終わりがもたらしたはじまり   作:ふぁんた

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プロローグ2「活動休止」

内浦で高海家三姉妹が驚愕の叫びをあげる2月前・・・

 

2月某日の東京都にある某ライブハウス。

 

E、A、D、G

 

いまさらチューナーなんてなくてもベースのレギュラーチューニングくらいなんでもないが、念には念を入れてクリップチューナーを起動させる。

 

うん。耳の調子も悪くはない。チューニングはぴったりだ。試しに手癖になっているフレーズを弾いてみる。

ーーー悪くない。だけど・・・

 

使い慣れたwarwickのベースはまだ振り切れていない僕の心を示すように響いた。

 

音は素直で、プレイヤーの心を映す鏡のようだ。

端からみたら、何もかわらないかもしれないけど、弾いている本人からしたらまだ濁りがあるように聞こえる。

 

このバンド最後かもしれないライブだ。見せつけてくれよ。

 

ドアをあける音がする。声を聴かなくてもその金メッシュヘアーと革ジャンで誰かわかった。

 

「コウ、そろそろ開演の時間だぞ。大丈夫か?」

ギターでこのバンド、「Seeker」のリーダーのハヤテが僕に問いかけてくる。

 

「ああ。問題ない。僕らの活動休止前最後のライブ、ぶちあげよう!!!」

「・・・ああ!問題ねえなら行くぞ!キリヤとミツキもばっちりみたいだぞ。」

 

歌いながら毛先を青色に染めたアシメの髪型を整えるキリヤはソファに立てかけてあるサブのギターを手に取るといつでもいいぞといわんばかりに笑う。

 

赤みがかったロングの茶髪を振り乱しながら練習パットをたたきまくってるミツキは自分の世界に入り込んでいたものの、ハヤテが来たことに気づいて我に返った。

 

僕は楽屋においてある大型の鏡で最終チェック。少しワックスをつけて整えた茶色みがかった黒髪。はやりのマッシュベースの髪型。白とグレーの迷彩マウンテンパーカー。SeekerのバンドTシャツ。グレーの細身のジーンズ。そして、あのネックレス。いつも通りだ。問題ない。

 

「全員行けんな?活動休止前最後のライブ、ぶち上げるぞ!!」

熱いこと言ってくれんなあ伊達にハヤテはリーダーやってない。

 

「そんなこと言われなくてもわかってるわよ。あんたこそ、私についてきなさいよ?今日はガンガン強気なドラムたたくからね。」

やや、冷めながらもその目はおもちゃを前にした子供みたいだ。さすが僕らの姐さん。そこに痺れる、あこがれる。

 

「俺も今日は煽りまくるから、お前らも全力で歌って演奏してくれよ?それが俺たちにできる精いっぱいの追悼だ。だろ?」

わかってるよ。キリヤ。お前が一番つらいのにな。一瞬の沈黙。ギター、ドラム、ギタボときてそしてベースの僕の番だ。

 

「見せつけよう。そんで届けるぞ。僕たちの最高のライブを!!」

僕の言葉が終わるのと同時にハヤテが叫んだ。

「Seeker、ぶち上げんぞ!!!!」

「「「「うおおお!!!」」」

 

 

 

ライブはこれまでの中でも最高の出来だった。

 

事務所の社長も、ライブハウスのブッキングマネージャーも口をそろえてほめてくれた。そして、僕たち演者から見る観客席も、いつも以上の熱気だった。

 

キャパ700~900のライブハウスでギリギリのソールドアウト。今、俺たちができる最高のライブを届けられたと思う。

 

―――でも僕たちは、まだ・・・

 

「んじゃ、メンバーでうちあげといきますかあ!!」

ベロンベロンに酔っぱらったハヤテが言う。あちゃあ・・・これは朝までのコースだ・・・

明日が土日でよかった。

 

事務所の人たちやスタッフの人たち、ライブハウス関係者たちとの打ち上げを終えて時刻は午前一時。

 

高校二年生の僕とキリヤは本当は帰らなくちゃいけないのだが、そこはバンドマン。周りに関係者もいるしご愛敬だ。

 

「ほら、ハヤテしっかりしなさいよ!ったく。」

ミツキがハヤテの頭を小突く。キリヤは酔ったハヤテに絡まれてその相手をしていた。

 

大学二年生たちはこんなんでいいのか?と思うと同時に僕とキリヤはなるならミツキみたいな大学生になろうとおもった。

 

「まったく。お前らも成長せんとこはかわらんなあ。活動休止中にそこらへんも含めて成長してほしいもんだ。今日は誰の家の前で降ろせばいいんだ?」

マネージャーの手越さんが苦笑しながら言う。僕もつられて苦笑する。

 

今現在、僕たちを乗せた機材車は僕らの家がある千葉県の方面へ向かって走っていた。

 

「それじゃ僕の家の前でお願いしていいですか?準備もしてありますし。」

「おっけー、コウの家な。」

 

しばらくしたら僕の家についた。僕の苗字、宮木の字が見える。とりあえず持っていくことのできる機材を車のトランクから出して、荷物を僕の家に運び込む。

 

「んじゃあな。残りの機材は後日事務所にとりに来るなり、でかいもんは運ぶから連絡するなりしてくれよ?そ・れ・と」

 

手越さんは大切なことを伝えるとき、語を切る癖がある。わかりやすいサインだ。

 

「どんな形でもいいから曲書いたら見せろよ。お前ら一人一人いい曲書くんだからさ。まあ無理にとは言わんが。」

「はい。」

 

僕らは少し力なくーーー酔いまくってるハヤテでさえもーーー微笑んで、手越さんを見送った。

 

 

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