を及ぼされた者がもつスキル。無辜の怪物の亜種。彼の場合は存在そのものが創られているので規格外判定を得ている。元になった人物の武術などの経験を対象者が得られる。規格外ともなれば、複数の人格の記憶が意識混濁を作り出し自分ではない誰かの記憶に感情移入しているような気持ち悪さを感じさせてしまう。そのせいか記憶によっては性格や身の周りの人々の顔がコロコロ変化し、断片的でも混乱する。


宝具
『我日本一の兵士なり』 ランクEX 対人宝具
日本と書いてヒノモトと読む。
常時発動型で、効果は自身のステータスの上昇だが、自身が日本にいることを条件に「対峙した敵よりも必ず有利かつ高位のステータスを得られる」効果が付加される。つまり、日本にいる限り幸村は例えどんなサーヴァントと対峙しても不利になることはない。相手がキャスターならば対魔力がある程度強化され、バーサーカーならば全ステータスがバーサーカーのステータスを確実に上回る。しかしもとよりステータスが似通っているサーヴァントに対しては意味がない、技量の差は埋められない、強化数値が高いほど、燃費が悪くなる。などマスターからしてみれば、暴力的に魔力を奪いながら戦う魔力食いのようなものだ。

『鬼気合一 火焔車』ランクC 対人~対軍宝具
真田幸村の創作物や伝説での武勇が昇華したもの。この宝具は不退転の決意が強ければ強いほど、敵が強大であればより力を発する。宝具発動と同時に幸村の周りに火焔が取り巻き、馬などで疾走する突撃系の宝具。弱点は心の迷いがあれば威力が低下してしまう。「突破戦術」と組み合わせることで無類の強さを持つ。



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