プロローグ1「新生活と驚きの報告と」
「はああ、疲れた・・・」
新しい学校からの帰り道、私は大きなため息をついた。四月の上旬とはいえ、まだ冬の寒さが少し残っている。隣では梨子ちゃんも同じようにうなだれ、曜ちゃんは元気そうに苦笑い
「Aqoursの名前で私たちのことみんな知ってたからねー。男の子にも女の子にもいろんなこときかれたよ!」
「やっぱり?私なんかサイン求められて断り切れずに何枚か書いちゃったわ・・・」
二人とも大変だったんだなあ・・・私もだけど。
この三月、私たちが元々通っていた内浦にあった浦ノ星女学院は沼津にある共学の高校と統廃合した。
少子化に過疎化。統廃合の話が出ても仕方がなかった。
でも私たちはあきらめたくなくて。大好きな学校を何もしないで無くしたくなかった。その思いがスクールアイドルという選択を私たちに与えてくれた。私たちはがむしゃらに前に向かっていた。「輝きたい」そう思って。かつて学校を守ったμ’sのように。
その願いは半分かなって半分叶わなかった。ラブライブに優勝して、Aqoursの輝きを手に入れることができた。そして浦の星の名前をその歴史の中に刻むことができた。
でも、学校を守ることができなかった。
学校を守れないならーーーそう思ったことだってある。でも終わってしまうものは仕方がない。私たちが居たという証を刻もう。そんな思いでラブライブに臨んだ。
そして、三年生のメンバー全員がそれぞれの進路へ旅立ち、今。私達元Aqoursの面々は沼津の高校へ通っている。今日は新学期だ。
新しい学校になじむことができるか不安だったけど、そんな心配は必要なかった。Aqoursの知名度のおかげで私たちのことはみんな知っていた。でもまさかこんなにいろんなこと聞かれるとは思わなかったよお・・・
少し疲れ気味な私と梨子ちゃんの顔を覗き込むように曜ちゃんが言う。
「二人とも、このあとどうしよっか?学校も早く終わったし、なんか食べに行く?」
うん、気分変えよう!
「いく!私、みかんのお菓子食べたい!」
「私も!チョコレート系!」
「よーし、それじゃあ近くの喫茶店へいくであります!!」
「「おーーー!!!」」
私達基本的にノリがいいよね。
「うー・・・調子乗って食べ過ぎた・・・」
「食べ過ぎよ?まさかオレンジパフェ二杯もたべるなんておもわなかったわ」
呆れたように梨子ちゃんが言う。
時刻は午後8時。4時間近く喫茶店にいたらしい。店員さんごめんなさい。
曜ちゃんの家は沼津の方なので途中で分かれる。梨子ちゃんとは家が隣なので帰り道も一緒だ。
「すっかり遅くなっちゃったね。お母さん心配してないといいけどなー」
その言葉を聞いて私は今朝お父さんに言われたことを思い出した。
「あーーー!!!私、今日大事な話があるからお父さんに早めに帰ってきてっていわれてるんだった!!!」
梨子ちゃんが呆れたように私の方を見る。
「なら急がなきゃだめじゃない!って言ってももう手遅れか・・・」
「うぅ・・・怒られるかなあ・・・」
「ま、仕方ないわね。私は帰って曲の続きを書くわ。」
曲の続き?ピアノのことかな?今後のスクールアイドルのことはまだみんなで話し合ってる最中だし。
そんなこんなで家の前につく。しいたけは相変わらず寝ていた。いいのかなあ、うちの番犬。
「じゃあねー、千歌ちゃん。なんかあったらまたベランダね。」
小さく微笑みながら梨子ちゃんは言う。やっぱり美人だなあ。
「うんじゃあねー、また明日―!」
そういうと私は怒られる覚悟で家の扉を開けた。
「ただいまー。」
「千歌、おそいよ!」
さっそく美渡ねえに怒られた。
「ごめん、新しい学校でいろいろ話しこんでたらこんなじかんになっちゃった」
「はあ・・・まあいいや、お父さんとお母さんと志満ねえ居間で待ってるよ。」
「はあい。」
遅くなってしまった私が悪い。ここは全力で謝っておこう。
「ただいま!そして、すいませんでした!」
我ながら、きれいな土下座だと思う。
「あらあら・・・そんなことしなくてもいいのに」
志満ねえはいつもの調子でおっとりそう告げる。お母さんはうふふと笑っている。よかった、深刻な話じゃなさそうだ。
「千歌も帰ってきたし、話そうか。」
お父さんが口を開く。普段は旅館を束ねるお父さんも家族の前では人のいいお父さんだ。
やっぱり、そんな深刻な話じゃない感じだなあ。
「母さんはもう知ってるから、三人からしたらこれは報告になっちゃうかな。今度、我が家に家族が増えることになったんだ。」
・・・・。うん、もっかい言って?
「家族が我が家に増える。」
どうも心の声が漏れてたみたいだ。私達三姉妹は一呼吸置く。
そして
「「「!!!!!!!!!!!」」」
私たち三姉妹の驚愕の叫び声は旅館のお客さんにはもちろんのこと、梨子ちゃんちにまで響いていたようで、すぐに梨子ちゃんから電話がかかって来るのだった。