Fate/stay another world   作:レッサーパンダ

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3=2 王妃の護衛役

 アグラヴェインは多忙の中で食事をする暇すらない中で、王妃であるギネヴィアが城下街を見て歩きたいと仰られています、と女中の一人から伝えられた。

 

 「この非常時に何をバカなことを」

 

 アグラヴェインは忌々し気に独り言を溢す。

 ギネヴィアが外に出るなら護衛を用意しなくてはならない、何か起こった時の為に一般の兵士だけでは不安なので円卓の騎士を一人は付けなくてはならない。

 現在の状況は国境の警備の強化の為に円卓の騎士は全員多忙を極めていた。

 

 「仕方ないだろう、ギネヴィア様も部屋に閉じこめられていれば気も滅入ってしまう」

 

 状況の報告などの為に一旦帰還していたランスロットがギネヴィアのフォローを入れる。

 

 「現在の状況でその様なことを言うなど何を考えているのだ」

 

 アグラヴェイン苛立ちながら言葉を吐いた。

これだから女という奴は、そんな言葉が出かかったがアグラヴェインは口には出さずに飲み込んだ。仮にも王妃に向かってそんな言葉を使えば問題になりかねない。

 アグラヴェインは王妃が、と言うより女性全般に対して余り良い感情を持ち合わせていなかった。

 

 「まあ仕方ないだろ、何とか調整して円卓の中から一人護衛を付けねーとな」

 

 椅子に座りながら他人事のようにケイがそう口にした。

 アグラヴェインはモルガンの監視を自分から引き継いだクセに、何故かよく暇そうにしている姿を見かけるケイをジッと睨み付けた。

 働いているように見えなくとも、仕事はキッチリとこなす男であるから心配は無用だ、そうアグラヴェインは自身に言い聞かせた。

 

 「私は悲しい、王妃の気まぐれでこれ以上忙しくなるなどとは」

 

 ランスロットと同じように一度キャメロットへと戻っていたトリスタンが嘆(なげ)いた。

 幸か不幸かこの場に円卓の騎士が四人居た、この中の誰か一人を王妃の護衛に付けて抜けた穴を他の騎士たちでフォローすることになった。

 問題は誰が王妃の護衛に付くかであった。

 

 「まあ妥当に考えるならランスロットだろうな。アグラヴェインの代わりを他の奴がやるのは難しいし、何よりアグラヴェインの仏頂面を終日見てたら王妃はかえってストレス溜まるだろうしな」

 

 ケイは笑いながらそう言うと言葉を更に続けた。

 

 「俺もやる事があるし、トリスタンみたいな根の暗い奴が一緒じゃ王妃も気の毒だ」

 

 「私は悲しい、貴方(アナタ)にそのように思われていたなんて」

 

 ケイの言葉にトリスタンは嘆いた。

 

 「私もランスロット卿が適任だと思いますよ。間違ってもケイ卿が王妃の護衛に付いたらケイ卿の口の悪さが原因で、王妃が二度と部屋から出てこなくなっても困りますしね」

 

 「言ってくれるじゃねーかトリスタン。さっきの意趣返しのつもりかよ、全く本当に根暗な奴だな」

 

 トリスタンは素直に思ったことを口にしただけであったが、ケイはトリスタン言葉を自身への嫌味と受け取った様で、ヤレヤレといった様子で首を横に振る。

 トリスタンは何か言おうとしたが口でケイに勝てる人間など国中を探しても見つからないだろうと諦めた。

 話を聞いていたランスロットとアグラヴェインも、王妃の護衛にケイだけは辞めた方がいいと思ったが、口には出さずに心に思うに留めた。

 

 「ではギネヴィア様の護衛は私が付いて行こう」

 

 「今の状況じゃ誰が何処で狙っているか分からねえ、気を付けろよ」

 

 「命に代えようとも、ギネヴィア様の身は私が守る」

 

 ケイはランスロットに忠告すると、ランスロットはその決意を言葉にした。

 もともとケイも他の二人もそれ程の心配はしていなかった、性格うんぬんを抜きにしてもこの場で王妃の護衛に付くのはランスロットかトリスタンのどちらかであろう。

 円卓の騎士の中でもランスロットの力は一~二を争う実力者だ、そして競う程の相手はガウェイン、そして過去にランスロットと互角の戦いを繰り広げたトリスタンくらいであろう。

 王妃に何かあれば大問題である、それゆえ力と性格、そして王からの信頼も厚いランスロットはこれまでも円卓の騎士の中で一番多く王妃であるギネヴィアの護衛を任されていた。

 ランスロットは数人の部下の兵士を連れるとギネヴィアの下へと向かった。

 

 

 騎士の中の騎士などと人々から称されるランスロットをアーサー王だけでなく円卓の騎士の騎士、ひいては一般の兵士たち殆どが信頼を寄せていた。

 それ故にこの先に起こることをアーサー王側の人間で予想出来た人間など一人も居なかった、仮に予想出来る人物が居たとしたらこの場に居ない{マーリン}くらいであっただろう。


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