終わりがもたらしたはじまり   作:ふぁんた

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第4話「進路調査と新部室」

「おーい!コウ君!今日から学校だよー!」

月曜日の朝6時。コウ君の部屋に行ってコウ君をたたき起こす。

布団のすぐ横にベースが転がっているのを見ると、遅くまでベースを弾いていたらしいことは私にもわかった。

 

「頼む・・・あと5分寝かせて・・・」

「今起きないと学校遅刻だよ!それに!今日は転校初日で職員室で挨拶とかいろいろあるんでしょ!」

 

観念したようで、コウ君は起きだす。

「ごはん、私たちの家の居間にあるからね!先食べてるから!」

私はそう言い残して、コウ君の部屋を出た。

 

20分くらいして、シャワーを浴びて身なりを整えたコウ君が居間に顔を出した。

「学校出るの何時だっけ。」

おもむろに聞いてくる。昨日何度も伝えたのにねぼけてるのかなあ。

 

「7時だよ!うちの前で梨子ちゃんと待ち合わせ!」

ピクン。少しだけコウ君は反応する。そして

「あー。そう・・・」

眠たげに言う。朝は弱いらしい。でも梨子ちゃんには反応するんだねえ。

 

土曜日の夜、コウ君に梨子ちゃんの演奏を聞かせてあげた後、コウ君は梨子ちゃんと私の三人で少しだけ話をしてから自分の部屋に戻った。少し部屋をのぞいてみたら、夢中になってベースを弾いていた。

 

昨日は昼頃に起きてきたから、ずっと弾いてたんだろうな。そのあと、近くのお店や街なんかを軽く案内してあげて、近いうちに一緒にみとしーに行く約束をした。

 

すごく衝撃受けたんだなあ・・・。これは音楽をやってる人たちにしかわからない部分なのかもしれない。

 

「ちかちゃーん、コウくーん」

梨子ちゃんの声がした。やばっ!約束の時間だ。

「コウ君いくよ!!!」

「おー。」

そうして私たちは家を出た

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

放課後。

今日は授業の開始の日だった。

なんの偶然か私とコウ君の席は隣同士。

私とコウ君は並んで教室でうなだれていた。コウ君に至っては机に突っ伏している。

 

「あの・・・大丈夫?」

私か、コウ君か?いやどっちもか。梨子ちゃんが心配して声をかけてくれる。

「あー大丈夫・・・ありがとね、梨子ちゃん」

力なくコウ君が答えた。

 

今回、私と梨子ちゃんはまた同じクラスに入ることができた。曜ちゃんだけ違うクラスになってしまったけど、さすが廃校した学校の生徒を引き受ける学校はもともと大きい。

 

そして、コウ君は私たちのクラスに入ることになった。

転校生あるあるでたいてい転校してきた子は質問攻めにあったりするんだけど、コウ君に至っては別の角度からの質問も多かった。

 

バンド活動で顔が知られているし、謎の活動停止。仕方のないことだろう。

昼休みには、善子ちゃんみたいにSeekerのことを知っている生徒が噂を聞きつけて学年を超えて男女関係なく見にやってきたのだった。

 

私は知らなかったけど、やっぱりバンドが好きな人は知ってるんだなあ。

コウ君は愛想よくふるまっていたけど、やっぱり疲れているらしい。

そんでこのざまだ。

 

そして、私はというと・・・

「千歌ちゃんは進路調査書、どうする?」

梨子ちゃんが聞いてくる

そう進路調査書。

 

私たちは高校三年生。高校を卒業した後の進路のことを考えなきゃいけない時期になったのだ。

 

高校一年生の時はのんびり過ごしていたし、高校二年生からはAqoursがあったから、特に進路なんて考えてなかったけど、もうそんな時期になっちゃったかあああ・・・

 

Aqoursの元三年生メンバーはスクールアイドルしながらそれぞれの進路に進んだんだもんなあ・・・そう考えたら、バケモノみたいなバイタリティしてるように思えてきた。

 

「あはは・・・どうしよっかな?梨子ちゃんはどうする?」

 

「私は今の所、音大を考えてるわ。やっぱりピアノは続けたいし。音楽だけだと難しいところがあるかもしれないから音楽の先生の免許取れるところとか。」

 

「ちゃんとかんがえてるんだねえ。コウ君は?って言ってもバンド活動があるかあ。」

話をコウ君に振る。コウ君がどうするのか実際気にはなっていた。

 

「うーん。特にこれがしたいってあるわけじゃないけど、とりあえず大学には行こうと思ってる。今はバンドも活動休止中だし。」

 

コウ君も大学考えてるのかあ。意外だ。バンド活動を本格化するか、音楽の専門学校にでも行くのかだと思ってた。

 

「ま。今そんなに考えても仕方ないし、進路は自分一人で考えてみましょ。」

梨子ちゃんも進路調査のことはあんまり考えたくないのかも。なぜかそう思った。

 

すると、勢いよく教室の扉があく。

「ヨーソロー♪千歌ちゃん、梨子ちゃん!新しい部室に行こう?ってあれ?転校生君もいる。」

そういえば、曜ちゃんにコウ君のこと話してないんだった。

 

「コウ君この後どうするの?部活動見学?」

「いや、三年生だし、部活には入らないと思うから、かえろうかな。」

「あ、じゃあ私も一緒に帰りたいし、部室寄ってってよ!みんなにも紹介したい!」

なぜこんなに親しくなっているか分からない曜ちゃんはポカンとしていた。

 

「じゃあ、コウ君は千歌ちゃんのいとこでいまはいそーろーってことなんだ?」

曜ちゃんはびっくりした感じでいう。

「そうなの。私も、こんな芸能人が身近にいたなんて知らなかったんだ~」

「芸能人じゃないけどね?」

コウ君が少し困った感じでいう。そこら辺の線引きはわからないや。

 

「新しい部室は部室棟の三階?」

梨子ちゃんがいう。早くみてみたいらしい。

「そうだよ♪私も初めていくから、楽しみ!二年生のみんなは先に行ってくれてるってさ!」

私達も急ごう。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

部活動用に作られた部室の集まりの棟、「部室棟」なるものがこの学校には存在する。

四階建ての簡素なアパートのようなイメージをすればおおよそ正解だろう。

 

部活動ごとに学校側の厳正な選考の結果、割り当てられるもので学校側としては、そこを部会等に使ってもらうことが目的らしい。

 

運動部など、部員の規模によっては部室に入りきらなかったりする場合があるため、そういう場合は部の倉庫や更衣室のようになっているそうだ。

また、部室を獲得することのできなかった部活や同好会は空き教室にて活動するらしい。

 

「みらいずらああああ!!!」

部室棟の三階につくと、花丸ちゃんが興奮した様子で声を上げたのが聞こえた。

部室棟三階の角部屋。

長方形型の部屋で、窓付きのシンプル感じだ。

 

ピカピカの部室に浦ノ星からもらってきたパソコンの箱が一つおいてある。それに浦ノ星から持ち込んだ荷物が段ボールにいくつか。

 

ステンレス製の事務机が一つ、入り口から入って奥の右端に置いてあって、木製の大きな机とそれを囲むように配置されたパイプ椅子が部室の真ん中においてある。

 

部室に入って一番奥の正面の黒板には自由に書けるタイプの黒板が掛けてあり、左側の窓からは校外近辺の様子が見ることもできる。

ローラーのついた可動式のスケジュール管理用の黒板も支給され、スケジュール管理もできるという配慮がされている。

 

まあ、浦ノ星の時は黒板にはアイデアという名のイラストが大量にかかれていたわけだけど。

 

部室棟が西側にあることもあり、日当たりとしては万全というわけではない上に、冷暖房が完備というわけではないが、活動には困らない環境であるといっていい。

 

でも何で花丸ちゃん一人?

 

「花丸ちゃん!荷物の受け取りとか、鍵開けとかありがとうね。」

「あ、梨子ちゃん!みんな!と、あとは噂の転校生先輩?何でいるずら?」

「えへへ、まあいろいろあってね。後で詳しいことは話すよ!」

多分、善子ちゃんは会いたがると思うし、何よりコウ君に私たちの活動を知ってほしいところがある。

 

「とりあえず今日はかたづけだね~。PCも設置しないと!ごめん、コウ君、片づけてつだってもらっていい?」

「うん、いいよー」

私は運送業者にお願いして浦ノ星から持ってきてもらった荷物の段ボールを開けて、整理しようとする。

 

っていうか、ダイヤさん、資料としてたくさんのアイドルのDVDとか雑誌を持ってきてくれたのはいいけど、めちゃくちゃ量多いよ・・・

 

なんでもルビィちゃんによると、東京での一人暮らしのために持って行くものを厳選し、その余りが私達の資料らしい。

にしても、この量って…

「花丸ちゃん、ルビィちゃんと善子ちゃんは?」

「あー・・・ルビィちゃんは職員室で授業の質問だって。善子ちゃんは転校生先輩の噂を聞いてどっかいったずら。・・・ここにいるのに」

花丸ちゃんはジト目でどこかにいるだろう善子ちゃんのことを言う。

 

「転校生先輩、こんにちは!おら・・・じゃなかった・・・まる・・でもなくて、おらは国木田 花丸ですっ!よろしくお願いしますずら!」

「ご丁寧にありがとう。三年に転校してきた宮木 コウって言います。よろしくね、花丸ちゃん」

「ズラ!」

花丸ちゃんとコウ君、はたから見るとなんか兄妹みたいに見えた。

 

部室のドアが勢いよく開く。

「ただいまっ!!Seekerのコウに会えなかったわ・・・」

「善子ちゃん、顔上げるズラ。」

「どしたのよズラま・・・」

善子ちゃんが固まる。まあ目の前に好きなバンドのメンバーが急に現れたらそうもなるだろう。

 

「こ、こここここ、コウ!!」

「どーも、宮木コウです。」

「あ、えっと、その、津島ヨハネ!じゃなかった、善子です!あと、Seekerの大ファンです!!!」

「えーっと、よろしくね、ヨハネ・・・ちゃん?」

「ヨハネ昇天!!!」

自分が好きなバンドのメンバーに自分の呼んでほしい名前を呼ばれて恍惚の表情の善子ちゃん。きょうの善子ちゃんは幸運みたいだ。

 

「善子ちゃんキモイずら」

「ヨハネよ!!!あと善子っていうな!!!きもくなーい!!!」

ジト目の花丸ちゃんにいつも通りの突っ込みを入れていた。

 

「ただいまー!なんとかわかったよお~・・・へ?なんで男の人?もしかしてルビィ、部屋まちがえた・・・?」

ルビィちゃんが帰ってきた。人見知りが激しい分、一番難しいかもなあ・・・

「あ、お邪魔してます。宮木 コウです。よろしくね。」

「黒澤ルビィです・・・よろしく・・・おねがいします・・・」

あー・・・やっぱりルビィちゃんは難しいかもしれない。

 

「で、な・ん・で、コウさんがスクールアイドル部にいるのよ?」

普段基本的には呼び捨ての善子ちゃんが「さん」付けってことは相当あこがれの人ってことなのかな?単純に初対面だから?いやどっちもか。

 

「え、スクールアイドル?」

コウ君は不思議そうな顔をする。

 

「何も言ってなくてごめんねえ。こうやって、みんなの前で紹介した方が早いと思ったんだ!」

私は誇らし気に胸を張る。

「私たちは、スクールアイドルグループのAqoursをやってます!あらためましてリーダーの高海千歌です!これでもラブライブ前回大会優勝グループなんだよ!」

 

コウ君に私たちのことを改めて紹介する。

浦ノ星のこと、Aqoursのこと、今は卒業した三年生のメンバーがいたこと。

「そういえば、母さんが前に千歌ちゃんがスクールアイドルがどうのって言ってたような気がする。今思い出したよ。」

仕事が忙しかったらしく、私たちのことは知らなかったようだった。

 

「ところで千歌ちゃんとコウさんはどういう関係ずら?コウ君は今日転校してきたのに千歌ちゃんと仲いいずらね。」

「僕と千歌ちゃんはいとこの関係なんだー。今は千歌ちゃんのおうちに居候してるんだ。」

 

「「「居候?!」」」

事情を知らない一年生の子たちが驚きの声を上げた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「とりあえずまとめると、Seekerが活動休止してから、自分の中の見識を広げるために内浦に転校してきた・・・ってことでいいのね?で、今はいとこの千歌の家に住んでいる。」

「まあそういう感じかな。」

善子ちゃんがまとめてくれる。今日の善子ちゃんいつもと違って堕天使成分へってない?

 

「ていうか千歌!!!Seekerのコウがいとこだったなんて、なんでもっと早くいわないのよ!!!!」

「あはは・・・ごめんごめん。私も知ったの最近なんだあ、えへ☆」

アイドルらしく舌を出して笑ってごまかしておくことにする。脳裏に浮かぶのはつい先日のお父さんのとんでもない言い方だった。

 

善子ちゃんは急に真面目な顔になって言う。

「ねえコウさん。失礼かもしれないけど、なんでSeekerは何も言わずに活動休止しているの?まさか、ベーシストが旅に出るからとか、そんな理由ではないでしょ?」

おそらくSeekerのファンが一番聞きたがるだろう質問だろう。確かに私も気にはなっていた。

よほどのことがない限り、東京からこちらに来たいとは思わないんじゃないだろうか?

 

「・・・説明が難しいから、とりあえず充電期間って感じかな。」

 

一瞬ものすごく複雑な顔をした。困ったような、なんていえばいいか考えるような。

 

そして、泣きそうな。

 

「・・・ごめんなさい。私も失礼だったわ。気を付ける。」

「ううん、大丈夫だよ。まあ、気になる人が多いのは仕方ないし、ラストライブでも必ず帰ってくるとしか言ってないからね。」

「あ、二月の東京でのラストライブ、行かせてもらいました!これ、ラストライブのタオルです!」

「おお!ありがとうー!」

 

善子ちゃんとコウ君はライブの話に花を咲かせていた。後ろでは梨子ちゃんと曜ちゃんが片付けをどうするか話し合っているし、花丸ちゃんはルビィちゃんとおしゃべり中。私は梨子ちゃんと曜ちゃんとの話に混ざることにした。

しかしその矢先。

 

パンっ!

梨子ちゃんのよくとおる柏手が鳴る

「みんな?そろそろ片付けはじめるわよお?まだ、外にダイヤさんの持ってきてくれた、資料がたくさんあるんだから!コウ君も手伝ってくれるわよね?」

 

このモードの梨子ちゃんはヤバイ。私たちはコウ君も含めおとなしくしたがうのだった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

片付けは思いの外早く終わった。

男の子が一人いるだけで、荷物の運び出しや荷物の配置作業がこんなにも楽になるとは思わなかった。

今は、学校の購買部でお菓子を買ってきて、みんなでミーティングが始まろうとしている感じだ。

 

「ミーティングに僕がいたら悪いから、図書室でも行くね。」

コウ君そう言って立ち去ろうとする。しかし、梨子ちゃんがそれを止めた。

「あ、コウ君ちょっと待って。お願いしたいことがあるから、ミーティングも出てくれないかな?」

「へ?」

お願いしたい事ってなんだろう?なんにも聞いてないや。

 

現状のスクールアイドル部は梨子ちゃんが部長、花丸ちゃんが副部長という感じになっている。

私はあくまでAqoursのリーダーという立場だったので、事務の仕事等は梨子ちゃんたちに任せきってしまっていた。

 

「取り合えず、私たちの直近のライブだと来週の新入生歓迎会には出演を頼まれてるわ。後は6月にラブライブの地区予選。それのちょっと前にスクールアイドルワールドへの出演が依頼されてる。これに関しては長めの間隔での話だけど、その二つの大会に加えて地域振興のためのタイアップソングも作ってほしいって依頼が来てたわ。」

 

梨子ちゃんは正面の黒板に今後の予定等を書き込みながら、話をすすめる。

「来週の新入生歓迎会のライブに関しては持ち曲でいいとは思う。でも、地区予選とスクールアイドルワールドでは、未発表の新曲を発表することが大前提になってる。それに加えて作曲依頼。私たちは今年受験生だし、かなりハードなスケジュールになると思うわ。」

 

梨子ちゃんも疲れた顔をした。なるほど。地域振興の曲かあ・・・

 

「そこでなんだけどね?これはあくまで私の考えなんだけど」

前置きをしっかりと置く。

 

「コウ君!私たちに曲を作ってくれないかな? 花束みたいな素敵な曲をかける人なら絶対いけると思うの。」

 

名案!そこにいた誰もがそう思った瞬間だった。

 




今回の話は元Aqoursの面々とコウ君の初対面でした。

書いててくどいなーと自分でも思いましたが、ラブライブキャラ一人一人がどんな反応をするのか書いてみたいとおもい、あえて自己紹介の所は一人ひとり使いました。
結果的にルビィが一番扱いにくいキャラだってことに気付きました。

部室の描写といい、自己紹介といい、結構くどくなっちゃったなあって反省してます。

前半の進路の話題と、後半の、ヨハネとコウ君の会話、曲作りについてを今回の話では一番かきたかったところで、次回以降につながっていきます。

次回はコウ君パートでのお話となります。まだ時間の進み方が緩やかですが、あと二話か三話で少しは早められると思います。

次回の更新は元旦の夕方ごろを考えております。
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