Fate/stay another world   作:レッサーパンダ

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2-8 出立

 士郎は突如アーサー王に呼び出された。その理由は敵を探索する部隊の一人に士郎も同行してほしいとのことをアーサー王から告げられた。

 士郎はセイバー(アーサー王)の力になれるのならと二つ返事で了承した。

 しかしその場に居合わせた円卓の騎士の一人、アグラヴェインが猛反対をした。

 アグラヴェインは未だに士郎を信用していなかった、それだけでなく敵の内通者でないかと未だにアグラヴェインは考えていた。

 その場には他にランスロットとケイも居た、ランスロットも士郎を信用はしていなかったがアーサー王が決めたことにランスロットは口出しする気はなかった。

 

 「まあお前の心配も当然だがランスロットも同行するし他の兵士も居るんだ、万が一も在り得んさ」

 

 以外なことにケイが士郎を同行することに助け舟を出した。しかし、アグラヴェインの態度は頑(かたく)なであった。

 アーサー王が言ったことを撤回するハズが無い、だが今回はアグラヴェインも引かなかった。ケイもランスロットも仮に士郎が敵であったとしてもアーサー王の身に何か起こるなど万が一にも在り得ないと分かっていた。しかし、その万が一在り得ないことでさえ考慮するのがアグラヴェインという男であった。

 アグラヴェインの性格は良く言えば真面目、悪く言えば融通の利かない堅物である。その性格ゆえに円卓の騎士内でも彼を好かない者は多かった。

 

 「どうしてもその者を連れて行くというのなら、私も同行することをお許しください陛下」

 

 アグラヴェインの申し出にアーサー王は少し考える素振りを見せた、しかしアーサー王はアグラヴェインの申し出を受け入れて自身の護衛に加えることにした。

 アーサー王の言葉を聞いたケイが慌てて反対をする、アグラヴェインは国を運営するのに様々なことをしていた。物資調達や手配、それだけでなく目まぐるしい仕事を一人でこなしている。アグラヴェインが一人が居ないだけで国の機能が二~三割は低下すると言う批評家まで居る程であった。

 現在任務でキャメロットとに居ない者、謹慎処分を言い渡された者、その上アグラヴェインまでキャメロットから離れればその負担で自分が寝る暇すら無くなることをケイには分かっていた。

 

 「一時間後に出立する、各自急いで用意をしろ」

 

 アーサー王はケイの反対を無視して号令を出すと玉座から立ち上がり扉から出て行った。それに続いて士郎、ランスロット、アグラヴェインも扉から出て行きケイは一人その場に取り残された。

 ケイは天井を見上げて呟く、今回の騒動で一番の貧乏くじを引いたのは自分だろうと。

 

 

 アーサー王の命令からまだ三十分も経ってはいなかったが皆準備を済ませて城の外でアーサー王が出て来るのを待機していた。そして程なくしてアーサー王が現れると予定より早いがアーサー王が出立の号令を出す。

 人数は全部で百人、馬は三十頭用意され残りの者は歩兵として徒歩で行軍しなくてはならなかった。幸運なことに士郎にも馬は用意されていた。

 しかし現代で生きてきた士郎に馬に乗る機会などそうあろうハズも無く士郎は困惑の表情をする。士郎が馬に乗れぬことを気付く者は無く士郎は気まずそうにセイバー(アーサー王)に自分が馬に乗れないことを打ち明けた。

 

 「そうか」

 

 アーサー王はそう言うと士郎に手を差し伸べて言った、客人を歩かせる訳にはゆかぬであろう。士郎はセイバー(アーサー王)の手を取ろうとしたがアグラヴェインがそれを邪魔する。

 

 「陛下と同じ馬に騎乗するなど許されることではありません」

 

 アグラヴェインがそう言うとアーサー王は他に誰が士郎を乗せるのかと問うた。鎧を着込んでいる状態で他の者を馬に乗せたいと思う者は居ないであろう、それならば士郎の動向を提案した自分の馬に乗せるべきであろうとアーサー王はアグラヴェインを諭した。

 

 「陛下の馬に乗せるくらいならば我が馬に乗せましょう」

 

 アグラヴェインは嫌そうにそう提案した。それならばとアーサー王はあっさりとその提案を受け入れた。

 アグラヴェインは嫌そうに士郎を自分の馬へと乗せる、士郎もアグラヴェインと同じ馬に騎乗するなど遠慮したかったが拒否出来る立場でもないため仕方なく受け入れた。

 こうして士郎にとって地獄のようなアグラヴェインとの馬の騎乗は二日間にも及ぶのであった。


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