終わりがもたらしたはじまり   作:ふぁんた

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第31話 「1から先は」

 

「はぁ…今回は2位かー…いけると思ったのになぁ….」

 

楽屋の床にへたり込んでため息をついてしまう。

みんなを見回すと相当疲れているようだった。

 

「理亞ちゃんたちのアレ見たあとだとどうしてもね…。インパクトじゃ勝てないよ」

 

曜ちゃんは苦笑い。

 

「でも、なんて言えばいいんだろう…すっごく、悔しいね。」

 

ポツリ。

 

ルビィちゃんが呟いた。

それは今の私達全員が抱えた思いだった。

 

0から1へ。

 

私達はその思いでここまで来た。それが私達の支えだった。

 

1から先は?

 

「あんまり落ち込んでも仕方ないし、とりあえず次にいかしましょう?」

 

「そうずら!理亞ちゃんたちには負けられないずら!」

 

善子ちゃんと花丸ちゃんが空気を読んで言う。

 

梨子ちゃんは考えごとを続けてる。

 

「…あの曲、ものすごかった。」

 

「…え?」

 

梨子ちゃんはつい口に出してしまったって感じで呟いた。

 

「…ごめんね、ただなんとなくびっくりしたんだ。あんな魅せ方、わたしには思いつかなかった。」

 

梨子ちゃんが唇を噛む。

 

目は前髪に隠れて見えないが、頰に流れた雫を私は見逃さなかった。

 

「梨子ちゃんは悪くないよ!コウくんと一生懸命に曲作ってくれてたじゃん!私、この曲好きだよ!」

 

私は梨子ちゃんの肩を抱きしめてみるけど、梨子ちゃんが泣き止む気配はない。

 

「っ…悔しいよ、私…ものすごく悔しい…!!」

 

「梨子ちゃん見てたら、マルまで泣きたくなっちゃうよ…!」

 

花丸ちゃんまで泣き始めてしまう。

 

心の中では私だって…泣きたい。

 

だって、本当に、悔しいから。

 

「皆さん、お疲れ様でした。」

 

とても聞き覚えのある凛とした声が聞こえた。

 

「ダイヤさん!鞠莉ちゃん!それに果南ちゃん!ミツキさんにキリヤくんも!」

 

果南ちゃんに駆け寄って抱きしめてしまう。少しだけ涙が流れた。

 

「千歌〜!!実際に会うのは久しぶりだねー!」

 

「あは、恥ずかしいとこ見られちゃったね…。コウくんは?」

 

「コウなら、理亞にどっかつれてかれたワヨ。話したいことがあるらしいワ。」

 

なんであの二人が?後で聞いてみよう。

 

「ん、ハヤテからラインだ。キリヤも来いって。今日の演奏の感想聞かせろってさ。ほら、行くよ。」

 

スマホを見ながらミツキさんが言う。

 

「うぇ?! はあー…まあ、いつものことか。じゃあ俺らは一度退散すっかな。」

 

「じゃあみんなまた後で。鞠莉、落ち着いたら電話してね?」

 

「オッケー!わかったわ!」

 

ミツキさんはキリヤくんの襟首を掴むとウインクを残して去っていった。

 

「…ミツキさんには気を遣わせてしまったかしら。後でお礼を言わないといけませんね。」

 

ダイヤさんはため息をつくと私達の方を向いた。

 

「今の皆さんになんて声をかければいいか、わたしにはわかりません。だから、今日の感想を伝えます。」

 

さっきまで泣いていたみんなが顔を上げて、ダイヤさんを見つめる。静寂だけがそこにあった。

 

「皆さんらしい、皆さんのライブができてるってわたしは感じました。私たちがいなくなった後、どうなっているのかとても気がかりだったのでそこはとても安心しています。」

 

微笑みながら、ダイヤさんは私たちに伝えてくれた。

よかった…私たちは私たちらしくあれたんだ…

 

「でも…私たちは勝てませんでした…」

 

梨子ちゃんが下を見て呟く。

 

「それは、ある意味仕方のなかったことなんじゃないかと思います。」

 

「えっ?」

 

「言葉にするのが難しいですが…私たちは前回のラブライブ で優勝したことで多くの人に認められるようにはなりました。そして知ってもらえた。」

 

ダイヤさんは目を閉じて淡々と話す。私たちに諭すように。

 

「でもそれが浸透しすぎてしまった。新しいAqoursの姿を見せることができていなかったんです。」

 

「でも!コウくんに作ってもらった新しい曲だって…!」

 

納得できない。ダイヤさんだって良いって言ってたのに!

 

「あの曲はわたしも大好きです。そして歌ってるあなたたちも。でも…」

 

「見ているミンナに伝わらなかった」

 

さっきまで黙って見ていた鞠莉さんがダイヤさんに代わって言葉を繋ぐ。

 

「ダイヤ、その先は私が言うわ。あなただけに重荷は背負わせたくないもの。」

 

「鞠莉さん…」

 

果南ちゃんが険しい顔で鞠莉さんを見る。

 

「みんな、よく聞いて。世間は飽きっぽいものよ。新しいものを常に求めてる。自分を貫き通して成功できる人の方が少ないわ。」

 

「みんなに今、足りないのは新しい姿、よ。」

 

私たちは何も言い返せない。

 

新しい学校、新しい部員、新しい出会い。そんな中で私たちは私達のことを考えることができなくなっていたのかもしれない。

 

果南ちゃんがため息をついた。

 

「鞠莉もダイヤもかんがえすぎだよー」

 

その顔は穏やかだ。

 

「たしかに二人の言うことは正しいと思うよ。でもそれは理論的な話。みんなはもっと気楽に考えてみて?」

 

「じゃあ果南ちゃんはどうすればいいと思うの?」

 

花丸ちゃんが問いかける。果南ちゃんの穏やかな顔は変わらない。

 

「んー…千歌、私達、ラブライブ の最終選考の前に円陣くんだよね?覚えてる?」

 

「うん」

 

「その時、なんて言ってたか覚えてる?」

 

「えーっと、確か0から1へって言ったと思う。」

 

それが私達の想いだったから。

 

「そう。そのあと、1から10へ、10から100へとも言ってた。」

 

果南ちゃんは静かにそういうとまばたきをして私達を見つめる。

 

「焦ったってなんもいいことないよ。みんなはみんなの良さがある。だからこそ、無くしちゃダメなところは持ち続けなきゃいけないと思う。」

 

「これからみんなで新しい自分たちを探せばいいよ。時間が許す限りさ!今度は私たちもいるしね!少しずつ変わって、1を10に、10を100にすればいいんだよ!」

 

ウインクをして、ダイヤさんと鞠莉さんを見る。ダイヤさんはほくろをかき、鞠莉さんは舌を出しながら恥ずかしそうにしている。

 

新しい、私達の、姿…

 

「3人の言う通りね!」

 

喜子ちゃんが急に立ち上がり、言う。

 

「リリー!ズラ丸!いつまでもメソメソしてても仕方ないわ、私たちは前向きになって先に進むのよ!そうよね!千歌!」

 

「う、うん!」

 

とっさに言われてびっくりしてしまう。でも、喜子ちゃんの言うことに間違いはない。

 

「喜子ちゃん…ありがとう…。」

 

梨子ちゃんが涙を拭うと喜子ちゃんの手を握った。

 

「Summer Rocksでは新しくなった私達を見せつけるのよ!」

 

喜子ちゃんが堕天ポーズをキメた瞬間。

 

その瞬間、ぐぅぅと喜子ちゃんのお腹が鳴る。

 

顔を真っ赤にして恥ずかしがる喜子ちゃん。

 

思わず笑ってしまう私達。

さっきまで泣いていた二人まで笑ってる。

 

「あははは!堕天使もお腹は空くズラか!」

 

「う、うるさい!堕天使もお腹はすくの!ほら、みんななんか食べに行きましょ!」

 

慌ててる喜子ちゃんが面白くて、可愛くて、もっと笑ってしまう。

 

「ふふふ…!よかったらみんなウチのホテルのバイキングに行かない?ミツキたちも呼んで打ち上げしましょ!みんな近くのとこにとまってるんでしょ?」

 

「お、いいですなぁー!バイキングに向かうであります!」

 

私達は笑いながら帰る準備を始めた。

 

私はそれでもやっぱり梨子ちゃんが元気がないことを見逃すことができなかった。

 

・・・・

 

「ううー…食べすぎた…」

 

「お前も?まぁこんないいホテルのバイキングなんて、そうそうないからな。」

 

鞠莉さんのとこのホテルでの打ち上げに僕たちも参加させてもらい、僕らもホテルに来ている。こんないいところでご馳走してもらっていいのだろうか僕たち。

 

ハヤテは運営側の飲み会に出るとかでこっちには来れなかった。

鞠莉さんとメタル談義ができないと、心底悔しがっていた。

 

今は打ち上げも終わり、ホテルのロビーにいる。みんなは自販機に行ったり、ホテルを見て回ったり、近所を見たいとかで僕らは今、二人でぼんやりしていた。

 

「…なあ、キリヤ、今日の昼間の話だけど…」

 

「あー…その話、今は勘弁してくれ、ちゃんと話しできるかわからねえ。」

 

キリヤはツイッターを見ながらそんな事を言う。

 

「俺の決心がついたらまた言うよ。近いうちに、また、な。」

 

「わかったよ。…俺も色々考える。」

 

そのまま無言になってしまった。

 

正直とても気まずい。いつもなら馬鹿話してるのに。

 

こんな気まずいこと、Seekerの未来をどうするか決めかねてた時以来だ。

 

「あ、いたいた!コウくーん!」

 

静寂を破ったのは曜ちゃんだった。

 

「コウくん、ちょーっと来て!学校のことで大事な話をしたいんだ!キリヤくん、コウくん借りるね!」

 

「おー、持ってって、持ってって。しっかり役に立ってこいよ。」

 

キリヤに送り出され、僕は曜ちゃんについていく。

ホテルを出てふたりで歩く。こうしてみるとすげえでかいホテルだ。

 

「大事な学校のことって?」

 

「んー、口実、かな?実際に用があるのは私じゃないよ。」

 

少し歩くと近くの小さい公園に着く。よく見たらブランコにだれか座ってるんだけど、誰かはわからない。

 

「んじゃ、後はまかしたよ!私は食後のランニングにいくであります!」

 

そう言うと曜ちゃんはすごい速さで僕の前から去って行った。

 

はっきり言う。事態が飲み込めない。

 

仕方なく公園に入るとブランコの上には

 

 

千歌ちゃんがいた。

 

 

「あ、やっと来てくれた。結構待ってたんだよー!」

 

手をブンブン振っている。

 

大会があったのに千歌ちゃん、すっごく元気だ…

 

僕は何故だが鼓動が早くなる。心臓が脈打つ音が僕の体の中で響く。

 

「千歌ちゃん、どうしたの?わざわざこんなとこで。」

 

「んー…ちゃんと会って言うべきかなって。」

 

そうやって前置きをする。

 

「明日、空いてるよね?お願いがあるんだ。」

 




次回投稿は10月下旬を予定してあります。

[以下作者あとがき。]

マジで謝罪します、ここまで時間がかかってしまい申し訳ありませんでした。

自分の将来に関わる現実的なことがあったり、ぼちぼち再開を考えてるバンドの練習をしたり、まだ終わってない実習の準備したり、卒論やったりと諸々やっていたらここまで引きずってしまいました、読んでくれていた皆さん、大変すいません。ここまで待っていただいてありがとうございます。

言ったことは守りたいと思っておりますし、この小説は最後まで完結させたいので、これからも気長に待っていただけると嬉しいです。

本当に映画の公開までに終わるのでしょうか?作者が一番震えてます。

本編として、書きたかったシーンを書けました。表面的な事をサラッと書いたにすぎませんが、音楽が戦い続ける点なのかなって個人的には考えております。

そして、次回はデート回になります。色々な想いの中で揺れ動くコウくんと千歌ちゃんや梨子ちゃん、Aqours、Seekerのみんなを楽しみにしていただけると嬉しいです。
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