終わりがもたらしたはじまり   作:ふぁんた

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本当は明日の12時頃に更新しようと思っていたのですが急な用事が入ったため、今日中に更新しようと思います。


第11話「二人でお出かけ」

田舎の旅館のゴールデンウィークがこんなに忙しいとは思わなかった。

 

内浦自体お店も少なければ、海がきれいな土地っていうイメージだったんだが、その海が観光名所の一つらしい。

 

サーファーやダイバーにとっては名所となっているんだそうだ。

 

他にも沼津まで行けばいろいろな名所があるらしい。噂には聞くけどほとんど行ったことがないから僕は知らなかった。

 

通常の観光目的のお客さんも多く、ゴールデンウィーク中は僕も千歌ちゃんも手伝える時に旅館を手伝えるようにしていた。

 

他は練習に勉強。それに曲作り。

 

僕も千歌ちゃんも割と忙しい日々を送っていた。

 

そして、ゴールデンウィーク最終日。

 

今日は梨子ちゃんと出かける約束をしている日だ。

天気も良くて、春の晴れの日はとても心地がいい。

 

待ち合わせはお昼前に沼津駅前。

 

梨子ちゃんは午前中にしたいことがあって先に沼津に行ってるらしい。

 

今日の服は割と気にいっているワインレッドのジャケットに細身のダメージ加工されたジーンズ、それにグレーのプルオーバーで胸の所に紺の文字でLING DING DONGとか書かれたパーカーにしておく。わりときれい目ファッションだし、こんなもんでいいだろう。

 

待ち合わせの時間までだいぶ余裕があるし、部屋でも掃除しとこう。

 

そういえばこの前、帰ってるときにスクールアイドル部に作曲で入ることになった経緯をアキラに話したら、急に薬局にアキラが寄り、悟ったような目で

 

「お守りだ・・・これをやる。」

 

って言われ、コンドームの箱を渡された。

 

未開封のコンドームの箱は出すことなく部屋のPCの裏あたりに隠してある。

(ちなみに僕はI patと元々使っていた作曲データの入ったノートPC、デスクトップのiMacで、諸々のデータを管理している)

 

ていうか、この家でこれ見つかったらとんでもないことになる。

 

・・・一体僕は何だと思われてるんだろう。

 

という葛藤はするものの。なぜか手が伸びてしまう。

 

封を開け、一つだけ取ると、罪悪感を隠すようにすぐに財布に放り込む。

 

そんな目で梨子ちゃんを見たことなんてないし、そんなことが失礼なくらいわかってる。

 

だけど、理性とはこうも弱いのか。

 

僕は自分自身の弱さと男の悲しい性を思い知り、遊びに行く前に頭が痛くなりそうだった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

僕は自分の部屋のドアに立てかけてある木製のプレートを外出中にすると出てこうとする。

 

「あれ?どっか行くの?」

 

千歌ちゃんに見つかった。なんだか誰にも見つかりたくなかったのに。

 

「うん。ちょっと出かけてくるよ。夜には帰るからさ。」

 

「えー。宿題教えてもらおうとおもったのにい!」

 

「・・・まだ終わってなかったの?」

 

僕は呆れる。確かに量は多いがコツコツやれば終わらない量ではないはずだ。

 

「そんな呆れた顔しないでよ!!!」

 

「いや、GWだし、受験生だしでだいぶ前からアナウンスされてたじゃん…」

 

正論が何もかも正しいわけではないことくらいわかっているが、今回ばかりは僕が圧倒的に正しい。そう確信する。

 

「くう…。私もどっか出かけたかったなあ…みとしー…梨子ちゃんに連絡したけど用があって無理って言われたし…」

 

う・・・。梨子ちゃんの用事は僕との約束ということもあり、ちょっとドキッとした。

 

でも、みとしーか・・・。

 

そういえば、こっちに来てからずっと行こう行こうって言っててまだ行ってないんだった。

 

「ごめんごめん。今度時間創るよ。」

 

「うーーー!今度おごりね!!!」

 

そう言って去っていく。

 

え、僕おごるの・・・?

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

いつものバスに乗って沼津駅近くに向かう。

 

ゴールデンウィーク最終日の街は平日よりは混んでいて、みんな明日から戻ってくる日常を嫌がりつつも休日最後という微妙な日を楽しもうとしているようだ。

 

駅前でまっていると梨子ちゃんがやってくる。

 

「お待たせ。待っちゃった?」

 

服装はピンクの花柄がポイントに入ったスカートに白いニット。

 

春先っぽい恰好だ。

 

「だいじょーぶだよ。今日の私服かわいいね」

 

「ありがと。コウ君もあんまりみないかっこだね。にあうよ。」

 

そりゃきれい目にしたからなあ。

 

いつもだったらジャージのズボンにパーカー、バンドTシャツって感じだ。何度か梨子ちゃんには部屋着姿を見られてる。

 

それにくらべればおしゃれしているだろう。

 

「今日はどうするの?」

 

「コウ君行きたいところある?とりあえず私は映画見に行くのと、コウ君に見せたいところがあって、その二つなんだけど、どうしよっか?」

 

「あ、沼津港の深海水族館いきたい。駅で看板見たときから気になってたんだよね。」

 

「そういえば、私もそこいったことないなあ。じゃあ、いこっか♪」

 

僕らはそろって歩き出した。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

映画を見終わり、時刻は一時半。

 

梨子ちゃんが見たいといった映画は「君の膵臓を食べたい」という恋愛ものの映画だった。

 

生と死、誰かを愛するということ、愛とは。

 

そんなことを考えさせられる映画だった。

 

主人公の女の子の演技もあいまって、ああ恋したい・・・ってなってしまった。

 

そして、なんだか、リサさんのことを思い出してしまう。

 

「おもしろかったね♪」

 

見たかった映画が見れた梨子ちゃんは上機嫌だ。

 

「うん。ヒロインの子もすごくかわいいし、なんか恋したくなっちゃうような映画だね。」

 

するとからかう感じで梨子ちゃんが言う。

 

「ああいう子が好み?」

 

「いや、そうではないけど・・・」

 

しどろもどろになって答える。

 

こういう時なんて答えればいいんだろう?どう答えたらいいかわかるほど僕は長く生きてない。

 

そんな僕の反応を面白がるように梨子ちゃんは微笑んでいた。

 

「おなかすいちゃった。バスで沼津港までいかない?」

 

「そうだね。沼津港、なんだかんだいったことないしなあ。」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

バスで沼津港まで行くと降りた瞬間魚の生臭い匂いが鼻につく。

 

空には海鳥が飛んでいて、漁師たちのおこぼれにありつこうとその機会をうかがっていた。

 

ほんとに漁港なんだなあって思う。

 

「あ、ここ、反対側だ。」

 

梨子ちゃんはそういうと海門上の大きな建物を指さす。

びゅうおというらしい

 

「あれ登ろう!」

 

「うわ!すげえなあれ!」

 

僕は興奮してスマホで外観の写真を撮ってしまう。このロマンだれかわかってくれ。

 

梨子ちゃんはそんな僕をみて微笑んでいた。

 

「これすごいよねえ。」

 

二人でチケットを買ってエレベーターで上まで行く。

 

連休の最終日ということもあり、カップルや小さい子を連れた家族連れが二、三組って感じだ。

 

ふと僕らは周りからどう思われてるのか気になった。

 

僕にとっては、居候させてもらってる家のお隣さんで、部活が同じで一緒に曲を作ってる・・・かわいい女の子の友達…って感じだ。

 

多分、そういう認識で間違いはないだろう。

 

端から見たら、僕らはカップルに見えるのかな?

 

「見て見て!!天気いいから、富士山見えるよ!!!こんなにきれいに見えることってあんまないよ!」

 

「わあ!すげー!こんなきれいな富士山初めて見た!」

 

関係ないか。

 

今僕は梨子ちゃんと一緒にいて楽しい。

それだけで十分だ。

 

びゅうおを降りてから、僕達は話しながら食堂のある建物に入る。

 

一般人入場が制限されている競り場所を併設した建物は競りが終わっているはずなのに遅めの昼食を取ろうとする人々で賑わいを見せていた。

 

僕達は比較的すぐ入れそうな海鮮丼のお店に入る。

 

カウンター席に通され二人並んで座ると、本日のおススメ!と書かれた駿河湾で取れた魚介類の駿河丼というメニューを注文した。

 

梨子ちゃんも同じメニューを注文する。

 

こっちに来て海鮮丼食べたのはたぶん初めてだけど、ものすごく美味しい。

 

特に新鮮な生しらすは臭みもなく、生姜醤油に良くあっていた。

 

東京で食べたらたぶん2000円くらいするはずだけど、現地は値段が抑えられていて、高校生でも少し背伸びすれば届く値段だった。

 

食べ終わってお茶をすすりながら、この後の話をする。

 

時刻は3時前だ。とりあえずの予定はこの後深海魚水族館に行って終わりのはず。

 

「さ、深海水族館、行きましょうか。私もシーラカンス見るの初めてなんだよね、楽しみ!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「すっごく楽しかったー!!」

 

僕は何も考えずに言ってしまう。

 

「すごくキレイな魚もいたし、独特な魚も多くて楽しかったね!私はグソクムシはちょっと苦手だったけど。」

 

時刻は19:00頃。沼津駅まで戻ってきて、商店街の中の喫茶店で休んでいた。

 

侮っていた…。

 

深海水族館、めっちゃくちゃ楽しい!!

 

全体的にそこまで大きくない建物で館内は照明を極力落とし、深海を表現した水族館となっている。

 

一階部分は深海魚を中心に駿河湾や、各地で取れた珍しい魚類が展示されている。特に個人的にはカサゴがお気に入りだった。あとチンアナゴを生で初めてみた。

 

二階はシーラカンスミュージアムと称され計5体ものシーラカンスが展示されている。内二体は冷凍シーラカンスで世界的にも珍しいらしい。

 

このシーラカンスのかっこよさは完全に男のロマンだ…

 

僕は写真に撮影したシーラカンスの写真をすぐにスマホの待ち受けにした。

 

職員さんの説明も見事なものだった。

 

「これ、なにかってくれたの?」

 

梨子ちゃんが深海水族館の袋を上げる。

 

「梨子ちゃんこそ。何か気になる。」

 

僕達は深海水族館の最後の売店で今日の記念にお互いに何か買うことにした。ここにくるまで中は見てない。

 

そこまで高いものを選ばないのはもはや暗黙の了解だったが、梨子ちゃんは何を選んでくれたんだろう?

 

ちなみに僕はメンダコのポーチを選んだ。ボールチェーンのついたホルダータイプで梨子ちゃんのイメージカラーのピンク色のやつだ。

 

「じゃあ、せーので開けてみよっか♫」

 

「うん、気になるし」

 

「「せーの!」」

 

僕の袋の中から出てきたのはセピアカラーのシーラカンスをかたどった合皮のキーホルダーだった。

 

「うわ!すっげえかっこいい!」

 

それを聞いた瞬間、梨子ちゃんが微笑む

 

「よかった。コウくん、職員さんのシーラカンスの話、すごく熱心に聞いてたし、ものすごく真剣に説明読んだりしてたから、好きなんだなって思って!」

 

僕は興奮して言う。

 

「ほんとかっこよくてさ、あのシーラカンス…。ちょうど家の鍵のキーホルダー無くて何か買おうと思ってたんだ。ありがとう!」

 

「そんなに喜んでくれるなんて思わなかったなぁ。メンダコのポーチもかわいい!バックにつけよ!」

 

そう言いながら、ハンドバックにメンダコのポーチをつける。

 

「そういえば、コウくん、今日何時まで大丈夫?」

 

おもむろに聞いてくる。一瞬ドキンとした。心臓に悪い。

 

頭にコンドームのことがちらつく。

 

煩悩よ、消えろ!!!

 

「明日から学校だけど、まぁ特には。宿直も今日はないはずだし」

 

「そうなんだ。じゃあちょっと一緒に行きたいところあるんだ。かえるの遅くなるかも知んないけど。」

 

「どこ?」

 

「ないしょ。行ってみたらわかるよ。」

 

どちらかといえば、美人なイメージの梨子ちゃんがこどもみたいに笑う。

 

なんで僕の友達はこんなに可愛いんだちくしょう。

 

 




次回更新は1月27日(土)の夕方ごろを予定しております。
感想やアドバイス等よろしくお願いいたします。

[以下作者あとがき]

テスト勉強がつらい。専門外の科目残り三つがエグイのでSS書いて絶賛現実逃避しております。無条件で単位よこせ()

どうでもいい話なんですが、今回のスクフェスのイベントの曲、ドラクエのどっかのフィールドのBGMに似てませんかね・・・?

今回の話は沼津で梨子ちゃんとコウ君がデートする話でした。
もうちょいコウ君と梨子ちゃんの会話を入れていきたかったんですが、文字数が大変なことになりかけたので減らしました。
減らしてこれです、助けてください。

今回の話は自分が一人旅で沼津へ行った時のことを思い出して書きました。
時間の都合で内浦には行けなかったのですが、本当に楽しかったです。

沼津港あたりのくだりはまさに僕が回った道順です。
(ちなみに作者は沼津駅から歩いて沼津港に行きました)

深海魚水族館本当に楽しいところでした。
シーラカンス、本当にかっこいいのでぜひ実物を見てほしいです。
他にも魅力的な生物がたくさんいますし、職員さんたちのお話も聞いてて楽しいです。

ちなみになんですが、コウ君の服装なんかは普段の作者の服を参考にしています。
パーカーの文字には好きなバンドの曲名を使わせていただきました。
GRAND FAMILY ORCHESTRA/リンディンドン
https://youtu.be/s3ufB52PSrk

次回からまた話が大きく動き出します。楽しみにしていただければ幸いでございます。

UAが4200近くになりまして、当初こんなに多くの方にアクセスしていただけるとは思っていなかったのでとてもうれしいです。

もっと多くの方に見ていただけるように精進しようと思います。
この作品を読んでくれているすべての方に感謝します。
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