終わりがもたらしたはじまり   作:ふぁんた

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第30話「スクールアイドルワールド(4)」

「…やるよ!!」

 

「うん!」

 

私たちは円陣を組んで互いに目配せをした。

さっきの[gift]はたしかにすごいと思う。

私は梨子ちゃんと目が合う。

 

でも私たちも負けられない。

 

「1!」

「2!」

「3!」

「4!」

「5!」

「6!」

 

「「「「「「Aqours !サーンシャイン!!!」」」」」」

 

・・・・・

 

「あら、ここにいましたのね?」

 

幕間のタイミングでかけられた声に僕ら三人は振り向く。

 

ダイヤさん、に果南さん、それに鞠莉さんだった。

 

「ダイヤさん!それに、鞠莉さんに果南さん!」

 

「やっほ!コウ直接会うのはほんと久しぶりだね!昔みたいにハグする?」

 

 

果南さんはいたずらっぽい笑顔を浮かべて、元気な感じでそこにいた。

 

昔からあんまり変わらない果南さん。

少しだけ日焼けしたのかな?

 

「な!果南さんのハグとかお前羨ましすぎるだろ!」

 

隣でキリヤが喚く。

 

本当に今日会った時の真面目なキリヤはどこに行ったんだろう…。

 

「果南さんたちは今ついたんですか?」

 

話の流れを元に戻そうと別の話題を振ることにする。

 

「私たちはちょうど理亞さんたち…[gift]のライブが始まるくらいに着きましたの。Aqoursに間に合ってよかったですわ。」

 

「果南の時差ボケとか、ダイヤの二日酔いとか色々大変だったわよネー!」

 

「ちょ!鞠莉さん!その話は…!」

 

うろたえまくるダイヤさん。一体何があったんだろう。

 

「結局間に合ったし、面白い話が聞けたから私はいいわヨ♪」

 

元Aqoursの三年生メンバーたちはお互いに笑いあっている。

 

少し千歌ちゃんから三年生メンバーたちのことは聞いてたけど、お互いのしがらみがあって、それを乗り越えたんだそうだ。

 

…僕らもいつか、今を乗り越えられる日が来るのかな?

 

「ちょうどとなりの席空いたし、座ったら?もうすぐAqoursの出番だよ!」

 

「ありがとうございます、ミツキさん。座らせてもらいますわ」

 

そのまま僕らは思い思いにAqoursの出番を待つ。

 

僕の曲は、僕と梨子ちゃんが作った曲は、どれだけの人に届くんだろう。

 

「お!はじまるぜ!」

 

キリヤの声と同時に会場にかかっていた幕間のBGMが消えた。

 

・・・・

 

「こんにちはー!!!静岡の内浦からやってきました!Aqoursです!」

 

千歌ちゃんの声が会場にこだまする。会場は青を中心とした思い思いのサイリウムが光っている。

 

「新しい私たちを、今日は見てください!」

 

この日のために作った人魚をイメージした衣装に身を包んだみんなが堂々とステージに立っている。

 

普段はおとなしい梨子ちゃんがすごく堂々としていて、かわいいという思い以上にかっこいいと思った。

 

「それでは聞いてください!Marmaid Song!!!」

 

曜ちゃんの声と同時にステージの照明が落ちて、ドラムのカウントが入る。

 

・・・・・

 

私は無我夢中で踊る。歌う。

 

ふと周りを見渡す。

 

梨子ちゃんの歌声と曜ちゃんのコーラス。

2年生のみんなのダンス。

 

花丸ちゃんと私は振付の中で手を合わせた。

 

会場を見渡すと去年は見ることがなかった光景。

 

私たちの色の光、私たちの名前を呼ぶ声。

 

あの時は0だった私たちは、あの時から少しは成長できた。

 

そう感じる。いける。これなら、いける!

 

・・・・・

 

「今大会優勝者に、トロフィーの授与がされます。」

 

大会が終わり、一般投票会場投票も締め切られ、大会優勝者も決まった。

 

今は閉会式が行われ、表彰式が行われている。

 

大会が終わった時点で帰る人もちらほらいたが、僕らは関係者ということもあり、そのまま会場で閉会式を見る。

 

 

「優勝グループの[gift]は前へお願いします。」

 

 

壇上に[gift]が上がり、トロフィーが手渡される。会場は拍手で包まれた。

 

続いてAqoursが呼ばれる。

 

準優勝。今回のAqoursの結果だった。

 

再び拍手で包まれる会場。

 

ハイレベルなグループが出る大会で準優勝。

 

悪い結果じゃない。そこに届いていないグループだって沢山ある。

 

なのになんだ、このモヤモヤは。

 

一体、なんなんだよ…

 

・・・・・

 

「みなさんこの後時間ありますか?よかったら千歌さんたちのところへいきませんか?」

 

大会が閉幕し、お客さんが出始めている会場。

 

僕らも出る準備をしていたらダイヤさんに誘われた。

 

「時間は大丈夫ですけど、僕らいってもいいんですか?みんな大会終わって疲れてるかもしれないし…」

 

「コウさんはもちろんSeekerのみなさんはある意味関係者ですもの。大丈夫だと思いますわ。それに…」

 

「私が千歌さんたちと話したいことがありますしね。」

 

そう告げるダイヤさんはなんていうんだろう…凛とした表情をしている。

 

僕は思わずうなずいてしまった。

 

荷物を片付けて、Aqoursのみんなの元に向かう。

 

出演者の出入り口には終演後のアイドルを労おうと保護者っぽい人だったりが列を作っている。楽屋に行くのに手続きが必要なんだそうだ。

 

そこらへんのセキュリティは下手なフェスよりも万全らしい。

まぁメインが女子高生だし、当たり前の話なんだろうけど。

 

手続きを済ませ、楽屋のほうに向かう。

 

途中の通路にはさっきまでステージで踊っていたアイドルたちが衣装のままでいた。

 

想像以上の結果に喜ぶグループ、反省会を開くグループ、ミスに落胆して涙ぐんでいるグループ…様々だ。

 

みんなはどこにいるんだろう?

 

「ねえ。」

 

突然声をかけられた気がして振り向くとそこにはツリ目でツインテールの女の子がいた。

 

この子、[gift]のセンターだった子だ…!

 

「理亞ちゃん!久しぶりだね〜!」

 

理亞ちゃんと呼んだ少女を果南さんが嬉しそうに抱きしめる。

理亞ちゃんは少しだけ顔を赤くした。

 

「ひ、久しぶり。Aqoursの元三年メンバーのみんながいるからすぐわかったわ…ところで、あなたがSeekerのコウ?」

 

理亞ちゃんは、果南さんにハグされたままで僕の両方を見る。

 

なんだか子犬を見ている気分になった。

 

「僕が宮木コウです。えっと…なんで僕になにか?」

 

果南さんからやっと解放された理亞ちゃんは僕を見る。

 

「あなたが…。ルビィと姉様から話聞いてる。」

 

「ちょっと話せない?私、あなたと話したいことがあったんだ。」

 

「え?」

 

いろんなことに頭が追いつかない。

 

・・・・・

 

「そうか、じゃあSaint Snowの…。聖良さんの妹でみんなの友達だったんだ。」

 

僕は理亞ちゃんに連れられて楽屋から少し離れた自販機コーナーの休憩スペースにやって来る。

 

それぞれ飲み物を買って、ベンチに腰掛けた。

 

大会直後ということもあり、僕ら以外の利用者もいた。

 

「姉様から話も聞いた。びっくりしたんだから。まさか噂の人と会えるとはね。」

 

理亞ちゃんはそこまで感情を表に出すタイプじゃないのかな?

淡々としたはなしかただ。

 

「こんな話をしたかったわけじゃないの。遅かれ早かれ私たちとAqoursのみんなの関係は分かったと思うし。」

 

「まぁそうか。じゃあ一体…?」

 

一度だけ目を閉じて理亞ちゃんは僕の方を向く。

 

「あなたは、何を思ってあの曲を書いたの?」

 

「…え?」

 

言葉に詰まる。

あの曲に込めた想い…

理亞ちゃんは下を向いてしまった。

 

「…今回私たちは、この大会に勝つことができたわ。それは本当に嬉しい。」

 

「でも一方で、何か違うって、そんな思いが捨てきれない。」

 

理亞ちゃんは淡々と続ける。

 

「ちょっと考えたら気づいた。私はとても飢えてるんだって。」

 

「飢えてる…?」

 

「うん。私は、あの時の、前回のラブライブで輝いたAqoursと戦いたいんだって気づいた。」

 

そして、僕を見る。

 

「今のAqoursはあの時のAqoursとはまた違う。それは仕方のないことかもしれないし、今のAqoursが悪いとは思わない。」

 

「だけれど、私が求めてる、私が戦いたいAqoursでもない。」

 

「曲を作ってるあなたに聞きたい。あなたは、今まで以上にAqoursを輝かせることができるの?」

 

一瞬目を閉じて考えた。

 

あの曲に込めたのは、僕が内浦に行ってから感じたことや、Aqoursのこと、そして、自分の中で決心をつけることができない感情。

 

そんな気持ちをぶつけた。

 

僕の書いた曲でみんなが輝くことができるなら…そう思って書いた曲。

 

「馬鹿にしないでくれ。僕があの曲に込めた思いは本物だと思ってる。」

 

「僕は本気で自分の曲でAqoursを輝かせたいっておもってるよ。その覚悟だってしているつもりだ。」

 

出来るだけ感情を出さないように。

 

今感情を出したらどんな顔をするのかわからないから。

 

怒りでもない。迷いでもない。この不思議な感情の名前を僕は知らない。

 

「…そう。あなたの口からその言葉が聞けてよかったわ。」

 

理亞ちゃんは缶コーヒーを飲み干すとそのまま立ち上がった。

 

「じゃあね。私はもう行くわ。姉様も待ってるだろうし。Aqoursの次のステージ期待してる。それと…」

 

「Seekerの次のライブもね。あなたたちのバンドが復活することを願ってるわ。一ファンとしてね。」

 

そう言い残して理亞ちゃんは去って行った。

 

考えなきゃならないことが多すぎる。

 

Aqours、Seeker、Summer Rocks、今日のキリヤ、千歌ちゃんに梨子ちゃん、自分の未来…。

 

すでにキャパオーバー気味な僕は、それでも絶対にAqoursを輝かせると誓った。

 

それが僕に課せられた運命なのかもしれない。

 




次回投稿は8月の末を予定しております。

[以下作者あとがき]

はじめに謝罪します。投稿遅くなって申し訳ありませんでした!!!

言い訳をさせていただきますと、本当に諸々ありまして、急遽北海道とんでったり、今月末も他県に行かないといけなかったりと色々しておりました。

色んな経験ができた時間ではあったんですが、その分小説を書く時間が減ってしまいました。次回はもう少し早く投稿したいと思います。

さて、今回の話はコウくんが改めて覚悟を決める話でした。
理亞ちゃんをこのシーンで出すことはだいぶ前から決めておりました。理亞ちゃんのキャラ、ブレてないかなあ…

曲に込めた思いとかそういう部分はかなり大事になってくるんじゃないかなあと個人的にはおもっておりまして、そういう部分を大切にしていきたいなあとか思っております。

作者は少しずつ落ち着きを取り戻しかけておりまして、色々な創作にかける時間も少しずつ増えては来ました。なので、本作もコツコツと続けていきます。
サンシャインの映画の公開前には終わらせたいなあ。

作者は本日、結構楽しみにしていたライブに行きます!久しぶりだぜ!!!!

次回はコウくんの裏側でAqoursにどのようなことが起きていたのかというお話になります。
そして、あの勝負の結果を書いていきたいなあ。
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