曜ちゃんにはコウくんの部屋に向かってもらった。
曜ちゃんは私の意図を汲んでくれたんだろう。気を利かせてくれたんだと思う。しばらくは戻ってこないんじゃないかな。
梨子ちゃんとおしゃべりをする。
プレリュードが本当にかわいいのー!って言いながら、芋虫のような小さいぬいぐるみを咥えて遊んで欲しそうに梨子ちゃんの所に来る動画を見せてくれた。かわいい。
うーん、しかし、しいたけに怯えまくってた梨子ちゃんがこんなに犬を溺愛するようになるとは…
たぶんコウくんは曜ちゃんと部屋でスマブラでもしてるんじゃないかな?
曜ちゃん、昔から好きだったし。
どう言えばいいのかわからない。
でも私はやっぱり、梨子ちゃんの想いを知りたかった。
「そういえば、久しぶりに2人だね。」
梨子ちゃんは笑いながら言う。
さっきまでは居なかったぐしゃぐしゃの気持ちが私に襲いかかってきた。
落ち着いて。こんな気持ちに負ける私じゃない。
「そうだね。コウくん来てから、基本的に3人が多かったしなー。」
私は笑えているかな?
「あのキーホルダーどうしたの?」
「ああ。あれ、2人で曲作りのために出かけた日に買ったんだ。沼津港の深海水族館で交換で何か買おうってなってね。」
「コウくんも男の子なんだなーって。シーラカンスにすごく食いつくんだよ!私は人形のがかわいいって思っちゃった。」
笑いながらコウくんがシーラカンスを食い入るように見てる写真を見せてくれた。
うーん…たしかにこのシーラカンスはあんまりピンとはこないんだよな…これが男女の違いなのかな?
ってそうじゃないって!
「2人で出かけてたんだー。私も行きたかったなぁ」
棒読みにならないように。
いつも通り。いつも通りの私を。
「ごめんね。曲を書くためだったから、なにも言わなかったんだ。」
梨子ちゃんは基本的にわかりやすいから、隠し事をしてたらわかる。
だから、かな。
それだけじゃないって思いが私の中で浮かび上がる。
あの日見てしまった映像が頭の中に溢れてくる。
思い出すんじゃない!
「…梨子ちゃんといる時のコウくんってどんな感じ?」
やっとの思いで絞り出した言葉を梨子ちゃんにぶつける。
「うーん…普通かな?あ、でも色んなこと気遣ってくれたり、自分から色んなことを話してくれたり、一緒にいて楽しいよ。私の知らないことや、私には思いつかない曲を作ってくれるし。あ、でもたまに周りが見えなくなる。」
…そうかもね。色んなことに気づいて行動してくれる、優しい人だ。
私だってそんなこと、知ってる。
「千歌ちゃんといる時のコウくんはどんな感じ?」
「うーん、なんて言えばいいんだろう。一緒に居て楽しい感じ!」
「なにそれ、わかんない」
梨子ちゃんは笑い方まで美人だなって思ってしまう。
でも
こんな話してても、私が知りたいことは一個もわからない。
「梨子ちゃん、コウくん、どう思う?」
「…え?」
「コウくんのこと、男の子としてどう思う?」
私は今どんな顔してるんだろう。
何故か顔が熱い。ドキドキしてしまう。
梨子ちゃんの言葉が怖い。
梨子ちゃんは考え込んでしまう。
「突然でなんて言ったらいいかわかんないな…急にどうしたの?千歌ちゃん。」
「私…コウくんのこと、ひとりの男の子として好きなんだ。」
下を見て言う。今、梨子ちゃんの顔を見れない。どんな顔で見ればいいんだろう。
「まだ少ししか一緒に居ないけど、色んなところを見てきて、一緒に居たいって思っちゃった。コウくんに私を見てて欲しいって思っちゃった。」
「私、たぶん、梨子ちゃんに嫉妬してるんだ…最低なのはわかってるけど、バカチカだから、さりげなく梨子ちゃんから聞き出すなんてできなくて、結局きいちゃった…」
私はつぶやくように言う。
こんな私の思いを聞いてくれる梨子ちゃんはやっぱり優しいんだろう。
「…そうだったんだ。話してくれてありがとう。」
梨子ちゃんはそのまま黙って少しだけ考えると真剣な顔で私を見る。
「私は…自分の気持ちがよくわかってないの…」
「…え?」
「コウくんと一緒にいるの楽しいって思うよ?二人で遊びに行った時だってとっても楽しかった。もっと一緒に居たいって思っちゃった。」
「でも、それが本当に好きってことなのかとか、恋なのか、とかそんなこと、わからないんだ。…でも。」
途中で区切ってから私を見つめる。
「私じゃない誰かと一緒に笑ってるの、見るとなんとも言えないくらい、モヤモヤしちゃうんだ。」
私だ。
今の梨子ちゃんは、曜ちゃんに助けられる前の私だ。
「これが好きってことなら、私は…コウくんのことが好きなのかもしれない、かな?」
誤魔化すように笑う梨子ちゃん。
私の気持ちを知った上で本当に思ってることをぶつけてくれているんだ。梨子ちゃんは。
なら私はそれに答えなきゃ。
「…私、経験ないから、どうしたらいいかわからないんだ。だけど、コウくんに見てもらえる私になりたいって思う。」
「負けないよ?梨子ちゃん!」
力強く、笑ってみせる。
これが今の私にできる精一杯だ。
「…うん!っていうか、千歌ちゃん、変な顔!」
「えー!精一杯キメ顔作ったのに!」
私たちは互いに笑い合った。
嘘みたいにぐしゃぐしゃの気持ちが晴れる気がする。
たぶん、またこの気持ちに襲われる時はあるのかもしれない。
でもその時はその時だ。今は梨子ちゃんの想いをちゃんと知って、対等の立場に立てた。
それがとっても嬉しい。
「ちかー!ご飯できたってー!」
美渡ねえが部屋に入ってくる。
「わかったー!今行くねー!」
「あり?コウと曜ちゃんは?」
「たぶん、コウくんの部屋でスマブラしてると思う。」
「何!呼びに行くついでに私も参戦する!!今日こそ私のファルコンでコウをたおーす!」
テンションの上がった美渡ねえと一緒にコウくんの部屋に行く。
やめた方がいいと思うけどなあ…今日はめちゃくちゃ強い曜ちゃんまでいるわけだし。
「コウ!私と勝負だ!!!」
美渡ねえを先頭に部屋に突入する。
「高海千歌ちゃんに桜内梨子ちゃんまで!お前、まじか!!!」
「キリヤ落ち着け!とりあえずコウのそっちでの様子を聞き出そう!下手すりゃハーレム築いてるぞ!!」
「まずはあんたが落ち着け!!!はあ…ツッコミがあたしだけだとカオスになる…コウ頼むから帰ってきてえ…」
「ははは…みんな相変わらずかあ…」
コウくんと曜ちゃんはラインのグループのテレビ電話で私の知らない人たちと電話していた。
いや、正確には顔だけ知ってる人たちだ。
youtubeで何度も見た。
「Seeker」グループ名表示の欄にはそう書かれていた。
次回の更新は3/7(水)になります。
みなさんからのコメントやアドバイス、お待ちしております。
[以下作者あとがき]
もう三月ですね!昨日は多くの高校が卒業式だったみたいです。卒業生の皆さん、卒業、おめでとうございます。
この時期に合う曲って何だろうなあとか思っちゃいます。たぶんWANIMAがわかりやすかったりするのかな。
シグナル/WANIMA
https://youtu.be/DSZUUnaeWFQ
さて、本編は合宿編の3ということで、ちかりこ回でした。ここまで梨子ちゃんについては視点もほとんど入れずにやってきましたが、ここでやっと梨子ちゃんの気持ちをかけました。
次回は前々から投稿する投稿すると書く書く詐欺を繰り返してた梨子ちゃん視点のデート回です!番外編じゃなく本編にしました。
コウ君と千歌ちゃんの視点が多かったですが、ここから梨子ちゃんの視点を増やしていくことができたらなぁと思っております。
そして、最後にちょろっと出てきたSeekerメンバーについてですが、これから登場を増やして行きたいキャラ達になってます。そして、物語の中でも重要なキャラ達にしていけたらと思ってます。
もし、忘れてしまっていたら、プロローグ2と3を確認していただけると嬉しいです。今やっている話がひと段落したら、番外編と言う形でAqoursのキャラクター視点からオリキャラ達をまとめていきたいと思っております。
UAが一万を突破しました!お気に入り登録してくださる方も96人とありがたいことにものすごく増えて、嬉しいです。
自分の将来のことがありますので定期的な更新が難しくなることもあるとおもいますが、自分の中では完成しているこの物語を完結させるためにこれからも更新は続けていこうとおもいます。
これからもよろしくお願いします。