「まさかこんなことになるなんてね…」
スマホを眺めながら綺麗な金髪をした女性が
ヘリコプターの中で呟いた。
「ま、わたしからしたらラッキーなのかも…思っちゃダメなことなんだろうけどね。」
ヘリコプターは内浦へ向けて順調に進んでいく。
・・・
「ごめん、コウ、千歌起こしてきて。あいつ、今日から学校ってこと忘れてまた夜更かししたんじゃないかな。」
美渡さんがおもむろに言う。
「わかったあ…」
「あんたも眠そうね?昨日帰ってきたの遅かったし、何してたの?早くしないと梨子ちゃん来ちゃうよ?」
「…わかってる。千歌ちゃん起こしてくるね。」
昨日あれからしばらくぼーっと春の海を眺めていた。
どうしたらいいかわからなかったんだ。
家に帰ってからも正直上の空で、美渡さんと何か話したとは思うが、何を話したか覚えていない。
千歌ちゃんも部屋にいたと思う。
自分の部屋に行ってから我に帰ったことだけは覚えている。
梨子ちゃんの体温が忘れられなくて、あの甘い声が頭から消えなくて、部屋の布団に潜ってからもあの時の映像が頭から消えてはくれなかった。
正直眠れていない。
実は昨日出かけたのは夢なんじゃないか。
そんなことさえ考えてしまう。
でも自分の家の鍵に付いているシーラカンスのキーホルダーは間違いなく昨日のことが事実であることを物語っていた。
「千歌ちゃん、朝だよー。今日から学校。」
部屋の引き戸をノックすると、制服に着替えた千歌ちゃんが出てきた。
「…おはよ。」
眠そうと言う感じではない。
そうなんだけど…なぜか元気のない感じだ。
「おはよ。早くしないと梨子ちゃんきちゃうよ。」
僕が梨子ちゃんの名前を出す時、どんな顔をしているんだろう。変な顔してないだろうか。
「…うん、そうだね。行かないと。」
「大丈夫?なんか元気ないけど。」
いつもはものすごくテンション高いのになんで今日はこんなにテンション低いんだろう。
「大丈夫。ちょっと体調悪いだけ。」
「そっか。お大事に。」
僕らはそのまま居間に向かう。
本当にどうしたんだろう…?
・・・・
「千歌ちゃん、コウくん、おはよう。」
梨子ちゃんは昨日と変わらず、僕の前で笑っている。
「おはよ。」
「おはよう。」
いつも通りだ。昨日のことなんかなかったように。
僕も笑えてると思う。顔が赤くなってないかだけ心配だ。
「あ!私、忘れ物しちゃった!ごめん先に行ってて!」
千歌ちゃんが家に戻っていく。体調が悪くてもそそっかしさは変わらないのかも。
「…千歌ちゃんどうしたの?」
梨子ちゃんも元気のなさに勘付いたらしい。僕に聞いてくる。
「いや、ぼくもわからないんだよね。多分宿題朝までやってたとかじゃないかな?」
「…そっか。そういえば私にもヘルプのラインが入ってたわ。」
僕らはいつも通りの道を歩いて学校へいく。
いつもと違うのは千歌ちゃんがいないこと。
いつもと違うのは僕と梨子ちゃんが二人で並んでいるということ。
梨子ちゃんと話すのは楽しい。
そして、今は二人でいることが嬉しいんだ。
昨日の話や、学校の話、曲作りの話をするたびに昨日のことが自分の中で鮮明に浮かんでくる。
僕の中の言えない秘密が、僕と梨子ちゃんの秘密が、痛い。
なんでだろう。嬉しいはずなのに。
わかってるのかもしれない。
僕はたぶん、この子のことが----
・・・・
6時間目が終わって今から部活だ。
千歌ちゃんは相変わらずで朝から変わらない。
僕はお昼はアキラたち軽音楽部の連中と食べていたが、梨子ちゃんたちはスクールアイドル部の3人でお昼ご飯を食べていた。
その時も相槌は打つものの、いつもとやっぱり違ったそうだ。
ラブライブ のことが響いているのだろうか?
朝、スクールアイドル部のグループラインを見たらラブライブ のエキシビジョンでの参加について、メールのスクショ画面と一緒に花丸ちゃんから説明されていた。
みんなが戸惑っている様子はそれに続くコメントからも見て取れる。
僕からしたらエキシビジョンに呼ばれること自体、名誉なことなような気がするが、今まで戦ってきた本人たちからしたら拍子抜けなことなのかもしれない。
それに千歌ちゃんはAqoursのリーダーだ。
常に元気な分、僕には想像がつかないところで悩みがあるのかもしれない。
「千歌ちゃん、部室行こう?梨子ちゃんは先に行ってるってさ。」
こんな時は僕が元気付けてあげたい。だけど、僕は気のきいた言葉がすぐに出るほど器用じゃない。
「うん、そうだね。大事な話もあるみたいだし!」
千歌ちゃんは無理に元気を出すように言うと僕の手を掴んで部室に向かって歩き出した。
・・・・
「…一晩明けたけどみんなどうずら?エキシビジョンの件…」
ゴールデンウィークがあけて、久しぶりに来た部室の空気が重い。
「突然すぎるよねえ…」
曜ちゃんはあたまの後ろで手を組みながらそう言う。
「出れないこともないし、冬もあるからいいんだろうけど…なんだかなぁ。」
やるせなさ。脱力感。
そんな空気が部室を包む。
「ま、まあほら!またドームのステージに立てる機会ができたんだと思おうよ!」
ルビィちゃんが奮い立たせるように言う。
僕も正直その意見に賛成ではある。
「当たり前にあると思ってたことが急になくなっちゃったからねえ…」
善子ちゃんが言う。
僕は胸が痛い。
当たり前のものが消える虚しさは僕が一番知っている。
そこにある虚しさは理由は違っても同じなのかもしれない。
そして無言の時間が訪れる。みんな何を言えばいいのかわからない。
この思いの行き先がわからないんだ。
その時、部室のドアがノックされ、扉が開く。
「チャオ〜!元気…ではないみたいね。」
「「「「「「鞠莉ちゃん?!」」」」」」」
元気のなかった千歌ちゃんまで大声をあげる。
そこにいたのはぶっ飛んだ金持ちと噂の綺麗な金髪をした卒業したはずのメンバーと聞いている人だった。
「突然ごめんね?はい、これお土産。イタリアのお菓子の詰め合わせよ。」
「びっくりしたずら。イタリアにいるんじゃなかったの?」
本当にびっくりした感じで花丸ちゃんが言いながら、パイプ椅子を出す。
花丸ちゃんはすぐにお菓子の箱を開けると、みんなが食べられるように出した。
イタリアにいるはずの先輩が突然目の前にあらわれるんだから驚くのも仕方ない。
「さっそくだけど、今日来た本題を話すわね。」
鞠莉さんがハンドバックの中から一枚の紙を出す。
「みんな、Summer Rocksにでてみない??」
みんな鞠莉さんが何を言ってるのかわからないと言った感じだったが、ロックが好きな善子ちゃんと僕にはわかった。
「「Summer Rocks?!」」
二人で大声を上げる。
これはすごい話だと思う。
次回の更新は2/5(月)を予定しております。
コメントやアドバイスなどなどお気軽にお願いいたします。
[以下作者あとがき]
春休み始まったはずなのに、大学がある時以上に色んなことに翻弄されております。こんばんは、作者です。
最近ドタバタしてまして、マジでストックが作れてないんですよね…3月の更新大丈夫なんだろうか…
こんな時はマンウィズでも聞いて自分を奮い立たせようと思います。
Raise your flag/MAN WITH A MISSION
https://youtu.be/PiQpGzYMVos
datebase/MAN WITH A MISSION feat.TAKUMA(10-feet)
https://youtu.be/d2Kj7YybM5o
あとあれですね、今回のスクフェスの新規追加の曜ちゃんかわいすぎじゃないですか(๑╹ω╹๑ )
作者は曜ちゃん狙いで貯めまくった石使ったら梨子ちゃんSSRとダイヤさんSSR出ました!梨子ちゃんのツインテ新鮮だけど可愛いですね!
本編に鞠莉ちゃん出てきました!そして、「 Summer Rocks」!
このsummer rocksが物語の中で重要なものになってきます。
元気のない千歌ちゃんと心配するコウと梨子。そして、summer rocks。色々な話が出てきましたが、少しでも皆さんに楽しんでもらえる作品を作れたらと思っております。
なにかと翻弄されがちな作者ですが、増える数字や皆さんからのコメントに日々励まされております。これからも読んでいただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。