Fate/stay another world 作:レッサーパンダ
アーサー王たちが敵を誘き出すためにキャメロット城を出立してから丸一日が経った。
今回の旅で士郎は一人で馬に乗っていた、急ぐ旅では無いため馬の走らせるスピードもゆっくりであるため士郎も何とか自分一人で手綱を握っていた。
人数こそ三十人近くは居るが、男は護衛の兵士五~六人と士郎のみである。
「いやー、美女に囲まれての旅という役得に居るのに浮かない顔だね、士郎」
士郎をからかう様な口調でガレスが士郎に話しかけてきた。
ガレスも他の女性と同様に踊り子が着る様な薄い布地でキラキラとしていて、フリルの様なモノが着いた衣装である。顔を半分隠してはいるが体の方は露出の多いデザインに士郎はなるべく体を直視しないように顔を背ける。
「出来ることなら誰かと変わって欲しいくらいさ」
士郎は疲れた声でガレスに答えた。
昨夜は大きなテントを張り宿舎として寝泊まりをした。旅の道中は村でも無い限りはそうして寝泊まりをする、割かし何処でも寝られる士郎にとってはそれは苦にはならなかった。
そんなことよりも士郎は客人としての待遇ということでテントを一つ与えられた、そして女性が二人士郎のテントに寄越されたのだ。
士郎は断ったが敵が監視をどこでしているか分からないため、士郎には客人のもてなしをしなければ逆に怪しまれるため士郎は仕方なく諦めた。
「では失礼しますね」
そう言うと二人居る女性の片方が士郎の服を脱がそうとした。士郎は慌てて振り解(ほど)くと着替え位は自分でやると断った。
士郎は着替えようとすると客人の世話役として寄越された二人の女性も着替えようとしたので士郎は慌てて後ろを向いた。
着替え終えて寝ようとする士郎に世話役の二人も士郎を挟んで寄り添う様に寝ようとした。すると女性の手が士郎の体を這うように伸びる。
「それでどうしましょうか士郎様?」
女性たちは士郎の体を手でまさぐると士郎の要望を聞いた。
どうやら世話役とは夜の世話も兼ねているようなのであった。士郎は慌てて、
「何もしなくていいから、普通に寝てくれ頼むから」
士郎の慌てた様子で世話役の女性二人に言った。
二人はポカンとした顔でお互いを見ると、クスリと笑った。
「仰せの通りに、士郎様」
そう言うと世話役の女性たちは眠りに落ちた。
士郎も寝ようとしたが寝付けず、隣に寝ている女性たちを起こさないようにテントを抜け出すとテントから余り離れないように外で寝ることにした。
「こっちの方がよっぽど落ち着いて寝られそうだ」
士郎はそう言うと枕だけ持ち出していたのでそれを頭に敷くと、せっかく与えられた宿舎ではなく外で一夜を明かした。
その昨夜の話を士郎はガレスに話すとガレスは大声で笑った。
この時代は戦争も当たり前で、それ以外でも何時命を落とすか分からない。士郎くらいの年齢であろうと女をあてがえば行為に及ぶのが普通である。
「恋人でも無い相手にそんなことしようとする方がオカシイだろ」
士郎がそう言うとガレスは腹を抱えて笑った。そして士郎の背中をバシバシと叩いた。
「君って奴は、優しいと言うか紳士的と言うか、どことなくベディヴィエール卿に少し似ているのかもね。
気に入ったから何かあったらアーサー王の次に優先して守って上げるよ」
士郎はガレスの発言を聞くと自分の身くらいは自分で守るから、連れている女性たちを守って上げてくれと言った。
するとガレスは今回の旅に連れている女性たちはそこそこ腕に覚えのある連中を選んでいると説明をした。
今回の旅は敵が襲撃してくる可能性の高さを考慮に入れて選出している、いざという時は逃げても良いので自身の命を優先しろとの命令をアーサー王が今回の旅に同行する女たちに伝えているとのことだ。
「そんな訳だけど王様からは女性たちと士郎、君の安全を優先してくれって言われてるんだよね。まあ王様事態が私より強い上にモードレッドも王様の近くに居るしね」
そう言うとガレスは先頭の方で馬に跨るアーサー王とモードレッドを指差す。
アーサー王は隊列の先頭に居た、そしてそれに離れずピッタリとモードレッドがくっついている。
逆に士郎とガレスは隊列の最後方、殿(しんがり)の位置に居た。ガレスは後方からの襲撃の場合に備えて後ろに配列されたのだが、士郎は最初アーサー王の近くに居ようとした、しかしモードレッドが士郎を毛嫌いした為にモードレッドから最も離れた最後方に配置されるハメになったのである。
「本当にモードレッドは困った奴だよね、粗暴だし後先考えない性格だから他の騎士ともしょっちゅう険悪な関係になっちゃうんだよね。でも、思った程悪い奴じゃ無いんだよ。
良い意味でも、悪い意味でも純真なだけなのよね」
友達を庇う様な口調でガレスはモードレッドに付いて語った。
しかし、士郎にとってモードレッドを好きになれるハズはなかった。セイバー(アーサー王)に反逆をしてセイバーを悲運な運命へと導いた悪者でしかないのである。
士郎はモードレッドから離れているこの機会にガレスに尋ねてみることにした。
「モードレッドはセイ、じゃなくてアーサー王の近くに居るけど万が一モードレッドがアーサー王の命を狙ったらどうする、殿(しんがり)は俺に任せてガレスもアーサー王の近くに居た方がいいんじゃないのか?」
士郎はモードレッドがセイバーの近くに居ることが不安なので万が一に備えて、同じ円卓の一人であるガレスをセイバーの護衛としてセイバーの近くに居て欲しかった。
しかしガレスの口からは士郎にとって意外な一言を聞くこととなった。
「モードレッドがアーサー王を剣を向ける? そんなこと死んでも有り得ないわ」
ガレスは先ほどまでとは違った真剣な表情に士郎は一瞬ドキリとした。
「私たち円卓の騎士はアーサー王の為なら喜んで命を懸けるわ、差異はあっても皆アーサー王を尊敬し、敬愛してるから。
特にモードレッドに至っては尊敬や敬愛と言うよりも信仰に近いくらいよ」
士郎の心境を知らないガレスは士郎が下らない冗談を言っているとしか思えなかった。
そしてその冗談はアーサー王に仕える自分たちにとって気持ちの良いモノではなかった。
「私たちの中でアーサー王に刃を向ける人間は一人も居ないわ、絶対に。
中でもモードレッドがなんて天地がひっくり返りでもしない限りわよー」
ガレスは士郎に向かってそう言い放った。最初は少し怒っていた様子のガレスだったが、後半にはキャメロットに来たばかりの士郎が自分たち円卓の騎士とアーサー王の関係など知るハズないのだから仕方ないと思ってか、何時もの口調と表情に戻っていた。
その後ガレスは士郎に取り留めのない話題を振って会話をしたが士郎の頭は考え事で一杯となり、耳から耳へ素通りするだけであった。
(どういう事なんだ? 歴史に残されたモードレッドの反乱は間違いなのだろうか?
それとも俺が知っている歴史とは違う世界に来たとでもいうのか?)
士郎は頭の中で色々と考えたが答えなど分かるハズも無かった。
ガレスの絶対の自信と今までのモードレッドの様子を見るに士郎にもモードレッドがセイバーを殺そうとするなどと考えられず、間違った歴史が伝えられたのではと士郎も頭の中で疑問を抱いた。
(まあ、セイバーが自分の人生に後悔を抱くようなことにならないならそれが一番か)
士郎は考えが自分の中である程度まとまるとガレスが自分に話をしていることに気付いた。士郎はガレスの次に行く場所は何々の料理が上手いなどという他愛のない会話にようやく耳を傾けると相槌を打った。