終わりがもたらしたはじまり   作:ふぁんた

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第29話「スクールアイドルワールド(3)」

「よお、思ったよりも早かったな」

 

聖良さんと別れた後、キリヤの方に歩いていく。

僕に気付いたキリヤが声をかけてくる。

スマホの画面には音楽を再生する画面が写っていた。

 

Linkin Parkを聴きながらも周りのことはしっかり気がつくらしい。

 

「まぁある程度余裕は持ってきたからな。ミツキは?」

 

「あー、今飲み物買いに行ってる。」

 

キリヤは音楽を切ると僕の方に向き直る。

 

「なあなあ、ずっと聞きたかったんだけどさ、お前、千歌ちゃんのことどう思う?」

 

「え??」

 

前も曜ちゃんに同じようなことを聞かれた。あのときは梨子ちゃんのことだったけど。

 

今度は千歌ちゃん?

 

「どうって…仲のいい女の子って感じだけど?」

 

何故かムッとして、語尾が少し強くなってしまった。僕は続けて言う。

 

「てか、またその話かよ。まだハーレム疑ってんのか?」

 

少しだけおどけて見せる。

 

「ふーん…まぁいいや。それならさ。」

 

変なところで言葉を一度区切る。手越さんのクセがこいつにも移ったのか?

 

なにかを決心したような、少し赤くなった顔で僕の顔を見つめる。

 

「…俺が千歌ちゃんを好きになっても問題ねえよな?」

 

「…え?」

 

突然のことで頭が真っ白になる。

 

千歌ちゃんとキリヤの映像が頭の中で行ったりきたりする。突然すぎて、何も言えなくなった。

 

「お、コウももう着いてたのね。あんたの分も買ってきといてよかったよ。ほい、コーラ」

 

ミツキに肩を叩かれて我に帰った。

 

「…おっす。あんがとな」

 

なんとかして言葉を絞り出した。

 

キリヤは今はもうこれ以上何も言わないって感じの顔をしていた。

 

…僕は、僕と千歌ちゃんは、一体どんな関係なんだろう。

 

なんとも言えない距離感。

 

突然のキリヤの言葉。

 

僕はなんとも言えずモヤモヤした。

 

・・・・・

 

会場に入ると今日のプログラムと記念品の缶バッチをもらう。

 

「お!大会公式の記念品じゃん!結構レアなんだよねー!」

 

さっきのいつになく真剣だったキリヤは幻想だったのか?ってくらいはっちゃけている。

 

やはり生粋のアイドル好きとしてはテンション上がるんだろうな。

 

そのまま3人で並んで席に座る。僕は真ん中。

 

キリヤは持ってきたらしいペンライトの動作確認をしていた。

 

・・・・・

 

大会が始まった。

 

私は他のグループのライブを出演者控え席からただただ見つめていた。

 

一生懸命にキラキラしているアイドル達を見つめる。

 

輝きたいと思っているのは私達だけじゃない。

 

だからこそ、負けられない。

 

コウ君が私達にくれた新しい力を証明したい。

 

「千歌ちゃん!次、理亞ちゃん達のばんだって!」

 

ルビィ ちゃんの声がする。

 

「次のグループは[gift]です!」

 

司会のアナウンサーの女の人の紹介が入った。

 

「なんといっても、元Saint Snowの理亞ちゃんのグループですから、私も期待が高まってますねぇー!さあ![gift]の皆さん!ハッチャケちゃってください!!!」

 

その言葉と同時に会場の照明が全て消えた。

 

一瞬の静けさに包まれる会場。

 

入れ替わるようにかかる入場SE。

 

瞬間輝き始めるステージの上の煌びやかな照明。

 

電子音と激しいドラムのSEとレーザーライトの多い照明は嫌でも私たちのテンションを上げてくる。

 

そのまま3人はステージの中央に立つ。

 

逆光で3人の姿が黒くなる。SEが鳴り止んだ。

 

「 [gift]です。どうぞよろしくーーー『Beyond』」

 

・・・・・

 

僕は[gift]というグループが入場してくる瞬間からその異質さから目が離せなくなった。

 

この大会は曲からステージの演出に至るまで自分たちで企画し、それを大会運営に提出する必要がある。

 

その上で出来る範囲で運営側が実現してくれる仕組みになっている。

 

だから曲の良さや、アイドルとしての輝き以外にも演出や見せ方と言ったさまざまな点が評価の対象となっている。

 

このことは梨子ちゃんから聞いてたし、提出書類やステージ造りの案については僕も善子ちゃんや花丸ちゃんを手伝った。

 

だからこそ、だ。

 

入ってくるところから異質だ、と思った。

 

Aqours含め、今まで見てきたアイドルグループは正統派なアイドルなんだと思う。

 

だけどこの空気は絶対に何かが違う。

 

今ここに広がる空間は、そしてこの胸の高鳴りは。

 

初めて行った大好きなバンドのライブを見に行った時のそれに似ていた。

 

・・・・・

 

曲が始まる。

 

激しいドラムソロからはじまり、シンセサイザーのギラついたメロディが入る。

 

それにユニゾンするかのようにコードをかき鳴らすギター。

 

そして理亞ちゃんと髪の長いユキちゃん、ふわふわ髪のサラちゃんの激しい踊り。

 

そして

 

「Beyond the world!!!!」

 

サラちゃんがセンターに来たかと思うと、膝を床につけ叫ぶ。

 

歌詞として認識できるかできないかギリギリの瀬戸際を攻めた歌い方。叫び方。

 

それでも歌詞がわかるのは、叫び方がうまいんだろう。

 

とても同世代の子が歌っているとは思えない光景だった。

 

サイドでは曲に合わせ理亞ちゃんとユキちゃんが踊っている。

 

なんだこれ…

 

こんなの、見たことない。

 

痺れるような感覚が私達を支配した。

 

・・・・・

 

「やっべえかっこいいアイドルみつけちゃったかもしんねえ…しかも、元Saint Snowの理亞ちゃんのグループか…シャウトすげえ…」

 

隣でキリヤが呟いたのが聞こえた。

 

「この曲のドラム、絶対楽しいな…」

 

ミツキはドラムの耳コピをしようとドラマーの出す音に耳を傾けていた。

 

ハヤテは曲に合わせて頭を振りながらステージの上で激しくギターを弾いている。

 

僕はというとただただステージの上のアイドル達に目を奪われているだけだった。

 

すごい。

 

その一言に尽きる。

 

また僕の中にメロディが生まれていくのを感じた。

 

・・・・・

 

「闇の中 何かに怯えていたの」

 

芯のある理亞ちゃんの声が会場に響いた。

 

私は鳥肌が立つのを感じる。

 

ステージの上で踊る理亞ちゃんが昨日まで私たちと話していた理亞ちゃんとは別の人になってしまったかのような錯覚。

 

イントロに比べ静かなAメロだからこそ際立っている。

 

「どうなるかも知らない世界で」

 

「誰か助けて 手を伸ばしても」

 

ユキちゃんとサラちゃんが交互に歌う。

 

特にサラちゃんはあんなに激しいシャウトをしていても、歌声に一切の影響が出ていてない。

 

むしろ、力強ささえ感じた。

 

「誰も助けてはくれないね」

 

3人で歌うパート。踊り、歌。一切のブレがない。

 

・・・・・

 

「あの人はもういない 」

 

理亞ちゃんが歌い出したBメロ。綺麗な声が会場に響いて、出だしのシャウトとの対比が美しい。

 

私は戦慄してしまった。

 

隣では千歌ちゃんがステージをじっと見つめていて、曜ちゃんまで黙り込んでしまっている。

 

二年生のみんなも同じ感じだった。

 

こんな曲、書けるなんて…

 

こんなフレーズの引き出し、わたしにはない。

 

聞いてきた曲が違うと言ってしまえばそれで終わりだけど、会場はステージで放たれる衝撃に呑まれていた。

 

私たちはこのステージをこえていけるの…?

 

・・・・・

 

「それでも歩き続ける」

 

「私はあの日誓ったんだ」

 

サラちゃん、ユキちゃんの順にソロパートが展開され、曲がサビの盛り上がりに向かっていく。

 

「だからこそ見つけた光」

 

3人で歌う。綺麗にハモった声は会場に反響して、全てを飲み込んだ。

 

「砕けた夢 再び集めて」

 

サビの前、突然ピアノの音色だけになる。

 

理亞ちゃんのソロパート。

 

また会場の雰囲気が変わった気がした。

 

サビ前で一度落ち着かせることで、理亞ちゃんの歌声の力強さを、美しさを、強調したんだ…!!!

 

私の中で唾を飲み込む音が聞こえた気がした。

 

「new world !!!!超えていけ超えていけ声が聞こえた」

 

「break the wall !!!! どんな壁でも打ちこわして 」

 

「輝く星 また掴みたいから」

 

サラちゃんのシャウトと入れ替わるように入るユキちゃんと理亞ちゃんの歌声。

 

破壊と再生を見ているかのような、錯覚をしてしまう。

 

「全てを白く塗り替えていく」

 

理亞ちゃんのソロパートが入って曲はクライマックスに向かう。

 

「Beyond the past!!!!」

 

サラちゃんのシャウトが会場に響き渡る。

 

バックバンドの人たちやハヤテさんまで激しい動きをしながらノリノリで演奏している。

 

アウトロが終わった。

 

「ーーーありがとうございました。[gift]でした。」

 

一瞬の静寂。

 

とんでもない台風が通り過ぎたかのような衝撃。

 

あっけにとられていた会場は誰かが始めた絶賛の拍手が拡散していき、大喝采に包まれた。

 

私たちは[gift]の次。今回の大トリだ。

 

私たちはこれを超えられるのかな…?

 

そのまま[gift]のみんなは退場していった。

 

「[gift]の皆さんありがとうございましたー!!いやあ!すごかったねえ!ギャップ感がすごくて私びっくりしちゃいました!

さあて!今大会の大トリを飾っていただきますのは前回のラブライブ 優勝者、Auoursです!!それでは準備していただきましょう!!」

 

やるしかない!

 

決意して私達は立ち上がった。

 




次回投稿は7月の末から8月の頭頃の予定です。

[以下作者あとがき]

先週末くらいから疲れかストレスか夏風邪をこじらせまして、2日ほどベットで横になる生活をしておりました。

この状態じゃ勉強とかもできないし、小説の続き書こうと思いまして、続きを早めに投稿することができました。未だに声がおかしい。
こんにちは、作者です。

ほんとこの時期に熱出して寝込むとかマジで勘弁してほしい。皆さんも温度差の激しいところを出入りするときとかは注意してください。ほんとシャレにならんくらいダルくなります。

さてさて本編今回も結構話を進めました。

キリヤ君が入り込みそうな予感。関係が複雑になりそうな予感です。

全ての方が納得する選択を主人公がするとは思えませんが、どんな選択を取るのか楽しみにしていてください。

そして、理亞ちゃんのグループの曲。例のごとく曲として作れてはいません。頭のなかにイメージがあるだけです。ほんと作りたかったりしてますが、いかんせん時間が許してくれないです…orz

わかる方にはわかる話かと思いますが、理亞ちゃんたちの曲やグループのイメージとしてはpasscodeというアイドルグループを参考にいたしました。
Saint Snowの曲を聴いた時、多分一番リアルで近いイメージはこのグループだろうなあ…って思ってます。
歌詞はオリジナルで作者がキャラクターイメージなどから書いたものですが、どう考えてもラブライブっぽくねえ、助けて()

MISS UNLIMITED(live ver.)/ passcode
https://m.youtube.com/watch?v=RtYWltM9gu8

初めて聞いた時、一発でかっけえ!ってなったの覚えてます。こんだけ叫べる女の人、そんなに知らない…

次回でスクールアイドルワールドの大会編は終了したいと思います。
そして、近いうちに登場人物たちの人間関係を動かしていきたいと思います。

いつも読んでいただきありがとうございます。空いた時間でコツコツ書いて、でき次第投稿することを繰り返していきたいと思っておりますので、最後まで読んでいただけますと、作者としては嬉しい限りです。これからも頑張っていこうと思っております。今後ともよろしくおねがいいたします。

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