Fate/stay another world   作:レッサーパンダ

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1-2 再び回り始めた運命の歯車

 セイバーの言葉を聞いて士郎は呆然と立ち尽くした。

 セイバー、いやアーサー王はそんな士郎の様子を不思議そうに眺めた。

 

 「ありがとうございます。アーサー王」

 

 そんな時にアーサー王が敵から守っていた親子の母親らしき女性がアーサー王に深々と頭を下げて感謝の言葉を述べた。

 母親の横に居た小さな男の子もアーサー王にお礼を述べる、そして何時か自分もアーサー王に使える騎士になるのだと鼻息を荒くした。

 そんな小さな男の子の頭にアーサー王は軽く手を置いた。

 

 「それは心強いな、だけど強くなったならまず母親を守るんだ。

  自分の大切な人を守れ、そして余裕があるなら困ってる人を助けるんだ。

  私はこの国に住む全ての民を守らなくてはならない、何故なら私は王だからだ。

  しかし全てを助けるのは難しい、だから私を守る騎士ではなく私が手の届かない誰か

  を少年が守ってくれる方が私は嬉しいんだ」

 

 小さな男の子に語るセイバーを見て士郎は確信した。目の前に居る王様が自分と出会ったセイバーでなくとも、優しく、気高く、そして真の強さを持つ自分が知っているセイバーなのだと。

 

 「王よー、アーサー王よー、ご無事ですかー」

 

 鎧を着こみ馬に乗ってこちらに数人が大声で駆け寄って来る者たちが現れた。

 アーサー王の前で強面の厳(いか)つい男が騎馬から降りるとアーサー王に頭を垂れて恭(うやうや)しく膝を地面に着けた。遅れて四~五人の鎧を着込んだ兵士も強面の男と同様に馬から降りてアーサー王にかしづいた。

 

 「陛下、お怪我はございませんか」

 

 「心配は無用だ、アグラヴェイン。私が賊に後れでも取ると思ったか?」

 

 強面の男はアグラヴェインという名らしい。アグラヴェインはアーサー王を心配する素振りを見せたがアーサー王は日課の散歩でも済ました程度の平穏な様子であった。

 刺客と思わしき者に襲われた後だというのに平然としている姿に士郎は流石セイバーだと感心した。

 

 「賊の奴も考えがあって此処に私を誘き出したようだがな、そこの親子を私が守るのを見越して此処で私を討とうとしたようだ。少々防戦一方になったのは事実だがな」

 

 アーサー王の言葉を聞いたアグラヴェインは親子をギロリと睨んだ。

 親子はアグラヴェインの怒りを感じ取り恐怖で身を震わした。

 

 「陛下、貴方様は私や、ましてや民草とは違うのです。万が一にでも陛下の身に何かあったらどうしますか」

 

 「アグラヴェイン」

 

 アグラヴェインはアーサー王に苦言を伝えるために声を強めた、しかし、アグラヴェインの言葉を聞いたアーサー王の声はアグラヴェインの声よりも強く、そして辺りを支配するかのような力を持っていた。

 現にアグラヴェインも、そして士郎を含むその場の全ての者が息をするのも忘れてアーサー王の次の言葉を待った。

 

 「私の代わりは居ないだろう。だがそれはソナタも、そしてあの親子も同じだ。

  あの親子の母親が死ねば他の誰であろうとあの小さな少年の母親の代わりには決してなれぬハズだ、違うか?」

 

 「失言でした、お許しください」

 

 「よい、私の身を案じた故の言葉なのは理解している」

 

 アーサー王とアグラヴェインのやり取りを聞いていて士郎は少しセイバーに違和感を覚えた。

 そして士郎は目の前のアーサー王が自分の知っているセイバーとの違和感の正体に気付いた。目の前アーサー王は何処か人間味が無く感じるのだ、しかし士郎は自分が最初にセイバーと出会った時の印象に似ているのではなかろうか士郎は思った。

 そんなことを考えつつ士郎はアーサー王が倒した賊に視線を移す、すると士郎は驚くべきモノを目にした。

  士郎がアーサー王の倒した賊に視線を移すと賊が消えていた。いや、消え始めていた。

 地面に横たわる賊の体が少しづつ消えていく姿と似た光景を士郎は過去に見たことがあった、それは第五次聖杯戦争のサーヴァントが敗れた時と非常に似ていた。

 

 「セイバー」

 

 士郎は慌ててアーサー王に声を掛けた。

 アーサー王は自分はセイバーなどでは無いと訂正しつつも士郎の慌てぶりに士郎の視線の先をアーサー王も目で追った、するとアーサー王が賊の居た所を見た時には既に賊の姿は完全に消えた後であった。

 アーサー王は敵が逃げたと思い急いで辺りを見回した、そしてアグラヴェインたち家臣に急いで辺りの捜索を命じた。

 

 「違う、逃げたんじゃない、死んだから消えたんだ」

 

 士郎は一人小さく呟いた。

 士郎は現在自分が置かれた状況を完全には理解出来ていなかった。しかし、今自分が置かれている状況が第五次聖杯戦争と酷似している気が士郎はした。

 かつて冬木の地で時代の違う英雄たちがサーヴァントとして召喚された、自分はセイバーを召喚した、そして今度は自分が呼ばれたのではないか? 士郎はそんな考えが頭を過った。

 

 今、運命の歯車が再び回り始めた。

 

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