「千歌ちゃん。じゃあいくよ?」
「う、うん…」
ベッドに座り込んでいる千歌ちゃんを見つめて、僕は問いを投げかける。
このままどうしようか…本当に覚悟できてるんだろうか?千歌ちゃんは。
「…フランス革命の年号とその契機となった襲われた場所は?」
「ええっと…1192…年でウィンディーチェの牢獄?」
僕と梨子ちゃんは頭を抱える。
曜ちゃんは苦笑いしながら問題集を解きすすめる。
「あはは…」
さっきから千歌ちゃんは苦笑いしっぱなしだ。
1192年は鎌倉幕府(ていうか最近は1185年になってるよね確か。)だし、ウィンディーチェはリボーンのラスボスのキャラでしょうよ…むしろそっちのが覚えにくくない?
なぜこんなことになっているかというと5日前の事を話さねばならない。
・・・・・
「皆さんの覚悟を見せてください。」
ダイヤさんはそう言い切ると、紅茶を飲み干した。
「覚悟…って私たち何したらいいの?」
千歌ちゃんが不思議そうに言うとそれを受けてダイヤさんは問いかける。
「皆さんそろそろ中間テストに差し掛かる時期ですよね?いつです?」
「10日後からずら。」
花丸ちゃんは諸々のことしっかり覚えてる子なんだなやっぱり。
「なるほど…ではそこで全員がすべての科目で60点以上を取ってください!これが一つ目の条件ですわ!」
「「全教科60!?」」
千歌ちゃんと善子ちゃんが驚いたような声を上げる。
「多くの大学では60点が単位取得の最低ラインです。それに半分を超える点数が取れるのであれば、基礎はできてることになるでしょう?」
「うっ…」
「このおにー!!」
千歌ちゃんと善子ちゃんが抗議の声を上げようとする。
「だまらっしゃい!!中間テストで点を取れないで、受験とスクールアイドルの両立なんてできるわけないでしょう!!善子さんや今の二年生の皆さんだって、もう来年の話ですのよ?!」
千歌ちゃんも善子ちゃんもダイヤさんに抗議しようとするも、ダイヤさんの言い分が正論すぎて言い返せない。
一体この二人はいつも何点くらいなんだろう…
「それに、全教科60点以上取って、あとは提出物を出せば評定の4は取れる可能性があります。4が取れれば推薦も視野に入るでしょう?どうです?」
一切譲る気配のないダイヤさんの気合を感じる。
「全教科かあ…まぁ受験生だし、学校の試験なら乗り越えなきゃいけないラインだよね…私はそれでいいわ。」
「私もそれでいいであります!」
梨子ちゃんと曜ちゃんは前向きな返事をする。まぁこの二人はそんなに悪い点を取るイメージはない。
「マルもいいズラ。むしろ全教科80点とか言われなくてよかったずら。」
「ルビィもいいよ。先生に色々教えてもらってるし!」
この二人は割と余裕なのではないだろうか。
花丸ちゃんに至ってはよく本を読んでることもあってか誰も知らないことを言い出すことあるし。
「も・ち・ろ・ん、コウさんも含みますわよ?」
「へ?…まぁ大丈夫です。」
こっちに来てからいろんなことに巻き込まれっぱなしだけど、今回も逃れられないらしい。
まぁ三年生になって科目も減ったし、文系科目ばっかな上にSeekerやってた時より勉強時間は取れる。60ならば取れはすると思う。
忙しかった時も赤点だけは回避してたしなんとかなるだろう。
「そして、もう一つ!これはコウさんと梨子さんへの交換条件になりますわ。」
なんとなく僕と梨子ちゃんの名前が並んだ時点でその内容を察する。
「今月中に私たち全員が満足できる曲を作ってください。この二つが私からの交換条件になります。うけますか?」
僕と梨子ちゃんはお互いの顔を見る。
梨子ちゃんは笑っていた。
「「やります!」」
「覚悟は決めましたね?ではその条件でいきましょう。それと。」
ダイヤさんは鞠莉さんの方を見る。
「…あなた、後ろから余計なことは絶対にしないようにね?」
鞠莉さんはやれやれと言う感じで手を上げる。
「言われなくてもそんな事しないわよ?ダイヤの言い分もわからないでもないしね。ちかっちたちに全てを委ねるわ。」
そして千歌ちゃんたちを見る。
「…ってわけで、頑張ってねみんな!」
「なんか大事になっちゃったねえ…。」
果南さんは呆れたように笑っていた。
こうして僕らの勉強(加えて作曲、編曲)はスタートするのだった。
…んだけど。
勉強開始3日後。
「わかんない!!」
「わからん!」
部室で勉強することにした僕たちは、千歌ちゃんと善子ちゃんの進捗っぷりに驚かされっぱなしだった。悪い意味で。
「善子ちゃん…授業中いつも寝てるしノートもとってないずら」
「ルビィがきいたら、いつも夜の魔力が私を生かす!!とか言ってた…」
2年生メンバーはひそひそ話をしてる体で善子ちゃんに聞こえるようにいう。
「そこ!聞こえてるんだからね!」
善子ちゃんは涙目で反論しようとするも、この場にフォローできる能力を持つ人はいない。
「英語に世界史なんか…いらない…私は日本で生きていく…」
空欄だらけの千歌ちゃんの世界史ノートを見る。
所々に謎の斜め線やクネクネが入っているので、授業中に寝ていることがよくわかった。
「そうは言ってもやらないとSummer Rocksには出られないのよ?」
梨子ちゃんがいうと千歌ちゃんは余計にむくれる。
「わかってるよお…昨日もコウくんに英語教えてもらったもん!」
なぜか張り合うように千歌ちゃんは言う。
一瞬。梨子ちゃんがこっちを見た気がする。
…梨子ちゃんは僕のことをどう思ってるんだろう。
「ねえねえコウくん。千歌ちゃん、実際どうなの、英語。」
曜ちゃんが千歌ちゃんに聞こえないように僕に聞いてくる。
梨子ちゃんは勉強したがらない千歌ちゃんに教えようと必死だった。
「正直やばいと思う。今回の範囲の基礎文法も理解できてなかった。」
「あちゃー…やっぱしかあ…」
三年生なので授業は文系科目だけになった。楽になったかと言ったら全然そんなことはないが、それでも苦手な理数科目が減って助かっている。
「…仕方がないずら。」
花丸ちゃんが何かを決意したかのように立ち上がる。
「勉強合宿、やるしかないずらね。」
「善子ちゃんはマルとルビィちゃんでなんとかするずら。千歌ちゃんに関しては、三年生メンバーでどうにかしてほしいずら!」
・・・・
そんなわけで試験までの残された期間を(主に千歌ちゃんと善子ちゃんが)無駄にしないためにも勉強合宿の開催が決まった。
今日は試験5日前。最後の土日である。
そんなわけで土日を使っての勉強合宿が敢行されている。
三年生は千歌ちゃんの家。二年生は花丸ちゃんの家のお寺に集結し、今頃勉強しているという感じだ。
そんなわけで僕たちは千歌ちゃんの部屋でちゃぶ台を広げてお勉強の真っ最中だ。
しかし、この進捗…どうしたもんかな…
・・・・・
こんにちは、ヨーソローこと渡辺曜です。
私は今、千歌ちゃん宅でお勉強合宿をしております。
しかし!面白いことになってます。
私は立場的に色々知ってしまっているので、この三角関係を面白がりつつみているんですが…
千歌ちゃんの暴走以降、それらしいことがほとんどおきないんですよね!!!
この状況を楽しんでることを本人達に知られたら絶対怒られるとは思うんですが…
こんな面白い状況と自分の立場、逃さない手はないでしょうよ!
というのも、だ。
私や千歌ちゃんは小中は恋愛感情など気にしてもいなかった。
梨子ちゃんは知らないけど、私や千歌ちゃんは何度か告白されたことはある。
しかし、小中学生の私は、恋愛感情なんて理解もできなかったし、千歌ちゃんに至っては告白された際、悪気一切なく
「え?なんで?」
的な返しをしていたり
「私も○○君好きだよ!私たち友達だもんね!」
的な下手したらその男の子にトラウマを植え付けそうなことを平気でいっていたらしいのである。
なんにせよ千歌ちゃんに恋した男の子はことごとく精神ボコボコにされ、立ち直るのに時間がかかるという話は聞いていた。
なお、私はその後の男の子の方の精神のケアを何度か経験している。
(ちなみに私は男の子と普通に仲良くしていたので、告白された時は友達関係を壊さないように断っていた。)
そして高校は今年になるまで女子校。恋愛とはかけ離れた環境にいたわけである。私だって、いまだによくわかっていない。
その条件はおそらく梨子ちゃんも同じではないかと思う曜ちゃんなのであります!
そして、そんな2人が実はコウくんに惹かれている(梨子ちゃんに関しては確証はない)なんて、こりゃもう私の中の世界が変わりかねない出来事なんです!!
この勉強合宿何か起こらないわけがない!てな訳で渡辺曜は見守りたいと思っております!
「フランス革命とそこから先のフランスの立場はすごく重要って授業でもいってたじゃん。」
コウくんは千歌ちゃんに呆れていう。
普段の生活を見てるからこそ、だいぶ砕けてるんだろうけど、千歌ちゃんはぎこちなく見える部分がある。
「…だって、ここ最近英語しかしてなかったし。」
「むくれてもダメだよ。Summer Rocks出たいでしょ?」
…うーん、この関係、兄と妹のが似合う気がしてきた。
そういえば、ルビィちゃんともだいぶ打ち解けてきたみたいだし、コウくん面倒見がいいからお兄さん的なポジションなのかもしれない。
「まぁ、英語の今回の範囲はそこそこ理解してきたみたいだけどね。世界史はホントに覚えないと点取れないからなあ…」
まぁそうだよねえ…千歌ちゃん、昔から興味のない事覚えるのが本当に苦手だったし。
世界史なんて、カタカナだから単語の音と流れを覚えればすぐだとおもうんだけど、それは私が世界史得意だからかな。
もちろん好きな時代は大航海時代!
「…なんで私、世界史選んじゃったの…」
千歌ちゃんは本気で嘆いている。
科目選択のとき、私と梨子ちゃんに合わせて世界史を選択したんだからそこはもう千歌ちゃんの責任だと思う。
(っていうか、日本史選んでもどうせ漢字が覚えられないとか、仏像全部同じ顔!とか天皇天皇うるさい!とか言い出すと思う。)
「あ、そういえばコウくん。ちょっとアレンジしてみたんだけどどうかな?」
お!ここで梨子ちゃんが動いた!これは千歌ちゃんの反応が見ものであります!
「おお!聞かせてよ!」
ホント音楽のことになると周りが見えなくなるらしい。千歌ちゃん放置されてさっきよりむくれてる。わかりやすいし、かわいいなあほんと。
「新しい曲!?私も聞きたい!」
「ダーメ!千歌ちゃんはそのページおわったら!」
「うう!梨子ちゃんのケチ!」
なんて言いつつ世界史のワークに向かうあたり、やっぱり千歌ちゃんも根は真面目。
「私も聞いていい?」
「うん、曜ちゃんはどうぞ。」
「曜ちゃん「は」って!もう!はやくおわらせるんだからね!」
ごめんね千歌ちゃん。私も曲は気になるわ…。
・・・・・
「どうかな?コウくんが作ってくれた曲をベースに私なりにアレンジしてみたんだけど…」
コウくんは梨子ちゃんの持ってきてくれたパソコンに向かいながら難しそうな顔をする。パソコンをのぞいたら、譜面のようなグラフのようなキーボードのようなよくわからない画面が広がっていた。
「そうか…ここでストリングス…それにピアノか…音色はもっと派手にして…いっそストリングスなしでシンセとか…ドラムはもうちょい手数増やして…」
コウくんはよく分からないことをぶつぶつ言ってる。
完全に暗号です。私は解読できません。
「うーん、私はこれでもいいとおもうなー。」
とりあえず私は思ったことを言うものの
「やっぱりストリングス余計かな?おしゃれになるかなって。」
あ、だめだ、私完全に蚊帳の外だ。
音楽に対して本当に真面目な2人だから、作業中周りが見えなくても仕方ないかもしれない。
雰囲気的に仕事人な感じが出ているけど、梨子ちゃんもコウくんも互いに探りあってるのかなあ?ここはよくわかんないや。
「僕も編曲中のやつがあるから、試験終わったら、これも含めて色々考えてみるよ。」
「わかった。楽しみにしてるね。」
そのまま2人は勉強に戻る。曲も順調に進んでいるらしい。相変わらずむくれた感じでコウくんを見てる千歌ちゃんもちょこちょこ勉強をしているって感じだ。
私はとりあえずテストを頑張らないとな。
私も勉強に戻ろう。
そのまま私は自分のイヤホンをつけると自分の世界に入り込んで勉強を再開するのだった。
次回更新は2/27(火)を予定しております。
お気軽に感想やアドバイス等よろしくお願いします。
[以下作者あとがき]
昨日のリアルなかよしマッチの動画ツイッターで回ってきたんですが、なにあれ可愛すぎではないですか。よしりこおじさんマジ歓喜回でしたね。
それにカーリング選手のにっこにっこにー!!!トレンド入りしててびっくりしました。おはようございます作者です。
一方で大杉漣さんがお亡くなりになったりといろんなことが短期間で起きちゃいました。ぼくはバイプレイヤーズで共演された10-feetのTAKUMAさんのツイッターでの発言がとても印象的でした。
10-feetのまっすぐな言葉って、マジで響く時あるんですよね。10-feetの有名曲を貼っておきますので、よろしければ聞いてください。
RIVER/ 10-feet
https://youtu.be/MPfOYr5YkiM
fin / 10-feet (バイプレイヤーズOP)
https://youtu.be/Ezmt3MVmH94
さてさて!本編は本編で話が動き出す気配を感じさせる話が始まりました。
冒頭は完全に悪ふざけしました。反省はしてない()
色んな漫画でもこういう合宿回って話が動くんですよね。この作品でどんな風に物語が進むのか、楽しみにしていてください。
作品の都合上、ちかりこ以外のAqoursのメンバーの活躍の場所がかぎられてしまうかもしれないので、今後も様々な視点から話を展開することあると思います。
っていうか自分で書いてておもうんですが、ルビィちゃんによく勉強教えてるって設定にした先生の話、書きたいんですよね。本筋に大きくは関わらないからこのssではたぶん書かないとおもうんですが。
スローペースに展開されていく話ですが、その分、細かいところをできるだけしっかり書いていきたいと思っております。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。次回も楽しみにしていただけるとさいわいです。