Fate/stay another world   作:レッサーパンダ

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2=4 証明するために

 {選定者}はペリノア王を殺害した後にとある一つのアジトへと戻っていた。

 其処には{選定者}の他に、エミヤ、宋江、白起の計四人が情報を共有するために集まっていた。

 まず{選定者}は仲間の一人である義経がアーサー王に討たれ、リタイアしたことを告げた。しかし、この後の計画に変更は無く必要になれば命令を下すので待機しているように{選定者}は他の者たちに伝えた。

 宋江は何か言おうとしたが思い直したのか、何も言わずにその場を後にした。

 

 「それで私の戦える戦場は何時用意してくれるんだ、{選定者}」

 

 白起は待ちきれんとばかりに{選定者}に催促をした。

 {選定者}は首を振ると時期が来ればご用意をしますと言うだけであった。不満を感じている白起に{選定者}は言葉を継ぎ足した。

 

 「円卓の騎士たちは皆化物揃いです。白起将軍と言えども一対一の戦いでは分が悪いかと、兵を率いて戦いであれば白起将軍が有利であるでしょうがね。

  残念ながら、まだ大規模な戦いは悪手となるので暫(しば)しの辛抱を」

 

 白起は不満であったが戦いにおいて動く時期を見誤れば、有利な戦いとて負けることを多くの戦(いくさ)から知っていた白起はこの時代で一番情報を有している{選定者}の意見に仕方なく従うことにした。

 

 「それとアーサー王を討てば昭襄王(しょうじょうおう)に復讐を果たすことは確かであろうな?」

 

 「モチロンお約束します。昭襄王も歴史に名と功績を残した賢王と言えるでしょう、私が殺すべき王たちの一人ですので」

 

 {選定者}の答えを聞いて納得したかは分からぬが、白起もその場を後にして次の指示を待つことにした。

 

 

 昭襄王とは、有名と言える程の王ではないかもしれないが中国において最も名高い王の一人である始皇帝(嬴政・えいせい)の二つ前の王である。

 始皇帝が誰も成し遂げたことの無い中華統一を成し遂げられたのも、昭襄王が自身の時代に国土を広げて兵力を他の六国から比べて多大に有していたからである。

 始皇帝自身の才覚もモチロンであるが、始皇帝の偉業は昭襄王の作った土台があってこそ実現したと言っても過言ではないであろう、歴史に名を残した王の一人である。

 

 

 {選定者}とエミヤは二人きりとなった、それを機にエミヤが{選定者}に話掛けた。

 

 「ペリノア王を殺したらしいな、それ程の実力がある故にアーサー王と戦っても勝てると豪語しているのか?」

 

 「アーサー王と私が戦えば必ず私が勝ちます、それは間違いない。しかし、その場に円卓の騎士が一人でも居れば私は一瞬で殺されることも、揺るぎの無い事実ですがね」

 

 エミヤは{選定者}の言い回し違和感を覚えた。アーサー王と戦おうと勝つ自信があると言うのに、円卓の騎士には歯が立たないと言っていることに。

 そしてもう一つエミヤが抱いた違和感は{選定者}に全く脅威を感じないことである。

 幾つもの戦場を経験したエミヤにとって目の前の人物が脅威になるかどうか勘が働く、しかし{選定者}を前にしてもそれが全く無いのである。

 

 「ペリノア王を殺したのは良いが、こちらも戦力を一人削られたようだな」

 

 エミヤは話題を変えてリタイアした義経のことを話した。すると{選定者}はニヤリと笑って話した。

 

 「抑止力殿ならチェスや将棋知っているでしょう、勝敗を決める絶対のルールは王を討つことです。他の駒をいくら失おうと大した問題ではない」

 

 その言葉の通りに{選定者}は自身が呼んだサーヴァントのことなど便利な道具程度にしか思ってはいなかった。

 サーヴァントたちも{選定者}のそんな考えを知ってか知らずか、忠誠心などは無く、双方は利害関係でのみ行動を共にしているだけなのであった。

 

 「おっと、モチロン抑止力殿は別ですからご安心を」

 

 {選定者}は取って付けた様な言葉をエミヤに投げたが、エミヤは無視をした。

 エミヤはもう一つ気になったことを{選定者}に質問した。それは呼んだサーヴァントたちのクラスについてだ。

 エミヤが顔を合わせたサーヴァントたちの中にはバーサーカーと思われるようなサーヴァントを見かけなかったので尋ねたのだ。

 

 「私が呼ぶサーヴァントたちには令呪とクラスなど無いんですよ。時代を渡りサーヴァントを呼んで歴史に名を残した王を殺す、その時に呼ぶサーヴァントの数はキッチリ七騎。

  今まで幾人もの王を殺したがその例が漏れたことは無いんですよ」

 

 そして{選定者}はもう一つ重要なことを話した。

 目的の王を殺すと現在呼んでいるサーヴァントは消えると、そして別の時代に渡り再びサーヴァントを呼び出す、そして呼び出すサーヴァントたちを{選定者}が選べる訳ではなくランダムなのだと。

 しかし、目的の王を殺すのに必要なサーヴァントは必ず含まれていると語った。

 

 「何故、そうまでして王を殺すんだ?」

 

 エミヤは{選定者}が執着する理由を尋ねた。

 今まで作って貼り付けた様な笑顔の{選定者}の顔が真顔になった。

 

 「歴史に愚王と称され貶められる王たちと、賢王ともてはやされる王たち、いったい何が違うと思う?」

 

 {選定者}は逆にエミヤに尋ねた。{選定者}の話し方が微妙に変わっていることにエミヤは気付いていたが、指摘をするつもりはなかった。

 エミヤは無数に答えを用意出来る問いに少し頭を悩ませて口を開こうとした、しかし{選定者}の目を見ると言葉を飲み込んだ。自分が何を答えても{選定者}は納得しないとエミヤは悟った、{選定者}が既に用意している答え以外は認めるつもりがないのだと。

 エミヤは{選定者}が喋り出すのを待った、{選定者}は早く言いたかったとばかりに早口で言葉を吐き出す。

 

  「聡明な頭脳か? 敵を打ち倒す力か? それとも崇高な心だとでも言うのか? 

そのどれでも無い、賢王と愚王を分けた物はたった一つ。

  それは{運}だけだ」

 

 エミヤは{選定者}の言葉に唖然とした、全ての責任を{運}と言う言葉に押し付けようとする{選定者}の幼稚さに。

 

 「だから私は歴史に偉大だと名を残した王を全て殺して証明しなければならない、私が劣っていたのでは無いと。全ては{運}のせいだったのだと証明をする為に」

 

 {選定者}は食って掛かる勢いでエミヤへと喋った、その今までとは違う豹変ぶりにエミヤは面を食らったがすぐに理解した、{選定者}という男の本性は今目の前で激昂している男の方なのだと。

 {選定者}は頭に血が上り冷静さを失っていることに自身で気付くと、今まで通りの表面上は相手を敬うような態度に戻った。

 

 (オカシイ、何故…)

 

 {選定者}は自身の心の内をエミヤ相手に見せてしまったことに内心戸惑った、計画が順調に進んでいることで気を緩めたのか。

 はたまたエミヤの立場上対立関係にならぬと思ってか、もしくは、エミヤ自身に自分がどこかで心を許しているとでも言うのか?

 {選定者}は自身の過去を知らない、気が付くと荒れ果てた場所で歴史に名を残した偉大な王たちを殺さなくてはならぬ、という使命にも似た感覚と自身が何者であるかを知っているだけであった。自身が知らない過去に何か理由があるのだろうか?

 {選定者}は自身も知らない過去を探ることを辞めた、それを知るべきでは無いと感じて自身を諌(いさ)めると、自分が信じることの証明のために偉大と語り継がれる王たちを殺すことだけに集中した。

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