Fate/stay another world   作:レッサーパンダ

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2-9 敵の痕跡

 士郎を含むアーサー王一行は小休止を挟みながら丸二日間掛けてとある地点まで辿り着くと其処には鎧を着込んだ男が二人居た。

 その男たちはアーサー王を目視すると片膝を地面に着けて仰々しく頭を下げてアーサー王が近づいて来るのを待った。その男たちは敵を追跡している円卓の騎士の一人であるベディヴィエールの部下の兵士であった。

 

 「良い、顔を上げよ」

 

 アーサー王の赦しが出ると男たちは顔を上げてこれまでの経過をアーサー王に報告した。

 襲撃をしてきた二人組の敵はこの付近で別れると別々の逃走ルートをとったようである、ベディヴィエールは少数である自身の隊を分けることを危険と考えて敵の片方の追跡に専念することにした。そしてもう片方の敵を後から来るアーサー王に任せたのだ。

 報告を済ませるとベディヴィエールの部下たちはベディヴィエールのもとに駆けつけようとその場を後にしようとした、それをアーサー王が呼び止める。

 

 「ベディヴィエールの隊は少数であろう? こちらの隊の半数をベディヴィエールのもとへ向かわせる、その先導をせよ」

 

 アーサー王はベディヴィエールの部下たちにそう告げたが部下の兵士たちはそれを拒否した。

 

 「ベディヴィエール様はアーサー王が自身の護衛の兵をこちら側に割(さ)こうとしても必要ないと伝えるように言われています。

  我らも必要であればアーサー王と共に行けと言われています、しかし我らは死ぬときはベディヴィエール様と共に逝きたいと思います。どうか我らだけベディヴィエール様のもとへ行くことをお許しください。王様」

 

 ベディヴィエールの部下たちの言葉を聞いてアグラヴェインは無言で頷いた。自分がベディヴィエールの立場でも同じことをしたであろう、その行動に同じ円卓の騎士の一人としてアグラヴェインは心中で敬意の念を払った。

 しかし、アーサー王はそれを良しとはしなかった。

 

 「ならぬ、王である私の命令だ」

 

 アーサー王とベディヴィエールの隊では十倍近い数の差である、片方が王の率いる隊であることを考えると当然かも知れない。しかしアーサー王はそれを許しはしなかった。

 アグラヴェインはアーサー王に考え直すように言ったがアーサー王の意見は変わらなかった、もう一人の円卓の騎士であるランスロットは黙ってその様子を傍観しているだけであった。

 アーサー王はアグラヴェインとランスロットにどちらかベディヴィエールのもとへ救援に行く気があるか尋ねた。二人は首を横に振った。

 

 「私の護衛には円卓の騎士二人が居る、そしてあのモードレッドに一太刀浴びせた士郎も居る、それでもなお百近い兵が居なければ私を守れぬと抜かす腰抜けなのかお前たちは」

 

 アーサー王の怒声が辺りに響き渡った。アーサー王は続け様に自身の隊から騎兵十五と歩兵の四十をベディヴィエールのもとへ送るように命令した。アーサー王の命令に口を挟む者はその場にはいなくなっていた。

士郎はベディヴィエールの方に兵を送る口実とはいえ、円卓の騎士の次に自分の名を出されたのには気恥ずかしさを覚えた。

 ベディヴィエールの部下の兵士二人はアーサー王に恭(うやうや)しく一礼すると増援の兵を連れて主であるベディヴィエールのもとへと向かった。

 アーサー王たちも敵の片方が逃げたと思われる方向に進路を変えて再び動きだした。

 再びの行軍に士郎は心身ともに疲弊していた、馬に相乗りしているだけの士郎であるが乗り慣れない馬に四六時中乗っているのは想像以上にしんどいものであった。

 特に目を見張るのは今回の行軍に付いて来ている歩兵たちである(もちろん行軍は歩兵に合わせたスピードだがそのスピードは鎧を着込んだ兵士の移動速度にしては大分早いものであった)。そのことに一人一人の兵士の練度(れんど)の高さが伺い知れた。

 

 「此処で一度休憩を取る」

 

 アーサー王はそう言うと歩兵は休ませた。馬に騎乗していた兵は馬から降りて馬を休みませる、馬を休ませている間に騎乗していた兵は敵の痕跡を探すために周辺の様子を探索しに行った。円卓の騎士であるランスロットとアグラヴェインも敵の手掛かりの探索に加わっていた。

 流石に王であるアーサー王は歩兵たちと一緒に休憩をしていた、客人である士郎も休憩することを許された(アグラヴェイはアーサー王と士郎が近くに居ることを快くは思わなかったが)。

 周りの歩兵はアーサー王に対して色々と気遣いを見せたが、アーサー王は自分を気にせず休むように促した。しかし、王が近くに居て気兼ねなく休むことの出来る兵士などいるハズもなかった。アーサー王は考えた末に休んでいる歩兵たちと少し距離を開けた。

 アーサー王が離れるのを見て近づこうとして兵士たちもいたが、アーサー王が気にせずに休んでいるように言うと兵士たちもその王の言葉に従った。

 アーサー王は休んでいる兵士たちから少し距離を置くと士郎を手招きして自分の近くに呼んだ。

 

 「どうしたんだセイバー、っじゃなくてアーサー王」

 

 「近くに他の者が居ない時は私のことは好きに呼べばよい」

 

 アーサー王はそう言うと士郎に質問をした。士郎は第五次聖杯戦争についてアーサー王に説明した数日後に思い出したようにアーサー王とこの世界で最初に出会った時にいた敵が逃げたのでは無く光の粒となって消えたことを話した。

 アーサー王はその様に死ぬ者など見たことが無かった、そして第五次聖杯戦争でサーヴァントと呼ばれる者たちもまた消える際に光の粒のようであったと士郎から聞かされたアーサー王は今回の敵と士郎が参加したという聖杯戦争とやらに何か関係があるのではないかと士郎を今回同行させたのであった。

 アーサー王は士郎に今回の敵について何か気付いたことはあるかと聞いたが士郎は首を横に振った。

 

 「そうか」

 

アーサー王はそう言うと少し肩を落とした様に士郎には見えた。

 士郎はセイバー(アーサー王)がそこまで安否を気に掛ける{マーリン}という男がどうしても気になり、セイバーと{マーリン}の関係についてセイバーに聞いてみることにした。

 アーサー王は少し考える素振りを見せてから口を開いた。

 

 「奴は私を王へと導いた。変な奴ではあるが私にとっては特別な存在だ」

 

 アーサー王そう言うと{マーリン}との出会いについて話し始めようとした。

 しかしその時に敵の痕跡を探していた一人の兵士が慌てて戻って来ると王に矢継ぎ早に自身が見た情報を伝えた。

 

 「敵のアジトと思わしき場所を発見しました」

 

 アーサー王は散っていた騎兵を呼び戻し歩兵たちを集めると報告をしにきた兵士の案内のもと敵の根城へと向かった。

 

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