Fate/stay another world 作:レッサーパンダ
ガウェインとモードレッドの壮絶な戦いは既に五分近くは続いていた。
部下の兵士たちはその戦いに巻き込まれないように遠巻きにその戦いを見守っているしか手立てはなかった。
兵士の中の一部はキャメロットへとこの事態を何とかしてもらおうと伝えに走った者も若干はいたが、大半の兵士は円卓の騎士同士のその戦いに目を奪われていた。
「これが人間の戦いなのか?」
一人の兵士が思わずポロリと口から言葉をこぼした。その場に居る全ての兵士が同じことを思っていた、自分たちとて厳しい練兵を耐え抜いてきた猛者である。過酷過ぎる練兵で命を落とした兵士たちも多くいる、それを耐え抜きキャメロットを、そしてアーサー王を守る兵士に選ばれた自分たちの力に自負を持っていた。しかしそんな兵士たちから見ても円卓の騎士同士の戦いは人間の範疇を超えた戦いに思えてならなかった。
兵士たちはガウェインとモードレッドの強さに羨望の眼差しを向ける者、恐怖を抱く者、様々な思いを抱いていたがその全てが戦いを見守るだけのギャラリーでしかなかった。
「何をやっているんですガウェイン卿、モードレッド卿」
そんな状況を打破する存在がようやく(とは言っても戦いが始まってから数分程しか経ってはいなかったが)現れた。
その声の主は隻腕の円卓の騎士、ベディヴィエールのものであった。
ベディヴィエールの声で二人の戦いは一瞬止まった、しかしほんの一瞬でしかなかった。モードレッドは構わず戦いを続ける、ガウェインもそれに応戦するように斬撃をモードレッドへと繰り出す。
ベディヴィエールは二人の戦いを見かねて二人の間に割って入った、そしてようやく戦いが止まった。
「仲間同士で本気で戦うなど正気ですか? ガウェイン卿、貴方(あなた)程の方が居て何故この様な状況になっているのです」
「邪魔だぞベディヴィエール、何なら二人まとめて相手しても俺は構わねーぞ」
ベディヴィエールは話をすることで状況を少しでも落ち着かせようとした。しかしモードレッドは交戦的な態度でそれに応じた。
「分かっただろうベディヴィエール卿、コイツには力尽くで分からせる必要があるのさ」
ガウェインも交戦的になっていた、これにはベディヴィエールも驚いた。いつものガウェイン卿であれば自分の言葉に耳を貸して事態を収めてくれる、そう考えていたベディヴィエールはあてが外れた状態になった。
「お二人の行為は円卓の騎士の名を汚す行為です。戦いを辞めぬのであれば命掛けでお二人の戦いを止めさせていただく。
「青二才が、テメーごときに俺様が止められるかよ」
ベディヴィエールも剣を抜き二人の戦いを止める努力をしたが、モードレッドは耳を貸さずに戦う姿勢を貫いた。いや、戦う姿勢を貫いたのはモードレッドだけではなくガウェインもであった。
「邪魔だてすれば命を落としかねないぞ、引っ込んでいろベディヴィエール卿」
ガウェインはベディヴィエールに忠告をしたがベディヴィエールは二人の戦いを止める為に命を懸ける覚悟であった。自分では一対一だったとしてもガウェインとモードレッドに勝つのは難しいとベディヴィエールは理解しつつも。
ガウェインとモードレッドが再び剣と剣で鍔(つば)迫り合いを始める、ベディヴィエールが二人の間に割って入ろうとした瞬間、この戦いを終わらせる声が響き渡った。
「そこまでだ愚か者ども、これ以上戦いたいのなら私が相手をしてやるぞ」
その聞き覚えのある声の方向に円卓の騎士の三人が目を向ける、其処に立っていたのはアーサー王であった。
アーサー王は円卓の騎士たちを冷たく睨み付けた。その鋭い眼光に睨み付けられた円卓の騎士たちは蛇に睨まれた蛙のように身動き出来ずにいた。
そんな時にエミヤの追跡を諦めたトリスタンがその場へと現れる。トリスタンは状況が理解出来ずにいたが、アーサー王の態度からあまり良い状況でないことは察した。
「すぐに逃走した敵を追う部隊を編成せよ、その陣頭指揮はベディヴィエール、貴殿に一任する」
アーサー王はすぐに的確な指示を与えた。そのアーサー王の指示にモードレッドが口を挟む。
「父上、敵を追うなら俺に任せてくれ。必ず敵の首を父上の前に持ってきてみせる」
「モードレッド、今回の大まかな概要は事態を知らせに来た兵士から聞いている。
今回警備に就いていた者はキャメロットの私の玉座へと来られよ、そこで今回の失態の処遇を言い渡す」
アーサー王はそう言い残すとマントを翻(ひるがえ)してキャメロットへと戻って行った。
トリスタンは敵を取り逃がしたことだけでアーサー王があの様な態度を取っているとは思えなかった、自分が敵を追走している間にこの場で何があったのかトリスタンには想像出来なかった。自分はこの場から動くべきではなかったのかとトリスタンは自問自答した、が矢を放った弓兵と思わしき敵は見過ごすことの出来ない脅威であることを思い出すと何度同じ状況になろうとも自分は敵を追ったであろうと自分を納得させた。
そしてトリスタン、ガウェイン、モードレッドもアーサー王の後を追うようにキャメロットへと帰路した。