「ああ、なにも特別なことをするわけではないだろう?ボクらはいつも通りでいいんだから。」
「緊張感というものはないんですか?」
「そうだね、もしかしたら緊張しているのかもしれない。だけどそれを表に出さなければ、それは緊張していないことと何か違いはあるのだろうか?例えば……」
「その話、長そうですね。もう始まりますよ。」
「やあ、とりあえずはじめまして、と言っておこうか。ボクはアスカ、二宮飛鳥だ。」
「みなさん、はじめまして。橘ありすです。」
「今回からボクとアリスで『アリアスの糸』を始めるんだ。」
「橘です。これは私たちがアイドルやプロデューサーの皆さんから悩みや質問をいただき、解決していくという企画になっております。」
「ついに始まったね。まさかボクら二人で行うとは考えても見なかったよ。」
「そうですね、私も意外でした。私たちは共演したこともありましたが、その時もいろいろ考え方に違いがあったので。」
「同じ考えの人は誰一人いないからイイんだよ。ぶつかり合いながら高めあっていく、それもいいものだと分かったからね」
「まあ二宮さんは個性が強いのでぶつかることが多そうですね。」
「アリスもあまり人のことを言えないんじゃないのかい?」
「あの、どうしても名前で呼ぶんですか?」
「まさに少女の象徴だよ。いい名前じゃないか。」
「……どうもです。でも私はあまりこの名前が好きではないのですが。」
「ボクのことはアスカで構わないよ。これからよろしく頼むよアリス。」
「……仕方ないですね。飛鳥さん、よろしくお願いします。」
「とりあえず私たちの自己紹介から始めますか。では改めまして、橘ありすです。12歳で属性はクールです。趣味は読書です。どうぞ橘と呼んでください。」
「ボクの名前は二宮飛鳥だ。14歳で属性はクール。この話し方は俗にいう中二病ってやつだ。趣味はヘアアレンジといっておこうか。飛鳥とでも呼んでくれ。」
「アリスの好きな本のジャンルは何だい?」
「ミステリーですね。謎ときは非常に面白いです。細部まで細かく読むことで気付けることがあります。それに2回目でまた違った見方ができるのはお得です。」
「ミステリーはあまり読んでいないかな。トリックなどには興味があるけれど、どうもボクは探偵よりも犯人の方に共感してしあうことが多くてね。」
「飛鳥さんは好きなジャンルはありますか?あ、ライトノベルでも構いませよ。」
「聖書とか、神学・哲学に最近は手を出してみてるよ。昔から人間は同じことを考えているんだよ。」
「はあ、そういうものなんですか。」
「飛鳥さんはエクステはいつもつけているんですか?」
「どうしても寿命があるからね。数か月で変えているよ。」
「エクステに意味はあるんですか。牽引性脱毛症になりやすくなるとネットで見ました。将来を考えると屋めておいた方がいいのではないでしょうか。」
「これは手厳しいね……。意味なんて大層なものはないよ。これはファッション、カッコいいからだよ。今を楽しむのことが大事だと考えているからね。気にしないでくれ。」
「まあ個人の自由なんでいいですけど、ケアはちゃんとした方がいいですよ。」
「あ、ああ忠告に感謝するよ。」
「私にはあまり理解しがたいですね。」
◇
「自己紹介も終わったところで、それではこの企画について詳しく話していこうか。」
「まずこの企画の名前、『アリアスの糸』とは何でしょうか?」
「アリアスとはアリアドネと呼ばれることが一般的だね。アリアドネはクレタ王ミノスと妃パシパエのあいだの娘のことだ。
そしてアリアドネの糸といえば、英雄テセウスがミノタウロス退治する際に、迷宮からの脱出のためアリアドネが渡した糸のことをさす。」
「そこからアリアドネの糸という言葉は難問解決の手引き・方法といった意味の言葉になりました。というわけで私たちが悩みを解決していこうという企画になっています。」
「アリスはこの言葉を知っていたかい?」
「これくらいは当たり前です。飛鳥さんはアリアドネの糸の由来を知っていましたか?」
「まあ、ギリシャ神話をかじったことがある人ならみんな知っていると思うよ。」
「やっぱり神話とかは好きなんですね。」
「ああ、やはり心がくすぐられるよ。そして神々は昔から気まぐれだってことがよくわかるよ。アリスも調べてみたらいいんじゃないか?」
「興味はあるんですが、神話は幅広くて調べるのに一苦労しています。」
「それならボクが今度教えてあげようかい。」
「いえ、話が長そうなので結構です」
「それにしてもなぜこの企画に私たちが選ばれたのでしょうか?二人ともあまり人生経験が豊富というわけではないのですが。」
「今のボクたちにしかできない答えを期待しているのかもしれないね。」
「でも私はあまり年相応の返答というものはできそうにないです。飛鳥さんは年相応ですね。」
「まあ、すべての物事に意味を見いだせるとは限らないんだよ。」
「それを言い出したら話が終わってしまいますね。」
「運命、とでもいえば響きはよくなるだろう?」
「あくまで理由があるとは思いますが。名前のゴロがよかったからでしょうか。それとも私たちで決まった後にこのような名前が付けられたのでしょうか。」
「それは些細な問題だろう。それこそ鶏が先か、卵が先かのようなものだ。大事なのはこれからのことだろう。これまでの過程はカコのものだ。僕らはミライについて考えるべきだよ。」
「まあそれはそうですけど。」
「任された以上その期待に応えていく、そういうものだろう?」
「勿論その通りです。大事なのは中身です。私だって大人だというところを示して見せます。」
「しかし送られてきたとして、本当に解決できるんでしょうか?」
「大事なことは考えることだよ、アリス。答えを出すことではないんだよ。」
「それでいいんでしょうか?」
「人に与えられた答えに大きな価値はないだろう。ボクらが導き出した答えは所詮ボクらしか納得していないんだよ。」
「つまり私たちがお答えしたものを、もう一度考えていただくということですね。」
「そういうことかな。」
「記念すべき第一回目は年明けからになると思う。それまでに悩みがあれば何か送ってきてくれ。」
「来年のの話をすると鬼が笑うって言いますけど。」
「笑いたければ笑うがいいさ。それがボクらを止める理由にはならないからね。それに未来を思い描くことは信じることだからやめられないよ。」
「たぶん一回目は私たち二人の悩みをするんじゃないでしょうか。もし、プロデューサーの悩みであったとしてもそんな大したものは来ると思えません。」
「いや、案外何か考えているかもしれない。例えば、そうだなあ。アイドルが言うことを聞かないっていうのはどうだい?」
「……それって私のことですか?」
「いや、ボクは何も言っていないが。もしかしたらボクのことかな。それともアリスは心当たりがあるのかい?
「……まあいいです。そうですね、まず言うことを聞かない理由について考えるべきですね。プロデューサーが無茶な要求をしているのか、アイドルがわがままなのかを考えるべきです。」
「非常に論理的な考え方だ。」
「何事も順序立てて考えた方がいいんです。世の中は本当は単純にできているんです。」
「そうだね、セカイは簡潔で美しい。ただ、感情が邪魔をしてしまうんだ。」
「結局は感情論になりそうですね。面倒なはなしですね。」
「だけどそのおかげでセカイがさらに輝くことがある。」
「飛鳥さんってもっと斜に構えているかと思いましたが、意外とファンタジーな方ですね。」
「昔のボクは違ったかもしれないが、今のボクはそうかもしれない。ヒトは変わるものだからね。アリスもそうだろう?」
「否定はしませんね。私もそういうことに一応の理解はできるようになりました。大人に一歩ずつ近づいているということです。」
「彼に出会ったからじゃないのかい?」
「プロデューサーは関係ないです!」
「ボクは誰のことか言ってないけどね。」
「……っ!」
「でもそれは悪いことではない。やがて嫌でもボクらは大人になる。」
「私は早く大人になりたいです。子供扱いをされない、対等な立場になってみせます。」
「確かに肩を並べて歩くことにはあこがれるね。」
「ぜひ一緒にこの企画を通して成長しましょう。」
◇
「さてそろそろ終わりの時間のようだ。」
「こんな感じで私たちが話し合っていくという形になります。今後ゲストなどは来るのでしょうか?」
「まあ考える人は多い方がいいんではないか。価値観の違いは大事だ。三人寄れば文殊の知恵とも言うからね。」
「船頭多くして船山に登るとも言いますけどね。」
「まあそれも今後自ずとわかってくるだろう。この先どうなるかは神のみぞ知るってところかな。」
「結局何も決まっていないじゃないですか……。まあそれはしっかり話し合っておきましょう。」
「では今日はこの辺で失礼します。皆さんここまで『アリアスの糸』にお付き合いいただき、ありがとうございました。」
「それじゃあ、またいつか相まみえる日まで。お相手は二宮飛鳥と、」
「橘ありすでした。ばいばーい!」
「飛鳥さんお疲れ様でした。」
「ああ、アリスもお疲れ様。」
「それでは早速、今後についての段取りをしていきましょうか。」
「アリスはマジメだな、今は終わりの余韻に浸りたいんだ……。」
「何を言っているんですか。弛まぬ努力と綿密な準備が成功の秘訣です。」
「ハハッ、まいったな。そんなに急ぐことはないと思うけどな。」
「善は急げですよ。限りある時間をいかに有効的に使えるかは大事です。」
「……そうだね。ボクらの時間は有限だ。実り多きものにするにはあまりにも足りない。それじゃあ、行こうか。」
「ええ、忘れ物はないですね。では行きましょう。プロデューサーも待っているはずです。」