「これどーするー?」
他の部活は他の部活でいろんな準備を進めている中、私たちは私達で音源や機材の準備を進める。
今日のセットリストや衣装、演出。
ライブのための計画は綿密に立ててきた。
これが、私達の今の姿だ。
三年生がいなくなった今、私達の姿を見てくれているみんなに焼き付けたい。
それが、新入生や見に来てくれているみんなを感動させることになる。
そしてコウ君を感動させる。それが今の私たちにできることだ!
そして、あと私たちにできるのはコウ君が来てくれるのを願うことだけだ。
大丈夫! きっと来てくれる!
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「あと3時間で二曲って正気かお前ら!?」
荷物の搬入時間を考えたら、あと3時間もない。
僕は多目的室で半強制的にedwardsのレスポールタイプの黒いギターとマルチエフェクターを渡され戸惑う。
セッションは問題ないにしても今から二曲はさすがにやべえ!
僕の目の前にはアキラ、クラスメイトでドラムのシゲキ、ベースの二年生ユウキ君が土下座している。
ほんとやめてくれ。
「たのむ!もうお前にすがるしかないんだよ!リードギターのやつが事故に巻き込まれてこれんくなってるんだ!俺はバッキングのギターとボーカルだからかわりようがないし!」
「いや、その同級生のお見舞いはいいのかよ?」
「車にのってたんだけど、大したケガじゃないそうだ。でも、病院での検査があるらしくて、絶対時間内には来れない。だから、もうお前しかいないんだよ!!」
頭が痛くなってきた。
ここまで頼まれて、断れるわけないじゃんか・・・
「・・・曲は?」
「THE ORAL CIGARETTSの狂乱 hey kids!!とTOTAL FATのPARTY PARTY!!ありがたい!!!」
この二曲ともベースのコピーをしたことがある。
ハヤテと趣味で練習して、その時ギターを少し教えてもらった。
やっといてよかった・・・。過去の自分に感謝しながらギターの練習に入るのだった。
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「私、ジュースかってくるね!」
「うん!準備もなんとかなったし大丈夫!千歌ちゃん、私のもお願いしていい?」
私は曜ちゃんからお金をもらうと部室を出て、自販機の方に向かう。二階の多目的室から、エレキギターの音が聞こえる。あそこ、軽音楽同好会が学校に無理言って借りてるってアキラ君が言ってたのを思い出した。
ちょっと覗いてみよう。
ん?
なんであそこにコウ君がいるんだろう?
しかもベースじゃなくて、ギター・・・だよね?あれ。
来てくれたんだっていう安心感とともに、部活に入るつもりはないって言っていたコウ君の姿が浮かんで疑問が残るばかりだった。
でも・・・一生懸命なコウ君、ちょっとかっこいいな・・・
ハッとして、私は自販機に急いだ。
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「行けそうか?」
一時間経過。ベースをコピーしていた時の記憶と実際に耳元で鳴らしたときの音を頼りに必死にリードの音を拾う。
よし、これでいい。
ごまかしにはなるし、原曲通り100%弾けているわけではないが、これで何とかなる!
あと一時間。後は合わせてみて確かめるだけだ!
「できたぞ!!!あわせよう!」
「「「おう!!」」」
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「新入生の皆さん!入学おめでとうございます!そして、今から、新入生歓迎会を始めたいとおもいます!」
校長先生のあいさつの声とともに司会の子にバトンタッチ。
在校生と新入生はともに拍手する。ついに私たちの勝負が始まった。
Aqoursのみんなにコウ君が来ていてくれたことを報告するとみんな喜んでいた。
「あとは、私たちの輝きをコウ君に見せよう!」
そういうとみんなで
「「「「「「おー!!!」」」」」」
掛け声を上げた。気合十分!!!!
新入生歓迎会は体育館の中で行われている。
全校生徒が余裕で入る体育館の中にはステージと運動スペースがあけられていて、声がよくとおる。
新入生や見に来た人たちは体育館の後ろから半分で区切られたスペースで自由に見ていいことになっていて、出演予定の部活は前半分のスペースの横側に部活ごとに固まっている。
前半は運動部を中心とした部活紹介。この部活は空けられた運動スペースを使う。
後半は演劇部や吹奏楽部、チアダンス部や応援部、そして軽音楽同好会や私達といった、ステージを使う予定の部活動が紹介に登壇する。
その際はステージ前まで見ている人たちが来てもいいことになっていた。
機材などの都合もあり、軽音楽同好会はトリ前、私たちは大トリだった。
どの部活もすごいなあ・・・一生懸命できらきらしてる!
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運動部の紹介を聞きながら頭の中では必死に音を巡らせる。
曲を作るときの癖か、こうしたらもっとかっこいいんじゃないかとか、あれを入れたいとか余計なことが浮かんでしまう。
運動部の発表が終わる。出番が近い。
結局紹介の声や余計な考えのせいで集中して確認できなかった。
休憩と転換。音作りは、もともと持ち主が作っていたプリセットに修正を加えて設定した。
「あれ?コウ君!!」
梨子ちゃんが声をかけてくれる。
「ごめん。ちょっと今忙しい。」
申し訳ないがかまっている時間はなかった。
「う、うん。私たちのライブが終わったら、部室来てね?」
「わかった。」
僕はギターを持って体育館の外に一度出る。
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いよいよ軽音学同好会の出番だ。今は裏手で入場準備。
こんな緊張はデビュー前のオーディションライブの時ぶりだ。
アキラが肩をたたきながら言う。
「本当に済まんかった!気楽に肩の力抜いてやってくれ!」
僕を気遣ってくれているんだろう。でも。
「ありがとう。でもやるなら本気だ。妥協は絶対に許されない。」
アキラはそれ以上何も言わなかった
司会の生徒の声がした。
「さあそれでは、皆さん暴れていただきましょう!軽音楽同好会のライブです!!!」
かかる入場SE。
曲はHello sleepwalkersという僕の大好きなバンドの「猿は木からどこへ落ちる」
僕のテンションは緊張と合わせて振り切れた。
やるしかねえ!
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ステージ上。
音響を担当してくれている先生に合図を出してSEを切ってもらう。
ズクタンっ
最初のドラムの合図が入る。ここはC。
かきならす。
「どーも!!!軽音楽同好会と申します!!!どうぞよろしく!!!!!狂乱! Hey!
Kids!」
まばらな拍手。一瞬の静寂。
自分を見せつけろ。僕を、僕たちを、見ろ!!!!
フォーカウント。
初めから飛ばすぞ!!
軽快なギタースラップから入る。ハイハットのリズムに合わせる。
ダン!
ベースも合流する最初のキメ!成功だ。
そして、この曲最初のキメ台詞。
アキラどう出る?
「かかってこい!!お前ら!!!」
よし!!!
うまくいってる。後ろから前に出てくる生徒が増えた。
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「何だろう、なんだか、飛び跳ねたくなってくるね!」
軽音学同好会の演奏による爆音が響く中、梨子ちゃんが話しかけてくる。
「そうだねとっても楽しい!!」
「わたしたちも行っちゃおうか!」
曜ちゃんがいたずらっ子みたいに笑って私と梨子ちゃんの手をつかむ。
「ちょっと!私もいくわよ!」
「善子ちゃん待つずらあ~!」
「ルビィもおいてかないでええ!!」
そうして私たちはまだ人が集まり切ってない最前へと向かう。
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間奏に突入する。
ミスはあるが悪くない。いい感じだ。
でもまだだ、まだ。
全然足りない!
もっと、もっと僕を、いや、俺を!
高ぶらせろ!
一曲目が終わる。MCでは軽音楽同好会の紹介文が入る。
「・・・って感じで!軽音楽同好会は活動しております!そして、今回、急な事故でこれなくなったうちのバンドのギターに代わり、急きょ、リードギターを引き受けてくれましたメンバーを紹介します!!!」
ん?聞いてないけど。
「現在活動休止中の大人気バンド、Seekerのベーシスト!宮木 コウ!!」
一気にどよめきが広がる。
「今回は急きょのことだったので、メンバー全員で全身全霊、お願いし、本職のベースではなく、リードギターをやっていただいております!」
おま、これで、新入生にまで知られる羽目になってしまった・・・
そういえば、練習に必死だったせいで口止め、忘れてた・・・
でもそのおかげもあり、新入生はさっきよりもたくさん前にやってきた。
ふとステージの下に目を向けるとAqoursのみんながそこにいた。
梨子ちゃんが手を振ってくれる。
僕はそれに対して軽く微笑んで返した。
「次の曲はさっきよりもアツい曲をぶつけるんで!もっと元気なとこ、俺たちにみせてくれ!!PARTY PARTY!!!!」
ドラムセットにセッティングされたカウベルを鳴らす。
準備運動だ・・・さあここからだ!
全員で叫ぶぞ。
「========!!!」
重い音。楽しいリズム。
聞こえてくる声は俺たちと一緒にわかりやすいフレーズを口ずさむ声。
さあもっとだ、もっと!!
一番は曲の遊び方を俺たちが観客に教える時。
二番は観客が俺たちと一緒になって遊ぶ時。
そして、この盛り上がりを無くさないままギターソロに入る。
こい!俺を見ろ!!!
ソロと同時に前に出る。
「遊ぼうよ!いっしょにさあ!」
自分でも気づかないうちにボーカルのマイクを奪って叫んでいた。
その瞬間前にいた人たちが僕の前に群がる。
ソロの目玉の早弾きを弾きまくる。
原曲に比べて、正しいか正しくないか、そんなの関係ない
これが今俺の出せる音だ!!
ステージの下から拍手が響いた。
やっぱり、このぶっ飛んだ空間が僕は大好きなんだ。
これで人に感動を届けられたらどんなにいいだろう。
想いが届くことがどんなにうれしいことだろう。
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私達は人がたくさん押しかけて来たところで端の方に逃げる。
すごい熱気だ。
私達のライブとはまた全然違う光景。
「これが、コウ君の見ていた景色なんだね・・・!」
私は初めて見る光景にワクワクした。
曜ちゃんがつぶやく
「すごいね・・・!!」
善子ちゃんはステージを凝視。
「これよ!このアツさが魅力なのよね・・・ROCKの!」
花丸ちゃんはびっくりして大きな目がさらに大きくなっている。
「これが・・・コウさんの見てる景色ずらか・・・」
ルビィちゃんはただただ圧巻されてるように言う
「もっとかもしれない。プロでやってたんだから・・・」
そして梨子ちゃんは。
コウ君をずっと見ていた。
「かっこいい・・・・」
だれに聞かせるでもなくそうつぶやいていた。
何でだろう。なんかチクチクする。
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ラスサビがおわる。
そしてアウトロ
キメ
無事に決まる。
良かった。なんとかなった。
「軽音楽同好会でした!!!本当にありがとうございました!!!」
初めの拍手とは比べられない拍手。
終わった瞬間僕はギターをスタンドに立てかけその場にへたりこんでしまった。
一瞬だけへたり込んでしまってから、すぐに立ち直る。
片づけないとな。
「大丈夫か。お前、演奏中意識吹っ飛ぶタイプだったんだな。」
「ああ。大丈夫。片付け、しなきゃな。」
「大丈夫だよ!こんなに楽しかったのは久しぶりだ、お前は休んでてくれ。みんな手伝ってくれるらしいし。」
「ああ、ありがとう」
裏の方に行くと梨子ちゃんがいた。
「みてたよ!すっごくカッコよかった!」
「ありがとね。めっちゃくちゃつかれた・・・」
「ふふっ。でも次、私たちのライブ。約束だから見ててね。感動させるものを見せつけるから。」
本気の声が僕の脳内に響く。
「うん。しっかり見るよ!」
どうか僕に。もう一度。
感動の感覚を教えてくれ。
取り戻させてくれ。
本当の僕は、本当の僕たちSeekerは、絶対にこんなもんじゃない。
次回の更新は1月13日(土)の夕方ごろを予定しております。
感想、アドバイス等ありましたら、よろしくお願いいたします。
また、作品中で紹介させていただいた楽曲の公式PVのURLを貼らしていただこうと思います。どの曲も本当にかっこいいので、曲に合わせて読んでいただけると、さらに楽しめるのではないでしょうか?
猿は木からどこへ落ちる/Hello sleepwalkers
https://youtu.be/5dPpdvPM2FM
狂乱 hey kids!!/THE ORAL CIGARETTS
https://youtu.be/C-o8pTi6vd
PARTY PARTY/TOTAL FAT
https://youtu.be/C-o8pTi6vd8
[以下作者あとがき]
冬コミに行っていた後輩に頼んで買ってきてもらったCDを昨日やっと受け取りまして、やっと聞けました。こんばんわ、作者です。
「はみ」さんという方のラブライブ楽曲のアコギアレンジ集なんですが、ボーカルなんて一切入ってないんですけど、ものすごくいいんですよ。すごく落ち着けるというかなんというか・・・。はみさんの演奏力の高さ、そして、ラブライブ楽曲の作成陣のレベルの高さを痛感します。
今回の話はものすごくノリノリで書けました。
どんな場所でも、どんな種類でもステージを経験したことがある方ならなんとなくわかるかもしれません。
ある意味病みつきになりそうな感覚なんですよね、ステージの上って。
本当はもっと書きたかったところもあったりするんですが、著作権等の問題を含んだものになりますので泣く泣くカットいたしました。
ステージの上の感覚を上手にかけてはいないと思いますが、皆さんに伝わると嬉しいです。
次回はAqoursのステージの話となります。正直筆止まりそうとか言えない。
頑張ルビィ!