「あら、そっちの二人はご存知みたいね。コウよね?はじめまして。Aqoursのマリーこと小原鞠莉よ♡」
自己紹介に合わせてウインク。絵になる人だ。
「はじめまして、宮木コウです。」
「私、Seeker大スキなの!活動休止のこと、聞いてるわ。ミツキは元気?」
「ミツキを知ってるんですか!?」
本気でびっくりする。
もしかして、ミツキが言ってたスクールアイドルの友達って鞠莉さんだったのか?!
「だって私のお友達だもの!聞いてみるといいわ♪2年前にSeekerがSummer Rocksに初出場した時に仲良くなったのよ!…リサともね。」
「……っ!」
驚きのあまり、僕は何も言えない。
間違いない。
この人は僕らのことを、僕らに起きたことを知っている。
あの後のことも知っているのだろうか?
それにこの人、フェス関係者なのか?
「コウくん、Summer Rocksって何?」
曜ちゃんが聞いてくる。
まぁロックをそこまで聞かない人は知らなくても仕方がないかもしれない。
「毎年、夏に関東で開かれる4日間開催の大規模なロックフェスだよ。多くのバンドやアイドルはこのフェスに出ることを一つの目標にしてる。」
「そ!れ!に!」
善子ちゃんが手を上げながら言う。
「このフェスに出られるってことは、それだけ音楽シーンの注目を集めてるってことよ!若手から大御所までたくさんのバンドやアイドルが出るわ!」
「あー!ニュースのエンタメコーナーとかで聞いたことある!」
曜ちゃんはポンッ!と手を打つ。
「って!そのステージに私たちでるの?!」
そして驚いた。本当に純粋な子だ…
「曜ちゃん落ち着いて!まだ出るってきまったわけじゃないよ!」
慌てふためく梨子ちゃんは同じく慌てる曜ちゃんを落ち付けようとする。まずは梨子ちゃんが落ち着こうよ。
こほん。と咳払いをすると落ち着きを取り戻して鞠莉さんに向かい合った。
「…で、なんで鞠莉さんが急にそんな話を私たちに?」
「うん、順を追って話さなきゃいけないわね。ほんとは社外秘なんだけど、あなた達だしまあいいわ。」
カバンのなかから、名簿のような紙を出し、梨子ちゃんに渡す。
「私今、パパの会社を手伝いながらイタリアの大学に通ってるの。最近は色々すごくてね。実際に出席しなくても自分の取っている授業のネット配信でなんとかなったりするわ。」
やれやれというような動きをする。
いちいちモーションが大げさなのはあちらの癖だろうか?それでも外見が日本人離れしてるのでよく似合う。
「それでね。オハラグループがスポンサーをしているSummer Rocksのお手伝いをしてるの。これも修行の一環ってやつね。」
僕らは鞠莉さんの話を慎重に聞く。
「Summer Rocksは私がお手伝いしてる会社の企画する大型ロックフェスなの。それまでもこれを見るために、帰国したりしてたわ。Rockが大好きだからね♡」
ウインクをする鞠莉さんがなぜか僕を見ていた気がする。
「それで今回ワタシはキャスティングの手伝いを任されてるのよ。そこで、今の日本でのスクールアイドル人気の話が上がってね。それでラブライブ 前回大会優勝グループのAqoursに出てほしいって話しになったのよ。」
僕の前にクリップに止められた紙の束を置く。
スマホで情報を調べながら確かめて行くと、鞠莉さんの話が嘘じゃないことがよくわかる。
たしかにsponserd by オハラグループとなっていた。
僕は頭を抱える。
一体どれだけ大きいんだろうオハラグループ…大型フェスのスポンサーできるってよっぽどでしょ…
「一つ勘違いしないでね。私が強引に推し進めようとしているわけではないわ。これはSummer Rocksの運営で話し合って決めたことよ。」
鞠莉さんはキッパリと言い切る。
「今のAqoursだったら誰にも文句は言えないくらいの知名度はあるわ。夏の一つの目標にならないかしら?」
鞠莉さんはそこまで言うとペットボトルのお茶をあけて飲む。ここまで話したので、口が渇いたらしい。
「んー!!やっぱり沼津のお茶は美味しいわね!!…突然なことを伝えて申し訳ないけどね。私も本気よ。もし出るなら9人で出たいとも思ってるわ。それに…」
「ラブライブがエキシビジョンになっちゃったからみんな気が抜けちゃうかな?って思ったのも事実だし。もちろんギャラもでるわよ?」
僕らは何も言えない。その話をみんなでしていたところだ。
「マルはしっかり考えるべきだと思うずら。」
慎重な感じで花丸ちゃんが言う。
「滅多に立つことができないからこそ、考えるべきだと思う。」
どうしたらいいかわからないのか花丸ちゃんは震えている。
「…花丸ちゃんはどうしたい?」
ルビィちゃんが聞く。ルビィちゃんも少し戸惑っている感じだ。
「マルは…たちたい気持ちのが強いかも。また9人でステージに立てるなら…。ラブライブ と別の場所なら、違う輝きが見つかるかもしれない。」
素直な思いを花丸ちゃんは告げる。
「ならルビィは賛成!ちょっと怖いけど、私も興味あるし!」
ぴょこぴょこ動きながらルビィちゃんが言う。
ただ、花丸ちゃんに合わせるのではなく、本当に興味があると言った感じだ。
「私は断然賛成よ!Summer Rocksに立てるなんて、こんな素晴らしいこと無いと思うわ。」
善子ちゃんは興奮を隠せない。
そりゃそうだ。
僕らだってSummer Rocksのメインステージであるガイアステージの常連になることが目標だったんだから。
実際に立ったステージは規模としては下から数えた方の早いリバーステージだったが、これからどんどん上がっていくつもりだった。
善子ちゃんは他の子よりそのステージの意味合いを理解している分、思いの強さを感じる。
「2年生達はやる気メラメラみたいね。嬉しいわ!ちかっち達はどう?」
曜ちゃんが言う。
「私はみんなが向かう方向へ。どこまでもついて行くであります!」
満面の笑みだ。本当にAqoursのことを信じていることを痛感させられる。
「私も出てみたい。ラブライブ に出てから思ったんだ。見たことのない景色をもっともっと見てみたいって!」
梨子ちゃんも食い気味に言う。ワクワクしている様子が僕にも伝わった。
僕は自分が出るわけではないが、ワクワクしてきた。
僕が作った曲で、誰もが憧れるステージでAqoursが輝けるかもしれない。
作曲者として、こんなに嬉しいことはないのではないだろうか?
そして、Seekerで再び出ることができたらどんなに嬉しいだろう…という思いまで浮かんできた。
これは僕らの次にも繋がるかもしれない大きなチャンスに思えた。
「fantastic!! これはもう満場一致…」
鞠莉さんがハイテンションにいいきろうとしたその時。
「ごめん、鞠莉ちゃん。」
みんなが乗り気になってる中、千歌ちゃんが重そうに言う。
「みんなもごめん。今は…ちょっと考えられない。」
うつむきながらそう言う千歌ちゃんは震えている。今にも泣きそうな、脆さを感じた。
「why?!…ちかっちが一番でたがると思ったわ…」
「ごめん、鞠莉ちゃん。みんなもごめん…私、今日は帰るね!」
そのままスクールバックを掴むと駆け足で部室を出て行ってしまう。
僕はとっさに駆け出して、千歌ちゃんを追いかける。
・・・・・
部室棟を出たところで千歌ちゃんを捕まえる。僕はとっさに千歌ちゃんの腕を掴む。
「ちょっと待ってよ!千歌ちゃん!一体どうしたんだよ?!」
「…コウくんに言っても仕方ないよ。」
千歌ちゃんは何があったか言おうとしない。
朝から様子がおかしかったけど、本当にどうしたんだろう。
「…朝から元気なかったよね?何があったの?ラブライブ のことだけじゃなさそうだけど」
「…ごめん、本当にごめん。だけど今、コウくんに優しくされたくない。手、離して!」
キッと睨まれる。
見たことのないその顔に僕は無性に腹がたった。
「っ…そーかよ!じゃあ勝手にしろ!」
僕は手を離してしまう。
「…ふんっ!コウくんのバカ!」
そう言い残して学校を出て行く。
僕に止めることはできなかった。
・・・・
僕は部室に戻る。みんなの心配そうな目が痛い。
「千歌ちゃん、大丈夫?」
梨子ちゃんが心配そうに言う。
「…知らない。何も話してくれないし。とりあえずほっとくしかないんじゃないかな。」
「でも…」
こうはいっても内心僕も心配なんだ。なんであんなに僕に怒ってるのかわからない。
それに最後の「コウくんに優しくされたくない」ってどういう意味なんだろう…
「なーんかsmellぷんぷんねえ…」
鞠莉さんが呆れたように言う。
「ワタシまだ一週間くらい日本にいる予定だし、ちょくちょく内浦には戻る予定だから、早いうちに連絡してね。明日のこともあるから今日はこれで失礼するわ。」
そう言い残して鞠莉さんは部室を出て行く。
「…ここは私に任せて欲しいな。」
曜ちゃんが言う。
「私、千歌ちゃんさがしてくるね!」
突然なことが続いてみんなあっけにとられている。
そのまま曜ちゃんも部室を出て行った。
僕は何故かその後ろ姿に色々な思いを背負っているように感じてしまった。
次回の更新は2/8(木)を予定しております。
お気軽にコメント、アドバイス等お願いいたします。
次回は千歌ちゃんパート、ようちか回です。
[以下作者あとがき]
夜バイトだったりで更新できるか微妙だったので朝早くから更新しました。おはようございます、作者です。
しばらく勉強のためにバンドからは離れていたんですが、四年生卒業ライブには出てくれと言われまして、ぼちぼちベース弾いてます。某おしゃれなパンクバンドのコピーなんですが、やっぱりバンドは楽しいですね。
そんなバンドやステージの楽しさを文章で伝えられるようこの物語を展開していけたらなあと思ってます。
さて!今回の話でSummer Rocksについて触れました!
夏フェスって設定ですね。
作者はロッキンとサマソニは経験済みなんですが、ロッキンのイメージで話を進めて行きたいと思っております。
(サンシャインSS書いてる人はわかると思うんですが、鞠莉ちゃんに任せれば大体どうにかなる説ほんとですね…)
そして、どうしようもなく感情を爆発させてしまった千歌ちゃん。
コウくんのことも拒絶してしまいました。ますます不安になっていくAqoursの面々にこれからどんなことが起こるのでしょうか。
千歌ちゃんがどうなるのかは曜ちゃんの手にかかっています!曜ちゃん頑張ってくれ!
てな訳で、次回はようちか回となります。
いつも読んでいただいてありがとうございます。これからも皆さんに楽しんでいただけるようなそんなストーリーを作りたいと思っております。