Fate/stay another world   作:レッサーパンダ

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2-12 源義経

 アーサー王の振り下ろされた剣によって義経は自身の血で着物が真紅に染まる。

 そして驚くことに義経の着物の下から大きな乳房が姿を現した、それを目撃した士郎は思わず、女の子? と驚きの声を上げた。

 驚いたのは士郎だけでは無くランスロットとアグラヴェインも驚きの表情を隠しきれぬ程であった。しかし、アーサー王だけは驚いた様子は無く小さな声で「やはりか」、と小さく呟いた。

 

 「まだだ…、まだ終わる訳には、いかぬ…のだ」

 

 義経はそう言うとアーサー王によって大きな深手を受けたハズが崩れ落ちるのを必死で抗う様に剣を地面に突き刺して倒れることを拒んだ。

 しかし誰が見ても明らかなように義経は戦える状態とは言えなかった。

 確かな手応えを感じたアーサー王は多少の驚きの表情を見せた、が義経の目を見ると義経を支えているモノが精神面での執念であるものが窺(うかが)えた。

 

 「それほど、頼朝とやらが憎いのか?」

 

 アーサー王は今の状態の義経が自らを支える執念である、頼朝への復讐の念を聞かずにはいられなかった。

 

 「頼朝が憎いかだと? そんな感情はとうの昔に消えたさ、今は権力のために血を分けた者さえ手にかけたあの男に憐れみすら覚えている」

 

 義経の答えは意外なものであった、義経は兄である頼朝に抱いていた憎しみは既に存在しなかったのである。

 アーサー王は義経に再度問うた、ならば何故頼朝を討つ為にそこまでの執念を燃やすのかと?

 

 「私は家臣たちにまともな禄(ほうび)を与えてやることが出来なかった。それでも彼らは最も危険な戦地へと行く私を支え戦ってくれた、そして敵である平家を打倒した彼らに待っていたのは何だと思う? 仲間の、総大将の裏切りの刃だぞ

 私は、いや私たちは民が戦火に巻き込まれない平和な世を望んだだけだったのに」

 

 義経はそう言いながら悔しさで体を震わせていた。

 義経はかつて源氏の総大将、頼朝の弟として活躍をした。強すぎる光はある者たちに濃い影を生み出したのだ、その活躍ぶりを快く思わぬ者たちは頼朝の側近たちにも多く居たのだ。

 しかし、頼朝も最初は義経の活躍を素直に喜んだ。側近たちの義経に対する悪い噂や謀反の兆しなどの戯言に耳を傾けることはなかった。

 しかし、日増しに義経の存在は大きくなっていく。次第に頼朝は義経に対して側近たちの言葉を受け入れて過酷な戦地に送ることが多くなった、しかし義経は過酷な戦地でも機転を効かして十二分の働きをし続けた。

 そして義経の存在は民衆にとって頼朝以上の存在となっていき、頼朝と義経の確執は如実に表れていったのだ。

 

 「何も与えてやることの出来なかった私に今更死んだ家臣たちに何をしてやれる、せめて仇である頼朝の首を家臣の墓に捧げてやるしかないではないか!!

  だから私は、負ける訳にはいかぬのだ」

 

 義経は自分に喝を入れると自身を支える刀を地面から引き抜き再び構える。

 アーサー王は義経の言葉と態度を見ていて気付いてしまった、義経が何より憎んでいるのは自分自身なのであると。義経が頼朝とやらに復讐をする理由は部下に対する贖罪なのだと。

 

 「済まぬが貴女(そなた)の願いを叶えてやる訳にはいかぬ、私には進まなければならぬ道があるのだ」

 

 アーサー王も剣を構える、既に戦える状況とは言えぬ義経を相手にアーサー王は微塵も油断はしていなかった。

アーサー王は知っていた、幾人もの強者と戦い続けていく中で死ぬ瞬間まで油断できぬ相手が居ることを、それは今の義経のような目に執念の光を宿す者だと。そしてアーサー王は義経の攻撃を警戒しつつ距離を詰めると剣を振り上げる、アーサー王の剣が義経の命を刈り取るその瞬間に待ったをかける声がアーサー王の剣を止めた。

 

 「待ってくれ、セイバー」

 

 それは士郎の声であった、士郎の静止の声でアーサー王の剣は義経の手前でピタリと止まった。アーサー王は士郎が何故止めたのか問うた。

 ちなみに士郎がセイバーと呼んでアーサー王が剣を止めたことにランスロットはアグラヴェインはセイバーとは誰のことなのか疑問を持った顔をしていたので、士郎は慌ててアーサー王、待ってくれと言い直した。

 士郎はアーサー王の問いに答える代わりに義経の近くへと歩みを進めた。

 

 「待て、士郎」

 

 アーサー王は士郎が義経に近づいて行くので止まる様に声で静止を促した。アーサー王は手負いである義経だが士郎を殺すことくらいは容易に出来ることは分かっていた、士郎はアーサー王の静止を無視して義経の刀の届く範囲まで近づいた。

 アーサー王は義経が士郎に攻撃を仕掛ける素振りを見せたら義経の刀が士郎へ届く前に義経の前でピタリと止めている自分の剣で義経を切り捨てようと義経の動きに注意を払った。

 

 「俺の名は衛宮士郎。義経、アンタが生きていた時代のずっと未来の日本から来た者だ」

 

 士郎は何を思ったのか義経の前で自分のことを語り出した。

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