Fate/stay another world 作:レッサーパンダ
円卓の騎士たちから逃走に成功した義経と宋江は現在の位置から一番近いアジトへと向かっていた。
義経と宋江は自分たちが付けられていないか周辺に注意を払いながらも急いでアジトを目指していた。再び円卓の騎士と対峙したら次は命を落とす可能性が高いことを二人は実際に戦って肌で感じたのである。
「まさか円卓の騎士があれ程とはな、{選定者}の言葉など話半分程度に聞いていたが話以上の化物とはな」
宋江は義経にウンザリしたような口調で喋りかけた。
義経は宋江の話に相槌(あいづち)を打つ、義経も{選定者}の話は多少の誇張が含んでいると思っていたが{選定者}の言葉通りに正面から一対一で戦って勝つのは難しいと義経は考えを新たにした。
「白起(はくき)殿のおかげで危機を脱したな、後で礼を言っておかねば」
宋江は自分たちを逃がすために数十万の死霊の兵を呼び出した仲間の一人の名前を口にした。今回の襲撃の目的はアーサー王側にこちらの力を見せつけるためのものであった。
その為に{選定者}はあらかじめ危機的状況に陥った時のための伏兵を忍ばせていた、それが白起と呼ばれる{選定者}が召喚した英霊の一人であった。
「アーサー王を討つのは容易ではないようだ、それでも私は復讐を果たすためにアーサー王の首を絶対に落としてみせる」
義経は歯を食いしばって決意を口にする、宋江も同じ思いなので頷いた。
「アーサー王には何の恨みもないが我ら梁山泊を裏切った国に、そして王に復讐を果たすために死んでもらわねばな。
そして願わくば我ら梁山泊が国を治める世としたいところだが」
宋江を含む{選定者}が呼び出した英雄たちの多くは自分たちの生きた時代の王に恨みを持っていた。{選定者}に協力する見返りは自分たちが憎む王を殺すことである、しかし王を殺した後の自分たちの処遇については{選定者}は呼び出した英雄たちに何の説明もしていなかった。
宋江は願わくば王を殺した後は自分たち梁山泊の者で国を治めたかった。そうすれば賄賂が横行し、権力者や金のある者が弱者から一方的に搾取するような世の中にはならぬと考えていたからである。
「国を治めるか、私は御免だな。権力は人を醜い化物へと変える、少なくとも私の兄である頼朝はそうであった」
義経はかつて仕えた兄を思い出すと吐き捨てるように言った。
「父の仇である平清盛は鬼であった、それでも幼子に手をかけることまではなかった。
権力の座に就いた頼朝は清盛以上の鬼となった、敵とはいえ何の罪も無い幼子まで殺したのだ」
義経は怒りを露(あらわ)にして言い放った。しかし宋江は義経に賛同する気にはなれなかった。
「幼子とはいえ敵の子であろう、禍根の芽を摘み取るのは当然のことだ。戦を知らぬ女、子供の意見でもあるまいに」
宋江の後半の言葉に義経はピクリと反応したが移動しながらの会話で僅かな反応のために宋江は気付きはしなかったが。
「ふざけるな!」
義経の急な強い語気に宋江は一瞬たじろいだ。
「この世の何処を探しても罪も無い幼子を殺して良い理由などあるハズがなかろう。
自身が撒いた種ならば禍根の芽が出ようと構わぬ、私が殺した敵の子が私を憎むなら、私はこの首をその子に差し出すこともいとわぬ」
義経の言葉に宋江は絶句した。今まで戦場をいくつも経験してきたであろう者がそんな青臭いセリフを吐いたことを信じられずにいた。
宋江は義経の実力を先の戦闘で目の当たりにしている、実力は申し分ない。しかしこの様な青臭い考えの者が味方にいることは危険ではなかろうか?
アジトに帰る途中の義経との会話が宋江の心に暗い影を落とした。