Fate/stay another world 作:レッサーパンダ
キャメロットへと戻って来たトリスタン、ガウェイン、モードレッドの三人はアーサー王が座る玉座の前で片膝を付き顔を伏せていた。
アーサー王の横にはアグラヴェインが付き従うように立っている、他の円卓の騎士数人も少し離れたところで立っていた。
アーサー王が片手を上げて三人に顔を上げるように声をかける、そして重々しく口を開いた。
「今回の件の処遇を言い渡す。貴殿ら三人は私の赦しが出るまで自室から一歩も出ることを禁ずる、その間に円卓の騎士の称号を名乗ることを許さぬ。
しばらくの間は円卓の騎士は貴殿らを除く十人のみとする」
アーサー王の言葉を聞いた三人は口から言葉を出そうとしたがアーサー王が睨み付けると三人の誰も抗議の声を出すことが出来なかった。
「敵を取り逃がしたことを責めるつもりは無い。ただ逃がした敵を追うこともなく、あまつさえ味方同士で殺し合いを始めるなど言語道断だ。恥を知れ」
アーサー王は処遇を三人に伝えると席から立ち上がり扉から外にと出た、後を追うようにアグラヴェインがアーサー王の後に付いて扉から退席した。
「私は悲しい、何故私まで」
トリスタンは自分まで謹慎処分とされたことを嘆いた。自分が敵を取り逃した落ち度は確かにあるが、アーサー王がご立腹となった原因の円卓の騎士同士の戦いに自分は関わっておらず、近くには居なかったため止めることも不可能だったというに。そんなトリスタンに円卓の騎士の一人がトリスタンに声を掛けた。
「諦めるんだなトリスタン、馬鹿どもの近くに居た自分の不運を嘆くんだな」
ケイはそう言うとガウェインとモードレッドの方をチラリと見た。
ガウェインはバツが悪そうに顔を横に向ける、モードレッドは対照的に悪びれもせずにまるで他人事のようであった。
ケイはトコトコとランスロットとの近くまで歩いて行くと周りに聞こえるわざと大きな声でランスロットとに話しかけた。
「ランスロット、見失った敵の捜索を続けているベディヴィエールが足取りを掴んだらしい。アーサー王は兵士を連れてベディヴィエールのもとへ向かうようだ、護衛役としてアーサー王はお前を御指名だ」
ケイはランスロットそう伝えるとランスロットは頷き部下の兵に行軍の準備をすぐにするように伝えた。
扉から出て行こうするランスロットをトリスタンが呼び止めた。トリスタンはランスロットに近づくと小さく耳打ちをした。
「敵の一人に危険な弓兵がいます」
トリスタンは自分が先の戦いで追っていた弓兵に付いてランスロットに忠告をした。
アーサー王を護衛する際にかなり遠くまで警戒をするようにと、その弓兵は視認するのが難しい距離からこちらに致命傷になりかねない攻撃手段を用いる敵であることを伝えた。
{エクスカリバー}の鞘を持つアーサー王には無用な心配事かもしれないがと一言付け加え。
「たとえ無意味であろうと敵の矢がアーサー王に触れるなど許しはしないさ、この身を盾にしてでもアーサー王には汚れ一つ付けさせはしない」
ランスロットはそう言うと旅の準備のために扉から出て行った。トリスタンはランスロットが王の護衛であれば心配は無いであろうと胸を撫で下ろす。
ケイもランスロットに続き部屋から出て行こうとしたが足を止めると振り返って大きな声で独り言を口にする。
「さーて俺も任務に行くかな、この人手の足りない時に部屋でゆっくり出来る奴らが羨ましいぜ。」
ケイはガウェインとモードレッドの方に再び視線を送る。
「王様の護衛もランスロットが同行するなら心配は無いだろうな、逆に人数が居ても味方同士で戦う馬鹿が居たらかえって王様の命が危なくなる。馬鹿は部屋でおとなしくしてるのが一番ってことだ」
ケイは嫌味たっぷりで皮肉を言うと笑いながら部屋を後にした。
「今なら奴を痛い目に合わせるためならお前とでも手を組めそうだ」
「奇遇だなガウェイン、俺様も同意見だぜ」
ガウェインの言葉にモードレッドはケイの後姿を睨み付けながら同意した。
それを見ていたトリスタンは関心するようにその状況を眺めていた。ケイの言動でいがみ合っていた二人の怒りはケイへと移った、ケイが憎まれ役を買って出たことで二人の間の亀裂がこれ以上は広がらないようにしたのだろうとトリスタンは察した。
いや、もしかしたらケイは本当に何も考えずに嫌味を言っただけではなかろうか、普段のケイの言動を思い浮かべるとトリスタンはそんな疑問が頭を掠(かす)めたが考えないようにした。
トリスタンは自分の周りに居る者たちを好きでいた。合う者、合わぬ者と居るが尊敬するアーサー王と円卓の騎士たちとこれからも居られることを望んだ。悲しみの子と名付けられた自分がそんな考えを持っていることにトリスタンは自嘲(じちょう)した。
「何が可笑しいんだ」
ガウェインとモードレッドが同時に言葉にする、トリスタンが自嘲して笑ったのをケイの嫌味で自分たちを笑ったのだと勘違いしたのだ。
トリスタンは二人の怒りの矛先が自分に向かったらたまらないと扉から出て部屋を後にした。アーサー王の赦しが出るまで大人しくしておこう、そう考えてトリスタンは自室の椅子に座り気長に待つことにした。