Epic_of_Remnant another 完全臨界特区 高天ヶ原(Fate/Grand Order)   作:RUM

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さて、佳境も佳境、勢いだけをモチベーションだけで書き続けてやる。


fate /grand order 完全臨界特区 高天ヶ原 第九章

ゲーティアの事件が解決されてから数か月の世界。国連や魔術組織がカルデアに介入をし始めたころ。とある事件が起きた。

 カルデアの資源の一部が外部に流出した。

国連などの組織がカルデアの資源を「解析」という名目のもとに外に流れた結果、それを利用して新しいものがつくられることとなった。それは「疑似聖杯」と呼ばれる。聖杯の偽物である。万能の願望器でもなければ特異点の原因でもない。ただの膨大な魔力の貯蔵庫であり、それだけの性能を追求しただけの品物だった。だがそれだけに用途は様々だった。特に兵器転用の速度は異常だった。国連理事国に一つずつ渡された聖杯は兵器となり、破壊力を肥大化させた聖杯はもはや聖杯爆弾というものとなった。これにより兵器転用できる聖杯を大量に保有していたカルデアは脅威となって即座に解体された。

 藤丸立夏は「最重対象」として国連に就職という名の「監視」をされる立場となった。カルデアという防衛組織がなくなったことで、人理編纂を乗り切ることができなくなった世界は漂白されることとなり敗北した。

「皇帝陛下……いままでありがとう」

皇帝は点滴や機械が所狭しと並べられた病室のベッドに寝転んでいる主人の手を握る。主人は体が傷だらけで包帯だらけにされており血が滲んで、時折顔を歪ませながら唸っていた。数々の戦いを切り抜けたその体は誰から見ても既に限界を迎えていた。年頃の人間が、平和に過ごせるはずだった人間が「最終戦争」に挑みながら、傷つき、涙を流し、救えなかった民衆の事を他人に罵られながらも立ち上がり続けた世界の救済者は、今はもう動けずにいた。

「痛み止めが切れたようですね、看護師に投与を頼んできます」

皇帝は一礼して病室を出る。

「泣いてもいいんだぞ」

帯刀した女性が廊下の壁にもたれている。

「泣けわけがないだろ、アサシン。お前如きが私の涙を見る権利があるとでも?」

「それだけ気丈に振る舞えるのであるのなら問題ないな」

皇帝は暗殺者に踵を向けた。

「これで終わらせるものか…… 世界が救えないのなら、マスターだけでも救って見せる」

それから皇帝は儀式を始めた。

 

―――とまあ、こういうわけだ。

「世界は滅びを迎え、選定されるだけの未来が待っていた。マスターはボロボロで満足に生きることもできないし、カルデアという組織はもうこの世にない。だが幸運だったのは解体の後でも緊急事態ということでサーヴァントの召喚を一時的に許可されていたことと、朕という絶対的な存在が小癪にも地べたを這ってまでも、この世界の維持を続けるだけの力を蓄えていたということだ。漂白され、世界が消滅する際に世界の消滅から守る設備を作り上げ、この『

高天原』を拠点とした。ざっくりとした説明だが理解できたかな?」

「じゃあ、新宿を囲っていたあのバレルのような建物は……」

「あれは悪のカリスマがデザインした長城さ。世界が消滅する際に発生する魔力リソースを利用して、存在強度を維持することで、この「新宿しかない世界」を守っている。あれが破壊されるもしくは劣化してしまうと、この世界はいともたやすく消えてなくなる。だが、そこにサーヴァントは入れない。入ることができるのは朕が許可した存在だけだ」

「まて、そんなバカげたこと世界というシステムが許さないはずだ。この世界が維持できるとは到底思えない……」

「だができた。朕の編み出した独自体系の魔術『封禅』は神の威光を経由して発動させる術だ。世界の理との凌ぎあいなら有利とまではいかなくとも拮抗させることならできる。これが朕の能力だ」

「まさか、ここまでデタラメなんて……」

「デタラメか…… 私一人仕留められないお前がよく言えたものだ」

「ランサーか? あれは迷いがあった。門番としては百点だが、従者としては及第点だが、そこまで良くはなかった。だが、それでもよかった。最悪時間さえ稼げればよかった」

アサシンは階段を下りた。アサシンから祭壇までの距離は約200メートル。

「結局、貴様と朕の意思は交わらないというわけか?」

「いつからお前は私と同じ立場だと思っていたんだ?」

「カルデアが解体され、我ら数騎が研究用として残された時からだ。貴様は我らと心を同じくする同士だった。如何なる時もマスターを守り、マスターの笑顔に支えられてきたのではないのか?」

「無論だ。貴様はマスターを、藤丸立香を本気で守ろうとしていた。だが私が本当に守りたかったのは、あいつの意思だ。生前の私は無様にも生き残った。生き残ることで、あいつらを裏切ったのだと思っていた。だがそれは違うとあの日々で気付かされた。私が生き残ったのではない、あいつらの方が私を生かした。降伏してでも次の世代を産む私に意思を託した。歴史に埋もれた烈士の意思を後世に残すために………私の正義とは、藤丸立香を生き残らせることではない。人の死は避けられない。避けることのできない真理だ。それを捻じ曲げることも、もう一つの世界の同一存在を排除して成り代わられても変わらない。お前はお前のエゴに取り憑かれている。藤丸立香は生を全うした。アイツは…………あとを頼むと後世に、汎人類に全てを託すために」

忘れるものか。女の藤丸立香が死ぬ直前に私に言った言葉を。

 

―――私はここまでだから、残りは託そうと思う。呪いのような言葉だけど、言うね。並行世界の私に会ったら、その目的に協力して。私の意思はあなたに託したよ………

 

「全くひどく優しい呪詛だ。残酷すぎるほどに真っ白な呪いなど聞いたこともなかったが、なるほど。存外に心地よいものだ」

アサシンの身体から光が発せられる。魔力の渦に身を包みながら脈動するアサシンのスーツは瞬時に解かれ、着物に変わっていく。青いダンダラ模様の羽織、履き慣れた草履、ポニーテールはリボンにまとめられ、長く白いハチマキが彼女の真名を物語っていた。

「あれ、は……」

霊基再臨いや、真名を開放した。抑えていた魔力が溢れ、姿を変えるほどの力があった。魔力源はマスターだけではない。世界の守護者としての力が彼女に皇帝を打ち倒す真理を授けた。

「私の真名を今こそ、告げよう」

 

―――真名、斎藤一。新撰組最優の武士、斎藤一の影法師が、私の真名だ。

 

斎藤一という名前は所謂、コンビ名というものだ。本来の斎藤一は二人存在した。一人は知を、一人は武を司り、要所でその存在を使い分けた。その一方が彼女である。

本来は無名の少女だった彼女は、侍として世界を変える希望を持ち、武士ではないのに武を学んだ。女性が武を学ぶというのは昔の時代でも少なからずあったが、それはあくまで例外にすぎない。一般の百姓の小娘が武士になろうとするなど、この時代ではありえない。下手をすれば打ち首もあり得る所業だった。

それでも日本を変えるという夢だけを抱えた少女は新撰組の戸を叩いた。それから武術を叩き込まれるうちにメキメキと実力を高めた彼女は一人の男に目をつけられた。彼は武には秀でなかったものの、知には秀でていた。対して少女は武には秀でていたが知には秀でていなかった。故に二人は協力することになった。二人で一人、お互いに欠けた部分を補い合う存在として乱世を駆け抜けることで日本を変えようとした。

「息巻いたはいいが、結果はあの通り、何も変えられることなく歴史の荒波に沈んだ。でも、あの時、あの時間にたしかに私の足跡はあった。私がいたという証明がある。だから、世界を変えられなくても……」

共に歩んだ者たちに恥じない生き方をしたい。何も変えられなかった自分でも、何か役に立てることがあったのなら……

「と思ってカルデアに召喚されてから、私とマスターはずっと世界を旅していた。始皇帝、お前も傍らに添えながらな」

「あー、あの時はマスターと共に世界を救うことに邁進していた。あの一時はずっとこの記憶のなかにあってほしいと思った」

「だがお前はそれ以上を望んだ。世界が剪定されて消滅するとわかっても、マスターの命が尽きたとしてもお前は彼女との日々を思い描き続け、停滞している」

「なんだ、言いたいのはその程度のことか?いいか、暗殺者。マスターはゲーティアから世界を救った。報酬もなく与えられる歓声は一つとしてない。マスターはそれでもよかったのだろう。だが朕は許さん。きっとマスターはこれを望んではいないのかも知れないが、それでも……朕はもう一度……マスターと世界を歩んでみたいのだ!エゴと罵るがいい!だがそれでもこれだけ美しい人をみすみす消滅させることはさせん!」

その一言を皮切りに皇帝の上空、寝かされた藤丸立香の真上に光体が現れた。そこに眼を凝らすと薄っすらだが、人の姿が見えた。

「マ、マスター!なぜ!きえたのではないのか!」

「いや、消えてはない。生命維持はこの世界が果てる瞬間まで続けていた。お前が退去してからずっとだ。そして、私はキャスターだぞ?人を蘇生させる術など数十は思いつく朕に、生命維持など容易きことよ」

「………そこまでしてか?」

「ああ、そうだ。あとは男のマスターの肉体情報を彼女に移植するだけだ。そうすればマスターは蘇る」

「だが男の方はどうなんだ!お前の言い分が正しいのなら、アイツは……消滅するんだぞ!」

「そうさ。この世界のマスターをあっちの世界のマスターと融合させて、置き換える。そうすればいかに世界の修正力でも抑えられまい」

「でもそもそも成功するとは限らない。失敗すれば両方とも死ぬことだって」

「いい知見だ、ダ・ヴィンチ女史。しかし問題ない。そのためのこの術である。世界が消滅する際に発生した無尽蔵の魔力を使い。第三魔法の更なる先をここに作り上げる!前人未到の極地。根源よりも深き深淵の先にある秘術を私は成し遂げてみせる!」

「いくらなんでも危険すぎる!この魔力であれだけの規模の魔術を起動させたら、この空間も持つかわからないし、そもそも魔力の制御が少しでも狂えば、この特異点というか並行世界の欠片ごと吹き飛ぶぞ!みんな、あの皇帝を止めるんだ!」

カルデアのサーヴァントたちが一斉に始皇帝に襲いかかる。

斎藤一は一息はいて平晴眼の構えを取った。

「私がさせない。終ぞ世界を救えなかった敗者だが、かつての仲間が無謀をするというのであるのなら……これ以上の勝手は許さん」

「止めたいのならかかってくるがいい、歴史の敗者よ、カルデアの者共よ!」

「新撰組三番隊隊長、斎藤一!押して参る!」

 

決戦場に爆音が響き渡る。祭壇には術式が全くことなる数十の透明な障壁により防御され、内側に入ることができなかった。かといって外側にいるのなら、空間に描かれた術式から放たれる光弾の雨にさらされる。

サーヴァントであれば光弾は弾けるが、連射速度が桁違いだった。小太郎は術を組む隙ができず、インフェルノは弓を射れずに刀で防戦し、スカサハは防御のなかに攻撃を交えるがことごとく障壁に吹き飛ばされる。

「ハァッ!」

そのなかでもアサシンは防御を固めるしか動作が取れないように入念に攻撃が加えられていた。絨毯爆撃のごとき光弾のなかをアサシンは持ち前の瞬足で翻弄するが一歩のところで攻撃に転じられない。

「アサシン、朕の封禅陣は神性を有している。故にスカサハを警戒していると思ったのだろうが、甘かったな。スカサハの神殺しなど朕の防壁の前では意味をなさない。この防壁はそもそも、そのようなサーヴァントのために編み上げたものだ。あらゆる攻撃は朕の防壁により防がれる。故に警戒すべきは貴様の魔剣のみだ!」

「くそッ……」

高い神性がなければ破壊されない扉を貫いた斎藤一の魔剣を皇帝は見逃さなかった。自分の防壁を貫くとしたら彼女の魔剣がもっとも可能性が高いと算段をつけ、光弾で封じ込めた。

「縮地ならここは突破できよう。しかしそれは貴様の命も終わると心得ろ!」

「舐めるな!」

光弾乱れる戦場を縦横無尽に駆け巡るアサシンだが光弾を避けるだけで精一杯であった。刀で弾いても受け流しても近づくことは至難の業である。

上空に展開する術式は五基。その一つでも落とせるのなら、突破の可能性ができる。だが攻撃に転じられるのはスカサハのみ。彼女も術式を狙ってはいるが、近くほど容赦のない攻撃が襲い、後ろに押されてしまう。

トップサーヴァントの一人であるスカサハでも突破しきれないこのなかをくぐり抜けるなどできようはずもなかった。

二人の藤丸の融合の儀式が刻一刻と迫っていた。

 

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