桐生水守
『昊陵学園』
東京湾北部、懸垂型モノレールでのみ立ち入ることの出来る埋め立て地に存在する。周囲を巨大な石壁に覆われ、そのサイズに見合った門が唯一の入口となっていて、敷地の中央には学外からも臨むことの出来る時計塔がそびえ立っていた。
校舎や学生寮など内部の建造物は馴染みのない西欧風で、学校と言われると少々違和感を覚えてしまう。無論、内装も同様であり、まるで洋館を思わせる内装の廊下をポケットに手を突っ込んで堂々と真ん中を歩く。
周りには誰一人いない。本来なら声など聞こえて来るであろう校舎には自分以外......二年生や三年生たちが居るだろうが、今ここに自分一人だけと思えるほど静かであった。
それもそうだろう。自分のパートナーであった彼をぶっ飛ばしたのだが、それが試験合格者第一号と言った所なのだろう。事実、自分達が一番最初に始めたと言っても過言では無い。
これって主席というヤツではないだろうか? そうなると面倒だと思う。まさか、主席だから挨拶や委員長などしないといけない制度等があったらやる気なんて起きない。
というか、山田ァッ!(仮名) お前弱すぎだろ!?
本来であればそのまま山田(仮名)の『
意外と自分は煽り耐性が低いらしい。うーん、でも生まれ変わる前の自分とはこんなにも荒々しい性格してたっけ? 薄れて殆ど覚え出せないが、どこかそれなりの大学に入っていた記憶があるのだが......ああ、そうそう、医大だ。
スラムにいたとき、やけに何が危険な物で何が良くない物なのか理解していたが、今思えば大体人体に影響ある物ばかりに反応していた気がする。
それに、どこをどう曲げたらキレイに骨が折れるのか、もしくは外すことが出来るのか。どこに衝撃を与えたら内臓にダメージが入りやすいか。人体構造について自分はとても詳しかった。
なるほど、なんで今ごろ思い出したのか分からんがこの際どうでもいい。多分、今の所周りを警戒する必要が無くなって頭の方に気を回す事が出来るようになったからであろう。あっちだといつ銃弾やら剣やら飛んで来るか分からんからな。
そうそう、剣とかでまた思い出したが。
スラムで襲ってきたやけに統率がとれていた制服集団ってここの卒業生やん。見覚えあるなぁ、って思ってたけどそりゃ連日見てれば嫌でも覚えるよね。普通の金属とかで出来た武器とは明らかに違うからな『
最初は警察じゃあもうどうにも出来ないから出しゃばって来たんだと思うけど、その先行部隊が返り討ちになったから驚いたんだろうね。それから、まあ来るわ来るわ。そのうち、じょうじじょうじ、とか言いながら来そうな勢いだったわ。
でも、『
今更、後悔をしつつ沈んだ気持ちで長い廊下を進んでいく。
「っと、ここか」
目的地である教室の前を通り過ぎそうになっていた。開けば当たり前だが教室には誰もいやしない。そろそろ耳鳴りがしそうなほど静かだった。
室内に並んだ机は一人一人というわけではなく、二人分の机をくっ付けた横幅が広い物が均等に並んでいた。黒板や掲示板とかを見たが特に指定されているわけでもなさそうなので、一番後ろの窓際に陣取った。
誰もいない、喧騒も聞こえない。
「......なんかめっちゃ虚しい」
これが
「......寝よ」
こんな惨めな思いをするのも朔夜のせいだ。あの鬼畜ロリめ。こうまでして俺を虐めたいか。そんなの隣にいる眼鏡にしろよ。
まあいい。それより、これからどうしようか......。
これほど原作知識というのが役に立たない転生者というのは俺ぐらいじゃないか? と思えるほど、この先どういったことが起きるか分からない。
うん、まあ、どうにかなるでしょう。
卍
とても高い声、こう......きゃぴきゃぴした声というか。何とも耳に来る声のせいで微睡みの中にあった意識がゆっくりと戻ってくる。伏せていた頭を上げると目の前には、うさ耳をつけた女性の顔が視界いっぱいに覆われる。
「......あ?」
「キミキミ、初日から居眠りとはいい度胸だね~。校庭十周する?」
いまいち、状況が呑み込めてないがここは学校であるため、もう授業が始まっているのかも知れない。つまり、ここは普通に謝っていたほうがいいだろう。
「......すんません」
自分が素直に謝ると何人かの生徒が「普通に謝った」「謝ったぞ」と珍しい物でも見るような驚きを挙げている。
なんだ、お前等そんな顔をして。こんな見た目で謝ったらそんな珍しいか。目の前の女性の視線から逃れようと横を見ると、こちらと目が合う見知った顔の男子とその男子を見つめる銀髪美少女。
......チッ、初日からイチャイチャしやがって。これだからリア充は。
「なんで舌打ちされたんだ......?」
「お前が怨みでも買うようなことをしたんじゃないか?」
「してねぇよ!?」
違うぞ、前のちっこい男子よ。別にリア充が居るのは構わん。ただ、それをあからさまに見せつけて来るヤツが気に入らないだけだ。つまり、俺に限らず怨みを買っているのさ、
しっかりと自分が起きた事を確認した女性は自分の席から離れていく。
「むぅ、本当は誠心誠意を込めて謝って欲しかったけど、今回は特別に見逃してあげよう。月見先生に感謝するんだぞっ♪」
なんだこの先生、チョーうぜぇ。周りを見れば、皆も何とも言えない表情をしている。
「さてさて、自己紹介で残ってるのはキミだけだよ? 時間が押してるから早くしてね~」
あぁ、なるほど自己紹介をしていたのか。それは悪いことをしたな。
「......
皆の視線が刺さりつつも腰を下ろす。趣味は無い訳じゃないが言わない方がいいだろう。喧嘩売って来たヤツの金目の物を漁る趣味なんて。多分、趣味になるだろう。うん、小物集めみたいな感覚でやってたし。
「キミだね~、一番早く試験に合格した子って。『
え? 悪い意味ってどいうこと? もしかして山田(仮名)を殴ったのはまずかったか? やっぱあの時、朔夜が『
「うんうん。自己紹介も終わった事だし早速この学校の事を説明するねっ♪」
前から生徒手帳と学生証、そして寮のしおりが配られた。前の女子よ、そんなにビクビクしないでいいから。何もしないから、睨んでないからっ!! 元々、こういう目なの!!
「全員に行き渡ったかな? 校則、寮則については後ほど空いた時間で各自目を通しておかないと、めっだからね♪ あと、学生証はクレジットカードとして使えるからなくさないように注意するんだよー」
マジかよ、学生証がクレジットカード替わりか。時代は進んだもんだな。しかも月々十万円とは太っ腹だな。となると、特別国家公務員と同じような制度なのか? ああ、そうか。だから卒業したら治安部隊に入隊しないといけないのか。一応、高校なんだから他にも進路とかあるだろう、と思ってたけど数年は治安部隊に勤務しないとダメってことね。まあ、そうとは言い切れんけど。
「はいはーい。気持ちは分かるけど静かにー。最後はうちのガッコの
パンパンと手を叩いて、注目を集める月見先生。......胸でけぇな。精神的にはいい歳だろうけど、やっぱり男の子やん? しかも今ちょうど青春真っ盛りやん? そりゃあ、見るって。
「うちのガッコには『
ははーん、さては俺に対するイジメだな? どうせ後で二人組作ってくださいねーとか言うんだろ? 見てみろ、俺の隣には誰一人座ってねぇじゃねぇか。誰も俺とお近づきになりたくないってことだろ? どうすんだよ、ちくしょー。どうせ、卒業後の治安部隊でチームワークが必要だからその連携を今の内からやろうってことだろよ。
「うちを卒業すると、
「......卒業後にいきなりチームで行動しろと言われても無理だろうから、学生のうちに慣れさせておく、ということですね」
「その通りっ。わかってるね、
ほれ見ろ。委員長みたいな凛とした女子が俺の思ってたことを言ったわ。分かったなら気づいて、後ろにボッチがいるから。
「さてさて、『
ほうほう、なら安心か。まあ、俺となったヤツは気の毒だが、仲良くしていこう。......自分で気の毒とか言うもんじゃないな。流石に女子とかと一緒にはならないだろうけど、不安があるなー......おい、ちょっと待て。どう考えてこのクラスの人数、奇数なんだけど? 全員で
確定じゃない? もう俺しか居なくない? ほら、見ろ! 何人か察してこっち見て来るんだけど? そんな目で俺をみるんじゃねぇ!?
「先生」
「んー? どうしたの橘さん?」
「人数的に奇数なんで誰かが一人になりますが、どうすんですか?」
おお! 流石委員長! 分かってる!!
「ああ、それならもう決まってるから大丈夫だよっ 後で
......ああ、そうかい。確定してたんだね。
「理事長ってことは、やっぱり......」
「偶然じゃないよね?」
そうだよー、偶然じゃないよー。だって戸籍無かったからねー、一時はあの眼鏡野郎って話だったんだけど、相性が悪すぎてねー。新しいの作るのも面倒だからってことで九十九家の親族ってことになんたんだよねー......入学する前まで死ぬほど実験させられたわ。あのサディスト幼女め。
「......で、本題はここからなんだよねー。実はうちのガッコって『
そうだろうな。より親密になった方が絆は深まり
てか結局どうなるんだろ。これほどパートナーと言うのを推しているのに俺は一人。朔夜には何かしら考えがあるんだろうけど全くアイツの考えている事が分からん。やっぱり、謎なんだよな......年齢も分かんねぇし。
「──するかぁああああああっっ!!」
ウェイ!? ビックリした! 何々、一体どうしたというのだ、我らが主人公。立ち上って先生に怒鳴っていると思える主人公。
「マジかよ!」
「あの子とか、いいなぁ......」
「きゃーっ、同棲よ同棲!!」
同棲......DO・U・SE・I? え? パートナーが決まるまで隣に座っているヤツと寮で相部屋なの?
「ま、待ってくれ! いくら校則だからって常識的に考えて色々と不味いだろ!」
いいのぉ、美少女と一緒の相部屋か。一度は憧れたシチュエーションだよね。
「......入学式の最中に入試、しかもリアルファイトを行う学校がマトモだと思う?」
ごもっともです。そして、この学校の理事長もマトモじゃないから覚えておくように。ありゃあバケモンだよ。
「っ! な、なら俺と九十九の相部屋じゃダメなのか!?」
その発言に注目が何故か俺に集まる。主人公にとっては最後の頼りなのか、もう目力がスゴイ。
「......先生、俺は一人部屋?」
「っ!?」
「多分、そうだよー。パートナーが決まるまでねー」
スマンな、主人公よ。これは多分原作通りにことが進んでるから、下手にいじくっちゃダメだと思うのよ。だから、そんなに圧を飛ばすんじゃねぇよ。ホモに思われるぞ。
でも一人部屋か。そりゃ、そうだよね。だって隣いないしね。もう別に一人でもいいけどさ、一つ思うんだけどよ......パートナーって絶対決まらないよね?
文字数がとても減りましたが、次からこのぐらいの文字数でいきます。とても投稿が遅れそうなので。クーガーの兄貴に怒られちまうぜ。
感想ありがとうございました。貯まってきたら後書き等で返信させてもらいます。