終わりがもたらしたはじまり   作:ふぁんた

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第32話「私の気持ちは」

 

朝の10時。

 

夏の東京駅は暑くて、立ってるだけで汗が出てくる。

 

僕はラインを確認しながら昨日の夜のことを思い出す。

 

・・・・

 

ホテルから曜ちゃんに連れ出され、僕が公園に来たら千歌ちゃんがブランコに座っていて、明日の予定を聞かれる。

 

「ね、もし明日何もないなら一つお願いがあるんだ。」

 

「んーと、どしたの改まって。」

 

「うーん、なんとなく?なになに、なんか期待しちゃった??」

 

ニヤニヤしながら千歌ちゃんが僕の顔を覗き込む。なんかからかわれてる。今度何かしらで仕返ししてやる。

 

「で、お願いって?」

「うん。梨子ちゃんを連れ出してあげて欲しいんだ。」

 

すこしの動揺。

 

ミツキからすこしだけみんなの大会の後の話を聞いちゃったから。

 

梨子ちゃんは打ち上げでもあんまり元気がなかった。

 

笑ってはいたけどどことなくみんなに合わせてるようなそんな感じ。

 

「なんとなく、コウくんも気づいてるでしょ?梨子ちゃんが元気ないこと。」

 

「…それは分かってはいるけど、僕よりも千歌ちゃん達の方がいいんじゃ?」

 

単純にそう思う。

今どう声をかければいいんだ。

 

音楽で悩んでいるのは僕だって同じことだ。

 

「今の梨子ちゃんの気持ちをわかってあげられるのは、コウくんだと思う。自信持ってそれは言えるよ。」

 

僕は黙ってしまう。千歌ちゃんの真意がわからなくて何も言えない。

 

「それに私ね。明日、ミツキさんと会うことになってるんだ。だから私は明日行けないの。」

 

「だからってことじゃないけど、コウくんに梨子ちゃんのこと任せた!」

 

そう言い切るとブランコの近くに置いたらしい缶ジュースを飲む。

 

「わかったよ。ま、梨子ちゃんが暗いままだと僕も嫌だし。」

 

「よかったぁ〜!!コウくん来るまで色々悩んでたんだー!」

 

明るい顔でそう言うと、ブランコから立ち上がって僕の近くに来る。

 

「それとさ、内浦戻ったら、行きたいところあるから付き合ってね。」

 

「行きたいところ?どこに?」

 

「うん。まだそれは内緒!」

 

そう言うと満面の笑みを浮かべる。

 

「じゃあ先にホテルもどるね。明日、楽しんできてね!」

 

そう言うとホテルに戻っていってしまった。状況を把握できない僕はとりあえず梨子ちゃんにラインして、明日の予定を確認するのだった。

 

・・・・・

 

東京の池袋。午前10時。駅前の喫茶店でミツキさんと待ち合わせる。

 

コウくんは今ごろ梨子ちゃんと会ってる頃だろう。

 

昨日は二人一組のホテルの部屋で私は曜ちゃんと一緒だったし、梨子ちゃんは善子ちゃんと一緒だったから打ち上げが終わってからそんなに話してはいない。

 

二年生のみんなと元三年生のみんなは今日はダイヤさんのうちに行くって言ってたし、よくわかってないのは梨子ちゃんだけだった。

 

「千歌ちゃん、本当によかったの?」

 

アイスティーを飲みながら曜ちゃんが聞いてくる。

 

「…うん。悩んだけど、やっぱり梨子ちゃんには元気になって欲しいから。今、梨子ちゃんが抱えてる悩みを解決できるのは多分、コウくんだよ。」

 

「…そっか。」

 

「はぁ〜…なんか惜しいことしちゃったよねえ…」

 

正直、未練がないわけじゃない。

それでもこの決断は親友としての決断だ。

 

でもなんでだろう…またモヤモヤが襲ってくる。

 

「あ、あれ、ミツキさんじゃない?」

 

曜ちゃんが入り口の方を指差すとミツキさんが入り口でキョロキョロしてるのが見えた。

 

「あ、ミツキさーん、こっちです!」

 

私が手を挙げると私たちを見つけたミツキさんがこっちにやって来る。

 

「よっ!東京案内してほしいって言ってたから色々考えてたら寝坊しちゃった!ごめんよ。」

 

「大丈夫ですよ〜!それよりこの後どうします?」

 

「私、服が見たいなぁ!沼津じゃ見れないものもあるだろうし!」

 

さっきまでの空気と一変して曜ちゃんが元気に手をあげる。曜ちゃんも曜ちゃんでミツキさんに東京を案内してもらうのを楽しみにしてたらしい。

 

「お!いいね。Seekerの連中、男ばっかだから女の子と服見る機会も減っちゃってさあ。よかったら私のも見繕ってよ!」

 

ミツキさんもノリノリだった。私も今は悩んでたことを振り切る。

 

今は楽しもう!そう心に決める。

 

・・・・・

 

サンシャインシティの中のお店を見て、いい感じの服を見ていたらあっという間に午後3時だった。

 

ミツキさんと私は曜ちゃんの着せ替え人形みたいに色んな服を試して、その中でも気に入った服を買ってあっという間に午後3時だった。近くのカフェで一休み。

 

「やっぱ女の子と服見に行くの楽しいわぁ。あいつらと行くとすぐネタに走るし…」

 

「Seekerのみんなで買い物行ったりするんですか?」

 

私は気になって聞いてみた。

 

「たまにね。私は一人で行くことも多いんだけど、ハヤテは私が連れ出さねえとずっとおんなじ服着てるようなやつだし。ま、最近じゃそういうわけでもないみたいだけど。」

 

メンバーの話をするミツキさんは本当に愛おしそうな目をする。

 

その瞳はコウくんと同じ目だった。

 

「…ミツキさんが羨ましいな。私の知らないコウくんのこと、たくさん知ってて。」

 

口をついて出た言葉は私の素直な気持ちだった。

 

曜ちゃんは察したのか、ストローを口に入れてフラペチーノを飲んでいる。

 

アイスコーヒーをストローで飲んでたミツキさんは目を丸くして私を見ると、微笑んだ。

 

「ふーん…そういう感じか。ハヤテとキリヤの言ってたハーレム云々はあながち間違いでもないわけね。」

 

何も言えずに私は俯いて、頷く。

 

「流石女子高生。可愛いな〜。昔のこと思い出しちゃいそうだ。たしかに聞いてる限りだと千歌ちゃんと梨子ちゃんが一番コウの身近にいるもんね。」

 

「昔のこと?」

曜ちゃんが興味津々って感じでミツキさんの話に食いつく。

 

「昔って言ってもSeeker組むか組まないかくらいの時だけどね。ま、私の話はいいとして…梨子ちゃんは今日コウと出かけてるんだっけか。」

 

「まあそれは色々あってってことなんですけどね。」

 

勝負のこと、昨日の夜のことをミツキさんに話す。

私、ちゃんと話せてたかな…?

 

曜ちゃんとミツキさんと遊んで楽しいのに、またなんだかモヤモヤした気持ちが襲ってくる。

 

気がつくとミツキさんは私の頭を撫でていた。

 

「…千歌ちゃんは優しい子だね。恋愛で自分よりも友達を優先できる子なんてそうはいないよ。」

 

ミツキさんの女性の割に大きい掌がなぜか心地よくて涙が出そうだった。

 

「でも優しすぎるのはダメだよ。じゃないと私みたいになっちゃうからさ。」

 

「伝えたい想いは早く伝えなきゃ。大丈夫。あいつは抜けてる部分もあるけど優しいやつだから。無下にはしないよ。私が保証する。」

 

ミツキさんの言葉の一つ一つが私の中に反響する。

 

想いを伝える…。うっすらと思っていたことが現実味を帯びてくる。

 

私はかつてコウくんとした約束のことを思い返した。

 

「でも、私どうしたらいいかわかんない時あって…」

 

私がそういうとミツキさんは少し考える。

 

「悩んでる時とかはさ、創作にぶつけるのが私は一番いいなって思ってるんだ。」

 

そしてびっくりするようなことを言い出した。

 

「一緒に曲つくってみる?私も手伝うよ。」

 

 

 

 

 

 




たいっっへんお待たせしました。
次回の投稿は12/21(金)を予定しております。

・・・・・

ここまでお待たせして申し訳ありません!!!

前回投稿が多分2.3ヶ月前なんですよね、まじかよ!!!

にも関わらず多くの人がお気に入り登録を外さずにいてくれて僕としては嬉しい限りです、これからまた頻繁に投稿していこうと思いますので、皆さんの日常の中にちょこっとだけ置いていてくれると嬉しいです。

作者は春からの進路のことで色々あったり、卒論書いたりしてました!まだしなきゃならないことたくさんあるし、なんならバンドの練習もしなきゃいけなかったりするんですが、その合間に書いていこうと思ってます。

本編は前回からの話を受けて今回の話になりました。
僕の千歌ちゃんに対してのイメージでこういう話になりました。たのしんでいただけましたでしょうか?

次回はコウくんと梨子ちゃんの話になります。楽しみにしていただけますと作者はめっちゃうれしいです。
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