一曲目のsoldier gameのコピーはコーラスと打ち込みの操作に徹するキリヤがパソコンを操作する
梨子ちゃんもマイクの高さの最終調整をする。
ミツキのドラムが入る。
音色を変えたキーボードと打ち込みで作ったパーカッションの音が反響した。
そこにギターが合流し、全パートが合わさる
さあ!始まりだ!
「ー・ー・ー・ー!--ー----!」
千歌ちゃんの声が響き渡る。
それに合わせて僕はベースラインを走らせる。
ベースが自己主張をしない時代はもう遥か昔に終わったとされている。
うねるベースライン。リズムキープが難しい。
一体感。それを決して崩さない。
その上で。
僕は僕を刻み込む。
今この場に。ここにいる、全ての人に!
この曲はμ'sの中でも何人かのメンバーで選出されて作られた曲らしいが、そのクオリティの高さにびっくりさせられた。
僕の認識の中のアイドルにこんな曲はなかった。
すごい・・・!
弾くたびに痛感する。
これを作った人はどんなことを思ってこの曲を書いたんだろう?
動き回るベースラインに乗せて体を動かす。
考えるな、感じろ…!!!
2番に入る。
ボーカルを生かすように、それでいて自分の音を出す。
奏でられる千歌ちゃんとキリヤ、そして梨子ちゃんのユニゾンが気持ちよかった。
聞いててくれ、Aqoursのみんな・・・僕の音を。
この曲で、soldier gameで、みんなを僕らの世界の入り口に立たせる。
僕がみんなのライブを見てアイドルを知ったように。
そうしてアイドルとバンド、二つの世界が交わるんだ。
そこから先は----僕らも未知数だ。
2サビも終わりに近づく。
千歌ちゃんが振り返って、梨子ちゃんの元に行く。
「----負けないんだからね?」
不敵な笑みを浮かべる梨子ちゃんは僕の顔を見ると何かを千歌ちゃんに言ったようだった。
さあ、僕を見てくれ!
この曲の最大の見せ場のベースソロ。
僕の全身全霊をぶつける。
サムはハンマーのように、プルはナイフのように。
ベースで、聞いてる人の心を抉れ!!!
ハッとした目で見つめるAqoursのみんなを見ることができて満足した。
そして間奏に入る。
梨子ちゃんが急に練習の時にはなかったアドリブを入れ出す。
僕たちは驚いて梨子ちゃんを見る。
梨子ちゃんは僕たちを見てにっこりと微笑んだ。
そして僕たちも微笑む。
「・・・上等!!」
その挑戦、受けてやるよ!
僕は小さく言うと、梨子ちゃんのアドリブとぶつかるように、でも絶対に演奏を崩さないように、僕はベースラインを紡ぐ。
セッションの時間。30秒もないその時。
僕と梨子ちゃんはたしかに繋がったことを感じた。
ラスサビを千歌ちゃんが歌い切る。
とりあえず一曲目。soldier gameは合わせ終わった。
我に帰る。
「うまくいったね!」
汗をかいた千歌ちゃんの笑顔が眩しかった。
「梨子ちゃん、途中遊び始めたからびっくりしちゃったわ!でも最高だね、こんな形でセッションってのもさ。」
ミツキさえも満面の笑み。
「ちくしょー!俺ももっと遊びたかった!」
セッションの誘導に成功した梨子ちゃんに嫉妬するハヤテは、梨子ちゃんの才能を理解したんだろう。
まあこの曲、ギターソロないし…
「俺もギター弾きてえええ!!」
…キリヤ、どんまい。
選曲したのはお前と千歌ちゃんだからな。
まあこのベーシスト得すぎる曲を選択してくれたのには感謝しかないが。
次は弾けるんだし、いいだろ?
「・・・突然でびっくりしましたわ。それにまさか、μ'sもほとんどやらなかった隠れた名曲を選曲して私たちに聞かせてくださるなんて。」
ダイヤさんは鋭い目で僕たちを見る。まるで、獲物を狙うように。
「皆さんの演奏力や表現力の高さは理解しました。ですが、肝心の新曲はどうなっているのです?」
それに対して、僕は微笑んだ。
「今からやります!今僕が書ける、全てをぶつけました。」
「Aqoursのみんな、聞いててね。----Marmaid Song!」
クローズのハイハットで3カウントを取る。
ズクタンっ!
気持ちのいいスネアの音が響く。そして入れ替わるように始まったシンセの音とユニゾンするリードギター。
響くエイトビートと挟まれる小技。
それに合わせるギターのメジャーコードの響きが心地いい。
僕はそれに合わせてルート音を弾く。千歌ちゃんの歌が入る。
「遠く見たことのない景色 なにがあるか知らぬまま 」
この場所は千歌ちゃんの歌とキリヤのパワーコードの刻み。
イントロでぶち上げてからAメロ前半で一旦落としていく。
「僕は1人この場所に立つ」
Aメロ前半。終わりに全パートで合わせて曲にアクセントをつける。
「あの日終わった物を 捨てきれずに握りしめた きっといつかは元に戻るって願う」
再び刻まれる心地よいビートに乗せてボーカルラインをなぞりながらも遊びまくったベースラインを僕は弾きあげる。
「探してた答えが 見つかるかは知らない」
アイドルの曲によく見られるPPPHのリズムに合わせる。
明るいメロディとキャッチーなリズム。
これでアイドルらしく曲を作れてるんじゃないかな?
「今出会えた欠片を抱きしめる」
四つ打ちをベースに手数の多いドラムとそれに合わせて響く僕らの音。
サビ前のピアノが響く
そしてサビ。
揺らせ。聞いてる人に感動を届けろ----
・・・・・
私はマイクを握りしめた。
顔が熱い。踊ってもいないのに。
バンドなんて初めてだ。
でも----なんでだろう。
生の音で、人の手で作り出す音楽は心地いい。
「輝く海の向こうへと (進め)心の旗を掲げて
一度しかないこの時を (抱きしめて)
今を歌っていたいんだ」
梨子ちゃんのコーラスとうまく掛け合わせた。
この歌詞は、コウくんが私たちを、そして自分を意識して書いたらしい。
輝きたい!
私がしばらく忘れていた、ラブライブ に燃えていたあの時のことを思い出す。
爆音に乗せて、ラブライブ もコウくんへの想いも、梨子ちゃんに嫉妬していたあの日の自分も全てを込めて、声に乗せた。
響け----
「いつか泡になっても何かはきっと残るから
刻もう 歌おう marmaid song」
いつか終わるのはわかってる。
でも、それでも。
私たちは、私たちの全てを今ここに刻み込みたい!----
・・・・・
ギターソロが入る。
ハヤテとキリヤは互いに向き合い、バトルをするようにフレーズを弾く。
キリヤはソロで急に遊び始めるし、ハヤテはタッピング入れ出すし完全にやりたい放題だ。
だが、決して乱れない。
僕も負けないようにベースラインを紡いだ。
息がぴったり合ってるのはこの師弟コンビだからか。
久しぶりに、seekerでのライブだからだろうか。
いや…このメンバーだからか。
感じたことのないような爆発的な化学反応がここには生まれているんだ。
ソロパートを弾き終わった後のキリヤとハヤテの笑顔が眩しかった。
・・・・・
バチバチだ…。
まるで火花が散るかのような、爆音の渦の中で鍵盤の上で指を滑らせながら、横目にSeekerの面々を見る。
笑顔。そこには笑顔のSeekerメンバーがいた。
こんな平和な戦争があるんだ…。
1人1人の自己主張がぶつかり合い、爆発的な化学反応が生まれる。
それでいて演奏全体を決して崩さない。
これがバンドなのか。
間奏が落ち着いて私は静かにピアノを弾く。
私は自分が作詞したパートを歌う。
私のソロ。
「----あの日の僕は何を思ったんだろう」
Aqours、コウくん、そして私。
千歌ちゃんと出会ったあの日を、
海の音を探すために海に潜ろうとしたあの日を、
そしてコウくんを抱きしめたあの日を、
思い出す。
曲を作って、歌詞を書いて。
音で繋がって。
自分の想いに気付いた。
私は、コウくんを、コウくんが奏でる音を、
コウくんの全てを
愛してる。
好きだったんだ。
あの時から、いや、それよりも前から
「遠く見つめる君を抱きしめた----」
・・・・・
梨子ちゃんのソロパートが終わる。
そこからロールが入ってラスサビ。
「希望の旗を掲げて この世界を渡っていこう」
この曲がきっと、旗印になることを信じて、ラスサビのフレーズを弾く。
「やっぱり君と居たいよ 心の奥が痛いよ」
千歌ちゃんの切なそうな顔が、スタジオの鏡に映る。
誰だって色んな想いを抱えて今を生きるんだ。
そして、僕らの物語はここから始まる----
「これで終わりじゃないよね?まだまだ続くから 歌声 紡ごう Marmaid story----」
アウトロ。
梨子ちゃんのピアノで曲を締めた。
・・・・・
「す、すごいズラ!!!」
花丸ちゃんが手を叩く。その目はキラキラとしていて、本当に良いと思ってくれたらしい。
「うん!ルビィこの曲好き!」
アイドルが好きなルビィちゃんが褒めてくれるのであれば、間違いはないと思う。
善子ちゃんと鞠莉さんはプルプル震えてる。
「seekerのライブをこんな間近でしかも、私達の為の、なんて、見れると思わなかったわ…ヨハネ昇天…」
そのまま壁にもたれかかる。ありがたい。
「fantasticね!metalには欠けるけど、Aqoursらしい、いい曲だと思うわ!」
テンション高く言う。そして、スマホを僕らに見せた。
「ね!カナン!」
テレビ電話を僕たちの方に見せた。
「聞いてたよ!生の演奏って、かっこいいね!」
「果南ちゃん!聞いててくれたんだ!」
海外にいる果南さんが僕らの演奏聞いていてくれた。
なんだか目頭が熱くなりそうだ。
そして、ダイヤさんは
「…すごいですわ!!!」
静かにしてたと思ったら、一気にテンションを上げて叫ぶ。
「生のドラムとベースの奏でる低音の迫力、メロディアスなギターと鍵盤、そして、通常のアイドルの時とは一味違う千歌さんの歌い方!」
「バンドとアイドルというのはたくさん聞いたことがありますが、こんなにもすごいものだと思いませんでした…」
「いい曲を書くのですね…コウさん」
ダイヤさんに褒められた。純粋に嬉しい。
僕の作った曲が、Aqoursのみんなに認められた。
曲を作ることが、こんなにも楽しいなんて。
そして、目の前で認められることがこんなにも嬉しいなんて…
『すごいじゃん!こーちゃん!』
リサさんが褒めてくれた時のことが頭によぎる。
----僕は進めていますか?
「…認めるしかありませんね。summer rocksに、私も出ます。Aqours全員でいいステージを作りましょう!」
「「「「「「よっしゃー!!」」」」」」
僕たちは楽器を持ったままガッツポーズをした。
「ねえ!ワタシから提案があるの!」
「Seekerのみんなに、バックバンド!お願いしない?」
「それ、すごくいいよー!!!Seekerのみんなと一緒にステージできるなんてそんな機会滅多にない!やりたい!」
千歌ちゃんがテンション高く言う。
マジで?
また、僕たちが、Summer rocksにたてるのか!?
「また、アンタは何言ってんの…今活動休止中だよ?うちら。」
ミツキは呆れて言う。
だけど僕は胸の内の興奮を抑えることができないくらい心臓が高鳴る。
「いいじゃん!やろうぜ!」
ハヤテは完全に乗り気。と言うことは…
「俺も賛成でーす!!」
キリヤも手をあげる。
ミツキはため息をついて僕を見る。
「…コウは?」
戸惑うことなく僕は言う。
「やりたい!あの場所に、Summer rocksのステージにまた立ちたい!」
ミツキは僕らを見回すとため息をついた。
「…仕方ないね。手越さんに確認して見るよ。鞠莉、細かいことはおいおい決めていこうか。」
「それでこそ、よね!Summer rocksが楽しみになってきたわ!!!」
「まだスタジオの時間残ってるし、なんか合わせようぜ。Aqoursの曲でもいいし。」
ギターのチューニングを確認しながら、ハヤテが言う。
「ホントですか!」
善子ちゃんが復活してマイクを持とうとする。
こうして、僕たちとAqoursはSummer rocksに出演することが決まった。
この歩みが合っているのか間違っているのかわからないけど。
今、僕は前を向いている。
先の不安は一度横に置こう。
僕は再びベースを持つと合わせる準備をした。
AqoursとSeeker、交わることがないと思っていた2つが交わった音を、グルーヴを、大切にしたい。
次回更新は3/27(火)を予定しております。
お気軽にコメント、アドバイス等お願いします。
次回から更新ペースが下がります。詳しくは、活動報告の「25話以降の投稿について」をご覧ください。
[以下作者あとがき]
花粉症辛いんですが、完全にある種の呪いですね。アレルギー体質なのでこの時期ホント困るんですよね…なんとかしたいものです。こんにちは、作者です。
ていうか、海未ちゃんの誕生日が更新した日でした!
おめでとう、海未ちゃん!
やっとこの回書けました!バンドはもちろん、バンドものの漫画だったり、小説だったりも大好きでライブのアツさや、激しさなんかを書きたくてこのSSを書き始めました!なので、ライブの描写は力入れたりしたいんですよねえ…まだまだど素人ですが、いかがでしたでしょうか?
前回のあとがきでも書きましたが、無印ラブライブの曲だと、soldier gameほんとに好きなんですよね。初めて聞いた時、マジでこれアニソン?ってなったの今だに覚えてます。ほんとえげつないくらいレベルたけえ…
そして歌詞も今回、載せましたがいかがでしたでしょうか。僕なりにAqoursのイメージや、この物語を組み合わせて歌詞を書きました。
頭の中に曲の完成形のイメージはできてるんですが時間あんまなくて今は作れないんですよね…色々終わった後に作ってみたいです。
更新ペースがしばらく下がります。気晴らしにもなるので、これからも更新は続けます。必ず次回更新の日程は書きますので、これからも楽しみにしていただけると作者はうれしいです。
次回は今後の展開に関わるかもしれない番外編とオリキャラまとめをしたいと思います。