問題児達は異世界から来るそうですよ?~ショタは問題児に入りますか?~ 作:+無音+
目の前に広がる景色は見たこともなかった。
世界の果てを彷彿させる断崖絶壁。
眼下に広がるのは、縮尺を見間違うほど巨大な天幕に覆われた未知の都市。
前に広がる世界はーーー完全無欠の異世界だった。
ただ、場所が上空4000メートルからの落下中の眺めじゃなければ子供も感動していただろう。
今は落下の浮遊感が恐怖となり、それどころではない。
正直言って漏れそうになっている。初めての恐怖で悲鳴も出せず、意識が遠のいていく感覚。
初めての空の旅は紐無しバンジーになるとは誰も思いもしなかっただろう。
いっそこのまま気絶しよっかな?など、思っていても地面はどんどん近づいてきている。
湖があるのが見えるが叩き付けられたら打撲だけですめば儲けもの。
きっと今笑っているのだろう、恐怖で可笑しくなったか?
そんな子供と三人と一匹は、落下地点に用意してあった緩衝材のような薄い水膜を幾重も通って湖に投げ出される。
助かった?と思った矢先、冷たい水が身体を驚かせ息を吸いこんでしまう。だが吸い込んでも入ってくるのは水。息が出来ない苦しさでパニックとなり水の中でもがく。
小さな身体の為、足がつかずこのままでは溺れてしまう。
助けを求め更にもがくと、誰かに手を引かれ水の中から引き上げてくれた。
初めて泳ぐ、初めて湖を見る相手を湖に落とすとは、招待した人は鬼畜のようだ。
......それ以前に空に投げ飛ばすだろうか、普通。
「おい、大丈夫か?チビ」
「げほっげぼ!ごほっ!」
それどころではなく、咳き込み苦しがっている。
どうやら気管に入ってしまったようだ。
「その様子だと大丈夫だな」
....何処が?
息を整え、ひりひりとする喉を摩り水に濡れた患者服を絞る。だが、力が足りず殆ど絞れず諦めて放置。びしょびしょである。
患者服を絞るのに苦戦している間に、既に彼らの自己紹介が始まっていた。
その自己紹介を聞くと、学生服を着ている青年は逆捲十六夜。
お嬢様風の少女が、久遠飛鳥。
猫を抱えている少女が春日原耀。
会話からして三人、中々の問題児っぷり。
どう対応すればいいのか、解らず困惑する少年。
「そこの、白い小さな子も教えてくれるかしら?」
ついに来たしまった。
一度も他人と話したこともない、喋ったこともないのにどう答えればいいのだろうか。
子供には名はない。
過去に付けてくる人や、親が居たかもしれない。記憶に無いものはどうしようもない。
口から出るのは言葉にならないものだった。
余談だが、世の中ではこれをコミュニケーション症候群、訳してコミ症という。
「ぁ、ぇぅ......うぅ」
少年は訳もわからず、どう答えればいいのか困り果てその上、声が出ないと来て不安と焦りで眼に涙を溜めていた。あと、飛鳥の顔も少し怖いためもある。
「え、ちょっとなんで泣いちゃうの!?」
「うわっお嬢様が子供泣かせたー」
いきなり泣いてしまう少年に驚き慌てる飛鳥、それを見てふざける十六夜。
第三者からすれば、飛鳥が苛めているようにしか見えない
「ぐすっ、名前、ない......」
喉の奥から絞り出したか細い声で発言する。
喉が痛い。
長い間、ほとんど声を出したいなかった為に喉の筋力が弱っているのだろう。
最低限の動きだけしていた為、あちこちの筋肉も弱っている。
「え、名前無いの?」
「無いから名無しでいい......」
飛鳥はどう反応すらばいいのか困惑している。
そんな、飛鳥の姿を見ている十六夜は助けずクツクツと笑っている。
相当、性格はひねくれているようだ。
「......じゃぁ、七でいい」
「あ、わかったわ......」
子供――七が自分で決めたことでほっとする飛鳥。
そんな彼らを物陰から見ていた影があった。
名を黒ウサギと言う。彼女は、とある事情で彼らを召還した張本人なのだが、
(うわぁ・・・・・・なんか問題児ばっかりみたいですねえ・・・・・・)
召還しておいてアレだが・・・・・・彼らが協力する姿は、客観的に想像できそうにない。しかも、何故かまだ幼い子供までいる。
黒ウサギは陰鬱そうにため息をついた。
今まで無口だった春日原耀が口を開く。
「そんなことより、ここに呼び出した人、探さないの?」
「そ、それもそうね」
「なら、そこの茂みに隠れている奴にでも聞いてみるか?」
ガサリッと指差された茂みが音を出した。
それでは自分がここにいるといっているものだ。......既にウサミミが出ているのは気のせいだろうか?
ウサギなのかな?そう少年は心を踊らせてうさ耳を見ていた。
「なんだ、貴方も気がついていたの?」
「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ?そっちの猫を抱いている奴も気づいていたんだろ?ガキの方は気づいてないようだが」
「風上に立たれたら嫌でもわかる」
「....へぇ、面白いなお前」
三人は理不尽な招集を受けた腹いせに殺気の籠った冷ややかな視線を草むらの相手に向ける。
少年、改め七はその光景をどう対応すればいいのか戸惑うがとりあえず草むらを見ておく。
「や、やだなあ御四人様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ?ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でこざいます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいでごさいますヨ?」
「断る」
「却下」
「お断りします」
「え、えっと....いいよ?」
「あっは、取りつくシマもないですね♪一人優しいお方がいることに黒ウサギは感動いたします!!」
バンザーイ、と降参のポーズをしてから感激のポーズをする。
七が人なのにうさ耳があることに不思議に思っているとその隣にいた春日部耀も不思議そうに黒ウサギの隣に立ち、黒いウサ耳を根っこから鷲掴み、
「えい」
「フギャ!」
力いっぱい引っ張った。
「ちょっとお待ちを!触るなら黙って受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですか!?」
「好奇心の為せる業」
「自由にも程があります!」
春日部耀の手から逃げた黒ウサギだが、その後ろに這いよる黒い二つの影が。
「へえ?このウサ耳って本物なのか?」
今度は十六夜が右から掴んで引っ張る。
「・・・。じゃあ私も」
「ちょ、ちょっと待ーーーー!」
今度は飛鳥が左から。左右に力いっぱい引っ張られた黒ウサギは、言葉にならない悲鳴をあげ、その絶叫は近隣に木霊した。
その光景を見ていた七は、気の毒と思いながらも触ってみたいと思いながらその光景を見ていた。
故に、誰も黒ウサギを助ける者は誰もいなかった。
☆
やっと解放された黒ウサギは耳を抑え踞り、その耳をまだ触っていない七が撫でさせ?ことになった。
警戒していた黒ウサギは、七が泣きそうな顔になるので大人しく触らせてあげている。
触っている七は、この耳の構造はどうなっているのか、色んな所を触って調べている。
作り物ではなく本物。
体温の温かさがあれば、毛も本物。フワフワだ。
目をキラキラとさせている七に耳を触らせながら黒ウサギは他の三人を値踏みしていた。
(肝っ玉は及第点。この状況でNOと言える勝ち気は買いです。まあ、扱いにくいのは難点ですけども。それに.....)
黒ウサギは、まだ飽きずに目を輝かしている七を見る。
(ジン坊ちゃんと同じような年、いやそれより下?の子をメンバーに加えるのは気が引けます....)
罪悪感を感じながら七に思う存分触らせる黒ウサギだった。
「なあ、そろそろいいんじゃねえか?」
十六夜に言われ黒ウサギは七にやめさせてもらう。残念そうな顔を見て心が痛む思いをするが、心を鬼にする。
服についた埃を落とし、気を取り直して咳払いをし、両手を広げて、
「ようこそ箱庭の世界へ!
我々は御四人様にギフトを与えられた者達だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼンさせていただこうかと召喚いたしました!」
「ギフトゲーム?」
「そうです!既に気づいていらっしゃるでしょうが、御四人様は皆、普通の人間ではごさいません!その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその“恩恵”を用いて競いあう為のゲーム。そしてこの箱庭の世界は強大な力を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活できる為に造られたステージなのでございますよ!」
両手を広げて箱庭をアピールする黒ウサギ。飛鳥は質問するために挙手した。
「まず初歩的な質問からしていい? 貴女の言う“我々”とは貴女を含めた誰かなの?」
「YES! 異世界から呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって、数多とある“コミュニティ”に必ず属していただきます♪」
「嫌だね」
「属していただきます! そして『ギフトゲーム』の勝者はゲームの“主催者”(ホスト)が提示した商品をゲットできると言うとってもシンプルな構造となっております」
「・・・・・・“主催者”って誰?」
「様々ですね。暇を持て余した修羅神仏が人を試すための試練と称して開催されるゲームもあれば、コミュニティの力を誇示するために独自開催するグループもございます。特徴として前者は自由参加が多いですが“主催者”が修羅神仏名だけあって凶悪かつ難解なものが多く、命の危険もあるでしょう。しかし、見返りは大きいです。“主催者”次第ですが、新たな“恩恵”(ギフト)を手にすることも夢ではありません。後者は参加のためにチップを用意する必要があります。参加者が敗退すればそれらは全て”主催者”のコミュニティに寄贈されるシステムです」
「後者はかなり俗物ね」
「そう。ゲーム自体はどうやって始めればいいんだ?」
「コミュニティ同士のゲームを除けば、それぞれの期日内に登録していただければOK! 商店街でも商店が小規模のゲームを開催しているのでよかったら参加していってくださいな」
飛鳥は黒ウサギの発言に片眉をピクリと上げる。
「・・・・・・つまりギフトゲームとはこの世界の法そのもの、と考えてもいいのかしら?」
お?と驚く黒ウサギ。
「ふふん? 中々鋭いですね。しかしそれは八割正解二割間違いです。我々の世界でも強盗や窃盗は禁止ですし、金品による物々交換も存在します。ギフトを用いた犯罪などもってのほか! そんな不逞の輩は悉く処罰します―――が、しかし! 先ほどそちらの方がおっしゃった様に、ギフトゲームの本質は勝者が得をするもの! 例えば店頭に置かれている商品も、店側が提示したゲームをクリアすればただで入手することも可能だと言うことですね」
「そう。中々野蛮ね」
「ごもっとも。しかし“主催者”全て自己責任でゲームを開催しております。つまり奪われるのが嫌な腰抜けは初めからゲームに参加しなければいいだけの話でございます」
黒ウサギは一通りの説明を終えたと思ったのか、一枚の封書を取り出した。
「さて皆さんの召喚を依頼した黒ウサギには、箱庭の世界における全ての質問に答える義務がございます。が、それら全てを語るには少々お時間がかかるでしょう。新たな同士候補である皆さんを何時までも野外に出しておくのは忍びない。ここから先は我らのコミュニティでお話させていただきたいのですが・・・・・・よろしいです?」
ある程度、話し終えた黒ウサギは皆に確認をように聞く。
「待てよ、俺がまだ質問してないだろ」
静聴していた十六夜が威圧的な声を上げて立つ。
ずっと刻まれていた軽薄な笑顔が無くなっていること、視線が鋭さを増したことに気がついた黒ウサギは、構えるように聞き返した。
「・・・どんな質問でしょうか?ルールですか? ゲームそのものですか?」
「そんなのはどうでもいい。腹の底からどうでもいいぜ、黒ウサギここでお前に向かってルールを問いただしたところで何かが変わるわけじゃねえんだ。世界のルールを変えようとするのは革命家の仕事であって、プレイヤーの仕事じゃねえ。俺が聞きたいのは・・・・・・たった一つ、手紙に書いてあったことだけだ」
十六夜は視線を黒ウサギから外し、他の三人を見回し、巨大な天幕によって覆われた都市に向けた。
彼は何もかもを見下すような視線で一言、
「この世界は・・・・・・面白いか?」
他の二人も無言で返事を待つ。
彼らを呼んだ手紙にはこう書かれていた。
『家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨てて箱庭に来い』――と。
それに見合うだけの催し物があるのかどうかが三人にとって重要なことであった。
黒ウサギは一瞬面食らった顔をしたあと、笑顔で言った。
「―――YES。『ギフトゲーム』は人を超えたものたちだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪」
「......僕も一つ。いい?」
今まで静かにしていた七が手をあげる。
「はい、なんでしょうか?」
黒ウサギはしゃがみこみ七と同じ目線で聞く。
「えっと、ギフトってどうやったらわかるの?」
不思議そうにギフトの有無の確認を聞いてくる七。他の三人は何かしら自分の持っているギフトに心当たりがあるのか聞いては居ないが七は自分のギフトがわかっていない。そもそも有るかどうかも解らないが、あの招待状が届いた時点で何かしらのギフトは持っているのだろう。
黒ウサギは、少し考えた素振りを見せてから答えを返す。
「そうですね、まず一番分かりやすいのは他の人ができないことができる、でしょうか?分かりやすく言うと、炎を操ったり、未来を予知したりとかですね。あとは、ギフトを確認できるギフトなんかがありますがこれは追々話すとしますね」
「そんなギフトもあるんだ」
「ええ、まあちょっと高価なものですが......以上でよろしいでしょうか?」
「うん、ありがとうっお姉ちゃん」
笑顔で黒ウサギにお礼を言う。その笑みを見て思わずキュンとなったような気がした人物がいるが......追々分かるといっておこう。
お疲れ様です
次回作は25日に投稿したいと思います。
※書き直し2015/02/21
最後空気だった七に台詞を与えました。
とある人の病気発生原因を書いておきました