終わりがもたらしたはじまり   作:ふぁんた

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第1話「再開?再会。」

「それで昨日はどうしてあんなすっとんきょうな声あげてたの?しかも美渡さんと志満さんまで」

 

バス停でバスを待っているとおもむろに梨子ちゃんが聞いてくる。

新学期二日目。今日は金曜日。まあ仕方ないよね。昨日は、あの驚愕の報告の後すぐに梨子ちゃんから電話がかかってきて

 

「ちょっと千歌ちゃん?!どうしたの?」

梨子ちゃんは慌てた様子だった。

そりゃそうだ。お父さんとお母さんにも旅館のお客さんに事情説明にいかせてしまったし。

 

その時私は電話で

「ごめん、気持ちの整理がつかないから明日言うね。」

こういわざるを得なかった。

 

「なんかね、うちに居候する男の子が来るんだって。いろいろあって高校最後の一年を内浦で過ごすとか。」

 

「びっくりするけど、それだけであんな騒ぎだったんだ・・・」

いや、それはお父さんの言い方が悪い。私は悪くないもん。

 

「私と年が同じいとこなんだ。なんか東京でプロのバンドマンやりながら高校生してたみたい。学校も私たちと同じとこになるんだって。」

 

「千歌ちゃんちに住むってことは私も会えるかな?うふふ、楽しみ!でも、高校生でプロのバンドマンってすごいわね・・・パートは何なんだろう。」

 

ピアノを弾き、Aqoursの曲のほとんどを作曲した梨子ちゃんからしたらバンドマンと聞いてなにか感じるものがあるのかもしれない。

 

「たしか、ベースっていってたかなあ?よくわからないや。あ、ねえねえ、Seekerって知ってる?コウ君・・・うちに居候する男の子のバンドらしいんだけど。」

 

「Seeker・・・?知らないわね・・・そういうことなら今日のお昼になれば、あの堕天使にも会えるし、聞いてみよっか。」

 

相変わらず、梨子ちゃんと善子ちゃんは仲がいいなあ。

そうこうしているうちに降りるバス停につく。バス停では曜ちゃんがニコニコしながら手を振っていた。

 

 

 

「うゆ・・・授業大変そうだね。」

 

「情けないわねルビィ!このヨハネの持つ人類の英知全てを駆使すれば・・・」

 

「よーしーこーちゃん、や・め・るずら。」

 

「・・・はっ!!!」

 

お昼休み、約束の時間になって私は梨子ちゃんと曜ちゃんと一緒に屋上にいく。お昼休みといっても新学期特有の短縮日課で午後の授業はなかった。

 

今日は元Aqoursの一年生メンバーと今後のことを話し合う日だった。

 

「おそくなってごめんねえ、花丸ちゃん、善子ちゃん、ルビィちゃん!」

 

「千歌ちゃ~ん!大丈夫ずら!こっちだよ♪」

 

一年生・・・じゃなかった。二年生のみんなは相変わらずの仲良し。私たちも何も変わっていないから、これで元三年生メンバーがそろえば、校舎は違ってもここだけ浦の星のスクールアイドル部の部室の様だ。

 

「さて、今日こそ決めましょうか。」

 

私たちの間で一番しっかり者(暫定)の梨子ちゃんが話を切り出す。

 

「私達これからどうするの?早く決めないといってるうちにラブライブよ?」

 

空気がちょっと重くなる。みんな決めなきゃいけないのはわかっていた。

 

「先生が今日わたしにスクールアイドル部の件は承認する内諾が出たってつたえてくれたよ!部室もこの土日で整備して、月曜には使えるようにするって。さすがラブライブ優勝ってなると話がかわるねえ」

 

曜ちゃんが空気を読んで明るめな声を出した。

 

私たちが春から通うことになった高校にはスクールアイドル部がなかった。

 

しかし、浦の星でAqoursが活躍していたことは街のみんなが知っていたことで、ラブライブに優勝した元Aqoursメンバーのいる生徒を引き受けるとなると、私たちのスクールアイドル活動の継続を望む声が元浦の星の生徒だけでなく、新しい学校の生徒の中からも上がるようになったらしい。

 

そこで、学校側も考慮してくれてスクールアイドル部の設立に踏み切った・・・ということだ。

 

でも・・・正直どうしたらいいのかわからなかった。

 

ラブライブに学校の統廃合。目の前の問題が多すぎてわたし達は自分達のAqoursのことを考える余裕はなかった。

 

Aqoursはあの9人だからAqoursじゃないのかとか、原動力だった学校がもうないことや、それでも私たちはまだスクールアイドルを続けたいと心のどこかでは思ってること・・・

 

そして何より、Aqoursがスクールアイドルをする上で心の支えになっていたのに、新しいグループをはじめたとして、やっていけるのかな・・・?

 

いろんな思いがごちゃ混ぜになって私たちに襲い掛かるようだ。

 

こんな時、ダイヤさんなら、果南ちゃんなら、鞠莉ちゃんならどんな答えを出すんだろう。

 

「理亞ちゃんたちはもう新しい活動をはじめてるって言ってたよ。新しいメンバーと今度は絶対に勝つって。私達にも期待してるって言ってた。」

 

ルビィちゃんがぴょこぴょこ手を挙げながら言う。

 

「私達を見てくれる全リトルデーモンのためにも期待には応えたいわ!」

 

善子ちゃんの綺麗なヨハネポーズが決まる。みんなは苦笑。

 

「スクールアイドル部はいいとしても…Aqoursは9人のものだと思うしなあ・・・」

 

花丸ちゃんもやっぱりそこに引っかかってるんだよね・・・私もそう。

 

「学校側もいろいろ進めてくれているみたいだし、私たちもとりあえず動きましょう。動かずに考えたって仕方ないわ。」

 

梨子ちゃんがまとめてくれる。うん。迷ってたって仕方ないよね。

 

でも。でも。この胸の中にあるモヤモヤは何だろう。

 

「・・・そうだね!春休みの間、いろいろ考えたけど、動くしかないよ!また前をむこう!」

空元気。そんなことわかってる。だけど、そうやっていうしかなかった。

 

あの閉校祭で、そして、ラブライブで。私たちは前を向くことの大切さを学んだ。

 

曜ちゃんが私の方を心配そうに見る。だけど、すぐに笑顔になって言う

 

「うん、来週からまた頑張ろう!6人だけど、私たちはやっぱりAqoursなんだよ!」

 

「「「「「「おーーーー!」」」」」」

 

短縮日課の春の一日。私たちの決意の叫びは運動部が練習をしている校庭にこだましていた。

 

 

「あ。そー言えば。」

 

屋上での話し合いからの帰り道。

 

私はふと思い出したように、善子ちゃんに聞きたかったことを聞くことにした。

 

「ねえねえ、善子ちゃん。Seekerってバンドしってる?」

 

善子ちゃんの目が一瞬カッと開かれたと思うと興奮した様子で私の顔を上目遣いで見る。腰に手を当てた中腰。

 

無意識でやってるから怖い。これ、男の子がされたらひいちゃうんじゃないかな・・・。

 

「千歌、Seeker知ってるの?!」

「えーっと、まあいろいろあってね?」

 

私自身昨日急に告げられたことだし、よくわかってないところもあるから詳しいことを言うのは後からでもいいよね。

 

「何よそれ。まあいいわ。Seekerはね!私が最も好きなロックバンドの一つよ!」

 

善子ちゃんが胸を張る。コロコロ表情の変わるかわいい後輩だ。でも静岡に住んでる善子ちゃんが知ってるくらいだし、やっぱり有名なバンドなんだ。

 

「Seekerはね、私たちと年も近いのに、メジャーで活躍してた四人組のとってもアツいバンドよ!エモいって言葉がぴったりくる期待の新星ね!激しい曲調と暗さの中に確実な力強さを感じさせる歌詞、これから間違いなくロックシーンに番狂わせを起こす存在って言われてたわ!」

 

言われてた?

 

「でもね、活動休止しちゃったの。しかも無期限で。理由はよくわかってない。いろんな憶測がネットで飛び交ってるわ。そしてその復活を心待ちにするファンは多いのよ!私もその一人だわ!」

 

鞄の中から黒地に大きく白でSeekerとかかれていて、白に黄色、赤に青、それに緑の五色のラインが不規則に引かれているどことなくデジタルチックなイメージを持つタオルを取り出し、両手でタオルの両端をもって広げる。

 

「私も、全国ツアーの時はわざわざ静岡市のライブハウスまでいったわ!とってもアツかったんだから!」

 

「マルも付き合わされたずら。チケットあまったのおおって泣きつかれて」

 

「何よ!ズラ丸も楽しそうにしてたじゃない!」

 

「えへへ・・・普段聞かない曲ばっかだったからとっても刺激になったよ♪」

 

ロックバンドとは無縁そうな花丸ちゃんが言うなら間違いないのかもしれない。

帰ったら、聞いてみよう。梨子ちゃんはその隣で何やら神妙そうな顔をしていた。曜ちゃんはルビィちゃんと今後どんな衣装を作りたいか、構想している。

 

バス停につき、善子ちゃんと曜ちゃんと分かれる。梨子ちゃんは何やら買い物があるらしく、曜ちゃんたちについていった。花丸ちゃんとルビィちゃんは図書館へ向かうらしい。

 

なんか久しぶりにひとりでバスに乗るなあ。リズミカルに揺れるバスの中で私はついウトウトしてしまい、気づいたときには家から最寄りのバス停だった。

 

夕方。危なく、終点まで行ってしまうところだった。

 

寝ぼけまなこで足を進めていると家が見えてきた。しいたけとその子犬たちは今日もぐっすり。いつもと違うのはこんな時間に小型のトラックがあることだろう。

 

「ただいまー。」

 

「おかえり。ぼさっとしてないであんたも手伝って。これ明日こっち来るコウ君の荷物。」

忙しそうに美渡ねえがいう。

 

私たちがコウ君がこちらに来ることを伝えられたのはつい昨日のことだが、もう荷物の手配は済んでいたらしい。

 

ほんと、突然にもほどがあるよお父さん。

 

でも私としては実はうれしい。小さい頃は学校が夏休みになったりすると里帰りでコウ君たち一家が来てくれていた。年が同じこともあって美渡ねえと志満ねえ、たまに果南ちゃんをまじえていい遊び相手だったのをよく覚えている。

 

私たちと一緒に新学期を迎えられなかったのはあちらでの手続き等にてこずったからだそうだ。難しいことはわかんないや。

 

「旅館棟の宿直室を使わせてあげるんだってー。うちの裏口からも入りやすいし、ちょうどいいわねえ。」

手伝いに来た志満ねえが言う。

 

宿直室かあ。うええ、こっから一番遠いじゃん。

 

まあでもよく見たら、そこまで荷物があるわけでもない。壊れやすいパソコンや、雑多な段ボールなどは美渡ねえがすでに運んでくれていたし、まあいっか。

 

「よいしょー!」

私はハードケースに入ったギターとなにやらアタッシュケースのようなバックステージパスが大量に張られた大きな重いカバンを持って奥の部屋にいった。

 

ピンポーン。

うう・・・眠い。今何時だろ?わかんないや。昨日は動画サイトをあさってたら午前3時だった。

 

たしか、お母さんはコウ君のために夕食用の買い出しで朝市行ってから沼津ぶらつくって言ってたっけ。

 

「美渡ねえ、志満ねえいないのー?はあ〜、新聞の集金かな?」

私は居間のタンスを開けて新聞の集金用にとってあるお金を持って玄関をあけた。

まあどうせ、集金のおばちゃんだしいいや。

 

「はーい、今でまーす」

 

そこにいたのは、私と同じくらいの年の若い男の子だった。リュック状のギターケースで楽器を背負い、ボストンバックを持っている。

 

「こんにちは、久しぶり。千歌ちゃん。」

 

「へ・・・。うわあ!!!!!!!!コウ君?!」

 

起き抜けの姿。着てる服は部屋着のカーディガンにオレンジがベースのパジャマ。おまけにとぼけた顔。

 

とてもじゃないけど、男の子に見せていい格好じゃない。

 

気が動転してしまった私は反射的に手をうごかしてしまった。

 

コウ君に向かってそのまま美渡ねえ仕込みの腹パンチ

 

「うぐうっ!!」

 

何が起きたか分からないという顔をしたコウ君はそのままおなかを抑え込む。

 

それと同時にしいたけが私の近くにやってきてコウ君に向かってバウバウと吠え出した。

 

よかったよ、しいたけ。やっぱり番犬なんだねお前。

 

私とコウ君の再会はとんでもない形になってしまったのだった。

 

 




とりあえず書き上げたものを投稿させていただきました。

投稿ペースは考えておりませんが、最低でも週に一度は投稿できたらと思っております。

今現在は学校が休みなので割とペースよく書き貯められています。

気が向いたらどんどん書いてくスタイルです。

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