終わりがもたらしたはじまり   作:ふぁんた

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第19話 「交換条件」

「あー!果南ちゃん!ひさしぶりー!」

 

「千歌ー!久しぶりだね。元気?」

 

ダイヤさんと鞠莉ちゃんは壁ドンしていた自分たちが恥ずかしくなったのか赤くなりながらソファに座っていた。

 

私はそんなこと気にせず果南ちゃんと話す。

 

「果南ちゃんそっちは何時くらい?」

 

「こっちとそっちだとそこまで時差はないからね。こっちは夜の19:00くらいだよ。」

 

「へ?なんで?」

 

あれ?時差ってどうやって求めるんだっけか?

 

「オーストラリアにいるなら当たり前でしょ?日本と経度同じ反対側だよ?」

 

コウくんが横から入ってくる。えー?どういうことだっけ?

 

「久しぶりです、果南さん。」

 

「おーコウじゃん、久しぶりー!何年ぶりだっけ?今こっちすんでんだよね!」

 

コウくんと果南ちゃんは昔話に花を咲かせ始める。

 

今は果南ちゃんが単純に羨ましい。

 

コウくんと素直に話すのが今の自分にはどうしようもなく恥ずかしいから。

 

「そうですわ!あなたがコウさんですね?」

 

「あ、ごめんなさい。自己紹介が遅れました。宮木コウです。」

 

「いつもルビィがお世話になっていますわ。姉のダイヤです。」

 

ダイヤさんはコウくんに丁寧にお辞儀をする。そんなダイヤさんにコウくんはタジタジだ。

 

「いえいえ!こちらこそルビィちゃんには色々お世話になってます!」

 

「おねいちゃん!ルビィそんな迷惑かけてないよ!」

 

ちょっとだけむくれたルビィちゃんはダイヤさんに抱きついて反撃する。

 

いつ見ても仲の良い姉妹だ。

 

パンッ!

 

鞠莉さんが手を叩く。

 

部屋に一瞬静寂が訪れる。

 

「で!今日来た本題はSummer Rocksのことでしょ!関係者全員いるしちょうど良いわ!どうするか決めたのよね?…それと、ちかっちは大丈夫なの?」

 

鞠莉ちゃんは私のことを心配してくれている。本当にいろんなところに心配をかけてしまった。

 

「…うん、もう大丈夫だよ。自分のことが見えてなかっただけだから。曜ちゃんのおかげで色々見えたから。」

 

嘘じゃない。

 

私はAqoursが大切で、コウくんがひとりの男の子として好きだ。

 

それは揺るがない。

 

「…そう。まあ、今度ネホリハホリ話は聞かせてもらうわ。で!Summer Rocksには出たいの?出たくないの?」

 

私は真っ直ぐに鞠莉ちゃんを見る。

 

「出たい!新しい場所で、新しい輝きをみつけてみたい!それが私たちの答えだよ!」

 

「うん♪その答えをまってたわ!」

 

ソファに座っているダイヤさんは頭を抱えてため息をついている。

 

「えーっと…とりあえず教えてほしいんだけど、これどういう状況?Summer RocksにAqoursが出る出ないってどういうこと?」

 

…ん?

 

「あ…。カナンに詳しいこと話すの忘れてた☆」

 

私たちは心の中でずっこける。

 

そして、鞠莉ちゃん以外の全員が叫んだ。

 

「「「「「「「「説明してなかったんかーい!!!」」」」」」」」

 

「ダイヤにだけは言われたくないわよ!」

 

・・・・・・

 

それから鞠莉ちゃんは1から今回のことを話し始めた。Summer Rocksのこと、そして、ダイヤさんがなぜここにいるのか。

 

ダイヤさんの件に関しては私たちも本当に驚いた。鞠莉ちゃんは相変わらずめちゃくちゃする…

 

「なるほどね…色々わかったよ。鞠莉もダイヤもスカイプしてきてからずっと喧嘩してるんだもん、こっちの身にもなってよね。」

 

呆れたようにため息をつきながら果南ちゃんは言う。

 

「私はいいよ。どうせ夏の間は家の手伝いに帰ろうとも思ってたしね。それにまた9人で歌えるのも嬉しいし、それがSummer Rocksなんて、なおさら嬉しいよ!」

 

笑顔の果南ちゃんがそこにいた。

 

私たちが少し悩んでしまったことを聞いた瞬間で即決するんだから、果南ちゃんはすごい。

 

ダイヤさんは呆れているのかため息をついた。

 

「私はやっぱり難しいと思いますわ。」

 

はっきり言う。

 

「最後に私達が歌ったのは三月でしょう?そこからのブランクだってあります!それに、千歌さん達は今年受験生ですよ?ラブライブ もそうですが、両立は大変なんですよ。」

 

う…。痛い所を突かれた。そこはダイヤさんの言う通りだ。

 

進路調査書はとりあえず大学進学で出している。

 

具体的には決めてない部分があるものの、それはコウくんを含む私たち今の三年生全員に共通のことだった。

 

そして実際、私は受験勉強を進めてるかと言われたらまったくもって進んでいない状況だ。

 

「おねいちゃん、ラブライブ頑張りながら受験勉強もしてたよね?」

 

「ル、ルビィ?!」

 

いつになくはっきりとした声でルビィちゃんが言う。その声からは力強さを感じた。

 

「ルビィはおねいちゃんの気持ちもよく分かるよ。自分も辛かったからそれを私たちにさせたくはないんだよね?」

 

ダイヤさんが受験勉強してたのは知っている。それでも私たちの前では顔色変えずにいつも通りのダイヤさんだった。

 

裏で苦労してたんだ…

 

「それでもルビィ達は三年生のみんなの頑張りは見てきてる!ルビィ達だったら辛くても乗り越えられる!だから!」

 

「お願い!お姉ちゃん!」

 

ルビィちゃんが頭を下げる。

 

私たちもルビィちゃんに続いて頭を下げた。

 

「「「「「「「お願いします!」」」」」」」

 

ダイヤさんはびっくりしたような顔をした。そして、ため息をつくとほくろをかく。

 

「…私はラブライブの件に関しては悪い面ばかりではないと思ったんですが…」

 

「わかりました。ルビィに免じて考えることにしましょう…」

 

ダイヤさんは一呼吸おく。少し考えた上で口を開く

 

「私から交換条件が二つあります。それを達成したら私はSummer Rocksに出ますわ。」

 

ダイヤさんはすっかり冷えた紅茶を一口飲む。

 

「皆さんの覚悟を見せてください。」

 




次回更新は2/24(土) を予定しております。
たくさんの方の感想、アドバイス等お待ちしております。

[以下作者あとがき。]

昼間に更新できるかちょっと怪しかったので寝る前に更新してしまいました。こんばんわ作者です。

割と最近忙しくて、なかなか落ち着けてないんですよね。本当に癒しが欲しい今日この頃です。

僕の趣味の一つが水族館巡りだったりするんですが、三月の末に久しぶりに水族館に行けることになったので、それまで頑張ろうと思います。

今回の話はダイヤさんと果南ちゃんへの交渉会って感じでした。
果南ちゃんにやっとこさ出番与えられた…。

僕的にはダイバー資格の取得ってことはたぶんケアンズだろうなあって思って時差とかは考えたつもりですが、どうなんでしょう?オーストラリアは国土の関係で標準時分かれてるんじゃなかったっけ…

現時点では立場上まだまだ出番が与えられていませんが、物語が進む中で重要な立場におけたらなあなんて構想しています。

次回、ダイヤさんの出す条件が明らかになり、その達成のため、動きます。そして、千歌ちゃんと梨子ちゃん、そしてコウの関係が進展するための話となります。楽しみにしていただけると作者は嬉しいです。

いつも読んでいただいてありがとうございます。おかげさまでUA9000を突破し、お気に入りに登録してくれている方が88名となりました。

これからも読んでくださっているみなさんが少しでも楽しいと思えるようなストーリーを作っていけたらと思っております。今後ともよろしくお願いいたします。




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