Fate/stay another world   作:レッサーパンダ

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2-11 決着の時

 義経は数的有利でありながら自分と一対一の戦いを提供したアーサー王に対して礼を尽くすために何故命を狙うのかの説明をした。

 義経はまず自身の過去について語った、かつて共に戦った兄である頼朝(よりとも)に裏切られ自身は命を落としたのだと。その頼朝の首を切り落とすためには{選定者}という時間移動が出来る男の協力が不可欠であった、その{選定者}が協力するための提示した見返りがアーサー王を殺すことなのだと。

 

 「その{選定者}とやらは何者だ?」

 

 アーサー王を自身を狙う者について尋ねた。

 

 「さあな、知りもしなければ興味も無い。ただ分かっているのは頼朝に復讐を果たすために奴の力が必要なこと、そして奴は虫の好かぬ男であると言うことだけだ」

 

 義経は{選定者}のことについて深くは知らなかった、ただ{選定者}に対して不快感を持っている口振りであった。

 義経は話は終わりだとばかりに刀を構える、それに呼応するようにアーサー王も剣を構えた。そして戦いの火蓋は切られた。

 最初に仕掛けたのは義経だ、義経は真っ直ぐアーサー王の懐に飛び込みすれ違い様に刀を振るう。そのスピードは速く辛うじて目で追うことが出来る程である、しかしそのスピードにもアーサー王しっかり反応した。

 アーサー王は義経の一撃を剣で防ぐと反撃に出ようとした、しかし次の瞬間義経はアーサー王の背後に回っており刀を再度振るう。その攻撃もアーサー王は防ぐが義経の猛攻は止まることをしらなかった。

 縦横無尽に場を駆け巡る義経はすれ違い様に刀を振るう、速すぎる義経の動きは残像を残しまるで複数の敵と交戦しているような錯覚を起こす程であった。

 義経の速すぎる動きはアーサー王の攻撃する機会を奪った、間合いを計らせぬ不可視の剣も防戦に回ってはその利点を活かすことを出来はしなかった。

 しかし、攻撃を凌ぎ続けるアーサー王の剣が徐々に義経の動きを捉え始めた。そして次の瞬間にアーサー王の剣と義経の刀が強く衝突をした、その結果義経は後方に大きく弾け飛ばされた。

 

 「ちっ」

 

 義経は小さく舌打ちをした。

 スピードで僅かに上回っているが力ではアーサー王が上であることを義経は認めざるを得なかった。

 アーサー王から距離が離れた義経は刀を自身の目の前に掲げて目を閉じ、大きく深呼吸をするとゆっくりと目を開けた。

 義経は一連の動作で自身の集中力を高めると、低く構えて再度アーサー王に仕掛ける体制を取った。

 

 「天狗より修練を受け、磨き続けた我が力を見よ、アーサー王。≪八艘跳び≫」

 

 義経はそう言うとアーサー王に突撃した、義経のスピードは確かに先ほどよりも僅かにだが早くなったが、義経のスピードに慣れ始めたアーサー王にとっては脅威とはなり得なかった。

 しかし更に義経はスピードを上げていった、それでもアーサー王は義経の攻撃を二度、三度と防ぐ。そして四度目の義経攻撃の際にアーサー王の剣が義経の刀とぶつかり義経は空中に飛ばされた。

 身動きが効かぬ空中に身を晒した義経の着地を狙って、アーサー王は決着の一撃を打ち込もうとした。しかし、義経はまるで空中に地面でもあるかのように空気を蹴って更に加速を続ける。

 

 「!?」

 

 義経の空中からの加速にアーサー王は意表を突かれた、それでもアーサー王は義経の攻撃を何とか身を捩(よじ)って躱(かわ)す。

 義経の先ほどまでの攻撃は四方からのみであったが今は地面を除くまさに四方八方からの攻撃がアーサー王を襲う。そしてそのスピードは上がり続けていた。

 士郎はもとより義経の動きを目で捉え切れていなかったが、今のスピードはランスロットやアグラヴェインでさえ目で追い切れぬスピードとなっていた。

 その結果、義経の攻撃を剣で受け続けていたアーサー王も義経の刀が鎧に、そして皮膚や髪の数本を切りつけた。それでも義経のスピードは速さを増していく。

 

 (クソっ)

 

 そう心の中で毒づいたのは意外なことに義経であった。

 義経は自身のトップスピードに近い速さまで近づいてもアーサー王を倒すどころか深い傷を与えられていないことに焦りを覚えていた。

 義経は今のスピードを何十分も維持できないことを分かっていた、そしてトップスピードで動き続けていては攻撃に正確性がかけるのである。現に義経は焦りのせいもあるが気付いていなかった、切りつけているハズのアーサー王の皮膚から血が流れていないだけではなく、傷すらも残っていないことに。(その理由はアーサー王の持つエクスカリバーの鞘の力であることに義経は{選定者}から聞かされてはいなかった)

 

 「今だ」

 

 義経の猛攻の末にアーサー王が体勢を僅かに崩した、その隙を義経は見逃しはしなかった。義経は一撃で決めるために鎧の隙間を縫うようにアーサー王の心臓に刀を突き刺しにいった。

 しかし義経の刀がアーサー王に届く瞬間にアーサー王を身を捩ると義経の刀はアーサー王の脇腹へと刺さった。

 義経は慌てて引き抜き二撃目を行おうとしたがアーサー王は力を入れると義経は刀の動きを一瞬奪われた、その瞬間にアーサー王は左手で義経の刀を掴むと自身の剣を握る右手を下へと振り下ろす動作に入った。

 

 「これで終わりだ」

 

 アーサー王がそう言った時に義経はようやく先ほどのアーサー王が見せた隙が自分を誘う罠だったと気づいた。

 義経は剣を離して距離を取ろうとしたが既に時遅くアーサー王の剣が義経へと振り下ろされた。

 義経の体から噴水のように血が吹き出し空中に赤い花が咲いた。


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