終わりがもたらしたはじまり   作:ふぁんた

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第16話「今度は私の番だから」

走った。

 

だれにも会いたくない。話したくない。

 

いろんなことがありすぎて私の中はもうぐちゃぐちゃで。

 

昨日の夜見てしまったあの映像が消えてくれなくて。

 

こんなにも痛いなんて思わなかった。

 

そして、自分が嫌になる。

 

コウくんは何もしていない

 

そして、私達に新しいチャンスになるかもしれない話を持ってきてくれた鞠莉ちゃんだってそうだ。

 

もちろん、梨子ちゃんだってそうだ。

 

誰も悪くない。

 

悪いのは…私。

 

全部、私が…悪いんだ…

 

「…なんか、色々あって疲れちゃったな。」

 

学校から離れたことを確認すると私は歩く。

 

これからどこに行こう?

 

家に帰りたいとは今は思えない。

 

こんな時、大人だったらお酒を飲んでたばこを吸うのかもしれない。

 

今そんなことできないのはわかってるけど、ある意味そんなはけ口があるのが羨ましかった。

 

とりあえずあてもなくグルグル歩いてたらいつのまにかバス停に着いてしまう。

 

「結局、家しか居場所ないかな…」

 

自分の住む場所を呪うように呟いた。

 

なんでこんな田舎なのかな。

 

みんなどう思ったんだろう。

 

Aqoursだってそうだ。

 

私のわがままから全てが始まって、いろんなところでみんなを振り回した。

 

今日のことだってそうだ。

 

私のわがまま。

 

黙って頷けば、よかったんだ…

 

ただバスを待つのは何かに負けたような気がしてまたあてもなく歩く。

 

下を向いて歩き続けたその時、肩に手が置かれた。

 

びっくりして振り返ると

 

「やあっっとみつけたぁ!!!千歌ちゃん、もう見失わないからね!」

 

「曜…ちゃん…?」

 

突然目の前に現れたのは息を切らせて全身汗だくの曜ちゃんだった

 

「ちょっと私に付き合って!」

 

あんなことをしてしまったのにそこには満面の笑みの曜ちゃんがいた。

 

・・・・・

 

「凹んでる時はいい景色見るのが一番だよ!」

 

私は曜ちゃんの家から近いびゅうおに連れてこられた。

 

半ば強引だった気もするけど、私には抵抗する気力もなかった。

 

天気が良かった今日の空には真っ赤な夕焼けが浮かんでいて、展望台のちょうど真ん中、海と夕焼けが見えるところにあるベンチに二人で並んで座る。富士山が綺麗だ。

 

「はいこれ、みかんアイスゼリー!好きでしょ!」

 

「…うん、ありがと。もらうね。」

 

少しの間、二人でみかんアイスゼリーを無言で吸う。こんな時でもみかん味は美味しい。

 

「で?どうしたの?千歌ちゃん。朝から元気なかったらしいけど。お昼も上の空だったし」

 

「なんでもないよ…。ちょっと体調悪いだけ…」

 

私はなるべく普通に応えようと努める。

 

だって言えるわけない。こんなぐちゃぐちゃな気持ち。

 

言葉に表せるかもわたしにはわからない。

 

「…ふーん。えいっ!」

 

「ひょーひゃん!?」

 

両手でほっぺを挟んでムニムニされる。

 

「ここは本音を言うところだよ!!…誰にも言えないから悩んでるんじゃないの?梨子ちゃんやコウくんにも。」

 

「……」

 

図星すぎて何も言えない。

 

「それは昔から千歌ちゃんのことを知ってるわたしでもダメなの?」

 

「…え?」

 

「私、本当にいろんな所で千歌ちゃんに助けられてるんだ。だからまた一緒にAqoursできることが決まった時、本当に嬉しかった。」

 

「もし、今千歌ちゃんが困ってるなら私は力になりたい。だから千歌ちゃん。悩んでるなら話して欲しい。」

 

真剣な顔の曜ちゃん。優しさが眩しい。

 

「私、コウくんや梨子ちゃん以上に千歌ちゃんのこと知ってるって思ってる!…私ちゃんと受け止めるよ?」

 

満面の笑顔の曜ちゃんを見る自分の目が涙で霞むのを感じる。

 

とっさに体が動いて、私は曜ちゃんを抱きしめてしまっていた。

 

「よーちゃん!私、私…!また、一人で考えて一人でかかえこんじゃった…!ごめんね、本当にごめんね…!」

 

「…よしよし。色々抱え込んでたんだね…。」

 

私は曜ちゃんに抱きしめられながら曜ちゃんの優しい声に身を委ねるのだった。

 

・・・・・

 

「私、色々どうしたらいいかわからないんだ。」

 

曜ちゃんのおかげで落ち着きを取り戻すことのできた私は話し始める。

 

「Aqoursを取り巻く環境はどんどん変わっていくのに、それに私がついていけてないようで、置いてかれてるみたいで。ものすごく、それが辛いの。」

 

「これでいいのかって。ただ、流れに身を任せていいのかって。そんなことばっかり考えちゃって。そんな時に新しいライブの話が入ってきて…何も考えられなかった。それに昨日…」

 

しまった、口を滑らせた。

 

流石にこれはまずい。

 

「昨日?ラブライブ のこと?」

 

「ごめん、今のは忘れて!」

 

言えない。梨子ちゃんのことなんて。

 

Aqoursにとってもよくないんじゃないかって思う。

 

ムニッ!

 

またほっぺを挟まれる。曜ちゃんの手の温度が伝わる。なんかこれくせになりそうだ。

 

「ちぃーかぁーちゃん!ここは本音を言うところ!言っちゃいけないことなんてないよ!何があっても私の胸にしまっておくから。だから話して?」

 

私は観念して話すことにした。

 

「…昨日ね、コウくんと梨子ちゃん、一緒に出かけてたみたいなんだ。」

 

「コウくんと梨子ちゃん?曲作りのことで何かしてたのかな?」

 

「わかんない。…でも梨子ちゃんがコウくんを抱きしめてるとこ見ちゃったの。」

 

それを聞いて本気で曜ちゃんが驚く。

 

「えっ!…まぁありえない話じゃないのかも…」

 

「何を話してたのかとか、そんなことはわからなかったけど…だけど、それを見た時、見たらダメだって言う思いとなんで?って思いと別になんて言ったらいいかわからない気持ちがあるのに気づいたんだ。」

 

曜ちゃんは黙って聞いてくれている。

 

話していて気づく。

 

私は自分と向き合うことを怠っていた。

 

「なんだか梨子ちゃんもコウくんもどんどん私の知らないところに行っちゃいそうで…。それがすごく怖いの…でもその理由もわからないんだ…」

 

曜ちゃんを見る。曜ちゃんは笑顔。

 

「…そっかあ。千歌ちゃんはあの時の私と同じなのかもね。」

 

「あの時?」

 

なんだろう?正直心当たりがない。

 

「私ね。梨子ちゃんが転校してきて千歌ちゃんと一緒に曲作ってる時、ちょっとだけ嫉妬ファイヤーしてたんだ。」

 

嫉妬ファイヤーにわざわざビブラートをかけて言う。

 

どことなく鞠莉ちゃんを思い出すような動きだ。

 

「嫉妬?」

 

「うん。千歌ちゃんと梨子ちゃんがすっごく仲良くて。いつの間にか私が入っていけなくなりそうに思えちゃったんだ。」

 

切なそうに曜ちゃんが言う。

 

「そんなことないよ!!曜ちゃんがいたから私はいるんだよ!」

 

「…わかってる。あの時、千歌ちゃんが梨子ちゃんが、鞠莉ちゃんが助けてくれたから私は今もAqoursで笑ってられるんだ。」

 

私は予備予選の前に曜ちゃんとステップを作り直したあの日のことを思い出す。

 

あの時、曜ちゃんは泣いて私を抱きしめていた。

 

そんなことを思っていたんだ…。

 

「…千歌ちゃんは今きっとどうしたらいいかわからない気持ちでいっぱいなんだとおもうよ。私だって、ラブライブのことはどうしたらいいかわからない。」

 

そこから一口で残りのみかんアイスゼリーを吸い切ると真面目な顔で私を見る。

 

「でもね、コウくんと梨子ちゃんを見て感じた気持ちの答えはきっと自分の中で見つけなきゃいけない気持ちだとおもう。」

 

「自分の気持ちに素直になって考えてみてよ。千歌ちゃん。」

 

私は目を閉じて考えた。

 

久しぶりにコウくんにあった日のこと。

 

部屋で一生懸命ベースを弾くコウくん。

 

新歓ライブでギターを弾きながら暴れまわるコウくん。

 

玄関先でたけのこを撫でながらうとうとするコウくん。

 

一生懸命誤魔化そうとしつつ最後には結局素直なコウくん。

 

そして、私も忘れていた遠い昔の約束ーーーーーー

 

もちろん梨子ちゃんだって大好きだ。

 

だけど。

 

それは友達としての感情。

 

親友としての信頼。

 

ふと考えて浮かんでくるのは。

 

コウくんだ。

 

コウくんの姿だ。

 

たまらなく切なくなる。

 

「…気がついた?」

 

曜ちゃんの声が聞こえる。

 

「そっか、私…私…コウくんのこと…」

 

優しく微笑む曜ちゃんがそばで見守ってくれている。

 

 

「好きだったんだ…コウくんのことが…!」

 

 

その時、目に涙が溢れてきて、どうしたらいいか自分でもわからなくて。

 

とっさにまた曜ちゃんを抱きしめてしまう。

 

「どうしよう…私!コウくんに酷いこと言っちゃった…!」

 

泣いた。

 

そんな私に曜ちゃんは優しくて。

 

ずっとこうしていれたらいいのにって思ってしまった。

 

「千歌ちゃんは千歌ちゃんの気持ちに正直にいるべきだと思うよ。だって、誰かを好きになるのって本当に素敵な気持ちだと思うから!」

 

泣きじゃくる私の頭を撫でながら曜ちゃんが言う。

 

「千歌ちゃんが落ち着いたらうち行こっか!今日はうち泊まらない?私の知らないコウくんのこと、もっと聞きたい!」

 

「うん…!ありがとう!曜ちゃん!」

 

私は涙を拭いて立ち上がった。

 

私にはしなきゃいけないことがまだたくさんある!

 

とりあえずみんなに、コウくんと梨子ちゃんに、謝らないといけない。

 

でもその前に、曜ちゃんと話してもいいよね?

 




次回更新は2/12(月)を予定しております。
コメントやアドバイス等お待ちしております。
次回は本編更新か番外編かで悩んでおります。

[以下作者あとがき]
春休みなのに、まったくもって心踊らない大学生です。はやくも全てを投げ出して旅行にでも行きたい。こんにちわ、作者です。

色んなものを投げ出したくなった時って個人的には音楽を聞いたり歌うのが一番だって思ってます。Hello sleepwalkersってバンドの夜明けって曲、最高なんで聞いてみてください。

Hello sleepwalkers/夜明け
https://youtu.be/JHJ_00VkPQk

最近だと小説やSSを書いて創作にぶつけるのも一つの楽しみになっております。

今回の話はようちか回でした!この話ものすごく書きたかった話なんですよね。一期の友情ヨーソロー回から思いついた話なんですが、うまくかけましたでしょうか?

千歌ちゃんも曜ちゃんの本当に純粋な部分を書きたいと思っておりまして、こういう雰囲気や空気が生まれるのは、ようちかならではじゃないかなぁと思ってます。

Aqoursのキャラクターの色んな部分をうまく書けていたらいいなって思ってます。

番外編ならば梨子ちゃん回を書きたいと思ってます。
次回は本編ならば、元三年生メンバー登場します!どんな風に話が進むのか楽しみにしていただけると嬉しいです。

いつも読んでくださってありがとうございます。UA7000超えました!コメントを下さる方や、評価してくださった方が居るからこのSSを続けられてます。本当にありがとうございます。これからも頑張っていこうと思います。
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