終わりがもたらしたはじまり   作:ふぁんた

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プロローグ3「これからのこと」

「ただいま」

「「「お邪魔します」」」

 

父さんと母さんが起きてるかわからなかったけど、リビングの明かりがついているから起きてたんだろうな。実の息子の僕でさえびっくりするような幼い容姿の母が出迎えてくれた。父さんはまだ仕事かな?

 

「あらあら、みんなできあがってるわねー。ま、あしたは休みだし、ゆっくりしてきなさい。それと」

 

母さんが僕らを愛おしそうな目で見る。

 

「ライブ、見たわ。お疲れ様。しっかり休んで気持ち入れ替えてね。また、楽しいライブ見せて頂戴ね。おやすみ。」

そういうとさっさと二階へ上がっていった。

 

僕は冷蔵庫から買いためていた缶コーラ二本と缶のモヒート、それに缶ハイボール(大)を取り出し、キリヤにコーラ、ミツキにモヒート、ハヤテにハイボールを渡す。

 

「「「「カンパイ!!!!」」」」

 

みんなに向けておつまみの駄菓子を開けて、僕はコーラ片手に母さんが作ってくれたらしい煮物をつまむ。さすが実家が旅館なことはある。めちゃくちゃおいしい。

 

「しかし、俺らも活動休止かあああ」

ハヤテがため込んでいた言葉を吐き出すように突然言い出す。僕らもそろってため息。

 

「お前ら今後どうすんだ?そういやバンドのことばっかでなんも聞けてなかったしさ。」

ハヤテがそういう。しばしの沈黙の後口を開いたのはミツキだった。

 

「私はとりあえずまじめに大学通っていつ活動再開してもいいように単位を稼ごうかな。幸い貯金はあるしね。あとはドラムのサポートでも手越さんに斡旋してもらおうかなって思ってる。」

 

ミツキは大人だ。どこぞの酔いつぶれてる大学生ギタリストとは違う。続けてキリヤも口を開いた。

 

「俺もしばらくは真面目に高校行って勉強するかな。音楽業界不安定だし。一応大学進学も視野にいれないとな。」

意外だ。キリヤもしっかり考えてた。

 

「お前はどうすんだ、コウ?」

キリヤが僕に問いかけてくる。

「まだ、決めかねてるかな。大学には行きたいと思ってる。でも今の環境はかえたいかな。ハヤテはどうすんの?」

 

ハヤテは僕らのことを見まわす。

 

「俺は、音楽もこのバンドもあきらめたくねえ。だから、大学辞めて、いろんな所でまずはギターを弾き倒そうって思ってるんだ。武者修行だな。もともと、大学の単位も危ういしな!!」

おいハヤテ、それは胸を張って言うことじゃないぞ。

 

「その一環でさ、Seekerの今までの演奏見て、バックバンドの誘いを受けたんだよ。とりあえずはそこに行こうと思う。」

「バックバンド?どこの?アイドル?」

ミツキが目を丸くしていう。

「同じようなもんだよ。ラブライブって知ってるか?」

 

キリヤがすかさず反応する。

「スクールアイドルの?!」

「そのとおりい!!!いまはやりのラブライブの運営から、バックバンドに選出されました!!!」

ハヤテは得意がって言う。僕とミツキはパチパチと空拍手。キリヤは目を輝かせていた。

 

ミツキはにやけた顔をして言う。

「スクールアイドルねえ。私も友達がこの間までやってたけど、かわいい子多いよね。」

キリヤは興奮した感じでいう。

「うらやましいな!!!スクールアイドルとか高校生のかわいい子ばっかじゃん、うらやましい!!!とくに静岡のAqoursってグループ、最高なんだよな!この間の大会の優勝者!」

 

姉の影響で歌とギターに入り、ハヤテがきっかけとなってギターを弾いてきたキリヤからしたら、知っていて当然の知識の様だ。

 

でも、Aqoursか。なんかひっかかる。この前母さんがなんか言っていたような・・・。

 

「まあ、みんなとりあえずのこれからは決めてるようだし、景気付けにもっかいかんぱいしようぜ!!」

「「「「カンパイ!!!!」」」」

ハヤテの掛け声とともにぼくらは持っていたドリンクを飲みほした。

 

 

その日は朝まで話しながら飲んでいた。後半はあいつの話ばっかりだ。それでもSeekerの再開時期に関しては誰も何も言わなかった。

 

結局、お昼前に片づけて、各自帰宅を始めた。自分と向き合う時間をみんな作りたくなったんだろう。

 

その日はシャワーを浴びてすぐに寝た。目が覚めたら日曜日の朝だった。

 

昼頃、僕は曲を書こうと思い、パソコンの前に座る。

 

―――でも、まただ。書けない。Seekerにむけた曲を、新しくならざるを得なかった僕らの曲を書きたい。・・・でも一向に書けない。頭に浮かぶフレーズはどれもこれも平凡でSeekerのキャラを表してはいなかった。

 

「クソ!!」

机にこぶしを打ち付ける。何もかわらない。こんな状態がもう半年ほど続いている。自己嫌悪に陥りそうだ。もう一度あの5人でバンドがしたい。でもその思いはもう決して

かなわない。

 

「・・・大丈夫か?」

「父さん・・・仕事はいいの?」

「まあな。休みだって重要さ。」

 

心配そうに僕の方を父さんが見る。大手音楽雑誌の編集長は今日は休日だったようだ。

 

「曲は書けるか?」

わかってるくせに。何も手がつかないから机なんかにあたっちゃったんだ。

 

「実はな。俺に一つ提案があるんだ。」

「え???」

子供のような笑顔の父さん。こういう時の父さん大体ぶっ飛んだことを言い出す。

 

「高校生活最後の一年、母さんの地元で暮らしてみないか?静岡の内浦。私たちはいけないが。」

 

「は?え?学校とかどうすんだよ?!」

「転校すればいい。事情が事情だし分かってくれる。それにお前、昨日環境を変えてみたいって言ってたじゃないか。」

 

聞いてたのか?!

 

いたずらっ子のような笑い方だ。そして優しく言う。

 

「俺はお前にアーティストになれなんて言ってない。だけどお前がその道を選んだんだ。まあこれは俺のせいでもあると思うが。」

 

やさしさの中には父だからわかるようなそんな強さがあった。

もともと今使ってる機材の大半は父さんの仕事柄手に入れてくれたようなものや僕が生まれる前から趣味でバンドをしていた父さんのお下がりの機材も多かった。

 

Seekerがここまで成長できたのも父さんが練習をみてくれたおかげだと思う。

 

「まだ高校生のお前が選択した道は楽な道じゃない。選択なんてしなくてよかった。でも、お前は選択してしまったんだ。アーティストになることを。そして、私も母さんも親として、子供の選んだ道をできるだけまっすぐ進むことができるように助ける義務があると思ってる。」

 

「だからと言って何で静岡なんだ?しかも内浦なんてほとんど知らないぞ!」

 

小学校高学年になるころ、あいつらとSeekerを組んだ。

コピー、オリジナル問わず練習していたし、練習に時間がとられるようになってからは行っていない。内浦に最後に行ったのなんて、軽く7,8年前じゃなかったか。たしか、いとこの三姉妹が居たと思う。

 

「だからよ。」

 

いつからいたのか母さんが父さんの後ろからひょっこり顔を出してぴしゃりと言い切る。

 

「知らない場所、知らない人、知らない空気に触れて、もう一度感性を磨いてきなさい。そして、一年後、自分にしか書けないものをかけるようになりなさい。」

「・・・・」

 

僕は何も言い返せなかった。圧倒的な正論な気がした。

 

「どこに住めばいいんだよ。父さんも母さんもそんなすぐに動ける仕事してないだろ?」

 

「そこは心配ご無用♪母さんの実家は何をしてたでしょうか?」

 

・・・思い出した。

 

「旅館?」

 

「その通り!今朝電話して聞いてみたのよ。そしたら、旅館が大きい分使ってない部屋もあるから、そこを使えばいいって!あっちも割と乗り気だったわよ?」

 

すでに根回し済みかあ・・・僕に退路はなかった。

 

「学校が変わることになるし、不安もあるだろう。もちろんこのままここにいてもいい。だけど―――」

 

「アーティストとして、変わらない。変われない。」

 

最後の言葉は僕が言った。わかってる。この状態が良くないことくらい。

 

だから。

 

「わかった。僕は僕で変わることができるように。高校最後の一年を知らない土地で過ごしてみる。」

 

父と母はにっこりと、自分の息子の決意をほめるように、微笑んだ。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

思えばこれがすべての始まりだった。

 

これはバンドマンと少女たちの物語。

 

喪失感と創造の中で戦う人々の物語。

 




次回は千歌ちゃんパートになります。
なお、作者はズラ丸推しです。
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